カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2月のニュースで、この4月から読売日本交響楽団(略して読響)のソロ・チェロ奏者(主席)に、遠藤真理嬢が就任するとの報道がありました。
彼女は、NHK-FMの日曜日午後に放送されている“きらクラ”(きらくにクラシック)のMCをふかわりょうと5年に亘り務めているチェロ奏者。お嬢様(?)らしからぬ「ガハハハハ・・・」という開けっ広げな笑い声で人気の若手の実力派です(と言っても既に2児のママですが)。ふかわさんからは、その性格ゆえ、落語家になぞらえて“真理兵衛師匠”などと呼ばれています。
しかし、その実力は折り紙つきで、東京芸大首席卒業し留学したザルツブルグ・モーツァルテウムマスターコースも主席最高位。2003年の日本音楽コンクール1位をはじめ、国際コンクールでも上位入賞を果たしている実力派チェリストです。
 以前、読売日響のコンサートで、『チェロ部門で際立った演奏をしていたのが(なぜか)遠藤真理だった・・・(中略)・・・N響の様に、読響の向山佳絵子になるのだろうか?』という論評を目にし、(単なるゲストではない主席就任を)個人的に大いに期待していた次第です。そして、2月に実質主席(以上の位置付けで、曲中のソロパートだけではなく、コンチェルトではそのオケでの独奏者としても可能なポジション)となるソロ・チェロ奏者への就任が発表された次第。因みに、読響チェロ部門でのソロ奏者としては歴代3人目のみならず、チェロ部門として初の女性団員とか・・・。凄いですね。

 読売日本交響楽団は、国内の交響楽団の中で個人的に一番好きなオーケストラ。経営母体が安定しているせいか、信州の様な地方での演奏会(ドサ回り)は少ないのですが(N響の様な公共性も不要)、国内オケの中では珍しいその圧倒的なパワーと“熱さ”に惹かれています。そして、そのオケのチェロ部門のリーダーに納まったと知り大いに期待した次第です。
先日のNHK-FM “きらクラ”でご自身の好きな曲にスクロヴァチェフスキ指揮の読響のチャイコの弦楽セレナードを選曲し、ソロ・チェロ奏者への就任を番組内でも発表しながら、マエストロとの共演が叶わなかったことを悔いていましたが、その時に読響の演奏を評してご自身も(ある意味N響との対比で、巧いのではく)“熱い”演奏と言われていました。
今後とも、N響の向山女史に負けずに、その先頭での“熱い”演奏を大いに期待しています。
【追記】
昨日まで不在にしておりました。本日よりまた再開いたします。

 松本市美術館で4月21日から6月11日まで開催されている特別展、「堤清二~セゾン文化と云う革命をおこした男~」展。
その関連プログラムとして、4月29日にギタリストの鈴木大介さんによる「ミュージアム・コンサート~ギターで奏でる武満徹~」が開かれ、聴きに行って来ました。
 セゾングループを一代で築き上げた堤清二。自身、辻井喬というペンネームを持つ詩人・作家として、三島由紀夫を始めとする多くの文化人との交流を通じ、「おいしい生活」に代表される様に、文化にまで影響を与えたパルコや無印良品などの事業展開。そして単に事業経営に留まらずに、そして現代美術を中心としたセゾン美術館やパルコ劇場といった文化事業の中で、音楽についても武満徹プロデュースによる世界の現代音楽を紹介する「MUSIC TODAY」を展開。生前、その“世界のタケミツ”が評価したギタリストが鈴木大介氏。彼は、NHK-FMの「きまクラ」の初代MCとして、二代目の笑福亭笑瓶師匠に引き継ぐまで、6年間に亘ってMCを担当されており、その喋りも定評あるところ。現「きらクラ」でもゲストで何回か登場し、そこで氏の演奏にも触れて興味を持っていました。その氏のコンサートが、地元松本で、しかも(特別展の観覧券が必要ですが)無料で聴けると知り、早速予約をした次第です。
因みに、堤清二氏は松本市美術館の初代顧問。地方美術館の、地味ながら独自の方向性に共感し(特別展に寄せた作詩を通じて)精神的に支えて下さったのだそうです。

