カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>
さて、前話での和田さんの言われたポイント、『外資(外国資本だけではなく県外資本を含めた“地元の外”)に頼らず、地元の若い人のために「土地を売らず」に「地元調達率を高め」て、「稼ぐ手段を地元に残す」。そのためには(地元に金が無ければ)Fundを活用する』という意味で、最近気になったことがあります。白馬やニセコの様な、地域というエリア全体の話題ではありませんが、古くからの地元の人気店が、後継者が居なくて最近幾つも“地域外の資本”に経営が変わった事例です。

松本の有名店でもあったこの洋食店は、二代目の女性経営者が体調を崩したため、2023年3月に多くのファンに惜しまれつつ、一度は閉店しました。そして、それから5ヶ月後の8月に復活。店のH/Pでの紹介に依ると、
『“思い出の味を思い出だけにはしたくない”というスローガンの元、「民芸レストラン 盛よし by onion」として復活プロジェクトが開始。盛よしの味を愛してくださっていたファンの皆様に、「変わらない盛よしの味」をお届けするため、レシピは営業当時のものを受継ぎ、当時と同じメニューを再現。盛よしで40年以上腕を振るった大ベテランのシェフと、その右腕として20年以上腕を振るったシェフ、盛よしの味を熟知した2人が、「思い出の味」を再び提供しています。』
ところが最近、市内の庄内地区に「初代 民芸レストラン盛よし」なるレストランが出現したのです。同様にその店のH/Pでの紹介に依ると、
『当店「初代民芸レストラン盛よし」の看板メニューは、伝説の味として語り継がれてきた「カニコロッケ」や「ハンバーグ」「エビフライ」など。
創業者の直接レシピと調理技術を伝授された料理人たちが、その「味」と「想い」を忠実に受け継ぎ、新天地で新たなお店をオープンさせます。
店名の「初代」には、「創業者本人から最も深く技術を受け継いだ料理人たちによる、新しい出発」という意志が込められています。』
これに対し、『一部のニュースやSNS等において「盛よし」という名前を冠した新店舗が取り上げられておりますが、当店「盛よし by onion」とは一切関係ございません。私たちは、松本駅前にございます「盛よし」を、これまで共に歩んできた仲間とともに大切に守り続けております。現在話題となっている新店舗は、当店とは別の運営によるものであり、私たちが手がける「盛よし」とは異なります。』
・・・と傍目から見ると、何だかどこかの“元祖”や“本家”を名乗っての主導権争いと同じ様な、批判合戦の様相を呈してさえいます。

ですので傍目には何が事実か、どちらが真実かは分かりませんし、「盛よし」の看板メニューのカニクリームコロッケはともかく、こちらも目玉である筈の「盛よし」のハンバーグは、本来ハンバーグは牛100%たるべしと思っている自分にとっては、豚肉の割合が多過ぎて一度食べて懲りてしまったので、個人的には別に初代か元祖かどちらでも構わないのですが、(地方の人気店をおそらく投資目的で)事業継承したOnionというのは、千葉県を拠点としたメディアと広告代理店を運営している会社で、元々はフリーペーパーから始まった「オニオン新聞社」という名前の投資会社なのだとか。
「盛よし」が復活してすぐの2023年12月には、東京の多摩地区にも府中店をオープンし、開店当時は昼も夜も割と行列が出来ていたそうですが、最近ではその光景も無くなったとかで、たった2年ちょっとの2026年3月で「民芸レストラン盛よし by onion 府中」店を閉店したとのこと。出資したのが仮に投資目的であれば、儲からなければ出血を止めるべく、速やかに事業を停止するのも当然なのかもしれません。
無論、“赤の他人からとやかく云われるのは大きなお世話”でしかないのですが、復活した店舗には創業者の二人のお孫さん(二代目の息子さんたち)も調理や運営に加わっているそうですが、「いつか自分たちが」という夢を持って、亡くなった二代目である母上の意志を継ぐためにせっかく調理学校にも通って勉強していた筈なのですから、安易に投資会社に踊らされず、じっくり焦らず兄弟で力を合わせて実力と資金を蓄えてからでも決して遅くはなかったのではないか!?
創業した初代や、経営を軌道に乗せた2代目の苦労を知らず、恵まれた環境でトップに就いた3代目の経営の難しさを、同族経営での事業継続の難しさを表す格言として、“3代目は身上を潰す”などと云われますが、是非自分たちの手で地道に頑張って欲しいと思います。
片や「初代」を名乗る店も、もし味と値段に自信があるのならそんな名称を“客寄せパンダ”的に使わずとも、美味しければいずれ自ずとお客さんは集まって来るのではないでしょうか・・・。

