カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 彦根には朝早く着いたので、彦根城見学の前に朝食を取ってから行くことにしました。
事前にチェック済みの奥さまが選んだのは、彦根城の外堀沿いにある「ポム・ダムール」というベーカリーカフェ。朝9時オープンで、ちょうどその時間に到着しました。
外にフランス国旗があり、中はコンクリート打ちっ放しでオシャレな雰囲気です。モーニングメニューの中から、ドリンク付きのグランという焼き立てのパンとのセット(¥700)をチョイスしました。季節のサラダとベーコン、焼き立てのパンが三種類で、レンゲの様な三つの器に盛られたパンに付けるバターやブルーベリーのジャム、ハチミツがオシャレです(野菜の横に添えられていたカボチャのポテサラ風サラダが面白い!)
当然ですが、パンが美味しい!気に入られた奥さまは何種類かのパンも購入して(我々が朝一番故、まだ焼き上がったパンの種類は少なかったのですが)、いざ登城と相成りました。

 お城の見学が終わり、先ずは「ひこにゃん」のショーが11:30まであるというので、その会場へ向かいます。
江戸時代の城下町をイメージしたという、白壁と黒格子の町屋風に統一された街並みの「夢京橋キャッスルロード」を通り、途中で「4番町スクエア」へ。この4番町スクエアは「大正ロマンあふれる街」をキャッチフレーズに街づくりがされたのだそうです。ひこにゃんのショーが終わり、ちょうどランチ時。
途中のキャッスルロードにも、土産物屋さんやお菓子屋さんなどと共に、色んなジャンルのレストランが軒を連ねていました。また、お城近くには「たねや」のお店もありましたし、この4番町スクエアにも色々なお店があります。
勿論、彦根にも“三大和牛”近江牛の食べられるお店や、更には彦根がご当地麺「近江ちゃんぽん」という和風だしのちゃんぽん発祥の地とかで、その「近江ちゃんぽん」が食べられる店も何軒もあったのですが、結局選んだのはここも奥さまの事前調査によるご希望で、4番町スクエア内にあった「ジルモーリオ ディ バンブ」というパスタと創作料理の店。店名の“Germoglio di Bambu”とはイタリア語で“タケノコ”という意味だそうで、お店のH/Pに依れば「母親のような暖かいお店にと、私の母の名をイメージした店名にしました」との由(勝手に想像するに、お母上は“竹子”さんなのでしょうか)。店名の由来からも推測される通り、こちらのオーナーシェフは女性。その創作性とテキパキした仕事ぶりが、何となく松本の「食蔵バサラ」とダブります。
平日木曜日のランチタイムでしたが、予約席を含め10数席あるテーブルは既に満席で、我々は厨房を臨む5席のカウンター席へ。人気店の様で、しかも殆どが(この日は全員!)女性客。私たちよりも早く、カウンター席で一人で食事をされていたお客さんは、お子さんたちが学校に行かれている昼間の外出ついでに食事をされたのか、食後のコーヒーを飲みながら静かに読書をされていて、その女性らしい優雅な雰囲気が店内の雰囲気にとてもマッチしていました。
スタッフも接客態度が感じの良い女性で、確かに老若問わず女性に人気が出るのもナルホドと納得出来ました。
しかも驚くべきはそのメニューです。客層のメインである女性向けのランチタイム故かもしれませんが、コスパ抜群!
選べるサラダセット1150円、スープセット1200円、サラダ&スープセット1500円、前菜セット1700円。しかも、ちっちゃい子連れの若いママ友さん方が喜ぶであろう、お子さまセット700円まで用意されていました。
我々は、私メが選べるサラダセットと生ビール、奥さまは前菜セットで、5種類のサラダの中から、私はゆで卵のシーザーサラダ風、家内はいろいろ野菜のサラダをチョイス。そして、二人共パスタで、この日用意されていた5種類のメニューの中から、私がナポリタン、家内はシラス高菜豆腐のペペロンチーノをそれぞれ選びました。
