カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 9月下旬、コユキとクルミをお世話いただいた保護犬団体の里親会が埼玉県のドッグランを貸し切りにして行われ、コユキとクルミを連れて日帰りで参加して来ました。
コユキを世話してくださった西東京にお住いのボランティア(仮ママ)さんのお宅に、昨年の11月末にクルミを引き取りに伺って以降初めての里親会ですので、すっかり我が家に馴染んで暮らしているクルミの様子を仮ママさんに報告し、そして実際の元気な姿をお見せするのが一番の目的でした。

         (我が家に来て4ヶ月頃のクルミ、コユキと一緒に)
クルミは元繁殖犬ですが、以前もご紹介した様に、劣悪な環境から不要犬として救い出された推定6歳のシーズーです。仮ママさんが引き取った時には、カットもされたことが無いのか、伸びた毛が絡まって体中が毛玉の様になっていたため、止む無くバリカンで刈りあげたのだそうです。しかも左の後ろ脚が骨折したまま放っておかれたのか、固まってしまい曲げることが出来ず、足を引きずって歩くしかない状態で、動物病院で診て貰ってももう手術は無理とのことでした。
また、ブリーダーから十分に食事も与えられなかったのか、シーズーの標準体重は4~6kgですが、保護された時には痩せこけていて2kg台だったのです。そして人が怖いのか、仮ママさんのお宅でも食べる時以外はクレートに籠ったままの臆病なワンコでした。
本来シーズーは大人しいので、通常だとすぐに引き取り手が決まる様な人気の犬種だそうですが、クルミは脚が悪いこともあるため、なかなか引き取り手が見つからないだろうとのことから、私たちはナナが虹の橋を渡った時はもう今年で推定14歳になるコユキで最後にしようと家内とはお互い話をしていたのですが、里親宅の家庭訪問も兼ねて、コユキをわざわざ松本まで連れて来ていただいた時に、我が家にシーズーのナナが先住犬で居たこともあって仮ママさんからクルミを勧められ、昨年11月上旬に行われた前回の里親会の時にクルミにも会って、結局我が家の最後のワンコとして引き取ることを決断したのでした(第1963話&1977話参照)。
        (しっぽを振りながら、我が物顔した最近のクルミです)
松本へ来てからも、掛かり付けの動物病院でレントゲンを撮って貰ったのですが、複雑骨折でいったいどうなっているのか専門家でも良く分からないとのこと。しかし、不衛生な環境下に居たための肌荒れ以外、検査結果はすこぶる健康で、他に悪い所は見当たらないとのことでした。仮ママさんが「劣悪な環境でも生き延びて来たワンコですので、存外強い子かもしれませんヨ!」と仰っていた通りだったのかもしれません。
クルミは食欲の塊の様な子で、今では4.8kgとシーズーの標準体重になりました。荒れていた肌も、毎月のトリミングの際の薬浴で、すっかりキレイになりました。不自由な足を気にせず家の中を走り回ったり、推定6歳とまだ若いこともあってオモチャを咥えて遊んだりと、我が家ではヤンチャぶりを発揮しています。
 我が家に来てもう6年、推定14歳で元気に暮らしているコユキと、そして保護されてから1年近く経って、そんな風にすっかり見違えたクルミとを仮ママさんに見せて安心して貰おうと、埼玉のドッグランへは中央道と圏央道を乗り継いで片道3時間掛かるので、開催時間の10時を目指して朝7時に松本を出発しました。
横浜の次女の家に行く時に通る八王子からの圏央道は、東名に合流する蛯名JCT付近が慢性的に渋滞しているのですが、八王子JCTから埼玉方面への圏央道は混雑も無くスムーズで、予定より早く着きそうだったので、手前の狭山PAで少し休憩して時間調整。開始時刻の10分前に無事到着しました。
