カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 古いターンテーブルが復活し、最近久し振りに聴いた懐かしいLPレコード。
その中でも、特にチューリップのある意味第1期とも言える、デビューしてから5年間の全シングルレ12枚の曲を全て収めた2枚組のLP「チューリップ・ガーデン」(1977年)を、その後も暫く毎日の様に聴いていました。

 高校1年生の時に素人ながら、FMで聴いて衝撃を受けた彼らの実質的なデビュー曲の1972年のシングル「魔法の黄色い靴」。そして、3枚目にしてチューリップの初めてのヒット曲となった1973年「心の旅」のB面に収録されていた、大好きだった「夢中さ君に」。この2曲は、特に何度も何度も繰り返して・・・。
また、このアルバムを聴いていて、初期のシングル曲の中で異色な感じがするのは「娘が嫁ぐ朝」です。これは76年発売のシングルなのですが、どう考えても財津さんはそんな年齢ではないので、実体験ではない・・・筈。
仮に心象風景だとしても、どうしてこんな詩が書けたのだろうか?。自分も娘二人が既に結婚した経験を持った今だからこそ、それも年老いた今になってから再び聞いたからこそ、余計自身の琴線に響いているのかもしれませんが・・・。でも、結果論であり自分勝手な見方かもしれませんが、チューリップの初期77年までのシングル12枚全24曲の中に収められたこの曲だけが何だか異色であり、その後のソロシンガーや作曲家として楽曲を提供する“メロディーメーカー財津和夫”の萌芽が見て取れると云ったら穿ち過ぎでしょうか。
 チューリップは、“昭和歌謡”にも繋がるような日本的でシンプルなメロディアスな歌と、ビートルズ風なアコースティックなサウンド展開が本当に衝撃的だったバンドでした。
今改めて聴いてみると、メロディーメーカーとしての財津さんの曲も勿論なのですが、リードギターとドラムスが当時衝撃を受ける程新鮮に感じられたチューリップサウンドの核だった様に思います。しかし、エレキギターを掻き鳴らすガチャガチャした感じのGSとも違う、音楽的にも洗練されたオシャレなイントロなどの編曲や親しみやすいメロディーラインなどは、それまでの日本のポップス界には無かった感じがしたように思います。
 彼等が「すべて君たちのせいさ」と心酔し、その結果として“日本のリバプール”と形容する程だった街、福岡が生んだバンド、チューリップ。
しかし、なぜ福岡にはチューリップだけでなく、他にも数多くのバンドが生まれたのか。
京都や大阪が東京に対抗して、中央に対抗する“反権力的”な音楽を生み出したことは或る意味必然でもあり、“関西フォーク”全盛期の後だったとはいえ、まだそんな雰囲気が残っていた京都で多感な学生時代を実際に過ごした人間としては、些かの感傷も交えてふり返えさせて貰えるのならば、それは十二分に理解出来るのですが、片やどうして福岡にそうしたマグマの様なエネルギー溜まりがあったのか・・・。