そして、そのボリュームにも驚き。サラダだけでも十分な量で、他店の一般的なサラダの倍はあるでしょうか。またパスタも、ナポリタンが普通のナポリタンに非ず。むしろトマトソースと言った方が適切。単純にケチャップソースだけで炒めたのではなく、自家製かどうか分かりませんが甘味が抑えられたトマトソースをふんだんに使っている様に感じました。メニューにはトマトソースのパスタもあったのですが、一体このナポリタンとどう違うのか興味が湧きました。
家内の頼んだシラス高菜と豆腐のペペロンチーノは、素材を考えれば納得ですが、パスタメニューの中に和風が無いと思ったら、このペペロンチーノが単純にニンニクと唐辛子の効いた一般的なペペロンチーノではなく、ほんのりと醤油をベースに効かせた和風味(最後の写真で、ナポリタンの横の小皿に盛られているのが家内の頼んだペペロンチーノのお裾分け)。
セットランチが「お好きなパスタorご飯もの」とあるのですが、その“ご飯もの”がリゾットの他に「豚のパリパリ丼」。何でもお店で使っているお米は、シェフのお父上が育てられている多賀産の近江米なのだそうです。他にもきっと地産地消に心掛けておられるのでしょう、料理が盛られた素敵な器も地元の信楽焼とのことでしたから。
イタリアンやトラットリアではなく、“パスタと創作料理の店”としていた意味が何となく分かった気がしました。
写真を撮り忘れましたが、最後の自家製のデザートもそのコスパはハンパ無しで、奥さまの「本日のデザート2種」もたっぷりの生クリームが添えられたシフォンケーキとジェラート。私メが、甘くないカラメルソースのプリンでした。そしてランチセットのドリンクとして、家内が紅茶、私メがコーヒー。
家内の前菜セットが1700円で私メのサラダセットが1150円です。いくらランチの奥様族相手とはいえ、コスパ良過ぎではないでしょうか。しかも、安かろうではなく、料理も手が込んでいて、接客も丁寧で、店内もオシャレで・・・。これなら女性人気も至極当然。彦根に限らず、どこでも人気店になれるでしょう。でも、ご実家産のお米もですが、出身地の近くの彦根だからこそ出来るのかもしれませんが。夜はお酒に合う様な一品メニューもある様で、飲み会にも良さそうでした。観光客相手ではない、こんな店が家の近くに在ったらイイでしょうね。
 この日、モーニングもランチも近江や彦根らしい郷土食を選んだ訳ではなく、或る意味どこにでもあるフランス風のベーカリーやイタリアンがメインの創作料理店だったのですが、そのどちらもがもし都会に打って出ても伍してやっていいけるような素敵なお店だったのです(個人的には、出来るだけ旅先ではその土地の“名物”を食べようと思うのですが、この辺が男性と女性の差か、はたまた単なる我々夫婦の個人差故か・・・?)。
彦根は軽井沢や鎌倉の様に都会から人が押し寄せる観光地ではなく、大変失礼ながら、たかだか11万人の地方都市です。それ故に、「それにしても、彦根はオシャレなお店が多い!」と夫婦共々感嘆しきりなのでした。もしかすると、新快速で50分足らずの京都から良い影響を受けているのでしょうか?
 「お城だけじゃなくて、松本、何だか負けてるよね!?」
イヤイヤ、決してそんなことは無いとは思いますが(但し、高校野球に関しては、春夏1回ずつ優勝している長野県に対し、まだ甲子園で一度も優勝経験の無い滋賀県ですが、片や過去の栄光にすがるこのところの長野県に対し、最近の戦績は滋賀県勢の方が圧倒的に良く、優勝も時間の問題か・・・)、街全体の一体感というか統一感というか、そんな雰囲気が彦根全体に感じられて、大いに街づくりの参考になると感じられた次第です。