 当日は先に観賞を済ませます。中西夏之などの気に入った作品はあったのですが、現代美術は正直良く分かりませんでした。むしろ、堤清二氏の松本市美術館の企画展に寄せた「詩」に心打たれ、じっくりと黙読しました。言葉は悪いのですが“妾の子”故に、若き日には、父や体制への反発もあったのでしょうが、「辻井喬」という人間になって紡ぎだされた「詩」には、氏の純粋さと清廉さに裏打ちされて、本質を見つめようとする深い精神性を感じました。曰く、
 『 夜 かすかな光の先にあるものを  
   あえて無名性の輝きと名付ければ
   ゆえある傲慢の風にこそ梢が揺れるのが分る
   だから星が瞬くのは淋しいからだとしても
   月の光に梢は挫折の栄光を受けて輝くのだ      』

(辻井喬『月光の中の梢』【西郷孤月展に寄せて】より一部抜粋・・・恐らく、詩と一緒に展示されていた孤月の代表作『月下飛鷺』をイメージし、孤月の不遇な生涯を重ねての詩作だと思われます)
 その後外へ出て、一旦昼食を取ってから改めて再度入館。会場は美術館の多目的ホールで、定員80名。事前に満員で予約を打ち切った由。鈴木大介さんの人気も勿論ありますが、展覧会のチラシの裏にギャラリートークなどと一緒に小さく案内があっただけなのに、(自分も含めてですが)皆さん目敏いと感心するばかりです。
当日のプログラムは、当然のことながら全て武満徹作品。96年に亡くなられた最後の作品「森のなかで In the Woods」も演奏されましたが、親しみやすいポピュラーな作品を編曲した「ギターのための12の歌」からの3曲や、映画音楽も。あっという間の1時間でした。
盛大な(と言っても定員80人と+αの美術館スタッフからの)拍手に応えて、アンコールに、NHK-FM「きらクラ」だったかでも流れて、今回も是非聴きたかったビートルズナンバー「Yesterday」(「ギターのための12の歌」から)、更に映画音楽の「燃える秋」と「信州が舞台の映画だから今日の最後の曲に」という「今朝の秋」と3曲も弾いてくれました。「イエスタデイ」の生演奏が実に良かった!です。ハイファイセットの歌った「燃える秋」もタケミツ作品だったことを初めて知りました。
 美術と音楽の融合・・・何とも(無料だからもありますが)贅沢な、そして至福の時間が流れて行きました。
(想えば、国内のそれまでの権威や伝統に抗ったタケミツや草間弥生を最初に広く認めたのは海外であり、その結果、当初無視されたり評価されていなかった国内でも掌を返したような絶賛を集めます。その二人が、同じ場所で“共存”しているのが何とも感慨深い)
 その後、今季の新収蔵作品の「おひろめ展」を鑑賞。
中でも、松本ゆかりの西郷孤月の「富士」に感動。大観の様な威風堂々とした華やかさではなく、何とも落ち着いた滋味豊かな作品。一時は“橋本雅邦門下の四天王”と言われながら、その後の大きな境遇の違い。そう想って見るせいか、大観の富士とは異なる、悲しみにも似た孤高の渋さが感じられ、暫し絵の前に佇んで鑑賞していました。故郷松本へ「お帰りなさい!」・・・でしょうか。
【追記】
後日、市民ギャラリーで開かれている「写真講座写真展」に会社時代の大先輩も出展されているので見学に伺った際、美術館のパティオで「工芸の五月」の関連イベントとして工芸作家の作られた子供用の椅子が並べられ、自由に座りながら地元?のフォルクローレグループの演奏を楽しまれていたので、私メもちょうど演奏されていた「花祭り」を暫し聴き入っておりました。この市美術館の洋芝のパティオ、結構好きなんです(パティオを挟んでビストロもあって、穴場だと思います)。