いつもの里親会の会場「ゆりはなドッグラン」は、ウッドチップが敷き詰められた面積700坪という広いドッグランで、この日は保護団体で貸し切りにして里親会が開催されます。
関東一円から集まったワンコたちが優に50匹以上はいたでしょうか。柴などの日本犬やまた雑種の子も居て、この日来ているワンコたちは全て保護犬なのです。中には視力が無い子もいますが、どの子も安住の地を見つけ、里親さんから本当に大切に扱われていることが分かります。
コユキも声帯を切られた元繁殖犬で、不要犬として捨てられて保健所に保護されたワンコですし、クルミも同様。他のワンコたちもきっとそれぞれ色んな事情を抱えたワンコたちでしょう。そうした事情故か、保護犬は犬種に関係無く、皆大人しいのが特徴とか。
この日もラブラドールやハスキーなどの大型犬から、チワワやヨーキーの様な小型犬まで何十匹もいて、どのワンコもドッグラン内ではリードも付けられていませんが、ケンカをしている様なワンコは一匹も居ませんでした。
仮ママさんもクルミをみて、
 「あらっ、すっかり見違えちゃって!」
 「ねっ、ほらあのクルミちゃんヨ!」
と、その見違える程の変わり様にビックリされ、またとても喜んで、保護された時のクルミを知っているらしい他のボランティアさんを呼んでくださいました。
1ヶ月ちょっととはいえ、生まれて以来初めて優しくして貰った仮ママさんのことを、以前のコユキもそうでしたが、クルミも全く覚えていない様子。すると、他の仮ママさんの方が、
 「それでイイんですヨ!覚えていないというのは、それだけ里親さんのお宅に馴染み、そしてなついている証拠なんですから・・・」
と嬉しそうに仰っておられたのが、とても印象的でした。
 集まったワンコたちの中には、物おじせずにドッグランの中をあちこち歩き回ったり、走ったり、じゃれ合ったりする子もいるのに、臆病な我が家のワンコたちはビビリで、片時も私たちから離れません。コユキは家内の膝の上に乗ったままですし、クルミは他のワンコが寄って来ると嫌がって、家でのヤンチャぶりはどこへ行ったのか、私たちの脚の間に入って隠れてしまいます。
ただ、クルミも最初は物珍し気に少し歩いていたのですが、園内に敷き詰められているウッドチップは凸凹していて、左後ろ脚が曲がらないクルミは踏ん張れないので、他のワンコと違ってクルミには歩き辛いのかもしれません。
そのため、お昼時間に仮ママさんにその旨ご挨拶してから、一足お先に失礼させていただくことにしました。
 因みに、来る時に大月付近の中央道下り線で多重衝突事故があって大渋滞していた余波か、或いは長野県内の中央道と長野道で以前二つの大きな事故があって、たまたまこの日に長野県警に依るその実況見分とやらで、長野県内二ヶ所が数時間通行止めになっているためか、帰路にナビが示したルートは、あろうことか関越道から藤岡JCTで上信越道を経由して更埴JCTから長野道という迂回ルートで、3時間半の行程でした。
高速道での走行はずっとACCを使用し、且つ長野県内に入るまでは100㎞制限で、しかも関越道は3車線だったので走り易かったとはいえ、些か疲れた狭山への日帰り往復でした。

 この日のお目当ては、箱根ではなく小田原です。
箱根から小田原へは道がすいていれば30分ちょっと。箱根湯本を抜けるまでは、正月のTVで視るあの箱根駅伝の山登りと山下りのコースなので、カーブが連続する山道が車で混んでいると、特に道幅が狭い宮ノ下や湯本の温泉街や商店街でもし道端に停車している車などがいたりする場合は、箱根は観光にも重宝する路線バスの本数が非常に多いことも手伝って、すれ違いが出来ずに所々で渋滞が発生して余計時間が掛かってしまうのですが、それでも小一時間足らずで小田原漁港へ行くことが出来した。

 日本三大深湾の一つである相模湾に面する小田原漁港。JR早川駅からも歩いてもすぐで、早川漁港とも呼ばれています。