 それにしても、当時の福岡は本当に凄かったんですね・・・。

 7月2日、松本ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)でのマチネで、服部百音のヴァイオリン・リサイタルを聴きに行ってきました。
服部百音嬢は曾祖父が服部良一、祖父が服部克久、お父上は服部隆之、お母様もヴァイオリニストという音楽一家に生まれ、幼少期から数々の国外コンクールでの受賞歴がある天才ヴァイオリニスト。しかし、お父上は彼女の留学費用を工面するために、今の様に売れっ子作曲家となる前はお給料の前借をして彼女を支えたと云います。決して、服部家という音楽一家の七光りだけで恵まれて育ったお嬢さまではありません。
彼女の演奏は、「題名のない音楽会」などで聴いたこともありましたが、本格的に聴いたのはYouTubeでパーヴォ・ヤルヴィ指揮のN響公演のチャイコンのソリストとして登場したコンサートを聴いたのが初めてでしょうか。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、LPやCDの“音だけ”ならこれまでも名演と云われた色んな演奏を何度も聴いていますが、映像と音で聴いたチャイコンでこれ程までに圧倒された演奏は初めてでした。
彼女の凄まじい迄の気迫と超絶技巧。それがいくら天才少女とはいえ、演奏当時うら若きまだ21歳という、見るからにか弱い女性の細腕から奏でられているというのが、聴いていて(視ていて)信じられない程に圧倒されたのです。
その彼女が松本の音文でリサイタルをすると知り、ハーモニーメイトの先行販売でチケットを購入した次第。
 当日のプログラムは、前半に、C. A. de ベリオ「バレエの情景 Op. 100」、C. フランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調 FWV 8」、休憩を挟んで、後半に、M. de ファリャ「歌劇『はかなき人生』第2幕 より スペイン舞曲 第1番」、I. ストラヴィンスキー「バレエ音楽『妖精の口づけ』より ディヴェルティメント」、そして最後にM. ラヴェル「ツィガーヌ」という構成。
どちらかというと、管弦楽中心で、器楽演奏もピアノは小菅優さんやメジューエワさんが好きなので何度か生で聴いていますが、ヴァイオリンは音文でのヒラリー・ハーンとイザベル・ファウストのリサイタルを聴いたことがあるだけ。しかもその時はバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティ―タ」がメインだったので、どちらもピアノ伴奏無し。今回は、これまでも何度も頼んでいるという三又瑛子女史がピアノ伴奏で、フランクの有名なソナタ(と言っても聞いたことがあるのは第4楽章のみですが)と管弦楽作品でもあるラヴェル「ツィガーヌ」以外は全く馴染みのない曲ばかり。
パンフレットに記載された彼女からのメッセージに由ると、
『今回の演目は、レッスンに来てくれた子供たちの年齢的に、“分かり易くて”楽しめるものとも考えましたが・・・(中略)そんな配慮は愚の骨頂と思い、正直に私の思う素晴らしく美しく魅力ある曲たちを演奏することに決めました。』
とのこと。とはいえ、前日、オーディションで選抜された子供たちとのマスタークラスが行われていて、この日の会場にも才能教育の本拠地らしく小さな子供たちがたくさん来ていましたので、そうしたこともこの日のプログラム選曲の背景に(潜在的には)あったのかもしれません。

 2021年のN響との定期での共演は、海外からのソリスト入国が難しかったコロナ禍だった3年前で、彼女の21歳の時。24歳になった今も、桐朋学園のディプロマ在学中という謂わばまだ大学院に在学している“女子大生”です。超絶技巧はそのままに、折れそうなくらい華奢な姿からは想像出来ない様な時に激しさもあり、また彼女のメイク故か、妖艶さすら漂わせての演奏は、例えばフランクのヴァイオリンソナタの有名なあの甘く美しいメロディーの第4楽章の旋律など、特別に貸与されているという名器グァルネリもあってか、とりわけ高音の透明感が実に印象的でした。
アンコールは、管弦楽作品としても有名なプロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」から行進曲。
カーテンコールも簡単に、この時ばかりは若い女性らしく最後舞台袖から顔だけ出して、お茶目にバイバイをしながら手を振られてこの日のコンサートを終えられました。

