カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 日経の毎週日曜日に掲載されている特集頁、「 NIKKEI The STYLE 」。
7月28日の日曜日は「藤沢周平の日記」でした。
藤沢周平が43歳にして作家デビューし45歳で直木賞を受賞したことで、それまでの業界新聞編集長との二足のわらじを止めて作家に専念します。それまでは教員退職を余儀なくされた結核療養や、生まれたばかりの長女展子さんを残しての先妻の死にあたり、「人の世の不公平への憤怒や無念さを吐き出すために書かざるをえなかった」小説から、6年後に再婚した下町育ちで飾らず明るい女性和子さんにも支えられて作家に専念し、その家族を養うために今後も作家を続けるには「作風の飛躍がなければならない」と感じていたと云います。もがき続ける中で、それまでは書くことだけを考えていた氏が、「書いたものが読まれること、つまり読者の存在に気付いた」時、自身の小説に「“大衆小説の面白さ”の大切な要件である明るさと救いを欠いていた」ことに思い至って、48歳の時に作風が変化したのだそうです。

 数ある時代小説の中で、私が一番好きな藤沢周平作品。
その中でも、市井の人々を扱った作品よりも、武家を扱った、所謂士道を扱った作品に私は特に惹かれます。中には「蝉しぐれ」の様な長編もありますが、「たそがれ清兵衛」に代表される短編も実に味わい深く感じます。
しかし、映画化された作品では、山田洋二監督による三部作は、例えば「たそがれ清兵衛」の様に、他の短編である「祝い人助八」と「竹光始末」の短編3篇を原作にして、時代設定から始まりエピソードやストーリーをかなり膨らませています。ですので、映画はあくまで藤沢周平作品をベースにした山田洋二監督の映像作品であり、この映画を見てから短編小説「たそがれ清兵衛」を原作と思って読むと、少々面食らうかもしれません。
そうした映像作品の中で、異色?なのが、1980年に発表された短編「山桜」を原作とした、2008年の篠原哲雄監督作品です。こちらは多少膨らませてはいるものの、全て本作の短編のみをベースにしているのです。

 この「山桜」という短編。藤沢周平全集で云うと僅か13頁、文庫本でもその倍程度の短編作品です。しかし、作家の田辺聖子女史曰く、『声高な主張ではなく、文章的声音は、あくまで清音で、低い。水のように素直、端正な文章だが、品高い』と評した藤沢周平作品の中で、この「山桜」は、まさにそのことを実感させてくれる短編の様な気がします。
藤沢周平の作品は、読んだ後の余韻、そして貧しくも士道の持つ気品と気高さを感じさせてくれるのですが、この「山桜」は正にそうした作品なのです。
そして、映画化された作品もそれを忠実に守っている気がします。

 藤沢周平の長女である遠藤展子さんは、この映画化された作品を見て、
『実際に出来あがった映画は、まるで父の小説を読んでいるような錯覚を覚える映画でした。本のページをめくるように父の原作の映画を観たのは初めての経験でした。父の小説は日ごろ「無駄のない文章」と言われていますが、その行間にあるものを、篠原監督は見事に映像として表現して下さいました。
桜の花びらが舞うシーン一つとっても、映像と原作が一体化し、さらに篠原監督の世界が、見る人を幸せな気持ちにさせてくれる。そして暖かく包んでくれる、そんな風に感じながら拝見させていただきました。
その気持ちを伝えると、「遠藤さん、だって原作通りですから。」と小滝氏は笑って答えてくださいました。』
因みに、文中の小滝氏というのは「山桜」の映画プロデューサーの方だそうですが、実際に短編を読んでその映画を見ると、ナルホドと感じます。出来ればこの「山桜」は、先に映画を見てから、後に短編を読んだ方が絶対に良い様に思います。
というのは、文章の方が絶対に余韻に深く浸り、そして自身で膨らませたその余韻に実際の映像以上に酔いしれることが出来るから・・・です。

