1.妊娠中は甲状腺機能(甲状腺のホルモンの状態)を正常に保つことが重要です。

バセドウ病が妊娠に与える影響

治療していないバセドウ病で甲状腺ホルモンが多い状態(甲状腺機能亢進症)が持続すると、生理が少なくなったり、停止してしまうことがあります。さらに、甲状腺ホルモン過剰の状態で妊娠しても流産、早産、妊娠中毒症の危険性が増すといわれています。安全な妊娠・出産のためには治療によって甲状腺ホルモンの濃度を正常にしておくことが大切です。一方、母体の甲状腺機能亢進症によって胎児奇形の頻度が増すとの証拠はないようです。

2.バセドウ病の治療薬によって奇形児の頻度が増すとの証拠はありません

妊娠中、授乳中のバセドウ病治療薬

治療は抗甲状腺薬の服用が中心です。抗甲状腺剤(バセドウ病治療薬)にはチアマゾール(メルカゾール)、プロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)の2種類がありますが、妊娠中、授乳中はプロピルチオウラシルの方が望ましいと考えられています。チアマゾール内服中の母体から頭皮欠損の新生児が生まれた報告がありますが、一般的には抗甲状腺剤によって奇形の頻度が増すとの証拠はありません。

治療しないでホルモンが多いままにしておくほうが害が大きいと考えられています。妊娠したことが判った途端に薬を止めてしまうことは誤りです。薬が必要な場合は妊娠中も続けなければいけません。母乳への薬の移行はプロピルチオウラシルの方が少なく常用量では児の甲状腺機能には影響しません。チアマゾールは母乳中に移行しますが少量の内服から8~12時間たてば授乳してよいとの意見もあります。薬に対するアレルギーがなければ、適切な薬物治療でバセドウ病をコントロールしながら、元気な赤ちゃんを育てることは可能です。

3.バセドウ病は妊娠中には軽くなり安定することが多い疾患です。定期的なホルモン測定によって薬の量を調節します。

妊娠がバセドウ病に与える影響

妊娠週数が進むとバセドウ病は次第に安定します。妊娠後半には薬の必要量が減り中止できることもよくあります。薬物治療中は胎児血中の甲状腺ホルモン(遊離T4)値は母体血中のそれより低めになりますから、母体血中の遊離T4が正常上限から軽度高値になるようにコントロールします。妊娠後半に母体血中のTSHレセプター抗体を測定して新生児甲状腺機能亢進症の可能性の有無を調べておきます。

また、出産直後は一時悪化する傾向があります。これは、妊娠中に病気が軽くなった反動とも言える現象です。妊娠中に減った薬の量を調節することが必要です。妊娠によってバセドウ病が治ったと勘違いして薬の服用をやめてしまったり、受診しないようなことはやめましょう。出産後退院して1ヶ月頃にはホルモンの検査に受診されることをお奨めします。

*ご質問や、不安な点がありましたら気兼ねなくご相談ください。

2012/07/18
日焼け

いよいよ暑くなってきました。

太陽の出ている日は、日焼け止め対策もばっちり!という方、曇りの日はだいじょうぶですか?

曇りの日でも紫外線は届いています。特に海や山では思った以上に日焼けしてしまったなんていうこともあります。

こまめに日焼け止めを塗ったり、帽子をかぶって、用心しましょう。

『自分の乳房は自分で守る』

5200人という数字、これは15年前の1990年のわが国における乳がん死亡者数で、10万人当たり8.5人の死亡率です。これが2004年には10500人、死亡率16.3人になり、この15年間で死亡数、死亡率ともに倍増しています。

増加の要因として遺伝やホルモン、閉経後の肥満が挙げられます。また、わが国では40歳代が好発年齢であり年齢階層別死亡率からも、30歳から59歳までの比較的若い世代で乳癌が全癌種の第1位となっています。働き盛りでかつ子供の教育時期の女性を蝕み、家庭を暗いものにし、やがて命を奪っていく若年者乳癌に接する毎に、私は心が痛み何とか出来ないものかと何時も考えてきました。

最近の40歳代の患者数の増加は、日本人女性のライフスタイルの変化、すなわち未婚、未産や高齢出産などと関連すると指摘されており、今後も増加が予想されています。このように乳がんは日本社会を脅かす勢いで増えています。女性がかかるがんのトップとなっている現状からも、「私は乳がんにならない」では済まされません。欧米などに比べ日本女性の乳がんに対する危機感は低いだけに、今後は成人式など若い女性が集まる場所で乳がんの話をすることが必要ではないかと思います。