 シンガポールからの帰任後、一新したオーディオセットの中のレコードプレーヤー。東京への出張帰りに電車を予定より少し送らせては秋葉原に何度か寄って、自分なりに選んだオーディオ専門店で担当者のアドバイスをもらいながら一式全部揃えたのですが、限られた予算の中で担当の方が勧めてくださったレコードプレーヤーがDENONのDP-37Fでした。
 今回の狭いマンションへの引っ越しを機に、その時に購入したアンプもCDもMD(一体何だったんだろう?あっという間に消えてしまいました)もFMチューナーもカセットデッキも置く場所が無いので全て廃棄し、アンプとCD、チューナーはマランツのネットワークCDレシーバーM‐CR612一本に統一。
三本あったスピーカーも置くスペースが無いことから、自作した長岡式バックロードホーンの名器スワンは泣く泣く諦め、結局1979年に社会人になって買った、手持ちのスピーカーの中では一番古い(でも音に変なクセが無く音場感があって、エンクロージャーも頑丈で一本21.5㎏もあった)LS-202(KENWOODではなく前身のTORIOです!)に絞りました(秋葉でクラシックを聴くならと薦められ、実際に試聴した上で気に入って購入したKEFのトールボーイCoda 9は設置面積が狭いので、物置兼書斎のサブシステム用に使っています。因みにCoda 9は10.5㎏とLS-202の半分の重さでした)。
そして、最後に残ったのがこのDENONのレコードプレーヤーです。
廉価版で再版されていた嘗ての名盤など、学生時代からコツコツと買い集めた130枚程のLPレコードは捨てられず、そうかといって、それらの手持ちの古いレコードを聴くためだけにまた新たにプレーヤーを買い替えるのもバカバカしいので、些か古くてもこのDENONのレコードプレーヤーを新居でもそのまま使い続けることにしました。

 DENONのターンテーブルDP-37Fは、1984年に発売が開始されたダイレクトドライブのフルオートプレイヤー。ちゃんと取ってある付属のマニュアルに拠ると、SN比は78dB以上、ワウフラッター(回転ムラ)が0.012%という、スペック的には当時の上位機種と遜色の無い、世間的にもハイコスパという評価を得ていたモデルで、1984年の発売当時の価格は54,800円だったとのこと。
今でもネット上のDENONのH/Pで見ることが出来る当時の紹介記事に拠ると、
『ダイナミックサーボトレーサー採用アームを搭載したフルオートプレイヤーで、ターンテーブル部には磁気記録検出方式のDENONクォーツターンテーブルを採用して、磁気記録検出方式とクォーツロックの組み合わせに両方向サーボを追加することにより、安定した回転性能を実現しています。
トーンアーム部にはダイナミックサーボトレーサーを搭載した電子制御式無接触トーンアームを採用。ダイナミックサーボトレーサーではカートリッジのコンプライアンスとトーンアームの実効質量による低域共振を水平、垂直両方向ともに電子的にダンピングしており、クロストークの悪化や混変調歪を効果的に抑制しています。なお、アーム本体には軽質量ストレートアームを採用しています。
また、鏡面仕上げが施されたキャビネットで、カートリッジとして楕円針付き軽自重MMカートリッジであるDL-65を装備しています。』

このレコードプレーヤーを購入したのは、シンガポールから帰任して2年後の1996年くらいだった筈。従って、発売後既に10年以上も経っていたことになりますが、時代は既にCDが主流になっていて、レコードプレーヤーは脇役で隅?に追いやられていました。従って、新たに開発費を掛ける程の市場規模では無くなっていたのでしょうし、また一方で、ターンテーブルとしても技術的にはモデルチェンジを繰り返す必要が無い程に熟成もしていたのでしょう。
社会人になって買ったSONYのベルトドライブ方式のレコードプレーヤーは手動でしたので、ややもするとズレてガガガというノイズを立ててしまう(基本は最初にヴォリュームをゼロに絞っておいて、針を降ろしてからボリュームを上げるのが本来なのですが)など、苦労したレコード盤に針をピンポイントで“溝”に静かにそっと下ろす作業が、このプレーヤーはフルオート故に、スタートボタン一つで殆どノイズも立てずに自動的にピタッと接地するのが実に感動モノでした(今でも凄いと思います)。
しかし、このレコードプレーヤーを購入した当時も、時代は既にCD中心になっていて、そのため購入する新盤も全てCDでした。
1980年代になってCDが世の中に登場した初期は、LPとCDが併売されていた期間もあったのですが(個人的にはジャケットが小さいCDよりも音源に関する説明の情報量が遥かに多いLPの方が良かったのですが)、やがて新たな音源は全てCDのみとなり、結果としてシンガポール赴任中も現地のCDショップで購入したモノ(日本で云う輸入盤)も含め、全部で300枚程になったCDが日常的な音楽鑑賞(死語?)の中心とならざるを得ず、社会人になって揃えたシステムコンポもシンガポールに持って行ったサンスイのCDミニコンポも全て廃棄して、日本へ帰任してレコードプレーヤーも含め一式買い替えた当初は結構レコードも聴いていたのですが、結局は新しい音源が増えないことから次第に使わなくなってしまいました。