 この作品、結末は書かれていませんし、主人公である野江と弥一郎の二人は、冒頭に偶然山桜の下で一度会って以降全く会っていません。しかし、遂に耐えかねて自らの意思で離縁されて家に戻っていた野江が、弥一郎不在の家を訪ねる途中、村人に頼んで手折ってもらった思い出の山桜の枝を手に訪れ、弥一郎の母に家に上がる様に促された時、
『履物を脱ぎかけて、野江は不意に式台に手をかけると土間にうずくまった。ほとばしるように、目から涙があふれ落ちるのを感じる。
とり返しのつかない回り道をしたことが、はっきりとわかっていた。ここが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜもっと早く気づかなかったのだろう。』

 結末は何も書かれてはいないのですが、弥一郎の母の「野江さん、どうぞこちらへ」という優しい声が、幸せな結末を読む者に感じさせてくれるのです。

 次女一家がアパートから戸建てに引っ越すこととなり、病院勤務と2人の育児に追われ忙しい次女夫婦のサポートに、7月上旬コユキも連れて車で横浜に向かいました。
既に家内は南紀白浜から戻ってすぐ、6月下旬から先に行って荷造りなど引っ越し準備を手伝っており、私メは飽くまで“力仕事”と、不要な家具や家電製品などの粗大ゴミの地区での収集予約が間に合わなかったため、レンタルした軽トラでの横浜市の処理場へ自分たちで運ばねばならず、次女夫婦は二人共ペーパードライバー故に軽トラドライバー兼運搬係です。
引っ越しそのものは勿論専門の引っ越し業者にお願いしてあり、アパートへのアクセス道路が狭く大型車両が駐車して作業が出来ないことから、中型トラックで二度に分けて搬送。残った廃棄物などの処理と新居での片付けなどの作業を、我々も一緒に一週間ちょっと掛かって無事終わらせることが出来、最後は庭木の剪定と手入れを済ませ、残って育児と家事のサポートを継続する家内を残して、先にコユキと松本へ戻って来ました。

 この横浜での一週間ちょっとの滞在中にランチで何度かお世話になったのが、新居の近くに在った「バーガーキング」でした(因みに、近くにはバーガーキングだけではなくて、マックもモスも、はたまたサブウェイもフレッシュネスバーガーの店舗も在ったのですが)。

