<野草が店内に・・・> | Home | <文鎮(ぶんちん)>Ⅳ
2008/05/22 9:10 | 印刷

 『写る』

            イカリソウ

 そば屋の跡を継ぐといっても、すぐにそばが
打てるようになるわけではなく、出前配達や掃除、
接客や会計、経理などをやっていた。

この仕事を始めるまで、恥ずかしながら、
りんごの皮もむくことができなかったのです。
仕事の空いた時間に毎日、野菜などの切れ端
を包丁で切って練習しました。
いつかそばを切る日が来ることを
思い描きながら・・・

2年程経った頃、親父さんが「手打ちうどん」
を作ってみないか!と言った。
(そばを打つのに役に立つから)
ということで4年程打ちました。
ねって、ねかせて、足でふんで、
生地を麺棒に巻きつけながら
麺台に叩きつけるようにして延ばしていきます。
結構、力のいる作業でした、
夏と冬では塩水濃度が違い、
冬は、うどん生地を足で踏むときなどは
足の底から冷たさが伝わってきました。

 私が初めてそばを打ったのは24才の時でした。
そばを打つということは私にとって
覚悟のいることでした。
いままで長い間、そば職人のしげちゃんがそばを
打ってきたので、私がそば打ち場に入るということは、
しげちゃんの仕事を奪うということになるからです。
その覚悟ができるまで6年かかりました。
実際、私がそばを打ちだしてしばらくすると、
私がしげちゃんにそば打ちをお願いしないかぎり
しげちゃんは打ち場に入ることはありませんでした。


初めて打ったそばを、
今は亡き、美鈴湖の昭平叔父さんが
丁度店に来たので食べて頂くと、
お世辞もあったと思いますが
「初めて打ったとは思えない、
親父の打ったそばにそっくりだ
血は争えないな・・・」といった言葉を思い出します。
(叔父さんは、美鈴湖で民宿をやっていて
手打ちそばも打っていました。)

 そういえば子供の頃、ランニングシャツ姿で
首に手拭をかけ、汗をかきながらそばを打っていた
親父の後姿に、骨格とか筋肉の動きが
目にやきついている。
「門前の小僧、習わぬ経を読む」と言います。
やっぱり、写ったのかな?・・・



                       べん

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手打ちそば あるぷす 四代目店主 齊川 洋です。
このブログでは、『そば』について、私が日々感じることを書いていこうと思います。

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