 マンションへの引っ越し前にオーディオ類をどう整理しようかと迷い、一応の動作確認もふまえて全部試聴しようと思ったのですが、どのモデルも購入して四半世紀が経っていますので、電化製品は経年劣化で特にアンプは接続不良気味。それまでもCDは問題無く聴けていたのですが、久し振りに駆動させたレコードプレーヤーはちゃんと動いて回転しているのですが、アンプ側の接続不良か、或いは針が寿命なのか、上手く音出しが出来ませんでした。こうした電化製品の経年劣化は止むを得ません。
そのため既にご紹介した通り、新居の狭いマンションでは設置スペースがありませんので、アンプとCDプレーヤー、チューナーを個別に揃えるのは諦めて、スペース効率が良いマランツの最新一体型のネットワークレシーバーに替え、更にネットワークオーディオ故に新たな音源としてインターネットラジオや音楽のサブスクも楽しめるようにしました。
マランツのネットワークレシーバーM‐CR612は、サイズはミニコンポ並みに小型ながら、ピュアオーディオ機器として他のフルサイズの機種にも引けを取らないくらいに高性能で、オーディオ専門誌では発売以来何年もベストバイモデルとして非常に高い評価を受けている機種なのですが、ただ残念ながらアンプ側にPhono端子が無いため、そのままではフォノイコライザーを内蔵していないレコードプレーヤーは接続出来ず、別途(レコードの音声信号を増幅するための)フォノイコライザーを購入してプレーヤーとアンプを中継する必要があります。
DL-37Fは使用するカートリッジが専用のMM型しか使えないので、フォノイコライザーもMM対応機種でOKです。


そこでMM専用でコスパの良いモデルを探して、オーディオテクニカのAT-PEQ3を購入しました。
このモデルはMM型カートリッジ専用のフォノイコライザーで、6000円ちょっとで購入出来ます。僅か160gという小型サイズですが、高音質ICをイコライザー回路に採用したクリアな音質で、音響プロが愛用していることも多いという評判の高コスパモデルとのこと(唯一のネックは、イコライザー側に独立した電源ON/OFFのスイッチが無いこと)。
地元でも松本市内唯一となったオーディオ専門店が頑張っていて、そちらや家電量販店でも注文は可能ですが、どこもそんな特殊な製品は取り寄せになるので、そうであれば再訪不要なネット通販の方がユーザーにとっては便利。そのため現物を目で見て確認する必要が無い場合は、結局店頭販売ではなくネット注文でのオンラインショッピングになってしまう悪循環・・・。
 届いたフォノイコライザーを経由して、早速レコードプレーヤーをレシーバーのアナログ端子に接続し、久し振りにレコードの音出しです。しかし、音圧が上がりません。アナログ変換の問題もあるのか、デジタル音源と比べるとボリュームは半分位の聴感しかありません。昔聴いていた時のイメージとは随分違います。アンプやイコライザーの問題(勿論、モデルの違いによる音質などの変化はありますが)というよりも、ノイズなども結構目立ちます。オリジナルの針はカタログ上の耐用は500時間で、実際そこまで使用したという記憶は無いのですが、やはり四半世紀も経てばレコード針も経年劣化しているのかもしれません。
そこで交換針を探したのですが、当然ながら指定された交換針やカートリッジは既に製造中止。JICOというメーカーに互換針もありましたが、かなり高価。材質の違いに拠り何種類かあるのですが、最低でも9000円以上で、針先が高品質な素材だと2万円以上もしています。しかも9000円の交換針は耐用時間が150時間しかありませんが、DENONオリジナルの針は500時間です。
そこでオークションやフリマで探したところ、一年程前ですが過去販売されたDENONの交換針の未使用品が、当時の販売価格(5000円)以下でオークションサイトに出ており入札しようとしたのですが、うっかり締め切りを過ぎてしまい落札出来ませんでした。
そして、その後は時々チェックしてもなかなか見つからずにいたのですが、最近未開封の未使用品がフリマサイドに出ていて8500円とのこと。もし、ここで逃すと今度またいつになるのか分からないので、値下げ交渉もせず、思い切って言い値のその価格で購入しました。
因みに、84年からターンテーブルのDP-37Fは発売がされていて、購入したのは96年頃だとして、交換針やカートリッジは2000年代頃までは販売されていたでしょうから、未使用とはいえ出品者が購入されてから最低でも15年位は経っているでしょう。当時の販売価格が5000円でしたから、その後の物価上昇等考えれば(交換針自体の価値が上昇しているかどうかは別として)止むを得ません。



