カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 先日、「源智の井戸」の清掃ボランティアに参加いただいている方のコーディネートで、松本市の上下水道局に伺う機会があり、毎日私たちがお世話になっている松本市の上水道と下水道について状況をレクチャーいただき、併せて松本の上水道の水源の一つである「島内水源地」と下水道の「宮淵浄水センター」を見学させて頂くことが出来ました。
その両方の現場も含めて水道局で説明をお聞きする中で、今回私が一番に感じたことは、専門知識の高い、そして志ある職員の方々の存在と、そして誠に失礼ながら(昔よりも遥かに改善されてきたとはいえ)窓口で感じる“お役所意識”が鼻に付く様な“公務員”ばかりではないことでした。今回それを知って、何だか嬉しく、そして“任せて安心”という意味で非常に頼もしく感じた次第です。
そして、状況面で知り得たことの一番重要な点は、上水道よりも下水道の方に、設備投資と維持管理に関してより多額の資金(住民税+国や県からの公的補助金)が掛かっているという現実でした。
松本市では市内の小学4年生の社会見学の一環として、宮淵浄化センターの下水処理場を見学して貰って、その状況を子供ながらに認識して貰うことと、そして何より家に帰って台所を預かるお母さん方に、家庭の台所での洗剤や油の使用に関して、多分一番効果的であろう子供さんの口から直接注意喚起して貰うことを目的に、毎年実施しているとのことでした。
 当日、先ずは上下水道局で、専門職員の方から松本市の上水道と下水道の歴史と現状についてレクチャーを受けました。
湧水に恵まれた松本は、江戸時代から木管などを使った簡易水道が城下町へ導水されていましたが、有圧送水・濾過上水・常時給水という近代上水道の歴史は、我が国では明治20年の横浜に始まり、ここ松本は二度の大火に依る防火上の観点からもその必要性が高まって、大正12年から給水がスタート。最初の水道網は市街地の中心部から始まり、私の生まれた岡田の神沢地区も大正15年には他に先駆けて水道が敷かれるなど、徐々に周辺の農村部にまで拡大して、令和5年には創設から100周年を迎えたのだそうです。
松本の上水の水源地は旧松本市が7つ、平成の合併に伴い四賀、梓川、奈川地区を含めると、市内には全部で39ヶ所の水源地と17の浄水場があり、美ヶ原の麓の三城から乗鞍地域まで広域に亘っています。
メインの水源は松本市、塩尻市、山形村に上水を共有する県の奈良井ダムの松塩水道用水で、塩尻の本山にある浄水場を経由して、松本市には契約上一日63000㎥の水道水が供給されています。これが松本市の水道水の80%、旧松本市で云うと90%の水量を賄っていて、残りを旧市内で云うと、島内と源池の水源地の湧水をブレンドして旧市内に配水されているのだそうです。
続いて、下水道の説明を受けました。松本市の下水道は昭和34年に宮淵浄化センター、昭和57年に両島浄化センターが共用開始され、その後の広域合併により旧安曇村の上高地浄化センターを始めとする各エリアの浄化センターを含め、計6ヶ所の浄化センターでカバーされており、普及率は97%とのことでした。
そして上下水道両方に関係する喫緊の課題は、埼玉県の道路陥没事故に見られる様に、松本市も同様に給水管や下水道の本管の老朽化とその取り換えなどの改善事業です。これは上下水道に留まらず、高速道や橋脚なども含め、我が国のインフラ全体が今抱えている問題でもありましょう。

   (登録文化財の手前の丸い屋根が集水井、奥の建物が旧喞筒室)
 レクチャー終了後、現場を見せて頂くことになり、職員の方に案内頂いて、島内の第一水源地と宮淵の浄化センターを見学させて頂きました。
この島内第1水源地は、大正12年に設置された松本市の近代水道の創設当初の施設で未だに現役でもありますが、集水井や会所、旧喞筒室などの建物などが国の登録有形文化財に指定されています。そうした古い施設だけではなく最新の自家発電設備もあって、万が一の事態にも備えています。こうした普段はなかなか見られない(中に入れない)施設であり、源智の井戸をきっかけに松本の湧水に多少なりとも関わる者として、今回一番関心のある施設でした。