その訳は・・・、マックは松本市内だけでも何店舗もあるのに対して、バーガーキングは長野県下には店舗が無いから・・・ではありません。理由は、私メにとってバーガーキングは、昔馴染んだ“懐かしの味”だから・・・なのです。
昔、家族で赴任して6年半暮らしたシンガポールで、住んでいたコンドミニアムの近くにはマックもバーガーキングも、そして赴任中に日本から進出して来て、現地でも行列が出来る程人気になったモスの第一号店もありましたが、家族でテイクアウト(シンガポールではイギリス英語のTake away を使うのが一般的)したのは専らバーガーキングでした。子供たちが通っていた英国式スクールのママ友と子供たちに人気だったのも、マックよりもやはりバーガーキングが人気だった様です。理由は単純で、マックよりもバーガーキングの方が美味しいから。それにオニオンリングがあるから。また個人的には、シンガポールではハンバーガーショップなどではオーダーすると必ず無料で付いてくるのが当たり前で、お願いすると更に何個か追加して貰えた個袋のチリソースですが(帰任してハンバーガーショップのどこにも無いのにガッカリし、家では常備しているユウキのスイートチリソースを必ず使っています)、バーガーキングのチリソースが断然美味しくて、片やマックはガーリックが効きすぎていて好みでは無かったのもその理由でした(そう云えば、長女がコンサル勤務時代、シンガポールの日系企業コンサルに3ヶ月間長期出張した際に、バーガーキングのチリソースの小袋を帰国時のお土産にたくさん貰って持ち帰ってもらって、松本でマックのハンバーガーなどをテイクアウトした時に大事に使ったことを思い出しました)。
但し、マックの店舗の中には子供用に遊具などが置かれたプレイルームを備えた店が在り、そこでマックの商品を注文する前提で、子供たちの誕生日会などに無料での貸切が可能でデコレーションもしてくれるので、子供たちもシンガポール時代に友達のバースデーパーティーではバーガーキングではなくマックに何度もお世話になった様です。
 さて、前置きが長くなりました。
新居での作業中、子供たちをあやすために気分転換に外出した次女が、ランチのテイクアウトで、「モスかバーガーキングか、どっちがイイ?」と言うので、松本には無いので迷わずにバーガーキングを希望したのですが、家内はモスの方が・・・とのこと。その選択は行った様子で娘の判断に任せることにしました。
暫くすると娘から電話があり、バーガーキングは何を買えば分からないからモスでもイイかとのこと。その時家内が二階で作業していたのをこれ幸いと、30年以上経った今のメニューなぞ私メも分かる筈もありませんが、シンガポールでの記憶を頼りに、
 「バーガーキングだったら、確かWhopper Jr.とかがある筈だから、それとオニオンリングとポテトとか、後は任せる!!」
と家内の意向は無視して、バーガーキング一択でお願いしました。
間も無く娘たちが戻り、久し振りに食べたWhopper Jr. 。実に30年振り?でしょうか、
 「あぁ、これバーガーキングの味!シンガポールで食べてたのと同じだ・・・」
懐かしい味でした。そしてこれまた懐かしのオニオンリング。
そして、娘が「これも味見してみて!」と一口食べさせてくれた、彼女と孫のために買って来たというハンバーガー。これが旨いのナンノ!
 「えっ!これ何?“肉々しくて”ペッパーも効いてて、美味しい!」
聞けば、新製品のグリルド・ビーフとか・・・。
バーガーキングに拠ると、
『2024年6月28日(金)より、直火焼きの100%ビーフパティを最大限美味しく味わえるシンプルな本格バーガー「グリルド・ビーフバーガー」を新発売いたします。
自慢の直火焼きの100%ビーフパティ2枚に、パルメザンチーズとカマンベールチーズを合わせたホワイトチーズソースで仕上げました。バーガーキング最大の特長である、ジューシーで香ばしい、直火焼きの100%ビーフパティを最大限美味しく味わえるシンプルな本格バーガーです。』
とのこと。
何となく、会社に入って生まれて初めて西海岸に海外出張した時に、米国子会社に行く前に、託された日本からのお土産を渡すために挨拶で立ち寄った兄弟会社のオフィスで、出向赴任していた先輩が「ランチで外に食べに出る時間が無いから」と、オフィス近くに来ていたキッチンカーから買って来てくれて初めて食べた本格的なハンバーガー。粗挽き肉のパティがまるでステーキを食べているかの様で、大袈裟ながら「これがアメリカか!」と感激した記憶があるのですが、何だかそれを思い出しました。
僅か一週間ちょっとの横浜滞在中、娘たちには飽きられながら、私の希望でこのグリルド・ビーフバーガーを私メが自分でテイクアウトして来て皆で三度食べました。しかも日曜日のランチタイムは大混雑で、注文して受け取るまでに優に30分以上も掛かりながら・・・。
コストか或いは食材調達の都合か、このグリルド・ビーフバーガーは残念ながら期間限定商品とのことですが、実に勿体無い!通年で販売すれば多少高くても(単品で790円)絶対に看板商品になれる筈!
 今度もし来る機会があった時に、また食べることが出来るかなぁ・・・?それよりも、バーガーキング、松本にも出店してくれないかなぁ!・・・。
(因みに、以前の日本進出時は西武系、その後はJTと組んでのフランチャイズ展開は上手くいかず首都圏のみで撤退し、その後ロッテリア傘下となった既存店舗と、併せて日本での営業権を持つ外資投資会社が設立した日本法人が新規店舗を自社展開しているとのことですが、今度は是非地方にも展開して欲しいものです)