相模湾は水深1500mで、アジやシラス、そして伊豆半島の東側の下田や稲取に代表されるキンメダイが有名ですが、このキンメダイは水深200mから800mという深い所に棲むれっきとした深海魚です。
因みに三大深湾の他二つは、伊豆半島を挟んだ反対側の駿河湾と日本海側の富山湾ですが、水深は駿河湾が2500mと一番深いこともあって、沼津や西伊豆では深海に生息するタカアシガニや色々な深海魚が名物というのも納得です。そして“天然のいけす”と呼ばれ、氷見ブリや白エビ、ホタルイカで知られる富山湾は水深1200mとのこと。三大深湾のどの湾も、それぞれに魚の宝庫です。
 5年前、2020年に初めて小田原漁港に行った時は、漁港の無料駐車場に停めて、既に早朝のセリの終った魚市場の2階にある行列店の「魚市場食堂」で食べたのですが(第1563話)、ネットでの評判程の感激が我々は無かったので、二度目となる2021年は小田原漁港仲卸「やまや水産」直営という漁港隣の地魚専門食堂「めし家やまや」へ(第1653話)。
この「やまや」はL字型のカウンター席のみ10席ちょっとの本当に狭い店なのですが、若い店主のお嬢さん始め、女性中心のスタッフの働きぶりがきびきびしていて実に気持ちが良く、そして何よりここで食べた10数種類の地魚が載った“海鮮どど丼”が新鮮プリプリで絶品だったので、その翌年も「やまや」へ向かったのですが、その日はナント「本日臨時休業」の貼紙。
そのため止む無く他店を探すことにしたのですが、同じビル「小田原水産会館」の一角にある鰺専門店「大原」(アジフライの評判店の由)は大行列で、一時間待ちとのことで諦め。すると同じビルの奥に在った「港のごはんやさん」という食堂(第1726話)が運良く席が空いていたので入店。こちらは朝から営業されていて、早朝のセリが終わった漁港関係者の方々に人気のお店とか。ですので、必ずしも観光客相手ではない食堂の様でした(皆さん海鮮ではなく、カレーとかトンカツとか“普通”の定食を食べていました)が、そこはさすがに漁港の店で、我々が頼んだシラス丼とアジフライのセットも本当に美味しかったのですが、一昨年は二年越しでしたので念願の「やまや」の海鮮どど丼を頂きました。
 そして昨年は予定していた日は箱根が大雨で、あまりの土砂降りでホテルから出るに出られずに泣く泣く諦めたので、今年もやはり二年ぶりのリベンジで、迷うことなく「めし家やまや」を目指すことにした次第。
そこで今回は早めにホテルを出発し、「やまや」に到着したのが11時の営業開始30分前の10:30でした。
店頭に置かれた順番表に名前を記入すると、ナント3番目。先客はお一人様のお客さんだったので我々が3人目と4人目ということで、この日が平日だったということもあるかもしれませんが、これなら有難いことにL字型のカウンターは10席ちょっとですが(全12席だったか?)一巡目で食べることが出来ます。
11時の開店時間になって暖簾が掛けられるとリスト記載順に名前が呼ばれ、右側のカウンター席から順に詰めて着席し、その順番通りにオーダーもしていきます。
勿論我々のチョイスは、昨年は箱根が大雨でホテルから一歩も出られず諦めたので、今回も夢に見た・・・我々イチオシの「海鮮どど丼」とアジフライのサービスセット(税抜き2200円)一択です。
最初のお二人は常連さんなのか、煮魚定食やブリ丼を注文されていたので、この日の「どど丼」は我々が最初の注文で、最初の方々の注文の調理が終わってから我々のどど丼用の刺身をそれぞれの柵から一切れずつ切っていくので、提供されるまでにはそれなりに時間が掛かります。でもカウンターなので、一人で刺身を切る大将(まだ若いお嬢さんです)やフライや小鉢汁物を担当する他のスタッフのきびきびした仕事ぶりが眺められるので、待つのも“然程”飽きません(と言うのも、お隣のグループは、待っている間に昼間からビールやサワーを何杯も注文されていて、帰りに奥さまが箱根の山道を運転するのは絶対にイヤだというので、飲めない私メは何とも羨ましくて、「早く“どど丼”来ないかなぁ・・・」)。
