カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松本市から1事業につき最大20万円が交付される、令和8年度の「松本市地域チャレンジ応援事業補助金」に、昨年に続き今年も我々源智の井戸の清掃ボランティアとして第2年次の申請をさせていただき、無事認可頂いて6月下旬に我々の団体の銀行口座に入金していただきました。
我々は、町会ではなく、「市内に活動拠点を持つ市民活動団体による、新たな地域活力を生み出す事業」を対象とした「一般チャレンジの部」で申請したものです。
 単に井戸清掃と言っても、井戸内の砂利を攪拌する道具(レーキやジョレンを流用)や剥がした藻をすくう道具(金網のザル)、また井戸から流れ出る水路の藻やアオミドロ清掃用のデッキブラシ(2年前に引退された地元町会の有志の皆さんがこれまで何年も使ってこられて、もう毛が抜けたモノまで使っていました)、更にメンバーのアイデアで昨年購入して予想以上に効果的だった、攪拌して藻の混じった水を強力に吸い上げるポンプの2台目(昨年は発電機も購入しましたが、この発電機一台で2つのポンプを稼働可能)。更には、万が一に備えての(清掃中に重い井桁の木枠を運ぶ際や、敷地内の水路の石組みにつまずいて転んだりした場合などのケガに備えて)メンバー全員の年間損害保険代なども合わせて申請させていただきました。
町会事業であれば町会費から出せますが、我々の様なボランティアにはそうした資金はありませんので、まさか飽くまで善意でボランティア活動に参加いただいているメンバーにこんな費用まで負担していただく訳にはいきません。そうかといって、責任者や役員で負担するには余りに高額(昨年は総額19万円でした)。
ですので、こうして市で我々の様なボランティア活動にまで対象を広げて頂き、申請内容如何にしても補助金を交付頂けるのは本当にありがたい限りなのです。但し、この補助金はボランティアメンバーの親睦会や慰労会の費用には1円たりとも使えませんので念のため申し添えておきます(昨年もメンバーの親睦のための飲み会や朝会を実施しましたが、差し入れは別として全て参加者からの会費で対応しました)。
今回の補助金では、昨年効果が実証出来たので効率化アップのために2台目のポンプ(発電機は容量的に1台でポンプ2台使用可能)を購入(ホースや井戸内に沈め固定するカゴや、ホース、接続用金具も必要です)。また何年も使い古して毛の抜けたデッキブラシなども廃棄分を補充することが出来ました。
そうした中、今回試験的に購入したモノがありました。それは・・・スダレです。

 塩素消毒されている上水道水とは違って、井戸の水は山に降った雨や雪が解けて地中に沁み込んだ水が、年月を掛けて地下の砂礫層の自然のフィルターで濾過されて、伏流水となって地上に湧き出して来た水(湧水)です。
その湧水に含まれる同位体などを調べることに拠って、“平成の名水百選”に選ばれている「まつもと城下町湧水群」の湧水や井戸は、全て松本盆地の東側に聳える筑摩山地(三才山、美ヶ原、鉢伏山など)が涵養域だと判明しており、その水が複合扇状地の松本市の中心市街地の女鳥羽川を挟んだエリアで湧き出したり、掘った井戸で汲み上げられたりしているのです(毎年2回市で検査しており、湧水群の各井戸の水は飲料水として適していることが確認されています)。
しかし、塩素消毒された上水道と異なり、自然の浄化フィルターである砂礫帯などの地層でキレイに濾過された水ですので、井戸内に太陽光が当たると光合成により藻が発生します。
源智の井戸は、江戸時代に“当国一の名水”と書かれた「善光寺道名所図会」の挿絵に沿い復元された八角形の井桁で、松本市の特別史跡に指定されています。そのため、井戸内には玉砂利が30㎝程の厚さで敷き詰められており、その石に発生した藻が付着してしまうのです。
そのため、毎週の清掃ではレーキやジョレン、デッキブラシといった器具を使って井戸内の砂利をメンバーが交替しながら何十分も攪拌し、石に付着している藻をこそげ落とすのですが、どうしても陽光が強くなる夏場は藻の発生も旺盛になってしまいます。そのため、もし2週間や3週間も掃除をしなければ、井戸内は藻の発生で緑色に染まった様に見えてしまうかもしれません。
昔は藻を金網のザルですくうだけだったので、中には取り切れず井戸内に藻が残ってしまっていたため、掃除直後の水は藻の青臭さの様な異臭や味がして、それが流れ出る数時間後までは飲めたものではなかったのですが、昨年からメンバーの皆さんが一生懸命攪拌して剥がしてくれた藻を電動ポンプで水と一緒に一気に吸い上げますし、しかもその作業を3度も繰り返して、砂利がむき出しになる位まで水を吸い上げていますので、清掃作業直後であっても青臭さは全く無く、井筒内に湧き出した湧水を清掃作業直後からすぐに飲むことが出来ます。