 滋賀観光の初日に行った、奥さまの希望での「ラ コリーナ」。
事前チェックにより、そこでの奥さまの目的だったのが、「クラブハリエ」の2階にあるカフェで、焼きたてのバウムクーヘンでの朝食です。

週末などは長蛇の列で、売り切れで食べられないこともあるのだとか。我々は平日で、しかも9時のオープンから間もなかったこともあり、並ばずにすぐに食べることが出来て、念願叶った奥さまも幸せそう(・・・単純!)です。甘味が抑え目で甘過ぎず、4切れのバウムクーヘンは焼きたてで温かく、ふわふわと柔らかいので、これまでの一般的な固いバウムクーヘンのイメージとは全く違います。スポンジケーキの様に、添えられた生クリームを付けていただきます。焼きたてバウムクーヘンセットは、ドリンク付きで1000円。念願だった奥様へ二切れを進呈。全部平げられて、至極満足されたご様子でした・・・。
 八幡堀の屋形船でのお堀めぐりを終えてちょうど昼時になったので、近江八幡と云えば近江牛となのでしょうけれど、我々はまた日牟禮八幡宮に戻り、境内に隣接する「たねや日牟禮乃舎」に向かいました。
というのも、事前に色々ネットで調べた結果で、こちらも奥さまのご希望の店。しかも「ラ コリーナ」同様に「たねや」グループの店舗で、和菓子の喫茶室と和食の食事処を併設した風情あるお茶屋風の建物です。
「たねや」は、元々穀物類などの種子を商う「種屋」が創業で、明治になって和菓子店に商売替えをしたのだそうです。
「日牟禮乃舎」は甘味処と食事処に分かれ、一・二階があり、テーブル席を希望した我々は二階のテーブル席へ。
我々が選んだのは、家内が「野菜膳」¥2,000(税込)、私メが「たねや膳」¥3,000(税込)で、それぞれおこわと汁物に、野菜膳は季節の地物野菜、たねや膳は七種のおばんざい。最後に「和菓子」がデザートとしてそれぞれ付いています。因みに近江牛のステーキがプラスされた「たねや膳」(¥6000)もありました。
先ず、食前酒風にトマトジュレがイタリア製のオリーブオイルが入った小瓶と一緒に運ばれてきましたが、美味しい!(好みで、その後の料理にもオリーブオイルを掛けて食べても味が変わって楽しめるとの由。残ったオリーブオイルは持ち帰りOKで、店舗での購入も可能とのこと。奥さまが気に入ってトマトジュレを買えるか伺うと、店舗にもトマトゼリーがあったのですが、食事用のトマトジュレとは異なり、デザートでかなり甘いとのこと)
両方に共通で、近江名物という赤こんにゃくやキヌアなどを刻んで混ぜたおこわ、和菓子屋さんらしく珍しい小豆の佃煮、温泉卵、汁物が運ばれてきました。
そしてメイン料理として、すき焼き風の郷土料理という近江牛のじゅんじゅん、丁子麩の辛味噌和え、青葉のお浸しは双方に共通で、「野菜膳」がこれに季節の野菜の煮物としてタケノコとジャガイモ。
「たねや膳」は、プラスして赤こんにゃくの刺身(オリーブオイルを掛けて)、タケノコの煮物、豆の煮物、ブロッコリーの煮物。それと、特製のクラフトビールを追加。
おばんざい故、料理はそれぞれが小皿に盛られているのですが、おこわをしっかり噛んで食べるせいか、見た目以上にお腹一杯になりました。滋賀県は京都に近いせいか、全体に京風な感じがします。近江名物という赤こんにゃくは「はぁ左様か・・・」というだけで特段美味しくも無し。おばんざいの中では、お麩の辛子味噌が美味でした。最後のデザートは、元々の和菓子屋さんらしく、「日牟禮乃舎」限定という「日牟禮餅」。こし餡を蓮の粉生地で包んで、きな粉をまぶしたわらび餅の様なお菓子でした(こちらも奥さまへ)。
 食事をして、同じ神社の境内に隣接した漬物屋さん「山上」で、地元野菜という「日野菜」やチーズの味噌漬けなど幾つかお土産用に漬物を買ってから、近江八幡の街並みを散策しながら駅に向かう途中で、「マルタケ西川」というレストランも併設した精肉店があったので、こちらでこの日の夕食用に近江牛を購入して帰りました。2階のレストランも順番待ちの様で、一階の精肉店で買い物をされる地元の方々も含め、店内はとても混んでいました。
今回も泊まりはキッチン付きのドッグヴィラで、せっかくの滋賀県ですので、ここはやっぱり近江牛を買って、この日の夕食はしゃぶしゃぶを楽しむことにしました。
 それにしても、何だかどこに行っても「たねや」だらけの様な気がして、
  「凄いなぁ、大したもんだなぁ・・・」
と、素直に感心したのでありました。

 長女が翌朝のフライトに備え、空港で見送る家内と二人で前日に羽田へ出立するために我々は一泊だけでしたが、次女たちはせっかくだからと「金宇館」に二泊しました。
前日我々はチェックアウト後、久し振りに二人だけでの観光や街ブラを楽しむ様に次女夫婦を松本城で降ろし、我々は孫を連れてマンションへ行き、家内と長女で孫をお風呂に入れ、昼過ぎの列車で羽田に向かう長女と家内を松本駅で見送るべく、孫も一緒に車で駅に行って次女夫婦と合流して、あずさで東京に向かう長女たちを松本駅で見送りました。
 「元気で行っておいで!」