この日の“海鮮どど丼”に盛られた地魚10数種類を、今回もマグロのほほ肉(写真ではワサビの左側)から始まって、時計回りにヒラメ、ホウボウ、タイ、アジなど順番に店長さんが説明してくれるのですが、やはり残念ながら全部は覚え切れません。
どの地魚も新鮮でプリプリで、夫婦共々大好きなヒラメを始めどのネタも本当に新鮮で美味しいのですが、中でも何種類もあった鯛の中の“〇〇ダイ”(“石鯛”だったか“花鯛”だったか・・・聞いても毎度覚えられず)と地物のアジは、それこそプッリプリでコッリコリと本当に新鮮で身が締まっていてまさに絶品!でした。こんなアジが食べられただけで本当に満足です。
それにしても、さすがは“日本三大深海”相模湾の地魚です。その十数種類の地魚の中の奥さまの苦手な光り物はいつも通りに私が頂戴するのですが、この日のアジは実際に臭みも全く無くて本当に美味しかったので、「騙されたと思って食べてみたら!?」と家内にススメると、光り物が苦手な奥さまも、
 「あっ、美味しい!これなら食べられる・・・」
と、生まれて初めて美味しく感じたそうです(これまでで、家内が苦手というネタを食べられたのは、今回のアジと以前南紀白浜で食べたモチガツオだけではないでしょうか)。
そしてサービスセットに二枚付くアジフライ。メインではないので多少小振りではあるのですが、タルタルソースで(好みでカウンターのトンカツソースでも)戴くのですが、低温の油でじっくり揚げられたせいか、サックサクでふっわふわ。やはり地物のアジの鮮度と美味しさは、“海無し県”の山国信州人からすると本当に羨ましくて溜め息が出る程で、近年いくら流通が発達したとは言っても、同じアジとは思えぬ程の全く以て“別物”でした。
“海鮮どど丼”のご飯は酢飯で、普通盛りか小盛か事前に聞いてくれるので、この日は二人共普通盛りにしたのですが、さすがに家内は残さず食べるのに必死で、「もう今日は夕ご飯は要らない!」と言う程に満腹になった由。
今回も本当に満足満腹の、念願だった「めし家やまや」の“海鮮どど丼”とアジフライでした。
 食べ終わってから、BBQ用の牛肉は「相原精肉店」でもう買ってあるので、すぐ近くの青果店・鮮魚店・土産物店・飲食店などが集まっている「小田原さかなセンター」の「海鮮BBQ」の店でイカやイイダコなどの海鮮串と、「まぐろや」で生でも食べられるというマグロのカマをBBQ用に購入して、発泡スチロールの箱に保冷材も入れてしっかり梱包してもらって持ち帰りました。
余談ですが、この発泡スチロールの箱は、帰る前に次女の家様に購入した「相原精肉店」のローストビーフとミートローフを入れて(松本までは、お土産に購入した場合の干物や蒲鉾用にちゃんと大きな保冷バッグを持参して来ています)、松本からクール便で送るのにちょうど良い大きさで役立ちました。
 小田原漁港からの帰りに、奥さまが今回の旅行に持って来る本を忘れたというので、小田原駅の駅ビル「ラスカ小田原」の本屋さんで代わりの本を購入。そして隣接する「ミナカ小田原」の喫茶店で少し休憩してから箱根へ戻りました。
この「ミナカ小田原」は、旧小田原宿をイメージしたという「小田原新城下町」からなる商業施設だそうですが、木曽の奈良井宿や妻籠宿の様な文化的価値は全く無いとしても、箱型の近代的なビルを建てるよりも、城下町としての再生化にはむしろ似つかわしくて、観光客の集客効果もある商業施設だと思います。