 先月末、2007年から3年間読売日響の第8代常任指揮者スタニラフ・スクロヴァチェフスキ氏の訃報が報じられました。享年93歳。また昨年10月には、サー・ネヴィル・マリナーの訃報があり、氏も享年92歳でした。お二人共、最後の最後まで指揮台に立ち続けた現役のマエストロでした。

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキはポーランドに生まれ、どっしりとした作風でブルックナーを始めドイツ系作品に定評のあった巨匠でした。
読響との名演が報じられる度に、いつか生で聴きたいと思っていましたが叶いませんでした。CDにも手持ちには無く、写真は市立図書館から借りたブラームスの2番です。
 そしてサー・ネヴィル・マリナーは、1959年にアカデミー室内管弦楽団を創設し、時にカラヤンを凌ぐとさえ評される程の膨大な録音を残したスター指揮者でした。因みにアカデミー室内管弦楽団というのは日本だけの呼称であり、正式な楽団名は、教区アカデミーのSt.Martin-in-the-Fields教会を本拠地としたことに因ります。従って、正式名称は“ The Academy of St.Martin-in-the-Fields”。何とも格好の良い響きで、しかも指揮者のマリナーはロジャー・ムーア張りの英国紳士然としていて、音楽までも何となく洗練された感じで聴こえていました。謂わば、バッハよりもヘンデルであり、ストイックさなど関係無しの洗練された華やかさ。後年、大ヒットした映画「アマデウス」での演奏により、モーツァルトが氏の代表的レパートリーとされましたが、元々はバロック音楽がアカデミー室内管の十八番でした。
手持ちのLPレコードでは、手兵の初期の頃(弦楽器のみの編成。最後の写真の左から4人目が若き氏)のアカデミー室内管弦楽団を率いてのブランデンブルグ協奏曲、ヘンデルの合奏協奏曲、モーツァルトのディベルティメント第17番。そして、LA室内管とのレスピーギのリュートのための古風な舞曲とアリアの4枚。そしてCDでは唯一でしたが、シンガポール赴任中に購入したらしい、海外盤でのLSOとのプロコフィエフの古典交響曲でした。そして、(時代が異なるためかもしれませんが)CDの海外版だけに“Sir”という称号が付けられていました。
 90歳近くなってから、シカゴ響でブルックナーを振ったマエストロ朝比奈隆。氏も93歳で亡くなったと記憶していますが、いみじくもスクロヴァチェフスキが93歳、サー・ネヴィル・マリナーが92歳。
こうなったら、御年90歳になった筈のブロムシュテットおじさんには、お元気で是非100歳まで現役で振って欲しいものです。

 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキとサー・ネヴィル・マリナー。
お二人の偉大なマエストロのご冥福を謹んでお祈り致します-合掌。

 先日深夜のBSで、リチャード・カーペンターや、当時曲作りやレコーディングで関わった人たちの証言をベースにしたドキュメンタリー番組としてカーペンターズを特集していて、懐かしく最後まで見入ってしまいました。
カレン・カーペンター。摂食障害で僅か32歳と言う若さでこの世を去った不世出のシンガー。その声は、確か当時“ボイス・オブ・アメリカ”と言われたほどであり、その独特の響きは、今聞いても癒し効果満載のヒーリング・ボイスと言っても決して過言ではありません。
余談ですが、個人的に勝手に考える“ボイス・オブ・ジャパン”は、ドリカムの吉田美和嬢です。アレン同様のヒーリング・ボイスです。スバルの車のCMに使われたドリカムの曲からも改めて感じた次第。

 “Yesterday Once More ”、“Top Of The World ”、「遥かなる影」、“ Sing” などなど・・・・彼等のヒット曲は数多あれど、個人的に一番好きだったのは、やはり「青春の輝き(“I Need To Be In Love”)」でしょうか。今聞いても、カレンの歌声に自然と涙が溢れて来ます。
 今回、図書館にあったベストアルバムを借りて聴いてみました。
ビートルズの名作「涙の乗車券」のカヴァーシングルでデビューしていたとは知りませんでした。