昨年の9月末で、駅前の公園通り近くで45年続いてきた「若大将」が閉店し、年末の12月に「ニュー若大将」としてオープンしました。地元紙の報道に依れば、
『松本駅前で45年間にわたり地元客や観光客らに親しまれてきた中華料理店・若大将が、後継者がいないことから市内の企業へ事業譲渡することになり、9月30日で店を閉める。駅前で「元祖スタミナやきとり」等を営む会社が事業承継した』とのこと。新店舗の紹介には、
『松本駅前で45年間愛されてきた「若大将」を事業承継しました!
2025年12月頃「ニュー若大将」としてリニューアルオープン予定です。「若大将の想いと人気メニューを引き継ぎさらに愛されるお店を目指してまいります!」ということで、やきとり、餃子、韓国料理に中華居酒屋が加わります!』
個人的には、昔「若大将」がオープンして間も無い独身時代の頃に何度か食べた記憶があるのですが、覚えているのは中華というより、味噌ラーメンや冷やし中華などラーメン屋さんのイメージ。ですので、名前は残っても全くの別形態の店になってしまったので、経営として駅前の好立地の空き店舗を取得し、既に地元で知られた店名を使って店舗を単に増やしただけという感が否めません。もしそうであるならば事業承継ではなく単なる事業継承ですが、果たして・・・?

『レストランどんぐりの店主・浅田さん(67)が3月1日で引退する。松本駅前で72年続く名物店を営む傍ら、全国の災害被災地で炊きだしボランティアを重ねるなど食を通じた社会貢献活動にも取り組んでいる。事業はM&Aで県内の企業に譲渡するが、現店舗はそのまま「どんぐり」として事業承継される。県内で飲食店を展開するデライト(岡谷市、横山社長)に譲った。店はボリューム感あふれるメニューや価格、内装をそのままに、11日に新たなスタートを切る。』
デライトという会社は諏訪郡下諏訪町などで飲食店を運営していて、その一つが諏訪湖畔にある「ホルツ」とのこと。この店は以前「ホルツはつしま」として60年以上続いてきた謂わばローカル版の“ファミレス”で、2020年の3月に経営が変わり「ホルツはつしま」から「HOLZしもすわ店」となっているとのこと。
知りませんでしたが、実は以前のオーナーのご家族が経営していた頃、そのオーナーご自身は私と同じ会社におられた大先輩で、夫婦共々お世話になりましたし、結婚して諏訪に住んでいた頃には何度か食べに行ったこともありました。
その「どんぐり」の経営を引き継いだという方は、報道に依ると、
『「店の名前を残せるなら引き継ごうと考えた。地域に必要な店。まずは常連客に来ていただける店をつくりたい」と説明した。
事業承継の話自体は2年ほど前に持ち上がり、浅田さんも複数面談した中で横山さんを気に入ったが、最初は「どんぐりは良くも悪くも“俺”。俺がいないと成立しない」との思いから屋号やレシピは残すつもりはなかった。こうした考えから一度は断わったが、横山さんの真面目な人柄や運営する店舗の清潔さなどを見聞きするうちに心変わり。昨年の初めに再度打診し、屋号もレシピも残しての承継が決まった。
横山さんは「私自身もよく訪れた場所で、なくなるのは寂しく、店や味を残していくことが大切だった」と振り返る。浅田さんからは「好きにやれ」との激励を受け、駅前はかつてより(パルコ閉店で)人が少なくなっているが「大きくもうけようとは思っていない。この場所にこの店があることが大切であり、まずは常連さんや地域の方に“変わっていない”と認めてもらえるように営業していきたい」と話す。』
(・・・だとすれば、こちらはちゃんとした事業承継でしょうか?)
長年地元で親しまれて来た店の事業承継、若しくは事業継承としての再出発には、それぞれの事情がありましょう。
前話でご紹介した「ズクトチエ」の和田さんは東京出身の“よそ者”ですが、学生時代から来ていた岩岳や白馬に惚れ込み、その結果『地元の若い人のために「土地を売らず」に「地元調達率を高め」て、「稼ぐ手段を地元に残す」。そのためには(地元に金が無ければ)Fundを活用する。』と自らが経営に乗り出したのは、ご自身の“地元愛”でもありましょう。そしてその地元を大切にする経営スタイルは、嘗ての妻籠や白川郷の「売らない、貸さない、壊さない」にも繋がります。
勿論前話でも指摘した様に、精神論や“美辞麗句”だけで経営が成り立つ訳でないのは百も承知です。しかしそこには単に儲けや稼ぐこと以上に大切なモノがあり、それがあるからこそ例え時間は掛かっても、結果として子々孫々への利益にもまた繋がっていくのではないのでしょうか。
ですので、もし太地真央さん演じる女将さん的に云うならば、即ち、
「そこに地元への“愛”はあるんか!?」