 しかし、そうした藻の発生を何とか抑制することは出来ないものか・・・?
ネットで調べると(井戸に関係する部分のみ抜き出します)、
『藻の発生を抑えるための最も効果的な方法は、「日光を遮る(遮光)」、「こまめに清掃・水換えを行う」。藻は光と水中の養分(窒素やリン)をエサにして繁殖するため、これらを取り除くことが基本。その方法としては、
 ・光量の調整:直射日光を避ける
 ・専用アイテム: 抑制剤(添加剤やフィルター用マットなど)や殺菌灯の導入
  も効果的
 ・遮光の徹底:養液タンクや栽培パネルの使っていない穴から光が入ると
  藻が爆発的に増えるため、アルミホイルや黒いフタで完全に遮光
 ・カバーやフタの設置:散水槽などにカバーを取り付け、直射日光を遮断  』
などの方法が挙がってきました。
一番有効的なのは、おそらく遮光シートで(太陽光が入らぬ様に遮光率90%以上の真っ黒な網の様な遮光シートで)井戸そのものを覆う方法だと思います。しかし、江戸時代の様子を復元した八角形の井桁内部に、コンコンとキレイな水が湧き出ている様子が松本市の指定文化財としても相応しい景観でもあるので、黒い遮光シートで覆って湧き出ている水が見えなくするのは、文化財としては論外です。
また、仮にUVカットの透明なアクリル板の様な板で覆っても、水は見えても光合成の要因となるのは紫外線だけではないので効果が半減してしまいます(空気中の埃や秋の落ち葉などが入らないという効果はありますが)。
また飲料水である以上、溶剤の様な何らかの物質を湧水に加えることは安全面からも絶対に許されません。因みに、松本の上水道の水源にもなっている源地の水源地の湧水は、他の湧水や井戸と比べて水路の藻の発生が少ないのですが、これは湧水ではなく塩素消毒後の水道水を流しているからなのだそうです。しかし、そうした塩素消毒後では湧水の味が変わってしまいます。

 そこで浮上して来る方法は、非常に原始的ではあるのですが、ヨシズやスダレで太陽光が井戸内に差し込むのを出来るだけ遮ること・・・でした。
ただ、それに依る効果が科学的にデータで実証されている訳ではないのですが、一般的にスダレの遮光率は素材や編みの細かさによって異なり、天然素材(竹・ヨシなど)は 遮光率は約70%〜85%で、適度な隙間があるため風通しが良く自然な日陰を作る・・・とのことでした。
ですので、ある程度スダレで遮光することで、光合成を抑制する効果が期待出来るのではないかと思われます。今風のサンシェードもありますが、江戸時代からの井戸には似つかわしくありません。
そのため、ホームセンターを何軒か“はしご”して昔ながらのスダレを探してみました。中には巻き上げ式で割り竹(太い竹を割って1.0~1.5㎝幅に削った竹の素材)のスダレ(税込3500円)があったのですが、逆に向こう側が余り透けておらずに目隠しされてしまうのです。また、良くあるヨシズは天然の葦で作られていますが、葦は中が空洞なので強風などで折れ易いので耐久性という点では弱い気がしました。
色々回って実際に現物を見てみて結局選んだのは、「源智の井戸」は500年守られて来た市の文化財の井戸で東屋に囲われているので、“焼き竹”の地味なこげ茶色をした平安朝風?な竹ひごのスダレにしました。
夏場の太陽光を遮るべく井戸の東屋の東西の梁に掛けますので、スダレは2面必要です。素材の竹ひごは竹串程の太さで、せいぜい2~3mm。竹ひごですので葦の様に中は空洞ではありませんが、割竹に比べれば強度は落ちます。スダレを梁に掛けて井桁をカバーする様に事前に測っていった結果、店頭にあった中から選んだのは176㎝×150㎝のサイズで、値段は2500円程でした。巻き上げ式では無いので、別途2結式の巻き上げ機(400円)と、梁に掛けるための金具(「洋灯吊」と呼ばれるネジ式のフック)も併せて購入しました(東屋の東西の筋交いに2ヶ所に固定するため4本必要)。
因みに巻き上げ機は自分で取り付けましたが、紐が絡まない様にさえ気を付ければ、取り付けるのは思ったよりも簡単でした。
現地での取り付けに際し、フックのネジ穴を東屋の柱に空けるのには、以前DIY用に購入しマンションに移ってからはなかなか出番の無かった電動ドリルが活躍してくれました。
実際に掛けてみると、何となく(飽くまで個人的にはですが)平安朝風な雅な風情も感じられて、思ったよりも悪くありません。ボランティのアメンバーやご近所の方からも想像以上に高評価でした。しかし、中には水を汲むには邪魔だという声もあるかもしれませし、邪険に扱う人もいるやもしれません。
そこで、スダレを掛けた目的を印刷し(インクが水性で雨が掛かると滲んでしまうので)事務局に頼んで公民館でラミネート加工をして貼って貰いました。