ですので、現在松本はパルコ撤退や地場のデパートの閉館などに伴い駅周辺の空洞化対策が叫ばれていますが、同じ城下町であるこの小田原の「ミナカ小田原」や3年前に行った彦根で、同様に江戸時代の城下町をイメージしたという白壁と黒格子の町屋風に統一された街並「キャッスルロード」などを見倣って、単純に商業施設を誘致するのではなく、またお金をそれ程掛けずとも、縄手通りの様な江戸時代の長屋風でも良いので、松本城を活かす取り組み、城下町らしさを持った活性化に拠って、松本駅から松本城までの回遊が楽しめる様な“お城を中心とする城下町づくり”の方が好ましいのでないかと感じた次第です。

 昨年は残念ながら、店舗ビル改装のための長期休業中で購入出来なかった、箱根の別荘族に人気の「相原精肉店」。
今回の箱根行では既に改装なって営業されていたので、行きと帰りと二度買いに行きました。

ワンコが居るので、駐車場でワンコたちと待っていたのですが、以前の外観は如何にも“町のお惣菜屋さん”風のお店だったのが、奥さまに依ると随分キレイに、そして箱根らしくオシャレな雰囲気に改装されていて、以前は表裏双方から入れた入口が表の一か所だけになっており、店内は一階に在った他のテナントが居なくなって、相原精肉店だけの売り場になっていて随分広くなったとのこと。
 今回は箱根に来た初日に訪問し、先ずはその日のホテルでの夕食用に、名物のローストビーフとミートローフを購入です。
奥さまに依ると、ローストビーフは種類が以前よりも増えて三種類になっていて、今回は脂の刺しが一杯に入ったモノと赤身のモノとの中間を購入したとのこと(それでも軽くグラム1000円越えです)。そして、「焼き」と「煮込み」の二種類あるミートローフは今回は煮込みを買ってみた由。
更に、今回は後日キッチン付きの部屋でホットプレートを借りてBBQをする予定なので、本来“精肉店”ですので焼き肉用の足柄牛のミニステーキなどの牛肉も併せて購入しました。
 その日の夕食。この日は移動で疲れたこともあり、またワンコたちも一緒ですので、早速買って来たローストビーフとミートローフと野菜サラダで、キッチン付きのドッグヴィラで部屋食での夕食にしました。
先ずはローストビーフ。機械切りで極薄ですが、柔らかくて美味!でも、出来ればもう少し厚い方が、もっと食べた時の満足感がUpする気がします。
そして煮込みミートローフ。記憶にある前回(焼きだったのか?)よりも味が濃くて旨!イヤ、これは美味しい、なかなかの逸品です!
箱根の別荘族だけでなく、遠方からも買いに来られるというのが良く分かります。
因みに、後日ホットプレートで焼いた足柄牛のミニステーキや焼き肉用の牛肉も、臭みも無く柔らかくて美味しかったこと!しかもグラムがナント400円台だった由。
 そこで、箱根から帰る最終日にまた「相原精肉店」に寄って、自宅での焼き肉用のミニステーキと、横浜の次女一家用にもローストビーフとミートローフを肉好きの家族4人なので少し多めに買って(〆て20000円也!)、松本に着いてから早速クール便で横浜へ送ってあげました。
因みに、前回の機械切りが薄かったので「もう少し厚く」と家内がお願いしたら、機械ではなく手切りで厚めに切って頂いたとのこと。グラムの価格は手切りでも変わらないので、その分手間を掛けさせてしまったと奥さまは恐縮しておりました。申し訳ありませんでしたが、おかげさまで次女一家にも大変好評だったことを申し添えます。ありがとうございました。

 箱根湿生花園周辺にはペットOKのレストランが無い(仙石原でテラス席がワンコOKのレストランでは、以前レストランでの飲食だけでも入場出来た星の王子様美術館は閉館、インド料理のアズール・ムーンは、味はともかく非常に不愉快な対応をされた経験あり)ことから、ワンコと一緒にランチを食べるために芦ノ湖へ下りました。
観光地である箱根もご多分に漏れず、ワンコOKというレストランは多くありません。