届いたカートリッジを見ると、確かに未使用で外観は新品同様です。しかしさすがに15年近くも経っているため、開封してみると針先を守るクッションカバーのスポンジが湿気を帯びて加水分解でベトベトと泥の様になっていました。
止む無く、つまようじでその“泥”を慎重に且つ丁寧に取り除きました。目視では、幸いそれ以外の異常は認められませんでした。
 マニュアルに沿って慎重に針を交換し、音出しです。
・・・すると、まるで見違えました!(勿論、見たのではなく耳で聴いた音なのですが・・・)アナログレコード特有の、あの柔らかいサウンドが蘇ったのです。しかもフォノイコライザー経由の音圧も、CDやインターネットラジオなどのデジタル音源に比べるとアナログ入力では聴感上1.5倍くらいのボリュームが必要ですが、前回の倍程にアップしてします。そうです!これがレコードの音です。暫くウットリと聴き惚れていました。
単純に云えば“まろやか”で、音に優しく包まれる感じ?・・・でしょうか。これが、久しく忘れていた“アナログ”の魅力・・・なのでしょうか?
本当に久し振りで、先ずは大好きだったオトマール・スウィトナー、そしてカール・ベームのモーツァルト。それからラファエル・クーベリックのシューマンとマーラー(彼のモーツァルトも大好きなのですが、CD全集で持っています)、そしてイシュトヴァン・ケルテスのドボルザークと、ザンデルリンクのブラームスにケンペのベートーヴェンetc・・・往年の名盤の数々。
更にジャンルを変えて、ふきのとうやオフコース、そしてチューリップ・・・。洋盤(死語?)ではABBAやQEEN、更にはアール・クルーなどなど・・・。音と共に懐かしい昔(大袈裟に云えば“青春”)が蘇ります。
こうした私の様なレコードを懐かしむ“昔の若者”のみならず、最近では若者世代の間でもまたアナログレコードが秘か?なブームになっているといいます。そのため、最近ではPhono端子が無いアンプも増えていることから、そうした流れに対応してフォノイコライザーをプレーヤー側に内蔵し、しかもBluetooth機能が搭載されたワイヤレス対応で入門用のお手頃なレコードプレーヤーも発売されているので、手軽にアナログレコードを楽しむことが出来るようになっています。
また海外では、70年代から80年代の日本の所謂“ニュー・ミュージック”が“シティ・ポップス”と呼ばれて人気を博しているとかで、NYに居る長女の婿殿も日本の“シティ・ポップス”に嵌まり、その類のレコードを集めて、わざわざ最新のレコードプレーヤーを買って聴いているのだとか。娘からそれを聞いていたので、80年代中心の“Jポップ”の手持ちのシングル盤数十枚を、昨年コロナ禍明けで久しぶりに来日出来た折に全部プレゼントして喜んでもらいました(いずれ私メの亡き後は、手持ちのLPもきっと引き継いでくれるでしょう)。
 ・・・とまぁ、最近の時流に合わせてという意味では決して無く、何周かの周回遅れだったのが、知らない間に先頭がまた追い付いて来ただけなのですが、世間の時流がどうこうではなく、飽くまで懐かしい昔をまた“良い音”で楽しんでいこうと思っています。