厚生労働省の「がん検診に関する検討会」は、40歳以上の女性にマンモグラフィー(乳房X線撮影)による検診を導入するように報告書で提言しています。しかし、医療体制が追い付いていない現状では、自分の乳房は自分で守っていかなければなりません。

30歳を過ぎたら是非毎年1回は乳房健診を受けましょう。そして40歳になったら2年に一度はマンモグラフィーの検査を受けてください。もし、あなたが乳房に何か異常を感じたら、検診を受けるのではなく外科の乳腺外来を受診しましょう。検診はしこりなどの自覚症状のない人が受けるものです。

検診で異常のなかった人も、月1回は自己検診を行い自分でも「異常なし」と言われた時の乳房と変わっていないかどうかチェックを続けてみて下さい。

便の中に血液が混じって排出される、いわゆる血便というのは目に見えない体の内部からの出血なので体にとって大変なことです。これは患者や家族に危機感をおぼえさせる症状で、事実、生命を左右する場合もあります。一方、単なる痔からの出血と思い込み、詳しい検査を受けずにいて重大な病気の発見を遅らせてしまうという残念なこともあります。

口から肛門にいたる消化管のどの部分の疾患でも、出血すると血便となって現れます。胃、十二指腸等上部消化管から出血した場合には、コールタールのような黒い色の便となります。大腸、肛門等下部消化管からの出血では、鮮やかな赤い色をしています。

血便を見たとき注意することは、血便が黒いか赤いか、量は多いか少ないか、赤い色の場合血液と一緒に粘液が混ざっているか、また便の表面に血液が付着しているだけか、それとも便と血液がごちゃ混ぜになっているか、更に血液だけが飛び散るように出るのか等よく観察して医師に報告することが大切です。

黒い便の出る上部消化管出血で一番多いのは、胃・十二指腸潰瘍です。消化管出血のおよそ50~60%はこの潰瘍からの出血です。特に十二指腸潰瘍の場合には、他の症状に先駆けて黒い便で始まることも少なくありません。

便をみて形のある場合でも、肉眼的に黒いと分かるときは、100~200mlの出血があったことを示しています。3日以上このような便が続いている時は、1000ml以上の出血があったと言えます。1000mlといえば循環血液量の20%に当たり、一見元気そうに見えてもすぐショックになる状態です。手のひらを強く伸展させてみると、手のひらの線の赤みが消えています。更に出血が多く皮膚が冷たくなって冷や汗をかき、明らかにショック状態になった時は、2000mlの血液が失われています。一刻も早く医師の治療を受けねばなりません。

医師はこの様な患者が運ばれてくると、まず出血量はどの位かを判断し出血性ショックの迅速な治療を行います。次に出血部位を探すために内視鏡検査を行います。胃潰瘍から出血している状態をファイバースコープで見ると新しく出てきた血液は赤いのですが、少し離れたところは胃液の塩酸のため黒くかわっています。これが黒い便となって現われるのです。

赤い色の血便の出る病気について言うと、粘血便とか血性下痢とかがありますが、腹痛を伴なって血便の出るものに潰瘍性大腸炎と出血性大腸炎があります。

潰瘍性大腸炎は、大腸特に直腸の粘膜に一面炎症がおき、粘膜が剥げ落ち無数のただれや潰瘍が出来る病気です。原因は不明ですが、自己免疫が関係していると言われています。長い年月一進一退の状態が続くことが少なくありません。若い人に多いので根気よく治療することが大事です。このときの血便は血液と粘液、ときには膿汁の混ざった下痢便となります。診断には大腸内視鏡検査やX線検査が必要です。治療は気長に服薬を続け、また定期的な診察を受け病状の移り変わりを見ることが大切です。

出血性大腸炎は、感染症で抗生物質を服用した後などに、激しい腹痛と、20~30回という頻回の血性下痢便が現れる病気です。最近多くみられるようになり注目されています。原因となっている抗生物質を中止して、輸液を行えば短期間のうちに治癒します。この点が潰瘍性大腸炎と異なります。

大腸の病気では、痛みよりもまず血便が主な症状のものとしては、大腸癌があります。これは最近大変増加してきました。現在、消化器癌の中での死亡率は胃癌に次いで2位です。大腸癌増加の原因としては、日本人の食生活の欧米化、つまり動物性脂肪の摂取量の増加と食物繊維の減少による腸内細菌叢の変化によって、癌発生が促進されると推定されています。

大腸癌は、発生部位によって臨床症状に差が見られます。右側の結腸では、腸管が広く腸内容が液状で、潰瘍型の癌が多いので症状が現れにくくしこりを触れたり血便を見て初めて医師を訪れることがあります。左側の結腸では、腸内容が固形化してくるので、便通異常を訴えてきます。直腸癌では、出血が一番の症状です。この場合の出血は、新鮮血で粘液と共に便の表面に付着するか、または便に混じって見られます。

