カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 現在合唱が衰退している理由は必ずしも少子高齢化やコロナ禍だけではなく、他にも色々考えられるのではないかと思います。
例えば、昔から長野県は合唱が盛んな地域だったのですが、それが地元の松本のケースでいうと、初期の頃のサイトウキネン音楽祭での松本市内の小中学校の吹奏楽バンドの子供たちによる吹奏楽パレードでは、最後に松本城で行われる合同演奏で“あの世界のマエストロ”オザワさんの指揮で演奏が“出来る”ということが、それこそ子供たちの一生の思い出として、小中学校での吹奏楽人気を大いに盛り上げ、その結果小さな頃からピアノや才能教育でバイオリンに親しんだ子供も多い“楽都”松本の小中学校で、もし音楽系クラブに入るのなら「合唱よりも吹奏楽を!」という傾向になった様な気がします。
事実、嘗てはNコンの全国大会でも上位に入る長野県の小中学校もあったのですが、今では関東甲信越大会止まり。全国への出場校は小中校とも東京都の学校が殆ど独占しています(しかも全国大会でも金賞の常連で、その結果最近では特に小学校では毎年の様に+1校の増枠が関東甲信越ブロックに割り当てられているのにも関わらず・・・です)。
片や吹奏楽では、全国コンクールで金賞を取る中信地区の中学校や高校も(指導者次第ではありますが、その先生が異動するとその学校が)現れてきています。
 また全国的に見てみると、TVの影響も無視できません。
例えば、日本テレビの「笑ってこらえて」の中で「吹奏楽の旅」として、全日本吹奏楽コンクールへの挑戦する高校の吹奏楽部の練習模様が密着取材されて、“感動的な”ドキュメンタリー風に放送されていることも、“吹奏楽の甲子園”として人気に拍車を掛けた(その反動として、音楽愛好家である生徒たちの合唱への興味関心が結果的に薄れ、合唱部への入部が減った)様に感じています。
そして合唱事体でいうと、世の中に“アカペラブーム”を巻き起こしたと云われる、フジTVの“ハモネプ”と呼ばれる「青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ」の影響です。
事実、嘗て100名を超えていた大学の混声合唱団が現在は20名足らずとなっているのに対し、片や同じ大学のハモネプのサークルの団員は今や優に100名を超えているのだとか・・・。上手くいけばTVにも出て有名になれるかもしれないし、派手で今風の“カッコ良さげ”で何となく体育会系風の合唱団の様に厳しくは無さそうなのも、そうした人気の理由なのでしょうか?
私も昔TVで見たことがありますが、確かに中には感心する程上手いグループもありましたが、少人数故に個々人に掛かるウェイトが高く、また生演奏収録のためかメンバーのピッチが揃わず“ハモっていない”グループも多く、そんな合唱を聞かされると“虫ずが走る”様で気持ちが悪くてしょうがない。最後には我慢出来ずにスイッチを切ってしまいました(以来一度も見ていません)。
 それとは別に、Mrs. GREEN APPLEの「僕のこと」が後に学校の合唱コンクールやコーラス部(埼玉栄高校や神奈川県立湘南高等学校など)によって合唱バージョン(混声4部合唱など)に編曲されて、カバー・演奏されています。たまたまYouTubeでそれを見つけて「イイ曲だなぁ・・・」と思い、そこから更にYouTubeで「僕のこと」を歌っている「ミリオン再生合唱団」というグループの演奏に行きつきました。
このグループはYouTubeやTikTokなどのSNS・音楽プラットフォームでミリオン再生(100万回再生以上)を達成した、歌の上手いクリエイターやアーティストたち20人によって結成されているというグループ。そしてこのグループが歌っている動画から、フジTVの「オールスター合唱バトル」というスペシャル番組を知り、昨年の年末に放送された第7回をTVで初めて視聴しました。(以下、各々の紹介記事から写真を拝借しました)

