2009/08/07 14:58

 安曇野市 穂高ハートクリニック 内科・外科・小児科
 近隣の保育園児、小学生児童で、高熱を出す患者さんが増えています。
 
 中には、アデノウイルス迅速診断キットで陽性になる患者さんがいます。

 アデノウイルスでは、その種類により、プール熱(咽頭結膜熱)や、流行性角結膜炎など、多彩な病気が出現することがあります。

Ⅰ. 咽頭炎・滲出性扁桃炎 ( 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 ・ 5 ・ 7 型)
  急に発熱し、のどの痛みや頭痛を訴えます。 39 ℃以上の高熱が数日、時に 1 週間続きます。咳はひどくありません。咽頭・扁桃は発赤し、咽頭後壁にはリンパ濾胞の腫大、扁桃表面には白色の滲出物がしばしば認められます。

Ⅱ.咽頭結膜熱 (主に 3 型、他に 4 ・ 7 ・ 11 型)
  例年 6 月頃から増加し、 7 ~ 8 月に流行のピークがあります。発熱・のどの痛み、結膜炎が主症状です。 熱は、1日の間に 39 ℃~ 40 ℃の高熱と、 37 ~ 38 ℃前後の微熱の間を、上がったり下がったり が 3 ~ 5 日ほど続きます 。 その間、頭痛、腹痛や下痢を伴うこともあります。しばしば、耳介前部および頸部のリンパ節が腫れます。夏季に幼稚園や学校のプールの水を介して感染することも多いことから、俗に“ プール熱 ”とも呼ばれています。

Ⅲ .急性濾胞性結膜炎 ( 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 ・ 6 ・ 7 型)
  眼の痛み、羞明、涙目、目やにを訴え、他覚的には濾胞性結膜炎があり、片眼あるいは両眼にみられます。

Ⅳ.流行性角結膜炎 ( 8 ・ 19 ・ 37 型) 極めて感染力が強い
  結膜だけでなく角膜(黒目)の著明な炎症 、 頭痛、リンパ節炎、鼻水、咽頭炎、下痢、 眼の痛み、異物感、羞明、涙目、目やにを訴え、他覚的には濾胞性結膜炎があり、片眼あるいは両眼にみられます。結膜炎経過後に「点状表層角膜炎」を作ることが多いです。幼小児では「偽膜性結膜炎」になることがあります。

Ⅴ.急性胃腸炎 ( 31 ・ 40 ・ 41 型)
  乳幼児期に多く、腹痛、嘔吐、下痢を伴います。発熱の程度は軽いです。腸管のリンパ濾胞が腫脹し、先進部となって腸重積を発症することがあります。

Ⅵ.出血性膀胱炎 ( 11 型)
  突然の肉眼的血尿ではじまり、排尿時不快感や頻尿の症状が出現します。これらの膀胱炎症状は 2 ~ 3 日で良くなり、尿検査での潜血も 2 週間以内に改善します。

Ⅶ.肺炎 ( 3 ・ 7 ・ 21 型)
  だらだらと長引く発熱、咳、呼吸障害など重症になることがあり、時に致命的なこともあります。重症化を防ぐ目的でステロイドの内服やパルス療法、γグロブリン療法が試みられています。

診  断
  臨床症状及び流行状況より比較的容易に診断できます。病因ウイルスの検索には、咽頭ぬぐい液、結膜擦過検体を用いた迅速診断キットで確実に診断できます。

治  療
  特異的治療法はありません。 体内にウイルスに対する抗体が出来るまで待つしかありません。 治療は対症療法を行います。高熱で痛みのある時などは、解熱鎮痛剤の内服や坐薬を使います。眼の痛みや赤みが強い時、眼脂が多い時には、細菌などの 2 次感染を予防する抗生剤や、炎症を抑える目的で抗炎症剤(ステロイド剤)の目薬を使います。脱水や食欲低下に対しては、点滴を行います 。

家庭で注意すること
①感染力が強いので、家族の間で、タオルや食器の共用は避けましょう。唾液や、鼻水、涙などの分泌物でうつるので、同じ鍋や大皿をつついたりするのは止めましょう。また、患者の残り物を食べたり、同じコップを使うのもいけません。
②アデノウイルスは 55 ℃、 30 分の加熱で失活します。また、金属以外は、次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター)への 2 時間浸け置き、残留塩素濃度の水質
  基準 0.4ppm 以上で消毒できます。
③高熱が出たり、ひいたりが 5 日間くらい続きます。熱がひいている時は比較的元気です。この時に、欲しがる物を食べさせたり、シャワーを浴びたり行水をしましょう。お風呂でもうつすので、一番最後に入り、タオル・バスタオルの共用は避けましょう。