因みに、何度も繰り返しますが、飽くまで我々がこれまで経験した中ではありますが(長女や奥さまに依ると、米国はNYもLAもどこへ行ってもDog Friendlyで素晴らしいとのことですが)、この国では残念ながら軽井沢以外には“ Dog Friendly ”だと感じた観光地は今のところありません。

 さて、芦ノ湖周辺でペットOKというレストランの内の一つ、「ラ・テラッツァ 芦ノ湖」は芦ノ湖畔に在る人気のイタリアンレストランです。
ワンコとは芦ノ湖を一望できる開放的なテラス席で食事を楽しめます。しかし、この日は平日ですがインバウンドの観光客でどこも混んでいて、陽気も良いことからレストランのテラス席も30分待ちとのことだったので、一応名前を書いてから他の店も当たってみることにしました。
次の、こちらも湖のほとりにある「ベーカリー&テーブル」も行列が出来る人気店で、1階は自家製のパンが並ぶベーカリーとテイクアウトのドリンクなどが販売されているパーラー、2階がカフェ、3階がレストランになっているのだそうで、ペットを同伴できるのは1階のテラス席なのですが、こちらも満席。
そこで、家内を待たせて、昨年もコユキも連れて入った国道1号線沿いの「箱根唐揚げKARATTO(カラット)」へ席があるかどうか見に行ってみると、まだ空席があって大丈夫そうでしたので、家内を呼びに行って結局今年もこちらで食べることにしました。
 「KARRATTO」は箱根では貴重な、テラスではなく店内でワンコと一緒に食事を楽しむことが出来るレストランで、店内には店の看板犬(白い小型犬ですがこの日は寝ていたのか見当たらず)と看板猫の黒猫が居て、ニャンコは自由気ままにくつろいで時々店内をチェックするかのように歩き回っていました。
この日の店内は外国人観光客ばかりでしたが、カート毎入店して入口近くのテーブルに座ることが出来ました(その後、何組か来てすぐに満席、順番待ちになりましたので、我々はラッキーでした)。
店内にはワンコ専用の水のボールもありますので、コユキとクルミにおやつを上げてから、水も飲んでカートの中で休憩。隣のテーブルに座ったフランス人と思しき母娘(?)のから尋ねられて喜んで承諾すると、お母さんがコユキとクルミの写真を撮っていました。
注文は、昨年コユキと一緒に来た時は、他で既に食べた後で込み合うランチタイムにドリンクだけでは申し訳なかったので、夕食用にテイクアウトをお願いしたのですが、今回もそのチキン&チップス(1000円)とフィッシュ&チップス(1000円)、そしてドリンクには家内が神奈川県産茶葉100%使用した箱根山麓紅茶(ホットのみ)と、私メはメニューには記載が無かったのですが、お聞きしたらあったのでノンアル・ビールをオーダーしました。
この店の唐揚げは、ハーブと白ワインに漬け込んだというチキンの下味が独特で、またフィッシュフライも箱根らしくアジを使っているのか(?未確認ですが、通常の白身のタラとは違ったような)フワフワで、チキンは添えられてくる白ワイン漬けというクリームチーズを載せて、またフィッシュ用には自家製タルタルソースを付けて頂くのですが、どちらもとても美味しかったです。
お店はスタッフの女性二人だけで切り盛りされているので、小さなお店ですがサーブには少々時間が掛かります。でも応対は気配りもあり居心地の良い店ですし、何より箱根ではとても貴重なワンコと一緒に店内で食べられるレストラン。ワンコ連れには本当に有難い、そんな貴重な存在の「箱根唐揚げKARATTO」でした。

 初めて訪ねたのが7年前の秋。そして昨年の春に二度目の見学をしたポーラ美術館。この日は一日雨予報だったので、ヒメシャラの森の1㎞にも及ぶ木道の遊歩道散策は無理ですが、館内でじっくり名画を見て、その後でゆったりと雨に煙る外の森を眺めながら喫茶室でノンビリするのも良いだろうと、この日三度目の訪問になりました。