 6月30日。この日の早朝、家内がまた横浜の次女の所へサポートに出掛けて行きました。
暫くはまたコユキと私メだけの生活です。いつもは家内にべったりのコユキも、この二人しかいない状況を理解すると彼女なりの諦めもつくのか、コユキなりのツンデレ気味ではあるのですが、ゴロニャンならぬゴロワンとすり寄ってきます。但し、大好きな家内が戻って来ると、それまでの恩義(何宿何飯かの義理・・・)など即忘れてしっかり元に戻るのですが・・・。
さて、そんなコユキに独りでお留守番を頼んで、この日の午後私メは一人でお出掛けです。
 この日マチネでの松本室内合奏団の第63回定期演奏会を聴きに、ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール、略して音文)に行って来ました。
松本室内合奏団(英語表記も室内管弦楽団のChamber orchestraではなく Matsumoto Chamber Ensemble)は2管編成の地元のアマオケですが、8年前に一度同じく音文での定演を(その時はプログラムのエルガーのチェロ協奏曲を生で聴きたくて)聴きに来て、その時のチェロ独奏には正直些かがっかりしたのですが、いくら“楽都”松本がスズキメソードの本部とはいえ(夏休みになると、小さなバイオリンのケースを提げた世界各国の子供たちが駅前通りを歩いています)、その後のメインの“ブライチ”でのアマチュア離れしたオケの巧さに正直驚いていました(第1108話)。
そして昨年も、演奏会で取り上げられることの少ない同じくブラームスのハイドン・バリエーションを生で聴きたくて、チケットを購入していたのですが、その時はまだ東京に居た長女の所に行く用事が急に出来てしまい、チケットは妹にあげて自分は残念ながら聴けませんでした。
今回は、SKFにも参加している京都市交響楽団(京響)主席の山本裕康氏が指揮振りで、ハイドンのチェロ協奏曲と彼の指揮でのメインがシューベルトの「グレイト」というプログラム。2月のN響の松本公演以来の久しぶりのコンサートですが、両曲とも楽しみにしていました。
 1曲目のハイドンのチェロ協奏曲第2番ニ長調。生で聴くのは初めてです。ハイドンらしい優雅な旋律。今回のチェロ独奏は京響のチェロ主席を務める山本裕康氏。SKFにも参加されており、松本でもお馴染みです。前回がっかりしたエルガーの時とは違い、さすがでした。なお、今回は指揮がメインなのか、独奏者のアンコール曲の演奏はありませんでした。

 休憩を挟んで、後半にメインのシューベルトの交響曲「ザ・グレイト」。昔は9番もしくは発表順で7番とされてきましたが、今回は8番となっています。
これは、シューベルトは生涯に計6曲の交響曲を発表したのですが、シューベルトが死去して10年後の1838年、作曲家のシューマンがシューベルトの「新しい」ハ長調の楽譜を初めて発見し、彼の依頼を受けたメンデルスゾーンが手兵のゲヴァントハウス管で初演しました。そして、この曲はシューベルトの第7番の交響曲と呼ばれるようになり、後年になって楽譜出版社により先に発表されていた規模の小さい第6番の同じハ短調の交響曲と区別するために、「大」ハ長調という意味で「グレイト(The Great))」と名付けられました。
しかしその後、1865年になってシューベルトのもう一つの2つの楽章だけが完成された交響曲が見つかり、「未完成」と名付けられます。書かれた順番からすると、ハ長調の交響曲より先だったのですが、既に「第7番」はあったため、「第8番」の交響曲「未完成」と呼ばれるようになりました。従って、昔小学校の頃?だったか、音楽の授業での習った「未完成」は、個人的にはどうしても8番というイメージが拭えないのですが・・・。
しかし、作曲順で云えば「未完成」の方が早いことから、グレイトの方は7番とする場合も注釈付きで9番と併記されたり、或いは「未完成」の飽くまで後ということを強調する場合は敢えて9番とも呼ばれたりしていました。
しかし最近では本来の完成順で呼ぶ方が主流となっており、有名な「未完成」が7番、この「グレイト」を8番とする方が多い様で、今回のプログラムもそれに倣い8番と表記されていました。