   (旧喞筒室の外観と、移設保存されている初期の給水管)
島内には二つの水源地があり、この第1水源地は能力27500㎥/日の湧水量に対し、取水量は7500㎥/日とのこと。これは、県の奈良井ダムの上水が契約上松本市に63000㎥/日が毎日供給されて来るので使い切らないといけないために優先され、その差を市内の水源で埋めているためなのだそうです。因みに説明に依ると、この島内水源地の水は、大町や安曇野の湧水と同じ北アルプスからの伏流水で、糸魚川静岡構造線の断層が、島内のすぐ目の前に聳える城山山系にあり、すぐ横を流れる奈良井川の地下には固い岩盤層があって、この層に遮断された伏流水がこの島内地区で豊富な湧水として地上に湧き出しているのだそうです。市内に在る源池の水源地は美ヶ原などの筑摩山系からの伏流水の湧水ですが、ここは北アルプスの水。松本の上水道には、主な奈良井川の水に、北アルプスと筑摩山系の二つの湧水がブレンドされていることを初めて知りました。因みに、この「島内第1水源地」の湧水が非加熱除菌され、松本のおいしい水道水をPRし水道水の利用を促進するため、市の主催行事、会議、イベント、観光宣伝、コンベンション用として提供されていた「信州松本の水」で、「モンドセレクション2014」のビール・飲料水・ソフトドリンク部門で金賞を受賞しています。
  (旧喞筒室内部の現役のポンプと、加圧され奈良井川を渡る給水管)
ウォーキングで歩く城山には配水地があって、どうしてこんな所にといつも不思議に思っていたのですが、ここ島内水源地から見ると、城山はホンの目と鼻の先。この島内水源地(おそらく標高は580m程)からの給水管が奈良井川を渡って、すぐそこの断層の崖の上の標高650mの城山まで一気にポンプアップして、そこから南側には緩やかに傾斜している市街地に向けて自然に流れ下って行くのは、大正時代に作られた上水設備として、自然の理であることが良く分かりました。
 続いて訪れた宮淵浄化センター。奈良井川沿いにJR大糸線を挟んで、72000㎡という敷地に82000㎥/日の処理能力を持つ二つの浄化処理場が並んでいます。両島にも60000㎡の敷地に33000㎥/日を処理可能な浄化センターがあり、この二つの施設で旧松本市全域の下水処理をカバーしています。
ここに集められた下水は、最初沈殿池で水に溶けない汚れを沈めて取り除き、次に反応槽のタンクに送られて微生物によって汚れが食べられ、最終沈殿池でも更に汚れが食べられて集まった微生物も沈められ、見違える程透明でキレイになった水が更に塩素消毒されて、最終的に奈良井川に放流されます。見学の途中で沈殿池の水をすくって、大型のメスシリンダーに入れて見せてくれましたが、数分もすると汚れと微生物が沈んで、澄んだ水と汚れとのキレイな二層にクッキリと分かれたのを見ることが出来ました。
     (奈良井川への放流口)
また、沈殿した汚れは濃縮され汚泥となって、更に脱水されて「脱水ケーキ」と呼ばれるリサイクルされるセメント原料になり、ダンプカーで定期的に売却先のセメント工場に運ばれて行きます。またこの過程で発生する消化ガスは燃料として自家発電用に供され、電気として施設内で使用され、またその排熱は汚泥層の加湿用にも用いられているとのことでした。
私たち市民の知らない所で、コストダウンのために様々な工夫がされていることが分かりました。
こうした施設が傾斜を利用して広大な半地下に巨大な空間として拡がっているのです。上水道の設備に比べ、その巨大さに圧倒されました。
自然の恵みである水を取水し、その見た目もキレイな水を更に浄化して生活用水として使い、その結果汚れた水を全て回収して消毒し、最終的に問題の無いレベルにまで浄化させて、また自然界に戻す。
そして地表面の敷地は、下水の浄化センターという施設への周辺地域や周囲の目を和らげる目的もあるのか、花の時期には摘み取りを市民に無料で開放していている一面のラベンダー畑を始め、きちんと手入れがされた様々な植栽が季節を彩っていました。そんな努力さえも伺えた浄化センターでした。
 今回の上下水道の施設見学を通じて感じたこと。
それは、世界中196ヶ国の中で、僅か9ヶ国しかないという水道水を蛇口からそのまま飲める国、日本。世界の平均降水量の1.6倍という、四季と水に恵まれた日本列島。そして、その中でも市街地に豊富に湧き出る湧水に恵まれた街である松本。
そんな清き水に恵まれた地である信州松本に暮らす自分たちに、その水の有難さと大切さを改めて実感としても感じさせて貰えた、そんな有意義な今回の訪問でした。

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