 これまで訪ねた美術館の中では、個人的にはこのポーラ美術館と山種美術館が一番のお気に入りなのですが、例えば広尾の山種美術館などは月曜日が定休日で、以前知らずに訪ねて休館だったことがあった(事前にちゃんとチェックしなかったこちらが悪い)のですが、ポーラ美術館は企画展の開催期間中は無休とのこと。
ポーラ美術館は箱根という観光地に在るので、都会の美術館と違い、箱根には観光で来て滞在日程が限られる観光客にとって(企画展の期間中)無休というのは本当に有難い限りです。その代わり、その企画展が終わると、次の企画展への展示作品の入れ替え作業のために10日間程休館するのだそうです。

 このポーラ美術館は創業家の2代目の方が数十年に亘って収集した美術品約9500点を展示するために、「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに2002年9月に開館した美術館で、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソといった西洋絵画を中心に、黒田清輝、岸田劉生、杉山寧など日本の絵画、東洋陶磁やガラス工芸から現代アートに至るまでの、世界的な評価の高い作品1万点を収蔵し、特に印象派のコレクションは日本最大級を誇ります。
しかし、この美術館の魅力はその収蔵作品だけではなく、箱根の国立公園の立地を生かして、ヒメシャラやブナなどの広葉樹林の中に全長約1kmにも及ぶ木道の遊歩道が設置されていて、林間に置かれた彫刻などのオブジェとその見事な大木のヒメシャラの林の中を、風の音と小鳥のさえずりを聴きながら、四季折々、例えばこの時期なら山桜や馬酔木の花と木々の芽吹きを愛でながら散策出来ることです。
ビル街の中に在る都会の美術館では決して味わえない、箱根の仙石原の森に在るからこその贅沢な癒しの時間であり、ここでは絵画鑑賞だけではなく素敵な森林浴をも楽しむことが出来ます。まさに“自然との共生”が実現されているのです。
 今回の開催されていたのは、「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」と題した企画展で、その説明に依ると、
『近代から現代までの美術家たちが獲得してきた「色彩」とその表現に注目し、色彩論や色を表現する素材との関係にふれながら、色彩の役割についてあらためて考察するものです。チューブ入りの油絵具を巧みに扱い、さまざまな色彩によって視覚世界を再構築した19 世紀の印象派や新印象派をはじめ、20世紀のフォーヴィスムの絵画や抽象絵画、そして色彩の影響力によって観る者の身体感覚をゆさぶる現代アートにいたる近現代の色彩の歴史を、おもに絵画や彫刻、インスタレーションによって読み直します。』
とのこと。
モネやルノワールの印象派に始まり、新印象派、20世紀のフォーヴィスムや戦後の抽象表現主義など、近代から現代にかけて、3つの展示室に分けて3部構成により西洋美術の歴史を辿ることの出来る主要な画家の重要な作品が数多く展示されていました。
“色”については、19世紀になってフランスで誕生した色彩論の発展等もありますが、ピカソの「青の時代」の「青」やレオナール・フジタの「白」に関する現代科学に依る分析結果も大変興味深かったです。
 その中で特に印象に残ったのは、坂本夏子という方の作品でした。「タイル」と「シグナル」と呼ぶドットの有機的な「色」の組み合わせで描いて行く作品の、まるで日本画の花鳥風月にも通ずる様な、一瞬時が停まったかの様に無音の“静寂”を感じさせるその色彩の美しき緊張感・・・。

そして、スポットライトと組み合わされた「ステンドグラス」の背後の壁に映し出された色彩の不思議な幻影・・・。
「絵を描くことは、終わりのない課題を解き続けること」という坂本夏子女史。何だか“描く哲学者”と言ったら見当違いでしょうか・・・??