 思うに、「拒食症」という言葉が世の中で一般的に知られるようになったのは、カレンの死が原因だったのではないでしょうか。
彼女の声が、そして歌が、どんなに人を癒しても、また生きる勇気を与えても、彼女自身の力にも慰めにもならなかったのかと思うと残念でなりません。でもこれからも、多分半世紀が過ぎようと、彼女の歌声はきっと世界の人々を癒し続けて行くのだろうと思います。

 大好きなピアニストでもある小菅優。これまで、二度彼女のリサイタルを聴いていますが、今回はヴァイオリンとクラリネットとのトリオの一員として松本に来演。

 2月12日のザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)でのマチネで、佐藤俊介さんのヴァイオリン、ロレンツォ・コッポラさんのクラリネットとの小菅さんのピアノによるトリオ演奏。「20世紀の作品群」と題された珍しいプログラムです。
前半に、ミヨー「ピアノ、ヴァイオリンとクラリネットのための組曲」、ラヴェル「ヴァイオリン・ソナタ ト長調」、ベルク「クラリネットとピアノのための4つの小品」。休憩をはさみ、ハチャトゥリアン「ヴァイオリン、クラリネットとピアノのための三重奏曲ト短調」、ストラヴィンスキー「組曲 兵士の物語」という構成。
殆ど馴染の無い曲ばかりでしたが、佐藤さんとコッポラさんがそれぞれ演奏前に曲の詳しい説明をして下さり、特にコッポラさんは、A管、B管というクラリネットの種類や、現在の主流のフランス式とドイツ式の違い、演奏する曲のモチーフや音色も実演を交えてくださるなど、謂わばレクチャーコンサートでとても分かり易く、興味深く聴くことが出来ました。名手3人に依る真剣勝負の様な緊迫感溢れた演奏でした。
 知りませんでしたが、佐藤俊介さんはまだ32歳の若さですが、4歳から米国で育ち僅か10歳でアメリカのBig5の一つであるフィラデルフィア管弦楽団と共演しジュリアードで学んだという駿才(松本は、3歳の時に才能教育の「御前演奏」で演奏して以来、30年振りのステージとか)。その後バロックヴァイオリンに興味を持ちヨーロッパで研さんを積み、今ではモダン、ピリオド両方の奏法をこなし、現在はオランダを拠点に、ソロ活動のみならずオランダとドイツの古楽合奏団のコンマスを務めているという国際派ヴァイオリニストとか。国内よりもむしろ海外の方が有名なのでしょう。1歳違いの小菅さんとは15年前にお互い滞在していたミュンヘンで知り合ってからの友人などだとか。しかし巧い!太さというか豪快さと云うよりも、むしろ繊細さを兼ね備えた超絶技巧と云うべきか・・・。
ピアノもヴァイオリンも、そこそこ弾ける人間なんて、最近はそれこそ“掃いて捨てる”程いますから、有名な国際的コンクールで上入賞するか、或いはアイドル並みに容姿が良くないと売れない時代であろう中で、佐藤さんも小菅さんもコンクール受賞歴は殆ど無く、コンサートそのもので欧米の本場で名を知らしめてきた若き実力派たちです。素晴らしい!
特に大好きなピアニストの一人である小菅さんは、小学生でドイツに渡り、日本で云えば地方の公民館のような所で演奏経験を積んだという努力派(豊かな才能を活かす努力と云う一番大切な能力を兼ね備えていたというべきなのでしょうか)です。近年、ベートーヴェンの全曲演奏会を成し遂げた彼女。モーツァルトの天才さよりも人間としての“イイ加減さ”を意識してしまい、結果ベートーヴェンの持つ精神性に強く惹かれるというのも、実に生真面目な彼女らしくて共感出来ますし、それが個人的にピアニスト小菅優という人間に惹かれる理由でもあります。
 大賀ホール以来1年半ぶりに生で聞いた小菅さん。相変わらず、音の深さが印象的です。室内楽の小菅さんもイイですね。この日のプログラムが20世紀の作品群だっただけに、彼女の弾く近代モノ、とりわけラヴェルやドビュッシーも是非生で聴いてみたいと思わせてくれた演奏でした。

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