一番感激したミリオン再生合唱団は、何よりメンバー一人一人が上手いし声質がイイ!しかも、弱音やハモるべきところはしっかりとお互いの声を聞き合って見事なハーモニーを響かせているのです。
正直、このミリオン再生合唱団を聴いたら、それまでなかなか良いと思ってYouTubeで何度か聞いていた、東京音楽大学(国内外の音楽コンクールの結果からも明らかですが、最近とみに評価を上げている音楽大学です)の、声楽、弦楽器、打楽器、ピアノ、作曲の各専攻の学生有志によって結成されている、歌と弦楽オーケストラによる楽団「J-POP CLASSIC CLUB TOKYO」も全く色褪せてしまいました。
そして何より「オールスター合唱バトル」をTVで視聴して感心したこと。それは番組内でも紹介されていた、裏方スタッフである合唱編曲者の方に依る、単なる4部ではない、何重にも和声が積み重ねられているコーラス部分の編曲が素晴らしいし、ミリオン再生合唱団に限らずですが、この合唱バトルに参加される素人では無い人たちが、皆かなりの時間を費やして練習を重ねて来たことが一目(耳?)瞭然で分かるのです。
そして最初の「僕のこと」を切っ掛けに、他の「愛をこめて花束を」や「浪漫飛行」などのミリオン再生合唱団の歌う楽曲もYouTubeで聴くことが出来ましたが、やはり生収録の「合唱バトル」では気になったハーモニーの多少の乱れも、さすがにYouTube用に録音し直されたバージョンでは完璧と言って良いレベルの仕上がりになっていました。
片や「合唱バトル」でその正反対で酷かったのは「オペラ合唱団」でした。一人一人は海外の有名歌劇場に所属する様な超一流の売れっ子ではないにしても、当然全員が音大声楽科の出身のプロのオペラ歌手でしょうから、一人一人の声が素晴らしいのは当然なのですが、これが合唱となると一人一人の単なる“目立ちたがり”の様な自己主張が強過ぎてハーモニーになっていないので、合唱としては酷過ぎるのです(ピッチではなく、各員の声質がハーモニーとして同調していないで、時にお互いの張り合う声が邪魔し合っている)。
むしろ歌の上手い芸人の人たちや元々地声の良い演歌歌手の皆さんの合唱の方が、“ハモろう”としてお互いの声をしっかりと意識し合っていて、合唱のハーモニーとしては余程素晴らしかったと思います。
採点結果は世の中の合唱コンクールと違って、“ハモネプ”同様に飽くまで民間放送のバラエティー番組ですからどうでも良いし、むしろ採点などしなくても良いくらいに感じました。
 因みに、興味を持ったこのミリオン再生合唱団の発声は、ゴスペルに代表される様なパワーコーラスというのだそうですが、頭声発声を意識するが余りかどうか分かりませんが、ややもすると喉を締め付けてしまって苦しそうに聞こえる発声や胸に籠ってしまう様な発声よりも、むしろのびのびとした発声に大いに心惹かれました。
今回そのミリオン再生合唱団の発声方法である地声でのパワーコーラスに興味を持ち調べてみると、明治以降日本の学校教育で推進されてきたであろう西洋化の中での学校音楽でいうと、学習指導要領及びその解説から平成23年には「頭声発声」(軽く頭に抜ける声)の言葉が消えたのだそうです。
地声での合唱と聞いて思い出したのは、最近ではあまり耳にしませんが、1970年代から80年代に良く聞いた「芸能山城組」です。
このグループはWikipediaに依ると『民族音楽を主題にした楽曲を発表している日本のアーティストグループ』という説明でしたが、発声のベースが地声でした。そしてその歌声は、シンガポール赴任時代に毎年旅行で行ったインドネシアのバリ島のケチャ(ケチャックダンス)を連想させました。
また、京都のお寺、例えば我が家の菩提寺の総本山である智恩院には京都に行く度にお詣りしており、御影堂での朝の法話にも参加したことがありますが、いつぞやは檀家さんの法要がちょうど営まれていて、そうした際の何十人ものお坊さんの読経を聞いていると、勿論お経にはメロディーがある訳では無いのですが、抑揚がある経文をそれぞれのお坊さんの低かったり少し高い地声が混ざり合うと、時に倍音が聞えて来る瞬間があり、ケチャもそうですが男声合唱を聞いている様な不思議な感覚になります(ですので、世間では退屈だという評判の葬儀の儀式も、仏式なら最低3人のお坊さんが読経されるので決して嫌いであありません)。

 果たして、地声発声でのパワーコーラスが小中学校の音楽教育に導入され得るのか、はたまたされているのか、そして進展するのかは素人である私には分かりませんし、パワーコーラスであれ頭声発声であれ、何よりも声が良い人たちがお互いをしっかりと聞き合えば良いハーモニーが出来るのだろうと思います。
しかし聴いていて感じたのは、少なくともYouTubeで聴くミリオン再生合唱団の合唱は決して地声で“がなりたてる”だけではなく、ハモるべきところはしっかりとハモっている。例えば弱音(PP)部分は普通の合唱同様にハモり合っていてとても美しい。ですので、個人的には今まで聞いたことのある地声だけ(?)のゴスペルコーラスとは何だか違う気がするのです。
私自身がパワーコーラスそのものを理解していないのですが、ただこの僅か20名たらずのミリオン再生合唱団の合唱を聞いて感じたのは、ハモネプよりも余程合唱としても素晴らしいし、個々人の歌唱も生きているし、何よりハモることの楽しさが聞いている方にまで伝わってくる気がして、大袈裟ではありますが、何だか衰退しているという近年の合唱界への一筋の光明を見つけた様な気さえしたのでありました。

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