2018/07/21 9:15

◆ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナ(Herpangina)は、発熱、口腔粘膜に現れる水疱性の発疹を特徴とした急性ウイルス性感染症であり、幼児を中心に夏季に流行する疾患である(図1、図2)。病原ウイルスは主にA群コクサッキーウイルス(CA2、CA4、CA5、CA6、CA8、CA10など)であるが、まれにB群コクサッキーウイルス、エコーウイルスもみられる。過去5年間のヘルパンギーナ症例におけるウイルスの分離状況をみると、CA4、CA10、CA2、CA6が比較的多いが、CA4以外は年によって分離数が大きく異なっている(図3)。


図1. ヘルパンギーナの年別・週別発生状況(1995-2005年) 図2. ヘルパンギーナ報告症例の年別・年齢別割合(2000~2004年) 図3. ヘルパンギーナ症例からの年別ウイルス分離状況

感染から2~4日の潜伏期間の後に、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現し、咽頭発赤とともに、主として軟口蓋から口蓋弓にかけて直径1~2mm、大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。やがて小水疱は破れて浅い潰瘍となる。発熱は2~4日間程度で解熱し、やや遅れて粘膜疹も消失する。殆どは予後良好の疾患であるが、エンテロウイルス感染症の特徴として、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎を合併することがある。したがって、発熱以外に頭痛、嘔吐などの症状や、心不全徴候の出現には十分に注意すべきである。

感染経路は咳、くしゃみなどによる飛沫感染、糞口感染、さらには、ウイルスの付着した患者や物品に接触することによる接触感染である。患者からのウイルスの排泄は急性期に最も多いが、エンテロウイルス感染の特徴として、回復後にも2~4週間の長期にわたって便からウイルスが検出されるので、急性期のみの登園、登校停止によっては、厳密な意味での流行阻止効果は期待できない。しかしながら、本症の大部分は予後良好な軽症疾患であり、登園・登校については手足口病と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断を行う方が現実的である。保育施設や幼稚園などの乳幼児の集団生活施設における感染予防としては、児やスタッフの手洗いの励行、排泄物の適正な処理が基本となる。

https://idsc.niid.go.jp/idwr/douko/2005d/23douko.html…