 次女夫婦は、当初せっかくの松本なので、そば懐石など二日目は市中のレストランで私も一緒に食べるという前提で、二日目の夕食を宿には頼んでいなかったのですが、二人共日頃の仕事や育児の疲れもあって、外食ではなく二日目も旅館で食べようかとなったのですが、しかし宿側も客数分の食材しか事前に注文していないので急な依頼には対応出来ないとのこと。
そこで止む無く、私メがプライベート“ Uber Eats ” として(自転車ではなく車で)デリバリーすることになりました。

 松本市内でテイクアウト可能なレストランリスト「城町バルTOGO」という専門サイトもあるので、それを含め(あまり遠いと買いに行くのも大変なので)私メの住まいと宿周辺のお薦め店を幾つか追加して紹介しました。
例えば、近くのウナギ割烹「観光荘」(岡谷が本店です)、昔からのトンカツの名店「かつ玄」、栗おこわの小布施「竹風堂」、それと幾つか市中の和食の割烹やホテル内のレストランなどなど。併せて(興味があれば)“松本B級グルメ”の代表格として「たけしや」の焼きそばもあるヨ!と付け加え・・・。
すると次女たちが選んだのが、ナント「たけしやの焼きそば」を一度食べてみたいとのこと。ホントにそれでイイの?と何度も念押しして確認した上で、LINEで参考までに家内に一応報告すると、烈火の如く、
 「んもー!せっかくなのに、どうしてそんなモノを紹介したのヨ!?」
 「・・・・・・・・・」
 「じゃあ、焼きそばだけじゃいけないから、デパ地下でサラダを買って一緒に持って行きなさい!!!」
との仰せに、
 「へへぇ~、かしこまりましたーっ!」

 一応事前にメニューを知らせ、彼らの希望を聞いた上で「たけしや」に電話をして予約注文し、テイクアウトの時間も併せて連絡。
その時刻に合わせ、事前にローカルデパート(といっても松本にはデパートは一軒しかありませんが)のデパ地下へ。買い物はサラダだけなのですぐに済みますが、路上駐車はいけないだろうと、買い物をすれば指定駐車場は無料になるので、デパート横の駐車場へ停めてデパ地下へ。するとあろうことか、総菜コーナーのサラダは全て売り切れで全然無し・・・って、まだ夕食前の夕方5時ですよ!(都会なら、これから仕事帰りの若いお母さん方が来られて、色々お総菜を買って帰る時間でしょうが!!)「えっ!?」と絶句して、止む無く何も買えずに戻ったのですが、駐車場代・・・僅か5分足らずで300円・・・(これにも絶句)。
 「あぁ、こんなんじゃ自分で自分の首を絞めてる様なモンだよナァ~、田舎のデパートは・・・」
と、これまた絶句!(経営者は果たしてこういう実態を分かってるんでしょうかね?)
と、それはさておき「たけしや」へ。
 お願いした時間の5分前に着いたのですが、熱々でちょうど調理が完了して容器に入れていただいたところ。オーダーは彼等二人共全部入りの「スペシャル 大盛り」、ついでに久し振りで私メも、この“どさくさ紛れ”に便乗させてもらって「肉野菜 大盛り」で、〆て3500円也・・・。
 「横浜からのお客さんに、松本B級グルメの“代表格”って勧めたら、どうしても食べたいって言われて・・・」
すると、女将さんだけでなく、調理場から娘さんもわざわざ出て来られ(以前はご主人が調理をされていましたが・・・)、
 「それは、どうもありがとうございます!」
と、お二人で見送ってくださいました。
途中、惣社にある地場スーパーの総菜コーナーに立ち寄り、ドレッシング付きのサラダもちゃんと二つ買って「金宇館」にお届け・・・です。
(後で考えたら、イオンモールへ行けば、総菜コーナーに量り売りを含めて色んな種類のサラダがあったのですが、“後の祭り”)
 戻り、一人でホントに久し振りの「たけしや」の焼きそばと缶ビールを片手に舌鼓。この太麺と、少し酸味の効いた独特の焼きそばソース。彼等の分も含め、個々の好みに対応出来るようにと七味唐辛子はちゃんと別の小袋に入れていただいてありました。
イヤ、懐かしい!イヤ、旨い!で、大盛りも瞬く間に完食!
するとLINEが届き、次女たちも完食した空の容器の写真と共に、
 「美味しかったヨー!ありがとう!!」
早速、自慢気にその写真を家内に転送したことは言うまでもありません。
 「・・・んまぁ、だったらイイけどね!」
 すると、長女から、
 「安政2年創業という、江戸前で一番古い芝のお寿司屋さんで食べたヨー!」
とのLINEが写真付きで・・・。
 「えっ、そりゃまるで“芝浜”の世界だなぁ・・・。アナゴとコハダが美味しいだろうね、きっと!?」
 「“お任せ”で頼んだけど、もう両方共食べたヨー!スッゴク美味しかった!」
ムム、この差は一体・・・?