 マンションへの引っ越しを機に、以前使っていたTVを最新モデルに買い替えたのですが、リビングのSONYの有機ELは平面スピーカーが搭載されていてこれが結構良い音がするので、今流行りのサウンドバーの追加は不要。しっかりと低音も出ています。
そして、寝室は大きなTVは置けないので、スペース的には40インチ程度が限界。しかし、このサイズでは有機ELは勿論ありませんし、4K液晶モデルもありませんでした。店頭で見比べてみると、有機の高精細さの画面は当然として、液晶の4Kと2Kを見比べると、やはり画素数4倍の差は一目瞭然の違いがありました。そこで、一年前当時4Kの液晶TVで40インチサイズに近かったのがシャープの43インチとパナソニック42インチ、それとヤマダ専用のフナイの43インチと3機種だけでした。
価格で言えばフナイが一番お買い得なので、個人的には寝室で見るならフナイでもイイかと思ったのですが、家内はブランドもですが本来は40インチがMaxの筈なので43インチの大きさに難色。個人的にはフナイは定年前の何度かの米国(西海岸ばかりでしたが)出張時に、ロスの街中で看板を良く見掛けましたし、米国内で一番売れている日本のTVブランドということも知っていましたので然程違和感はありません。ただ、大きさとなると・・・?そうかと言って、40インチの2Kではやはり見劣りがしてしまいます。そこで候補の中で一番小さい42インチのパナのBRAVIAの4Kモデルにしました。このモデルは当時既に製造中止が決まっていて、後継モデルは43インチにサイズアップされることになっていました。そのため、スペック的には最新機種と比べれば多少見劣りする部分はあったのですが、そこは4Kの中でのサイズ優先となりました。

 寝室のTVには、前の家で使っていたホームシアターシステムYAMAHA AVX-S30Wをそのまま接続していましたので、今回のBRAVIAでも使うことにしました。このヤマハのホームシアターシステムは、10年位前に購入したのですが、AVアンプとサテライトスピーカー、サブウーファーの構成で、ヤマハがエア・サラウンドと呼ぶ疑似5.1chで最大210W、サブウーファーが50Wの出力。当時通常価格が5万円位だった筈です。
低音の迫力含め、Movie モードは“映画館並み”と言っても決してオーバーでは無い程良い音がしていました。しかもTVなど接続機器側にデジタル出力があれば、光ファイバーケーブルでのデジタル接続可能というエントリーモデルとしては優れモノで、勿論音質はピュアオーディオを手掛けるヤマハサウンドでした。しかし、当時は未だHDMI接続は無く、イチイチTVとオーディオ側を二つのリモコンで操作しなければならず、その煩わしさで家内は脱落。しかも家内は然程音に拘りも無いため、いつしか使わなく(使えなく)なっていました。
それが、この引っ越しで寝室も新しいTVになったのを機に、BRAVIAの画質には大いに満足なのですが音が余りに貧弱だったために、家内が設定したグーグルホーム接続でAVX-S30Wを使い始めた結果、システムとしての音と画像には十分満足していました。AVX-S30Wも漸くその本領発揮!というところでした。

