カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 ドイツ在住のピアニスト小菅優さんの演奏をFMで聴いて感銘を受け(第768話参照)、偶然にもその僅か1ヶ月後の9月21日に奥さまのご実家のある茅野の市民館で彼女のリサイタルが開かれることを知り、喜び勇んで購入したチケット。

 “ムジカ・タテシナVol.6”と題された「小菅優ピアノ・リサイタル」。
この日は、彼女が今一番惹かれているというベートーヴェンの「悲愴」と「熱情」、そしてシューマンの「幻想曲」というドイツ・ロマン派を代表する重厚なプログラム。副題に“作曲家の「心」と出逢うピアノの調べ”と記されたリサイタルですが、「月光」の第3楽章だけを聴いた印象でも、正にそんな気がします。また、チラシに載っていた小菅さんご自身のコメントから、このホールのピアノは、一般的なスタインウェイではなく珍しくベーゼンドルファーとのこと。
「ベーゼンドルファーのとても深い、重厚な低音の響きが大好きで、特にドイツ音楽のようなハーモニーを土台にした音楽で、低音から組み立てていくような音の響きを望んでいます。」と言われる小菅さんの演奏と共に、そのピアノの音色も(その違いが、素人にどこまで聞き分けられるかどうか不明ですが)楽しみにしていました。そして、悲愴の第2楽章のアダージョも・・・。
 当日は満席にはなりませんでしたが、結構松本方面からも駆けつけたお客様もおられました。客席の両脇には空席があり、信州ではなかなか聴けないお薦めのピアニストなのに勿体無いなぁ・・・。
演奏では、構成にも拠るとは思いますが、「熱情」が圧倒的。ブラヴォー(本来はブラーヴァでしょうか)の声も幾つか掛かりました。
茅野市民館の音楽専用ホールは僅か300席ですが、客席が扇形にステージを取り囲むような配置されていて聴き易いホールです。
我々の席は左側の前から5列目。ステージも低いので、ほぼ目線と同じ高さのピアノからも5m足らず。そのためか、ベーゼンドルファーの音質も手伝い、豊かな低音とffでの圧倒的な力強さが印象的。そして、それとは対照的な消え入るようなppの弱音。弾きぶりは、テクニックで唸らせるというよりも、むしろもっと内省的な演奏であり、彼女自身の器の深さ、大きさを感じさせてくれました。
 いつも悩んでは諦める(いまだに大林修子さんのサインをもらわなかったことを後悔しています)のですが、今回は茅野故に演奏後の買出しもなく、遅くなってもイイという有難いお言葉に、休憩前の熱情の名演もあって、小菅さんのCDを休憩時間中に購入し、コンサート終了後に生まれて初めて演奏者からサインをいただくことにしました。(CDは悩んだ末、ソナタ全曲録音中のベートーヴェンではなく、大好きなモーツァルトの20番でもなく、生の雰囲気に触れたくて、録音は些か古いのですが2005年のカーネーギーホールでのデビューコンサートのライブ盤をチョイス)
 後半のシューマン。ピアニストの中にはシューマンのピアノ曲を好む人が少なくないと聞きます。小菅さんが今一番惹かれるのはベートーヴェンだとFMでは仰っていましたが、その延長線上にシューマンもあるのでしょうか。静かな第3楽章に包まれ、シューマンの世界にどっぷりと浸かって聴いていました。
何度かのカーテンコールの後で、この日のアンコールは2曲。ショパンのエチュードから作品25の第1曲「エオリアン・ハープ」とシューマン「子供の情景」最終第13曲「詩人のお話」(「詩人は語る」との邦題もあり)。
小菅さんから、演奏の後での疲れも見せずに穏やかな笑顔でサインをいただいて、幸せな気分に包まれて、夕暮れ迫り屋外へ漏れる光が印象的な茅野市民館を後にしました。
 なお、休憩中に事務室で伺うと、“ムジカ・タテシナ”とは茅野市民館の企画コンサートとのこと。小菅さんに限らず、これまでも毎回著名な実力派(横山幸雄、上原彩子、有田正広&曽根亜矢子、森麻季他)を招いておられます。贅沢な良いホールですので、本当は年に数回あれば嬉しいのですが、聞けば、残念ながら年一回だけとのこと。であるからこその、300席というチケット数でありながら、実力派招聘が可能なのかもしれません。
その意味で来年の企画が楽しみです。イリーナ・メジューエワさんを呼んでくれないかなぁ・・・(と、アンケートには記入しておきました)。

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