早期の大腸癌では、肉眼的に血便が認められない時期に潜血反応で出血を確認して早期診断します。一般的に言って、出血は大腸癌に初めて現れる症状です。だから私達は、毎日どんな便が出たかを見る習慣をつけることが大切です。大腸癌の中でも一番多いのは、S字状結腸、直腸の癌です。直腸癌の80~90%は指で触れることの出来る部位に発生します。診断には内視鏡やX線検査は是非必要ですが、血便に気がついたらまず医師に指を肛門に入れて診てもらうことが極めて大切です。

赤い血便の70~80%を占めているのは痔です。今も昔もポピュラーな疾患であり、痔で悩んでいる人は大変多いものです。中年を過ぎれば、殆どの人は程度の差こそあれ痔を持っているものとみて差し支えありません。排便という日常欠かせない動作を行う肛門が不快であることは、生活に非常な障害となります。

痔の種類には、外痔核、内痔核、痔裂、肛門周囲膿瘍から移行する痔瘻があります。血便を来たすものは内痔核と痔裂です。内痔核には痛みはありませんが、痔裂には痛みが有りますので容易に区別出来ます。痔出血の際は大腸癌がないという除外診断が必要です。

内痔核というのは、直腸下部及び肛門管壁の静脈瘤がその本体です。程度により4段階に分けられます。

 第1度 排便時に出血するだけ
 第2度 排便時にイボが出るが、終われば自然に肛門内に戻るもの
 第3度 指で押し込まなければイボが戻らないもの
 第4度 イボが出たままのもの

3度、4度となると手術が必要となります。痔が悪化しないための肛門衛生として次の事柄が大事です。

 1) 肛門を清潔にする
 2) 便秘、下痢を避ける
 3) トイレは、りきまず5分以内に
 4) 腰を冷やさない
 5) 長時間同じ姿勢はよくない
 6) 酒類、強い香辛料などの刺激物を避ける

今まで痔疾患は直接生命に関係ないという安易感から軽く見られがちでしたが、日常生活に影響を及ぼしますし、また大腸癌との鑑別という点で大事な疾患です。

『あなたの胃、快調ですか?』

胃はゴムのように伸び縮みしますが、この伸縮性が損なわれたりすると、いつまでも食べ物が胃の中に残って、膨らんでいる感じになります。
この状態が長時間不快に続くのが「胃もたれ」の症状です。

胃もたれの原因
胃に炎症や潰瘍、悪性腫瘍(癌など)があって伸縮性が損なわれている場合や食べ過ぎのため、消化して腸へ送り出すのに時間がかかる時に「胃もたれ」を起こします。
食べ過ぎた時、脂っこい食物を多くとった時、あるいは早食い、その他ストレスがかった時にも「胃もたれ」を起こします。
また、ガムや炭酸飲料なども胃に空気をため込むため「胃もたれ」の原因となります。
さらに、胃の働きが悪い時にはこのような原因が見つからなくても症状がひどくなります。
これは機能性胃腸症と呼ばれ、これまで「胃炎」と呼ばれていました。
しかし、胃もたれの人に必ずしも炎症があるわけではありません。
炎症がないにもかかわらず、胃の働きの悪いものを「機能性胃腸症」と呼ぶようになってきました。

治療、対策 
生活習慣を見直しましょう。
内視鏡検査で何らかの病気が見つかれば速やかに適切な治療を行います。
たとえば、急性胃炎、胃潰瘍には胃酸の出方を抑える薬剤の投与や、胃潰瘍にはピロリ菌の除去、悪性腫瘍には手術による治療が行われます。
しかし、内視鏡検査でも異常が見つからないときは、薬だけの治療でなく生活習慣を見直して改善することから始めます。

食事のとり方
ゆっくりよく噛んで、食べ過ぎないように。
仕事をしながら食べたりせず、規則的な食事の習慣をつくる。
食事の内容:脂肪分の多いものは控えめに、極端に味の濃いもの、強い香辛料は避ける。

ストレス対策
十分な睡眠と規則正しい生活を。
スポーツなどの趣味を楽しみ、ストレス解消に心がける。

プロフィール
長野県塩尻市にある清水外科胃腸科医院のスタッフブログです。

カレンダー
2024 5月
    1  2  3  4 
 5  6  7  8  9  10  11 
 12  13  14  15  16  17  18 
 19  20  21  22  23  24  25 
 26  27  28  29  30  31  
4月  |  Today  |  6月
検索
 
コメント