他の作家の作品でも「半透明な布を支持体にして、水を多く含んだアクリル絵具を布に沁み込ませた」というグオリャン・タンという作家の作品。「もしかしたら」と、何となく気になって会場に居たスタッフの方に尋ねるとちゃんと調べて下さって、結果は予想した通り「シンガポール出身の方だそうです」。
嘗てシンガポールに7年間暮らしてお世話になった身として、当時の現地の人たちは先ずは“衣食住”を豊かにすることに精一杯(と感じました)で、例えばシンガポール国立博物館に行っても作品は昔の中国や欧米の作家中心で自国の作家の作品などは無く、また毎月聴きに行ったシンガポール交響楽団(SSO)の定期でも聴衆は殆ど白人ばかりだった(因みに楽団員も殆どが欧米や中国出身の演奏家ばかりで、例えば当時のコンマスはシンガポールに移住したパヴェル・プラントル氏でチェコ出身。娘がピアノを習っていたマルチナ先生が奥さまでした)時代を知る者として、“衣食足りて礼節を知る”ではありませんが、2023年から日本フィルハーモニーの首席指揮者に就任したカーチュン・ウォン氏とこのグオリャン・タン氏も同様に、国が成熟してシンガポールでも漸く芸術分野にそうした才能ある人材が出て来たことを知って感慨ひとしおでした。
坂本夏子、グオリャン・タン始め、展示されている色彩のマジックの様な作品を見ていると、何だか不思議な色彩感覚に包まれるようでした。
その最たる世界として、今回の企画展の中にも草間彌生の「無限の鏡の間 ―求道の輝く宇宙の永遠の無限の光」と題された2020年の作品を展示した個別の部屋があり、時間限定、人数限定でその部屋に入室して鑑賞出来るとのことで、そこだけは順番待ちの行列だったのですが、松本市美術館でも見られる作品同様に、今回は特に息苦しくて耐えられる自信が無い様な気がして家内共々遠慮しました。
また企画展とは別に、今回のコレクション展として、ポーラ美術館が新たに収蔵したというピカソの版画芸術の最高傑作とされる『ヴォラール連作』全100点などが展示されていてこ、ちらも見応えがありましたました。
 このポーラ美術館で有難いのは、最近では他の美術館や絵画展でも少しずつ増えては来ましたが、多くの絵画作品がフラッシュ無しでの撮影がOKなこと。展示では撮影禁止の作品のみNo Photoのマークが付いています。
コロナ禍の影響もあったようですが、クラシックコンサートでも同様に(最近のコンサートでは、カーテンコール時のみ撮影OKという演奏会が都会では増えています)、SNS等で写真を掲載して貰うことで拡散して集客に繋げようとの狙いだそうですが、本当に良いことだと思います。
コンサートホールも美術館も上品ぶって“お高く”留まることなく、(モナリザさえも撮影OKのルーブルを始めとする海外の美術館同様に)お客目線に立って如何に喜んで足を運んでもらうか、更に子供たちも含めて今後のファン層拡大に如何に繋げるか・・・の方が、経営面においても遥かに重要だと思います。
この箱根には「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」をはき違えた様な、二度と行く気にもならない成金趣味の“これ見よがし”の美術館もありましたが(どうやら有名作品を所蔵していること自体に意義≒自慢に感じておられているのか収集の中心軸がハッキリせず、また展示内容でも例えば重要美術品だという銅鐸や埴輪に考古学的に重要な情報である出土地が記載されていないなど、学術的な作品紹介や時代背景等の解説が不親切だったり、展示品リストの通し番号が展示作品自体には書かれていなかったりとお粗末の一言)、そことこのポーラ美術館とではその精神に雲泥の差を感じます。
 国立公園の林の中に佇む様に建てられたポーラ美術館。景観を圧迫しない様に、周囲の木々よりも低い地上高8mの高さに収められたという、地上2階地下3階という5層の建物で、建物そのものも作品でしょう。最上階である2階に入口があって、そこからエスカレーターで下って行く構造です。
地下2階の常設展の展示を見終わり、地下1階の「CAFE TUNE」へ。斜面を活かして、自然光も取り入れられた地下1階とは思えぬ開放的な空間で、天井までのガラス窓が開放的で、その向こうにはヒメシャラの森が拡がるオシャレで素敵なカフェです。
前回は1Fのレストラン・アレイで優雅にランチをいただきましたが、今回はしっとり濡れた雨の森を眺めながら、絵画鑑賞後ノンビリゆったりとカフェタイムを楽しみました。

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