 まっ、イイかぁー・・・「たけしや」最高!
久し振りで、あぁ、旨かったー!ごちそうさまでした!!
(娘も、日本最後の夜の老舗の江戸前寿司にきっと満足したことでしょう!!)

 お風呂の後は、「金宇館」での一番の楽しみだった激励会を兼ねた夕食です。
改装前と同様、金宇館は一階にダイニングルームがあるのですが、赤ちゃんがいる我々は、他のお客様の迷惑にならぬように、我々だけで二階の小さめのダイニングルームで頂くことが出来ました。時間も、通常夕刻6時からの夕食タイムをずらして、我々は7時にお願いしました。

 以前リニューアル前に何度か会食で利用させていただいた時も、全てを4代目が創られる懐石料理に感激したのですが、休業中は更なる料理修行に出られたと伺いました。そして久し振りの今回の料理ですが、何となく以前よりも更に繊細さを増した料理になった気がします。こんな逸品を京都ならいざ知らず、この松本で頂ける幸せを感じざるを得ませんでした。
お品書きはなく、若い中居さんが一つずつ配膳される鉢毎の料理を丁寧に説明していただいたのですが、老化現象故か殆ど覚えられず、僅かな記憶と写真とでご勘弁ください(内容が違っていたらスイマセン)。
その微かな記憶の中で印象的だったのは、信州の早春の風味らしいフキノトウが、時に隠し味風に、揚げたり、刻んだり、炒めたりと調理法を変えて、上手くあしらわれていたこと。海無し県の信州故、全てとはいきませんが、出来るだけ信州で手に入る食材で地産地消に心掛けていることが伺えました。

 この日の懐石料理のコースは、先ず揚げたフキノトウを散りばめた茶碗蒸し(だったか?)の椀物に始まり、続いてタラの芽の天麩羅、八寸としてコゴミの白和えやワカサギの南蛮漬けなど、そら豆のすり流し、お造りとして馬刺しのヒレ、焼き物として春らしく鰆と新玉ネギの擦りおろしのソース、炊き合わせでタケノコと蕗の煮物、更に焼き物で信州牛のイチボ、写真を撮り忘れましたが〆にホタルイカの炊き込みご飯。そして、デザートとして桜のアイスクリームの全10品。
因みに、秋の新蕎麦の時期になると、季節の炊き込みご飯に代わり、4代目のご主人が打つ蕎麦屋顔負けの二八の手打ちそばが料理の〆になるそうですので、それも秋から冬に掛けての楽しみかもしれません。
 最初に長女と婿殿は松本エール、私メはプレミアムビール、家内と次女はソフトドリンクで長女の渡米の激励に乾杯です。私メは飯山の地酒水尾を追加。
料理もですが、盛り付けられた器も素敵です。
三人の男の子のお母さまでもある若女将も途中で来られ、「やっぱり女の子は可愛いですよねー」と次女の隣のベビーカー(自分たちのは車から降ろさずに、旅館で用意されていた物をお借りしました)で眠る孫の女の子をあやしながら、暫し二人で結婚前の勤務時代の航空会社談義。
ゆっくりと味わいながら1時間半。お腹よりむしろ心が先に一杯になるような、そんな料理の数々。心もお腹も満足満腹になりました。
 翌朝、同じ食事処での朝食。
安曇野産コシヒカリが木製(木曽のさわらか桧でしょうか)のお櫃に入れられて。それぞれ個人毎にお膳に載ったオカズが6鉢。若竹煮、山形村産の長芋のとろろ汁、独活のキンピラ、身欠き鰊、コゴミのクルミ和え、香の物。お味噌汁。最後に温かな餡かけ豆腐と食後のフルーツも。
いつもはご飯茶碗一杯もあれば十分でしょうが、こういう特別な朝食だとお替りも。おひつは足りなくなれば追加で持って来てくれます。全て完食し、
 「ごちそうさまでした!」
食事のあと、ラウンジで丸山珈琲をいただき、チェックアウト前にまた朝風呂へ。この日も一人だけで、まさに“湯ったり”ノンビリ出来ました。