 入居して一年近くが過ぎた昨年の秋頃。スピーカーの重低音が早朝から夜中まで響いて我慢出来ないという騒音クレームへの注意勧告が管理会社からマンション掲示板に張り出され、定年で勤めておらずほぼ一日中家にいる身としては気になったのですが、それ程大音量で聞いている訳でもないし(しかも我が家で音量的に大きいのは、むしろTVではなく、時折家内が不在の昼間にクラシックやJazz を聴くステレオの方ですがサブウーファーは無いので)、多分ウチでは無いだろうと思っていました。
ところが、10月末の義姪の結婚式があった軽井沢からの帰路、運転中に私の携帯へ電話があり、家内が出ると管理会社から重低音の原因が我が家ではないかとのこと。前日もその日も低音がヒドイと管理会社へ住人の方からクレームがあったのだとか。家内が、前日の朝から当日まで我々は不在だったことを伝えると「じゃ、間違い無くお宅ではありません。すぐにその旨連絡します!」とのことで一件落着したのでした。
しかし、濡れ衣が晴れたとはいえ疑われたのはナントモ気持ちが悪い・・・。
ヤマハのホームシアターシステムには本格的なサブウーファーがあり、大音量では聞いてはいませんが、床置きなので重低音が下に響かないとは言えない・・・のです。
そのため、これまで聞いていた音量を下げて聞いたり、サブウーファーの音量そのものも下げたり(或いはサブウーファーを外してみたりも)したのですが、それだと如何にも物足りない・・・。そんな悶々とする日々が続きました。
色々ネットで調べてみると、一軒家では問題無いが、集合住宅に住んでいる人で「床置きのサブウーファーの低音が階下に響いて問題になることがあったために床置きのサブウーファーは諦めた」、或いは「サブウーファーは使わない」というコメントが幾つか見つかりました。
重低音の原因がクレームをされた日に間違いなく不在だったので、“犯人”が我が家では無いのはハッキリしたとしても、このまま使っていて、もし何気なく映像に気を取られてボリュームを上げてしまい、いつ何時センシティブな階下の住人の方からクレームが来ないとも限らない。かといって毎日音量を気にしながらTVを視るのも、リラックス出来ずに何とも煩わしい・・・。
 その結果、ヤマハは諦めて廃棄処分とし、床置きのサブウーファー付きのサウンドバーの方が音が良いことは一目瞭然なのですが、サブウーファー付では今と変わらないので。今回はサブウーファー一体型のサウンドバーを購入することにしました。
リビングの大型TVならともかく、寝室のTVですので高価なモノは必要ありません。コスパが良い製品を求めて色々調べてみると・・・、ありました。それは、日本の音響メーカーの老舗、デノン(DENON)のサウンドバー DHT‐217です。
大ヒットモデルだった216の後継モデルとして今年発売された新製品で、一本のサウンドバーなのに下向きサブウーファーを2本搭載して新たに最新の立体音響技術であるDolby Atomosを搭載するなどバージョンアップされていて、価格もアップしてはいますがそれでも3万円弱に抑えられた高コスパモデルです。勿論TV側にARC/eARC端子があれば、HDMI接続でTV側のリモコン一つで使えるので便利です(但しサウンドバー側のモード切替えにはTVリモコンは対応していません)。
AV専門誌のレビューに依ると、『スピーカーは3ウェイ6スピーカーの2.1ch構成。内訳は前面中央に90×45mmの楕円形ミッドレンジを2基、前面両端に25mm径ツイーターを2基、底面に75mm径のサブウーファーを2基となる。サイズは従来機とほぼ同じで、幅890×奥行120×高さ67mm。高さが1mm高くなっているのは、インシュレーターを1mm高くしたため。サブウーファー下の空間を拡大し、音の抜けを良くした』とのこと。
勿論、一本で10万円するような高級機もあれば、独立したサブウーファー付きでより迫力ある音響を楽しめるシステムもあるのですが、DENONのDHT‐217は価格帯が3万円ながら他社の上位機種並みのスペックで、少なくともこの価格帯でDolby Atomosを搭載しているモデルは他にありません。
モードはMovie、Musicの他に、夜間視聴用にダイナミックレンジを落としたNight モードが選択できるのも有難いところ。またPureモードもあるので、Bluetooth接続で音楽用スピーカーとしても活用出来ますので、そのコスパは半端ありません。
因みに、我が家のステレオの方のレシーバーMR-612 はマランツ、今回のサウンドバーはDENONですが、2002年に旧「日本コロムビア」のオーディオ機器部門(元々は電音からのデンオンでしたが、アルファベット表記の英語読みでデノンに変更。ダットサンのDATSUNが“ダッツン”となったのと同じです)と、元々フィリップスのオーディオ部門だった「日本マランツ」が経営統合して誕生した川崎市に本社を置く企業グループで、現在は米国資本。どちらも老舗のピュア・オーディオメーカー。
従って、音には定評のあるDENONのサウンドバーですので安心です。サブウーファーは一体型で、床置きではありませんので低音が床に直接響くこともありません。低音を実感するためにはそれなりの音量が必要にはなりますが、結構低音も出ている感じがしますし、音源にも拠りますがDolby Atomosが搭載されていて立体的にも聞こえるので、サウンド的にも大いに満足でした。

