2008/05/09 23:50

アールデコの館~旧朝香宮邸を訪ねて~完結編

こんにちは。ビクトリアンクラフトの上條です。
今回は、これまでのまとめとして、自分の目を引いた、さまざまな部屋やモノについてご紹介していきます。

2階のベランダです。


中庭を臨み、大きな窓でたいへん明るい雰囲気をもつこの場所、床は市松模様のタイルが敷かれ、ドーム型の天井にはモダンなペンダントランプ。まさに「洋館」の言葉にふさわしい場所ですね。

ベランダの内側には、バスルームがあります。

大理石の壁、細かいタイルでモザイク模様の床。陶器類は当時の輸入品だそうです。
奥の窓はベランダに向かって開かれ、その先には中庭が。
もうとっぷりと暗くなっていて、中庭の風景が見られなかったのが残念です。
きれいに整えられた中庭の四季の移ろいを楽しみながらお風呂につかるなんて、なんて贅沢何でしょう。

バスルームの隣は、妃殿下寝室です。

真っ白な壁にシンプルなドアがやさしさを醸していますね。
鉄製のラジエターカバーは、允子(のぶこ)妃殿下が下絵を描かれたものだということです。

この照明器具がなんだか気になって・・・
今はスポットライトなどが追加されていて本来の光が味わえませんが、ほんのりとした優しい光でこの部屋を照らしていたんだろうな・・・



2階のホールです。

全体を一枚の写真にするのが難しかったので、分けて撮った写真をつないでいます。
かなり広々とした空間で、ちょっとしたパーティーならここで充分だろうな・・・って感じ。
階段のところで輝いている照明柱は、提灯とか行灯みたいでちょっと和テイストな雰囲気。周りは洋風なのに、しっとりと溶け込んでいて違和感など微塵も感じませんでした。



2階に上がる階段は、これまた大理石。真ん中の赤じゅうたんは大理石の保護用に敷かれたものだそうですが、これもまたいい感じですね。
じゅうたんが無い、真っ白な階段を想像してみました。華やかな白亜の階段を静々と歩く、ドレス姿の女性。その傍らにはエスコートの男性。当時ですからもちろん白い軍服の正装。まるで映画のワンシーン。


1階に戻って玄関脇には、応接室がありました。

入館したときには大ホールに目を奪われてまったく素通りしていたんですが、落ち着いた雰囲気でじっくりと時を過ごせそうな、趣のある空間です。


これは、3階に向かう階段の踊り場。


大きな窓が目を引きます。
厚みのある木の枠と比較的薄い鉄のサッシが立体感を生み出し、すごく大きな窓なのに重さや圧迫感が出ないように工夫されています。これが一枚ガラスの単調な窓だったら、のっぺりしていてつまらないでしょうね。


3階ウィンターガーデンのドアです。
鉄のドアはペンキ仕上げ。常に湿度が高い温室だから、木製ドアでは傷みが早い・・・という配慮でしょう。
欄間もドア同様のガラスが入り、一体感があります。換気用に開閉できるようになっています。
真鍮製のレバーハンドルがついていました。唐草模様をモチーフとした、アールデコ特有のデザインです。


長いこと、一つの建物についてのご紹介をさせていただきましたが、実はこの他にも多くの部屋があり、「ほえ~」と見とれているだけで写真を撮っていなかったり、ピンボケなどでボツになった写真、時間の都合で見られなかった場所など、色々とあるんです。
実際の建物は戦前の良い雰囲気をふんだんに受け継ぎ、一日中いても飽きない、ロマンチックなところです。
機会があれば見学されてみてはいかがでしょうか?

遅い時間だったため、あわただしい見学となってしまった今回ですが、次に訪問するときはそれこそ朝から晩までじっくりと、時間と光の移ろいを楽しみながら鑑賞したいものです。


ビクトリアンクラフト 上條
http://www.victoriancraft.com

2008/01/25 16:41

リペア日記 ~ドローリーフテーブル~

生活のなかでどうしても欠かせないもの、それは食事。
他にも「睡眠」とか「おはよう!」とかいろいろありますが、それはおいといて・・・
温かくておいしいお料理に、家族の笑顔。夕食のテーブルを囲む時が、暮らしの中でも最も安らぐひと時、という方も多いでしょうね。
当店にみえるお客様がお探しになっている家具でも、ダイニングテーブル・チェアの類は最も多く、さまざまな種類の中からお選びいただいております。

そこで今回は、英国家具の代表ともいえる「ドローリーフテーブル」をご紹介します。


「DRAWLEAF TABLE」、「引き出し式のテーブル」と訳せばわかりやすいでしょうね。

大きな天板の下に2枚の小さな天板(リーフ)が仕込まれていて、引き出す(ドロー)ことで大きくなる、なかなか便利なテーブルです。
英国ではかなりポピュラーなタイプのテーブルですが、日本ではあまり知られていないようです。「こうやって広げるんですよ」と言ってリーフを引き出すと、「おお!」とびっくりされるお客様もいらっしゃいます。