 ご主人と若女将、そして若いスタッフとの何気ない会話や仕事ぶりの中で、金宇館のさり気ない(押しつけがましくない)ホスピタリティーを随所に感じることが出来ます。松本には他にもっと高級で豪華な宿もないではありませんが、個人的にはこの小さな温泉旅館の「金宇館」がベストだと思っています。また長女が帰国した折にでも是非泊まりたいと思います。
そしてここなら、ワンコたちを家に置いて来て、翌朝早く食事の準備に家に帰ることも出来ますので、ワンコ連れでしか旅行の出来ない我々にとって、「金宇館」が唯一ワンコ抜きで泊まりが出来る場所なのです。

 翌日のフライトで渡米する長女との思い出に残る「金宇館」での激励会。リニューアル後の営業開始のお葉書も頂いていましたが、ここで漸く新装なった「金宇館」に念願の宿泊をすることが出来ました。偶然にも改装を手掛けた地元の工務店が、24年前に我が家を建てて頂いた同じ工務店だと知り、これも何かの縁でしょうか。初めて泊まった次女夫婦も含め、我が家の皆が満足した「金宇館」でした。
チェックアウト後、ご主人と若女将に見送られ宿を後にしました。
 「お世話になりました。また来ます!」

 宿から車で下る坂からは、街並み越しに残雪の乗鞍岳を眼前に臨むことが出来、例え“つかの間”の短な非日常だったにせよ、正に文字通りの“束間の湯”に投宿した客人を優しく見送るかの様な、如何にも松本らしい眺めが拡がっていました。

 渡米前にどうしても一度長女を連れて来たかった、裏町の「はしご横丁」に在る“日本一小さなインド料理店”「DOON食堂印度山」。
 2016年3月にオープンした、松本には珍しい北インドの家庭料理の店。
その一風変わった名前のDOONというのは、インド人のご主人アシシュさんの出身地からの命名で、印度山というのはアシシュさんがお相撲さんの様に大柄なので四股名風に名付けたのだとか。
私が初めてこの店で食べたのが、開店から一年経った2017年の5月でした。その時に、お互い同じ会社にいたことを初めて知りました。今回は実に5年振りの再訪です。
その間、瞬く間にその本格的なインドの味で有名店となり、マスコミ等でも東京のキー局に取り上げられたり、異業種とのコラボや「松本カレーラリー」の中心メンバーとなったりと大忙しで、遂には、重いフライパンを振る料理人には有りがちな、肘を痛めて手術入院とその後のリハビリで暫く休業を余儀無くされたりと・・・。
一方、こちらもその後何度も来ようと思った(実際に何度か店には来た)のですが、スケジュールが合わなかったり、お店が休業されていたり、コロナ禍だったりとなかなか食べる機会が無く、今回渡米前の長女と家内も一緒に漸くランチに伺うことが出来ました。

