カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

喪中につき、年賀のご挨拶を失礼させていただきます。
去る10月13日、20年を超える病気療養を経て、母が老衰のため95歳の天寿を全うして永眠致しました。
生前母に賜りましたご厚情に謹んで感謝申し上げますと共に、来る2024年も変わらぬご厚誼のほど宜しくお願い申し上げます。

 お宮参りの前日、奥さまはいつもの表参道の美容院へ。
終ってから家内と待ち合わせて、新宿高島屋の呉服売り場で、娘たちの時の七五三の時に紛失したのか、翌日の孫のお宮参りで使うのに足りないグッズを買いに行く予定です。
そこで、待ち合わせまでの空いた時間に、特に他にすることも無いので、ホンじゃまと、一人で新宿の中古CDショップで掘り出し物を探してみることにしました。
そのCD屋さんは「ディスクユニオン」という中古のCDやLPを販売している店で、幾つも店舗がある中で、ここディスクユニオン新宿店はクラシックの専門店です。確か紀伊国屋のすぐ隣のビルの5階くらいだったと記憶していたので「このビルの筈!」と探したのですが、フロア案内にも見当たらず、念のためその界隈を探してもそれらしきショップ案内を見つけることは出来ませんでした。
当てが外れてしまい、「さて、どうしよう・・・?」ということで、紀伊国屋の文庫と新書売り場を少し見たのですが、特にこれはという本も見当たらなかったので、
 「それじゃあ、久し振りにベルクにでも寄ってみますか・・・」

 新宿駅のルミネエスト地下1階。新宿駅東口改札から、地下鉄の丸ノ内線方面へ下る階段手前にある拘りのビア&カフェ「ベルク」。
BERGという店名の読み方からしてもドイツ風な雰囲気で、モーニングから、ランチ、そして夜の居酒屋風に一人飲みまで。雑多な新宿らしい、カオスの様な混沌とした狭い店内なのですが、店内には「ナンパ禁止」の貼紙がある様に、女性一人でも入り易く(きっと飲み易く)、どんなに混んでいても、テーブル席は無理ですが、カウンターの立ち飲み席は間を詰めて場所を開けてくれたり、また終わると長居をせずにさっとどいてくれたりと、それが常連さんの暗黙のルールになっていて、一人でも居心地の良い店です。きっと一人でも、また誰とも話さずとも、ここに来れば“都会の孤独”を感じることなく、「ヨシ、明日からまた頑張ろう!」と無言のエールを貰える様な、そんな店が「ベルク」・・・です(と、私メは東京への出張時にしか行けませんでしたが、勝手にそう思っていました)。
会社員時代、出張帰りにあずさまの発車時刻までに時間がある時は、良くここで時間潰しをしていました。当時は私もまだ喫煙者で、肩身が段々狭くなる中で、喫煙場所を探さなくてもベルクに来れば普通にタバコが吸えましたし、或る意味、田舎からのお上りさんにとっては居心地の良い“新宿のオアシス”でした。
この日もたくさんのお客さんで店内は込み合っています。
長居をするほどの時間は無かったので、生ビールを一杯だけ注文。これが税抜き350円だったか、本当に安いんです。そして、嬉しいことに「松本ビール」という松本ブルワリーの地ビールも今回ラインアップされていました。
久しぶりのベルクの雰囲気を楽しみながら、ビールというより店内の雰囲気を味わいます。それにしても、相変わらずの盛況で何よりでした。これなら、もし何年後かに来ても、きっとまた楽しむことが出来ると思います。
 その後新宿高島屋に向かい、家内の来る前に呉服売り場の場所を確認すべく事前にチェック。
家内が合流し、本来は七五三の和装小物のセットの中で、見当たらない着物の胸元に入れる小さな箱型の小物入れの「筥迫(はこせこ)」を探していたのですが個別には売られておらず、呉服売り場の年配の担当者の方にお聞きしたところ、昨今のお宮参りと七五三の様子を教えていただき、「筥迫」は七五三の和装の着物用に使う小物だそうで、お宮参りなら「むしろこちらの方が必要でしょう」と、勧めていただいた帽子と涎掛けのセットを購入しました。
それにしても、事前に見た地元のローカルデパートとは大違い・・・でした。但し、一番の違いは都会と田舎という規模からしての品揃えといったハードの差ではなく、むしろソフトの差・・・でした。
というのは、都会の老舗デパートの呉服売り場では、とっくに本来の定年を過ぎた様なベテランのスタッフの方を何人か揃えていて、お客さんにアドバイスをする、或いは客の質問にも昔と今の違いを踏まえてちゃんと答えられる・・・。まさに亀の甲より年の劫で、その豊富な知識の量が田舎のデパートとは全然違うのです。
昔は、地方のデパートにだって絶対にそうした地元の特色ある“しきたり”や独特の慣習を良く知ったベテランスタッフがいた筈なのです。そしてそれこそが老舗への信頼だった筈。
いくら市場としてのニーズとデマンドの差とはいえ、人件費削減か、高いベテランスタッフを切って安い若手に切り替える・・・。そうした有能の人材を簡単に切ってきたからこそ、いくら売り場を今でも確保していても真の客のニーズを捉え切れず、本来なら、そして昔なら、いとも簡単につかんでいただろう地元のニーズを逃がしてしまって、オンラインや首都圏のデパートに取られてしまっている・・・そんな身から出たサビの“いたちごっこ”の繰り返しなのではないでしょうか・・・。
もしそれがコストに見合っているなら、別に何の後悔もする必要はないのですが、地元で購入するつもりで、「筥迫(はこせこ)」を探して聞いても「えっ?」と絶句したきり何も答えられなかった田舎の“老舗”デパートの若い店員さんと、「あっ、それは・・・」とすぐに答えてくれ、しかも最近のお宮参りと七五三の状況をふまえてアドバイスをしてくれた“お婆ちゃん”スタッフとの差に、そんな感想を持った次第です。
 昔、本ブログに “町の電気屋さん”の生き残り策としての、大手家電量販への対抗策は、サザエさんに登場する“三河屋”の三平さんの御用聞き、それは例えば老夫婦世帯の切れた蛍光灯の交換作業とか、そういった町の小さなニーズを如何に取り込むかだと書いた記憶があるのですが、衰退する田舎の老舗デパートも、もしかするとそうした地元の町の小さなニーズを取りこぼして、全てを時代の“せい”にしてきたツケで、それは“身から出たサビ”、或る意味時代変化についていけなかった“自業自得”なのかもしれない・・・と新宿の老舗デパートで家内の買い物に付き合いながら感じた次第。