 スダレを掛けた日の夜から翌日に掛けて、梅雨の雨足が結構強かったので翌日井戸の近くに住むメンバーの方が心配して朝早く見に行ってくれたそうで、東屋の屋根のお陰で濡れてもおらず全く心配なかったとの報告がメールでありました。
ところが翌々日、今度は事務局から別のメンバーが朝見たら西側のスダレの巻き上げ機が壊れて動かないとの報告がありました。
そこで、早速見に行ってみると確かに巻き上げ機が動きません。外して色々試してみましたが直せず、結局諦めてまたホームセンターへ行って新たに巻き上げ機を購入して付け替えました。
おそらく、水汲みに来た方が乱暴に扱ったのでしょう。巻き上げ機も安価でプラスチック製故決して頑丈なモノでもありませんので、壊れ易いのも否めません。しかし、井戸に水を汲みに来た方にとっては、今までは全くして来なかったスダレをいちいち巻き上げて水を汲み、汲み終わったらまた元に戻すなどという作業は余計なことで、やはりスダレなど邪魔な存在でしかないのでしょう。藻が発生しようが、自分が水を汲めさえすればそれで良いという人だって、もしかすると残念ながらいるのかもしれません。
そこで、ラミネート加工の「お願い」に操作方法と扱い方を油性マジックで手書きで書き足しました。
するとそれから二日後、今度はストッパーの爪の部分が壊れてしまいました。内部のツメがギアに噛み合って任意の高さでロックされる仕組みなのですが、頻繁に使ったためか或いは乱暴に動かしたせいか分かりませんが、プラスチック製なので耐久性も弱く、頻繁の稼働には耐えられなかったのかもしれません。5年前の大学のゼミの調査では朝から夕方までに200人を超える利用者があったという人気の井戸ですので、金属製などのもっと頑丈なモノがあれば良いのですが、ネットで探してもプラスチック製のモノしか見当たりませんでした。
そのため、最初の動かなくなっていた巻き上げ機の紐を一度外して、見本をみながら一から入れ直して、再度動くように修理して直したのですが、また頻繁に動かすと壊れる可能があるので、申し訳ないのですが、スダレを少し巻き上げて水を汲めるようにして、その高さで固定することにしました。また西側には水口が無いので、西側のスダレは一番下まで下げて固定することにして、お詫び方々その旨をお知らせするメッセージを記入しました。

ただスダレ自体も決してそんなに丈夫ではないので、天気予報を見て事前に巻き上げて置くにしても、台風や暴風雨などの強風にはもしかすると耐えられないかもしれません。
中には高価なサンシェードの様に脚で固定する丈夫そうなタイプもありますが、果たして江戸時代から親しまれてきた文化財の井戸に馴染むかどうか・・・?。
今回のスダレはあくまで遮光に依る夏場の藻の発生を抑えるための光合成抑制が目的で、今年の補助金を使わせていただいて実験的に試しているので、スダレの効果も検証しながらもう少し様子を見守りたいと思っています。

【追記】
7月1日にスダレを取り付けてからちょうど1ヶ月経った、8月1日の井戸清掃。
いつもの様に井桁の木枠を外してレーキ等で井筒内の玉砂利を攪拌して、先ずは金網のザルで浮いてきた藻をすくいます。
暫く皆で攪拌したのですが、藻が殆ど浮いて来ません。攪拌して少し濁った水をザルですくってみても、殆ど藻が付きません。皆ビックリして、
 「これって、スダレの効果でしょ!?かなり遮光が効いてる!いつもの様に藻が全然浮いて来ないもの・・・!」
どうやら、スダレの遮光に依る光合成抑制効果は予想以上にありそうです。
市からの補助金を活用して、試験的に今回初めて取り付けてみたスダレですが、これなら恒常的にスダレを掛けておいても良さそうです。あとはもう少し丈夫で耐久性のあるスダレ用の巻き上げ機があればですが・・・。

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