 因みに、この裏町の「はしご横丁」というのは、嘗て“商都松本”の“夜の顔”として県内随一の賑わい(明治期には、裏町だけで置屋14軒で芸妓200人。その後最盛期にはスナック・バーが250軒)と云われた、謂わば“夜の街”「裏町」の再生のために、裏町商店街の人たちが協同組合を作って検討した結果、再活性化策として10年程前に誕生した10数軒の屋台村です。
中には成功し独立した店もある様ですが、一方で閉店した店もあり、夜のみ営業する居酒屋さんなどを除くと、現在昼間営業しているのはこの「印度山」のみとのこと(横丁対面の魚屋さん「魚長」に数台分の駐車場が確保されていますが、この辺りは一方通行ばかりなので、車で行く時は道順を事前に確認した方が良いでしょう)。
当時は、2坪程の小さなお店に3人掛けのテーブル席が2卓あるだけでしたが、人気店となってお客さんも増えたために、同じ様なスペースのお店を二軒増やして席数を増やして営業されておられましたが、我々が伺ったのは金曜日のランチタイムですが、直ぐに全部のテーブルが埋まりました。
 オーダーしたのは、娘と家内が、チキン、キーマ、豆のカレーのコンボセット(1400円)をコシヒカリからインド米であるバスマティ米(+100円)に変更。因みに、このバスマティ種というお米は、インディカ米の中でも特に“高級米”と謳われる米で、玄米そのものに若干の香りがあり、炊くと一層香りが強くなる「香り米」の一種で、インドやパキスタンなどカシミール地方で栽培されているお米なのだそうです。見た目、タイ米のジャスミン米よりも更に長細い感じです。アシシュさんに依れば、タイ米よりもパラパラとしているのだとか。
私メは、マトンタリー(1600円)にチャパティ(一枚100円)を追加。接客を担当されている日本人の奥さまから、注文を受けながら「(マトンカリーは)“マトンマトン”してますけど、大丈夫ですか?」と心配頂く声に、「シンガポールでしょっちゅうインド料理食べてましたから、全然大丈夫です!」。
それで、以前食べに来た時にシンガポールや偶然同じ会社にいたことなど色々話したので、奥さまも何となく思い出してくださったようで、しかも奥さま曰く、
 「アシシュは一度でも来てくださったお客様のことは決して忘れずに、私なんかよりもホントに良く覚えていますから・・・」
そういえば、その時に小学校低学年の息子さんがパパっと安産で会計を手伝っているのを見て、さすが!と感心したことがありました(インドでは二桁までの掛け算を暗算で覚えますから)。その息子さん、今6年生だったか、もう180㎝を超えてるとか(バスケか、バレーか・・・もしやってたら将来が楽しみ!)。
 5年前に来た時に教えて頂いたのですが、北インド料理で一般的なナンはタンドールという釜で焼くのですが、ナンやタンドーリチキンなどはその高価な釜を常備出来た本来は高級な宮廷料理であって、普通の家庭にはタンドールが無いので、一般的に普段家庭で食べるのは全粒粉を使った薄焼きのようなこのチャパティなのだそうです(乾燥する北インドは小麦文化でナンやチャパティが主食ですが、最近日本でも見掛ける様になった南インド料理はミールスやビリヤニに代表される通りに、高温多湿の南インドは稲作が盛んでお米が主食。昔、シンガポール経由でインドのチェンナイからバンガロールとムンバイに出張した時に、現地では毎日インド料理を食べましたが、シンガポールでいつも食べに行っていた、今は無き北インド料理店「モティ・マハール」の方が遥かに美味しかったですし、決して高級店では無かったのですが、あれ以上のインド料理にはいまだ出会えずにいます)。
更に、それぞれに付いてくる、ひよこ豆の粉を焼いた煎餅の様なのがパパドで、崩してご飯と一緒に食べるとパリパリして違った食感が楽しめるとのこと(個人的にはセットのライスや苦手なヨーグルトとかデザートも要らないので、今度からはカレー2種類とチャパティ数枚だけでイイかな)。
始めて食べる長女も家内もどうやら感激の様子。長女に至っては、東京でもこんな本格的なインド料理が味わえる店はなかなか無いとのこと。
 「へぇ~・・・、これが松本で食べられるなんて・・・」
アシシュさん曰く、
 「どうしても日本人向けに味を合わせてしまうから、我々インド人からすると“ちょっと違う”という風になるけど、ここは私のお母さんがインドで調合してくれるスパイスで、私の家庭の味そのもの。今まで私が日本で食べた中では、例えば銀座のインド料理店「ナイル」は本当の北インド料理でした。」
とのことでした。
余談ですが、本場のインドに逆進出した「CoCo壱」は、むしろ現地のインドの人たち向けにちゃんとアレンジしたメニューがあって、地元の方々にも人気なのだとか。実際に、アシシュさんも食べて美味しかったそうで、十分インドでもやっていけるだろうとのこと。
 以前松本で食べたインド料理店(既に閉店。ただ、ちゃんとサモサやチキン・ティカもある本格的な店だったんですが)は、油の使い過ぎで(しかも油が古過ぎて)閉口した家内も、家庭料理としての「印度山」のインドカリーは油の量が抑えられていて、むしろアッサリで気に入った様子。これなら大丈夫とのことで、また来たいとの由。お陰さまで、また食べに来れそうです。三人とも満足満腹で、
 「美味しかったです!ごちそうさまでした。」
 「これからは一人じゃなくても良さそうなので、また来ますね!」

| 1 / 85 | 次へ≫