 以前、日テレ系で水曜日の夜10時から放送されていたドラマ「リバーサルオーケストラ」。
3月15日が最終回だったのですが、嘗ての「のだめカンタービレ」以来(映画では国際ピアノコンクールを舞台にした「蜜蜂と遠雷」がありましたが)久々のクラシック音楽を題材としたTVドラマでしたので、クラシック音楽好きとしては大いに楽しんで視ることが出来ました(酔って本放送の時間には寝てしまうので、結局いつも後でTVerで視聴していましたが・・・)。

 「のだめカンタービレ」が、ストーリーは些かドタバタ喜劇のコメディーだったとしても、クラシック音楽の扱いや演奏は専門的で、いたって真摯に描かれていて、実際の演奏もピアニストのラン・ランなどの一流どころが吹き替えを担当していましたし、海外ロケでもチェコの国立ブルノ・フィルを使うなど本格的でした。

 今回の「リバーサルオーケストラ」は、コメディタッチの演出もところどころ無いではありませんが、全体のストーリーは真面目そのもの。しかも、毎回泣かせる場面もあってストーリーとしても楽しむことが出来ました。
しかし、今のTVドラマが半年間のワン・クールという短さもあって、物語そのものも複雑化は出来ず、割とシンプルなストーリーにならざるを得ないでしょうし、従ってドラマ内で使われる楽曲なども「のだめ」に比べると曲数が限定的で、例えば「のだめ」で使われたリスト「ファウスト交響曲」からの「神秘の合唱」の様なクラシック好きも「えっ、これ何だったっけ?」と唸らされる様な選曲は無かったのですが、ドラマ主題曲が「のだめ」の“ベト7”に対し、「リバーサルオーケストラ」が“チャイ5”だったのは個人的に嬉しい限りでした。
というのも、大学に入学して生まれて初めて買ったLPがチャイコフスキーの5番でしたし、子供たちが社会人として“巣立ち”、我々夫婦二人だけになってから多少の余裕が出来たので、それまでの地元松本でだけではなく上京しても聴くようになった“ナマオケ”で、先ず最初に生で聴きたくて選んだコンサートも、東京芸術劇場での今は亡きロジェヴェン指揮読響の“チャイ5”でした。

 今回のドラマでは神奈川フィルが全面協力とのこと。従って、練習風景含め演奏時の団員が神奈川フィルの方々であるのは当然として、最後の場面での審査員として登場したのが、びわ湖ホール芸術監督を退任し、昨年から神奈川フィルの音楽監督を務める指揮者の沼尻竜典氏と、神奈川フィルのソロコンマスを務める、一見“こわもて”の“石田組”石田泰尚氏であったのも或る意味納得。そして、あの“こけら落とし”会場となった“西さいたま”シンフォニーホールも、神奈川フィルの定演会場である「横浜みなとみらいコンサートホール」であろうことも当然でした。

 今までTVや映画で拝見したことは無かったのですが、主演の門脇麦さんは「のだめ」の上野樹里さん同様に、コメディエンヌとしての才能も大いに評価出来ましたし、またチェロ主席を演じられた瀧内公美さんはこれまで出演されたのが薄幸というか汚れ役?しかなかったそうですが、今回のTV(失礼ながら初めて拝見しました)の中で見せる“への字”風の笑顔がとても素敵で癒されました。
今回の「リバーサルオーケストラ」は、ストーリー展開上、憎まれ役は居ても悪人が誰も居ないのが、或る意味安心して視られた一因かもしれません。

 「リバーサルオーケストラ」を視終わって、何だかまた “ナマオケ”で“チャイ5”を聴きたくなりました。

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