所長ブログ
2016/03/10

松本西南RC会長挨拶 「最高裁判決」

昨日の最高気温が22,5度、今日の最高気温が5度と予想され、体調を崩しやすい日が続いていますので、風邪など引かないように気を付けたいものです。
3月6日にRLI卒業コースの研修が行われ、計4日間、17時間に及ぶ研修を終了しました。当クラブからは堀川副会長と中沢副幹事が参加され、無事卒業されました。お疲れ様でした。

さて、3月1日には、福祉関係者にとりまして、注目していた最高裁判所の判決が言い渡されました。平成19年当時、愛知県に住む91歳の認知症の男性患者が、徘徊中に電車にはねられ死亡した事件で、JR東海が、妻と長男に対して、総額720万円の損害賠償の請求をしていました。

当時、男性と同居していたのは、85歳になる要介護1の妻だけで、長男夫婦は横浜市に住んでいました。家族は、徘徊が激しくなったため、自宅のドアにセンサーを付けて、外出したら分かるようにしていたり、迷子にならないように服に名札を付けたりしていたのですが、ちょっとした隙に家を出て、電車にはねられたものでした。

一審は妻と長男に720万円の損害賠償を認めましたが、二審は長男は別居していたため妻にのみ360万円の損害賠償を認めていました。
最高裁の判決は、二審の判決を破棄し、今回のケースでは妻にも長男にも責任はないとして、家族は損害を支払わなくてもよいとしたのです。

民法では、未成年者や責任能力のない人が、第三者に損害を与えた場合は「監督義務者」が賠償責任を負うとしていますが、裁判では、認知症の人の家族がこの監督義務者に当たるかどうかが争いとなっていました。
最高裁は、家族がこの監督義務者に当たるかどうかは、①本人との関係、②同居の有無や日常的な接触、③財産管理へのかかわり方、などを総合的に考慮し、「責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか」を基準として判断するという見解を示したのです。この基準からすると、同居の家族が健康で、財産管理に深くかかわっているにも拘らず、介護義務を十分に行わなかった場合は、賠償責任を問われる場合もでてくる、ということになります。
現在認知症高齢者は460万人いると言われ、団塊の世代が75歳以上になる2025年には700万人に達すると推計されています。

高齢者の増加に伴い、家族だけではなく地域で見守っていこうという体制つくりが進んでおり、兵庫県伊丹市では、市内1千か所に無線受信機付の防犯カメラを設置し、小型発信器を身に付けた高齢者が近くを通ると、その場所や時間などをスマートフォンの専用アプリで家族に伝わる仕組みを作ったそうですし、セブンイレブンは、長野県などと協定を結んで、深夜に一人で歩いているなど認知症の疑いがある人に従業員が気づいた場合は、自治体の窓口に通報するとしています。
家族の負担を減らすため、行政を含めた地域での取り組みがより重要になってくるものと思われます。
今日は3月1日に出された最高裁の判決を紹介して会長挨拶とします。

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