 指揮者として登場の山本裕康さん。いつものチェロ奏者の時は椅子に座っているのが、指揮台に立つと思いの外小柄。
第一楽章、冒頭のホルンのパートソロから始まります。管楽器の中で一番難しいとされるホルンですが、なかなかお見事。
そして、第二楽章冒頭で主旋律をソロで奏でるオーボエ。ハイドンのコンチェルトの時から感じていたのですが、オーボエが活躍するこのグレイトでは柔らかで滑らかな音色のオーボエの旨さが際立っていました。パンフレットのメンバー表では、プロの助っ人であろう賛助会員は今回1stVn、Cl、Tbにそれぞれ1名ずつでしたので、ホルンもオーボエも皆さんオリジナルメンバーでアマチュアなのでしょうけれど、練習の成果とはいえ本当に素晴らしい演奏でした。
松本が“楽都”と呼ばれるのはSKOが松本に来る前からであり、むしろスズキメソードの本拠地であることが本来はその理由ですが、メンバーの中にはメソードの先生方も弦楽パートにおられる様で、生徒さんと思しきお子さん方がたくさんお母さん方と一緒に聞きに来られていました。ですので、弦が玄人はだしなのは当然としても、管楽器群の演奏にも拍手でした。
このシューベルトの「グレイト」は、ベーム指揮SKドレスデン盤のCDを持っているのですが、以前生で一度聴きたくて選んだのが、信州からではマチネでしか日帰りが無理なので、8年前のインバル指揮都響の東京芸術劇場の大ホールで週末に行われているマチネシリーズでした。その時の都響は倍管でしたが、今回は楽譜通りでオリジナルの2管編成。ですので、作曲された当時は室内管での演奏が本来であり、音響の良いこの700席というどこで聴いてもまるでS席の贅沢な音文ホールには相応しい演目なのかもしれません。

 昔、懇意にさせていただいたマエストロ曰く、
『演奏会に向けた練習時間が長く取れ、全員が真摯に集中した時のアマオケの演奏は、ややもするとビジネスライクで無味乾燥的になりかねないプロオケの演奏をも時として凌ぐ。』
昔、マエストロに対して「えっ、アマオケを振られるんですか?」と怪訝/不遜な態度で失礼な質問をした私に、尊敬するマエストロから諭すように穏やかに言われて自分の無知を猛省したことがあるのですが、この日の演奏を聴きながら今回もその言葉を思い出していました。
勿論、それを引き出すのはオーケストラビルダーとしての指揮者の力量だとしても、この日の山本裕康指揮松本室内合奏団の演奏にも大拍手です。
この日はカーテンコールだけでアンコール演奏はありませんでしたが、例え地方都市でも“楽都・松本”の実力に十分納得し、大いに満足出来た演奏会でした。ブラァボ!

 6月22日。久しぶりにキッセイ文化ホール(松本県文)の自主企画で、四半期毎に開催されている、二ツ目の噺家さんお二人による落語会「~明日は真打~まつぶん新人寄席」に行って来ました。
 第27回の今回は、落語協会で来秋の真打昇進が決まったという入船亭遊京さんと、諏訪出身という長野県人の古今亭雛菊さんの二人会です。
師匠である古今亭菊之丞さんのお弟子さんである雛菊さんは、コロナ禍でどの定席も閉鎖されていた時に、奥さまのNHK藤井彩子アナウンサーの進言で始めたという師匠のYouTubeチャンネルにも前座の「まめ菊」の頃から登場していて、師匠に習ったばかりだという「元犬」や「天失気」だったかネタ卸しをしていたのを見て、地元出身の噺家さんでもあり、その天性の明るさが本当に噺家向きでしたのでいつか生で聴いてみたいと思っていました。
昨年東京の長女の所に行っていた時に、雛菊さんが上野鈴本演芸場での高座に交代で登場していたのですが、聴きに行けそうだった日に登場せず、残念ながら定席でも聴けてはいませんでした。それがここ松本で聴けると知り、その雛菊さん目当てでチケットを事前に購入していました。
この「まつぶん新人寄席」は、ありがたいことにシルバーと学生は割引料金が設定されていて、ナント500円のワンコイン(通常でも1000円と非常に安価ですが)聴くことが出来ます。
 チケットを買った時は、開場設定はいつもの会議室だったと思いますが、この日行くと会場が中ホールに変更されていました。地元出身ということもあるのか、ご親戚など応援団含めどうやらいつも以上にお客さんが集まった様です。

