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先日のドラマ”特上カバチ”の第2話は、第1話の続きでした。
第2話は、それほど多くの法律用語が出てきませんでしたが、第2話の肝は、「期限の利益の喪失」だったと思いますので、今回は、「期限の利益の喪失」についてご説明いたします。

ドラマの中では、住吉行政書士が、八百屋さんに対する友人の債権を回収する手段として、「支払督促」をしますよ!って言ってましたね。
そして、支払督促をすると、八百屋さんは期限の利益を喪失するから、八百屋さんに対する債権者である銀行が債権の全額回収に来ますよ!
そして、この八百屋さんは潰れます!って、言ってました。

「期限の利益の喪失」?
そもそも”期限の利益”って何?

期限の利益があるのは、債務者です。
期限というのは、抱えている債務の支払期限のこと。
つまり、例えば、借金をした場合にその返済期限というのは、債務者の利益の為に存在しているものと考えられているのです。
まあ、当然ですよね。
債権者にとっては、支払期限を設けるということは、その期限までは、原則として返済してもらえないわけですから。

じゃあ、何故支払督促がなされると八百屋さんは期限の利益を失ってしまうと住吉行政書士は言っていたのでしょう?

これは、金銭消費貸借契約(銀行と八百屋さんとの間で交わされた契約書)にある特約が記載されているからです。

我々が金銭消費貸借契約書等を作成する場合、債権者側からの依頼であれば(ここが、微妙。債務者からの依頼であれば、この特約は避けたいところです)、必ずこの特約は盛り込みます。

その特約というのは、
「第〇条【期限の利益の喪失】
 甲(債権者)は、乙(債務者)に以下の各号の一に該当する事由が生じた
 ときは、乙に通知することなく、甲は本契約を解除することができ、
 乙は、本契約上の債務全額について当然に期限の利益を失い、元利金を
 一括して支払わなければならない。
 一 2ヶ月以上支払義務を怠ったとき
 二 差押え、仮差押え、仮処分、租税公課の滞納処分、その他公権力の
   処分を受け、または整理、会社更生手続及び民事再生手続の開始
   もしくは破産申立をしたとき、または第三者からこれらの申立てが
   なされたとき
 三 その他前各号に準ずる信用の悪化と認められる事実の発生及び
   本契約の違反があったとき             」

まあ、作成者によって細かいところが異なることはありますが、おおよそこのような内容を盛り込みます。

ドラマ中では、支払督促を申し立てたことを八百屋さんが融資を受けている銀行に話すぞ!と、住吉行政書士は言っていました。

果たして、支払督促を申し立てられただけで、信用が悪化したと捉えられるかどうかは非常に疑問ですが・・・。
(何故なら、支払督促は、申立人が本当にその債権を有しているかどうかについて裁判所は何ら調査しませんから)

いずれにしても、例えば、銀行から融資を受け、それを分割払いで支払う契約を交わしていたとしても、上記のような特約が盛り込まれていて、それに該当するようなことが債務者に起きれば、債務者は”期限の利益を喪失”して、銀行から一括返済を迫られることがあるということです。