2012/02/12 12:33

インフル猛威 引き続き注意を
NHK NEWS WEB 2012/2/10


インフルエンザの流行は関東地方などを中心にさらに拡大し、今月5日までの1週間に全国の医療機関を受診した患者は推計で211万人と、3年前の当時の新型インフルエンザのピーク時を上回りました。
猛威を奮うインフルエンザ。
この冬の特徴と今後の見通しについて、科学文化部で医療取材を担当している稲垣雄也記者が解説します。

警報レベルは全国に拡大

インフルエンザの流行はさらに拡大を続け、10日に国立感染症研究所が発表した最新のデータでは、この冬初めて、すべての都道府県に「警報レベル」に達する地域が現れました。
今月5日までの1週間に受診した患者の数は、1つの医療機関当たり42.62人と前の週を大きく上回り、岩手県と東京都、それに大阪府では過去10年で最悪となりました。
全国の患者数は211万人と平成18年に推計値の公表が始まって以降、最も多かった3年前の新型インフルエンザのピーク時の189万人を上回りました。

過去10年で最悪の東京は

特に増加が目立つのが関東地方や九州地方です。
このうち東京都は、過去10年で最も多い1つの医療機関当たり45.2人。
なかでも八王子市は78人とまさにインフルエンザ流行の真っただ中です。
市内の小児科の診療所には、10日も小学生や幼稚園児などが保護者に連れられて訪れ、インフルエンザに感染していないかどうか調べていました。
この診療所のインフルエンザの患者は、年明けまでは1週間当たり数人程度でしたが、3週間前は50人、先々週は140人、先週は250人となり、今週もほぼ同じくらいだということです。

3歳の女の子の母親は、「予防接種をうっていたし、熱もそう高くないので安心していましたが、A香港型のインフルエンザと診断されました。2つ上のお姉ちゃんにうつらないよう気をつけます」と話していました。
診療所の橋本政樹院長は、「これまでにないくらい急激にインフルエンザの患者が増えている。例年ならA香港型のウイルスの流行が終わってからB型になるが、今年は同時に流行しているようだ。うがいや手洗いを徹底するとともに、睡眠も十分とってほしい」と話していました。

子どものけいれんに注意

流行が拡大する東京では、救急で受診する子どものうち、けいれんの症状を示す割合が例年になく高い、という報告も出ています。
重症の子どもを受け入れている東京・東村山市の多摩北部医療センターでは、ことしに入ってインフルエンザで入院した13人の子どものうち、ほぼ半分の6人が重いけいれんを起こしていました。

子どものけいれんはインフルエンザが重症化しているサインの1つで、この冬流行しているA香港型はほかの型に比べ、幼い子どもが重症化しやすく注意が必要です。
けいれんには一過性の「単純型けいれん」と「複雑型けいれん」の2種類があります。
「単純型けいれん」は▽ほとんど2〜3分で治まり、▽治まった後、意識は比較的はっきりしています。
これに対し、▽15分を超えて続く、▽繰り返し起きる、▽左半身と右半身で別々に起きる、また▽症状が治まったあとも意識がはっきりしないという状態が1つでも当てはまれば、「複雑型けいれん」が疑われます。
「複雑型けいれん」は、死亡したり、後遺症が出たりするおそれのある脳症の症状として現れることがあります。

このため、小児科の小保内俊雅医師は、9日、39度の発熱を訴えて受診した3歳の女の子がインフルエンザと分かると母親に自宅での様子を尋ね、けいれんを起こさなかったか確認していました。
そして「けいれんを起こす子どもが増えています。けいれんが起きた場合は脳症のおそれがあるのですぐに医療機関を受診してほしい」と注意を呼びかけていました。
小保内医師は、「子どもにけいれんが起きた場合は、窒息しないよう衣服を緩めたうえで、けいれんの時間や回数を確認してほしい。インフルエンザかどうか分からない場合でも、熱があってけいれんを起こしたら脳症のおそれがあるので、すぐに医療機関を受診してほしい」と話していました。

流行の行方は

インフルエンザの患者は、流行の始まりが早かった愛知県や岐阜県など11の県で減少に転じました。
このあとも流行は拡大するのでしょうか。
国立感染症研究所の安井良則主任研究官は、「流行が遅かった関東地方や九州地方ではいまだ患者数が増える可能性があるが、A型のインフルエンザは流行がいったん下火になると早く終息する。しかし例年は、その後、B型のインフルエンザの流行が3月くらいまで続くので、しばらくは注意が必要だ」と話しています。
インフルエンザ予防の基本は、うがい・手洗い・マスクの着用。
感染を広げないためにも、忘れないようにしましょう。


(2月10日 22:55更新)