 この日のそれぞれの出し物は、
 入船亭遊京 「新聞記事」
 古今亭雛菊 「井戸の茶わん」
  (仲入り)
 古今亭雛菊 「黄金(きん)の大黒」
 入船亭遊京 「鰻の幇間」
というネタでした。
「新聞記事」と「黄金(きん)の大黒」は初めて聴くネタです。

 遊京さんは、前座5年二ツ目10年の修業を経て、来秋には見事真打に昇進とのこと。ハイトーンで声質が高く、張りと艶があって声が良く通ります。持って生まれた財産です。さすがに真打に昇進するだけあってなかなか巧い。
特にトリで掛けた「鰻の幇間」は、いわゆる幇間噺で何度かYouTubeやCDで古今亭志ん朝などの高座を聴いています。生で聴くのは初めてでしたが、こちらも良かったです。ただ欲を言えば、最後の方で八つ当たりで女中に怒って文句を言うくだりは、ケンカして江戸っ子が啖呵を切る大工調べとかと同様に、名人志ん朝や小痴楽師匠の様に江戸っ子口調のテンポが良ければもっと良かったと思います。但し、そのお二人は正真正銘の江戸っ子ですが、遊京さんは愛媛松山のご出身とのことでした。

 片や、この日のお目当ての古今亭雛菊さん。彼女は二ツ目になってまだ3年目。
諏訪市出身の雛菊さんですが、枕で最初に「私、諏訪出身ですが、諏訪を嫌いな方いますか?私は松本大好きです!」と語り出したのですが、長野県人、信州人と一括りにせず、諏訪、松本としっかり分けるのが、「あぁ、如何にもこの人も信州人だなぁ・・・」と思わず笑ってしまいました。
因みに、「♪松本伊那佐久善光寺・・・」ではありませんが、それぞれ信濃は盆地毎に小藩が林立していたため、どちらかというと合同団結することなく小藩のまま独立独歩の気風の強かった中で、廃藩置県により今では「長野県」と全体を称すると確かに“信州人”ですが、唯一それとは別に“諏訪人”とも呼ぶのは今でも諏訪だけです。
さて、雛菊さんはまだ二ツ目3年では止むを得ないと思いますが、枕は正直面白くないので工夫が必要でしょう。しかも、枕とネタでは口調が(そのネタをさらってもらったお師匠さんの影響か)変わってしまいます。
 この日の一席目、仲入り前で掛けたのは古典落語の名作「井戸の茶わん」、大ネタです。その意気やヨシ!ちゃんと自分のモノにされていました。この古典落語の名作「井戸の茶碗」は、どちらかというと人情噺で人気のネタです。個人的には、柳家さん喬師匠の「井戸の茶碗」が暖かくてホンワカしていて、一番好きでしょうか。弟子の柳家喬太朗師匠になると、これが「歌う井戸の茶碗」となって爆笑ネタに変わるのですが、しかしさすがにじんわりと聴かせるところではちゃんと正統派の師匠譲りです。
雛菊さんも聞かせどころはしっかり抑えているので、くすぐるところはもう一工夫でしょうか。
中入り後、雛菊さんの二席目は「黄金(きん)の大黒」。初めて聴くネタですが、いわゆる長屋噺で、長屋の花見の続きの様な内容で、長屋の店子全員に家主から呼び出しが掛かるのですが、春に「長屋の花見」で懲りている連中。年の暮れでの呼び出しに、今度こそは店賃の催促と思って戦線恐々。どのくらい店賃を溜めているかをお互い教えるくだりは、「長屋の花見」と殆ど同じ内容でした。
因みに、仲入り前の雛菊さんの高座で枕と大ネタで押してしまい、最後の遊京さんトリの一席の始まる時には既に4時を過ぎていて、遊京さん曰く、
 「もう既に予定の閉演時刻を過ぎてしまいましたが、このまま続けても宜しいでしょうか?」
もしかすると雛菊さんが故郷の信州に凱旋して、その意気込みからの勇み足だったのかもしれませんが、仮にそうだったとしても定席の寄席ではありませんので、勿論皆さん拍手で応援ですが、二ツ目としてその意気や良し!
雛菊さんは、例えどんなに稽古しても、定評ある歌舞伎の女形の様な菊之丞師匠には色気では到底敵いませんし、その路線は失礼ながら絶対に無理だと思います。しかし、とても明るくて持って生まれた愛嬌があるので、与太郎噺なんかにはむしろピッタリだと思います。というのも、師匠のYouTubeチャンネルでネタ卸しで演じた「転失気」の珍念さんがピッタリでとても良かったからです。しかも師匠方にも大変可愛がってもらっている由。
ですので、一生懸命稽古をして、人気の上方落語の桂二葉さんに対抗して是非江戸落語で頑張って欲しいと思いますし、そしてその期待は大だと思っています。先ずはNHK新人落語大賞目指して、ガンバレ!