普段は少人数だけど、週末には友人たちとホームパーティーを楽しむとか、たまには腕によりをかけていろんな料理を作ってみた・・・なんてとき、大きさの変わるテーブルは便利ですよ。


・・・うんちくを語り始めるとキリがないのですが、「リペア日記」ですので、そろそろ実際のリペアをご紹介していきますね。

今回リペアするテーブルは、脚がぐらぐらしているため、分解・組み直しをします。
また、天板は日焼けによる変色、細かい傷や塗装のひび割れが目立ち、長い間安心してお使いいただくにはちょっと・・・というコンディションでしたので、塗りなおすことになりました。




■脚の分解・組み直し

分解するときには、各部品が元通りの位置に戻せるように目印をつけます。











ただ元通りに組み立てるだけではなく、補強したり、歪みを修正したりして、日常の使いやすさを重視しながら作られた当時のコンディションに戻していきます。






■天板の塗装
木地を滑らかにし、塗料の吸い込みを均一にするためにサンドペーパーをかけ、他の部分に合わせてオイルステインで下色を入れます。
その後、つやを出すとともに表面の保護をするため、上塗りをします。




ほとんどのアンティーク家具は、フレンチポリッシュという昔ながらの塗料で塗装されています。柔らかい艶と深みのある仕上がりが特徴ですが、やや水や熱に弱い、繊細な塗料です。
そこで、テーブルの天板など、丈夫さが要求されるところには、フレンチポリッシュによく似た仕上がりで、水や熱に強い、シッケンズ社の塗料を使って塗装しています。
3~4回の塗り重ねをして、全体の艶具合を合わせます。










■仕上げ
塗料が乾いたら、スチールウールでテカテカした艶を一旦落とし、ワックスで柔らかい艶を出して仕上がりです。

長い間大事に使われ、お疲れ気味の家具たちを、いたわりながら丁寧にリペアすることにより、また新しい日々が始まります。
うっかり付けてしまった傷だって、いつの日か思い出に変わっていく。それがアンティーク家具の魅力だと思います。



商品によって、リペアする箇所や方法が変わってきますので、ご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

ビクトリアンクラフト 上條

テーブルをお探しの方はこちらをご覧ください。
http://www.victoriancraft.com/table/

2007/11/14 18:30

技へのこだわり・・・旧開智学校を訪ねる

みなさんはじめまして!ビクトリアンクラフトの上條と申します。
普段はリペアルームにこもり、家具の修理をしています。

アンティーク家具の修理って、なかなか奥の深いもので、ただ壊れたところ、具合の悪いところを直すだけでなく、作られた当時のコンセプトみたいなものを想像し、どうやって使われていたのか、どんな人が使ってきたのかといった事を考えないと、なんだかちぐはぐな仕上がりになってしまうこともあります。

そこで、その時代の雰囲気を求めて・・・イギリスにはすぐに行けないので、近所(お店から車で5分、歩いても20分くらい)の「旧開智学校」へ、古き時代の空気を味わいに行ってきました。


ずいぶん前に訪れたことはあったのですが、その頃は古い建物や家具にはほとんど興味がなく、「ふ~ん、古臭い建物だねえ」で終わっていました。
今回、改めてよく見ると、随所に高度な職人技が施されているのがわかりました。

この建物が紹介されるときに必ず触れられる、玄関の上に掲げられた「開智学校」の看板を支える天使の彫り物、バルコニーの雲と、なぜか欄間にいる龍など。
取り合わせは奇妙なんですが、不思議とうまく雰囲気に溶け込んでいるんです。
明治6年に建てられたこの校舎、地元の宮大工が設計・施工したものだそうですが、まだ鎖国が解かれて間もない頃、海外の建築事情やデザイン・工法などほとんど分からないのに、よくぞここまでの建物を造ったものだと、感心するばかりです。
手本となったのは開成学校(現東京大学)をはじめ、東京や横浜の洋風建築だったそうです。
今でこそ数時間で行ける所ですが、その当時、松本から東京・横浜って、いったいどの位の時間がかかったんでしょうか?
少しでも良いものを造りたいという、わき出るような情熱が感じられました。



ここで感じたことを、少しでも今後の仕事に活かしていきたいものです。

ビクトリアンクラフト 上條


PS
館内に展示されていた謄写版(ガリ版)の印刷機、よく似たものを小学校の先生が使っていました。
そういえば、ガリ版のプリントなんて、今じゃまったく見かけませんね。今じゃパソコンで編集してプリントアウト。
ちょっと、味気ないような気がします。

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