 お宮参り出席に際して長女のマンションに滞在中、モーニングを兼ねて我々もお気に入りの六本木『VERVE』へ長女が連れて行ってくれました。

 彼女がMBA時代に暮らしたシリコンバレーのパルアルトで、良く通っていたというカフェ。日本に進出し、何店舗か展開している中での六本木店。六本木という場所柄か、半分は日本在住の外国人の皆さん。従って我々は全くの場違いなのですが、確かに自家焙煎のコーヒーは試飲出来るその日のスペシャリティーや夏の水出しコーヒーも含め、結構私好みの酸味の利いた種類があって、意外と好み。しかも、他店の二倍はありそうなコーヒーカップ故、例え一杯800円でもリーズナブルに感じられるのです。しかも、若いスタッフの皆さんがキビキビしていて、解放感ある店内と相俟って実に気持ちがイイんです。
そういう意味で云えば、我々の様な田舎モノに些か似つかわしくないのは十二分に分かっていても、最近日本でも流行りの同じ西海岸発の“Blue bottle coffee ”よりも遥かに好み。コスパの良いコーヒーに比べ、ホットサンドは確かに本当に美味しいのですが、我々年金生活者にとってはちょっと高いかなぁ・・・(でもホントに美味しい!写真・・・食べかけの途中です。スイマセン!)。
しかも、テラス席だけではなく、一階の店内フロアもワンコOKなのが有難い。勿論、ちゃんと静かに出来る、そうしたワンコだけですが・・・。もし時にそれを乱そうものなら、暗黙のルールとして、そうしたワンコのオーナーは皆さん黙って自主的に退散されるのでしょうけれど・・・。
場所柄なのか、客層が良いのがこの店の特徴なのかもしれません。

 虎ノ門ヒルズでのランチの帰りに私メの希望で寄ってもらったのが、以前ご紹介した23区内で唯一の“山岳トンネル”という愛宕隧道を抜けて、愛宕神社の反対側の慈恵医大近くにあるこじんまりした穴場的喫茶店「ピースコーヒー」で、住所は西新橋です。

こちらは、以前長女が済んでいた虎ノ門のマンションに奥さまがステイした時に、界隈でのウォーキングがてら見つけたカフェで、以前一度連れて来てもらって、私メも大いに気に入った喫茶店です。
店内はアメリカン調で、何となくぬくもりが感じられる木の床とテーブルで、内装もオシャレなのですが不思議とアットホームな雰囲気が素敵です。
 正式には「ピースコーヒーロースターズ」。その名前の通り、元々は千葉県茂原市でスペシャルティコーヒー専門の小さな焙煎工房としてスタートし、今でも土日はそちらで自家焙煎の方に従事されていて、平日はこちらの西新橋店でその豆の販売とカフェを営んでおられるとか。従って、西新橋店は土日祝日が定休日になっています。こちらもオフィス街なので、それで良いのでしょうね、きっと。因みにオフィス街である神谷町界隈も土日はお休みの飲食店が殆どで、長女曰く土日は“食事難民”になるとのこと。
さて、こちらの「ピースコーヒー」は以前家内と一緒に伺った時に、ドリップの仕方を家内がお聞きしたら、マスター(店長さん?)が本当に丁寧に教えてくださり、色々アドバイスもしていただきました。
その時は、マスターと女性スタッフお一人の二人で切り盛りされていたのですが、今回は女性だけのスタッフ4名で運営されていました。
こちらのコーヒーの特徴はエスプレッソを抽出し、エアロプレスでコーヒーを淹れて提供しくれるところ。そのプレスする作業が面白くて暫し魅入ってしまいました。
コーヒーの価格も本日のコーヒーが税込みで460円。リーズナブルというよりも安過ぎ・・・。家内が頼んだカフェラテも550円。そしてケーキも色々ありましたが、家内の頼んだレモンケーキはナント330円。他にも自家製のサンドやバーガーなどもあって、それもとてもリーズナブル。喫茶だけではなくて、ランチにも良いかもしれません。
店内で休憩したり談笑したりするお客さんは勿論ですが、ひっきりなしに飲み物や食べ物をテイクアウトされるお客さんも多く、この界隈で働く皆さんのきっと憩いの場なのでしょう。