 以前もご紹介したのですが、マンションに引っ越してきて以降、鉄筋コンクリート構造故かマンションのFM受信状態が劣悪で、4LDKの中で北の通路側しか受信出来ないため、アンテナを張る場所的に通路側に近い壁側のコーナーに設置している机の上のどこかにオーディオ本体も置かざるを得ず、そのためこの一体型のポータブルコンポが、物置部屋兼“男の隠れ家”的ミニ書斎での唯一のFM受信可能ツールです。

北側のマンションの通路側に面したこの一室は、その北側にしか窓が無く日当たりも悪いため、本来は和ダンスや仏壇を置くための物置にした部屋です。
その部屋の中の空いたスペースを私メの“ミニ書斎”的に“勝手に”使っても良いということなので、その結果限られたスペースと空間の有効且つ効率的活用のため、購入した机上ラックの下にノートPCを置き、その上部に出来た二段の棚の上に一番小さなオールインワンタイプのポータブルココンポを乗せています(これも後述するK-251 同様KENWOODの製品なのですが、カタログ上は“コンパクトハイファイコンポーネントシステム”との表記。昔でいうラジカセの様に、レシ―バー本体とCDプレーヤー、スピーカーが一体で、USBと昔のiPodも視聴可能)。
その結果、一応受信は出来るのですが何とか聴けるというレベルで、受信時のサーノイズなどの雑音も殆ど気にならなかった沢村の一戸建ての時と比べると、マンションの受信状態は雲泥の差です。
 同じく“男の隠れ家”的ミニ書斎で、KEFのトールボーイ3wayスピーカーと繋げて主にCDやPCと接続してYouTubeを聴いている、同じくKENWOODのミニコンポKシリーズのCDレシーバーまでは、どうしてもレイアウト上北側の窓からは距離があるのでFMアンテナが届きません。
一戸建ての時にはFM放送を快適に視聴していた、このKENWOODのレシーバーなのですが、当時記載したブログから抜粋すると、
『K-521のレシーバーは、多分チューナー部分にかけるコスト的余裕がなかったのでしょう(それに加えて、付属の安物の簡易アンテナのせいもあるのか)。ネットでのレビュー記事では、「元々チューナーからスタートした音響メーカーにあるまじき受信状態の悪さ」との酷評もあり、購入時に然程期待していなかったFM放送でしたが、我が家の場所の電波状態が良いのか、階下のポータブルオーディオよりも遥かに鮮明に受信出来て、これまた満足でした(さすがに、スピーカーに近付くとサーノイズが聞こえますが、リスニングポジションで離れて聴く分には全く気になりません)。また、アダプター(iPod Dockが第5世代までの対応のため)を下のポータブルオーディオとの兼用でiPodを聴いてみると、ポータブルと比べては失礼ですが、左右独立のデジタルアンプと変更したKEFのCoda-9の威力か、低音を含めさすがに良い音がします。このデジタルアンプなら、レシーバーとして別スピーカーでも十分にドライブできそうです(実際に、後継のK-531は、直販のみですが単体レシーバーとしても販売されています)。』(第737話)
ですので、FMの受信状態は受信機器の性能よりも、むしろその構造体と受信場所(FM放送送信アンテナからの位置)に大いに影響を受けるのでしょうか。
以前住んでいた高台の沢村の一戸建ての木造2階の建物と、現在の市街地の鉄筋コンクリート6階建てのマンションを比べた時に、以前は良好だったそのKNWOODのレシーバーも、また建物の南東に位置する4LDKのリビングに置いてある現在のメインシステムであるマランツのネットワークCDレシーバー M‐CR612でも(10年前に購入したK-521のレシーバーに比べて遥かにスペックは上ですが)、どちらも全くFMが受信出来ないのです。