 もしこんなカフェが近くに在ったら、確かに毎日でも来たいと思わせてくれる様な、肩肘張らずに気楽に過ごせるそんな素敵なカフェでした。

 山種美術館に行きたいという私メの要望はいとも簡単に却下され、奥さまの希望で向かった先は、以前長女が済んでいたマンションの対面、虎ノ門ヒルズに完成したという新たな高層タワー「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」です。
虎ノ門ヒルズエリア最後の高層ビルとして、この10月6日に開業したばかりのステーションタワーは、地上49階建て、高さ約266mで、日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅と一体的に開発した「多用途複合の超高層タワー」とのこと。大阪のあべのハルカスを抜いて日本一となった、同じ森ビルの麻布台ヒルズの森JPタワーが竣工したばかりなので然程話題になっていないのかもしれませんが、このステーションタワーも横浜ランドマークに次いで日本で4番目の高さとのこと。
また、直結する東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅は、2020年6月に神谷町駅と霞ヶ関駅間に開業した、日比谷線では開業以来56年ぶりとなる新駅なのだそうです。

 その地下鉄虎ノ門ヒルズ駅の改札階でもある、地下2階に作られた新たな商業ゾーンが「T-マーケット」で、駅に直結しており、駅前広場の「ステーションアトリウム」と一体となった、飲食を中心に30近いショップが集結。3000㎡というスペースに、カフェ、ダイニング、ブリュワリー、角打ちなどの飲食店や、スイーツ、チーズ&ワイン、フラワー、雑貨などのショップが出店しているのだそうで、こちらのT-マーケットが今回の奥さまのお目当ての由。
アトリウムと云うだけあって、大きな鉢の観葉植物がまるで街路樹の様にマーケット内のあちこちに置かれ、各ショップの仕切りや通路をかたどっています。そしてそれらは同時に、敢えて天井の配管などを隠さず剝き出したままの無機質な空間が、生きたグリーンに拠って瑞々しい彩を与えてくれてもいます。
 マーケット内をざっと見て回って、この日はまだ営業していない店舗も在った中で我々が選んだのは、奥さまは和食の「虎ノ門おお島」、そして私メはフィッシュ&チップスとクラフトビールの「dam brewery restaurant」。
このマーケットは、所々にフリースペースがあって、そこはスマホからオーダーすると、好みの店舗の料理がその席に運ばれて来る仕組み。
同じ虎ノ門ヒルズのビジネスタワーの飲食店が連なる「虎ノ門横丁」と同様です。勿論、各店舗にもイートインの席はあるのですが、一つではなく色んな店の料理が食べたかったり、或いはメンバー内で食指が分かれたりした時などは便利です。
そこでフリースペースでオーダーしようとしたら、フィッシュ&チップスは問題無かったのですが、和食の方はデリバリー可能なメニューが店で食べるよりも限定されていて、家内の希望のメニューはその中に入っていません。そこで止む無く、フィッシュ&チップスを諦めて、和食の店に入って頼むことにしました。
これではせっかくの仕組みも機能不全・・・でしょう。 
フリースペースはエリア内に何ヶ所かあり、因みに和食「おお島」の通路を挟んですぐ横に在るフリースペースの席で頼んでも、ミックスフライ定食しか頼めないのです。
そこで、「おお島」の中のイートインの席でオーダー。こちらはイートインでのランチ用に何種類かの定食があり、家内はお刺身定食、私はミックスフライ定食をチョイスしました。
手際良くランチの数をこなすべく、さすがにフライは全て事前に準備された冷凍モノでしょうが、品数も豊富。家内の刺身も新鮮だったとか。奥さまが食べないというブリをいただきましたが確かに美味しかったです(でも、フィッシュ&チップスが些か心残りではありましたが・・・)。
 食後、奥さまが「ここには上階にスタバがあるので見に行きたい」とのこと。エレベーターで7階へ。このビルにはオフィスがたくさん入るので、そのオフィスで働く方々のためのスタバの様で、わざわざ7階までそのためだけに来る人はいないでしょうから他のスタバの街中の店舗に比べると空いていましたが、眺めも良く、大きな窓で開放感もあって、ノートPCを持ち込んでリモートで仕事をするのも気晴らしで良いかもしれませんし、逆にそうした場を意識した店舗でもあるのでしょう。
 それにしても、多様な顔を見せる森ビルの各ヒルズ。都会のネズミと田舎のネズミではありませんが、“お上りさん”的には大したモノだと感心することしきり・・・でした。

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