昔は市販されていた室内専用FMアンテナも、今では需要も無いのか、ネットで探しても(家電量販は言わずもがなで)見つからず、結局FMチューナーやチューナー内蔵のプリメインアンプに附属の簡易型のFMループアンテナを使うしかありません。
八木アンテナなど、屋外に設置する専用のFMアンテナも無いではありませんが、そこまでコストを掛ける必要が果たしてあるのかどうか・・・?
というのも、FMと言っても私が聞きたいのはクラシック番組なのですが、半世紀近く前の昔の学生時代から若手の社会人時代頃に2週間の番組表が載ったFM雑誌を片手に、当時はたくさんあったクラシック番組の放送予定から指揮者やオーケストラ、録音年など内容をしっかり事前に調べては、今や死語となった“エアチェック”で、レコ芸で特選となった新録音のLPや海外音楽祭のライブ録音などを、平日の昼間であればオーディオタイマーを使ってカセットテープに留守録音までしていた頃と比べると、現在のFM放送はクラシック番組が極端に少なくなってしまいました(公共放送なんだから、クラシック、JazzやPopsといったジャンル別の専門チャンネルがあっても良いと思うのですが・・・)。
 一方、我が家の現在のメインシステムであるマランツM- CR612 は現行モデルの最新のネットワークオーディオであり、そのマランツとデノンのネットワークオーディオ対応製品に採用されているネットワークオーディオのプラットフォームであるHEOS(ヒオス)が搭載されており、これを使うと各種ストリーミングサービスが高音質で楽しめるので、以前ご紹介した様にインターネットラジオで世界の無料のクラシック番組や米国の Smooth Jazz の番組局を探してHEOSに登録して聴いているのですが、ディスプレイに表示されるので今聴いている曲は分かっても、番組表が無いのでこれから先にどんな曲が掛かるのかは分かりません。
従ってBGM的に視聴することになり、聴きたい曲を探して聴くことは出来ません(勿論有料のクラシックのインターネットラジオ局やサブスクもありますので、そうしたクラシック専門チャンネルと契約すれば好きな曲を検索して聴けるかもしれません)。例えばドイツのインターネットラジオ局『 Klassik Radio Mozart 』は、24時間モーツァルトばかりを流しているので(但し楽章単位での細切れですが)BGMには最適です。
しかし、M- CR612に搭載されているインターネットラジオの検索エンジンTuneInでは、検索しても残念ながらNHKのインターネットラジオの「らじるらじる」を見つけることは出来ませんでした。
 そこで、NHKのFM放送を聴く時は、事前にチェックをして聴きたい曲や演奏が見つかると、Bluetooth機能を活かしてスマホでNHKのインターネットラジオ「らじるらじる」検索し、Bluetooth機能を活かしてM- CR612に接続してNHK-FMを聴いています。
勿論、「らじるらじる」では実際のFM放送とほぼ同時にインターネット上でも聴くことが出来ますが、便利なのはオンデマンド放送です。但し、聞き逃し配信が可能なのは一部の番組のみで、例えば「N響演奏会」はNHKホールからの定期演奏会(Aプロ)のライブ配信のみであり、全番組がその対象ではありません。従って、もし聞き逃し配信が無い番組は本放送と同時で聴くしかありませんが・・・。
でも、もし聞き逃し配信可能な中に気に入った番組があれば、過去に放送された番組をある一定期間聴くことが出来るので、その内容を事前に確認して、自分の聴きたい曲や聴きたい演奏者の録音を、いつでも好きな時に掲載中は何度でも聴くことが出来るのでとても便利です。
因みに書斎のKENWOODのレシーバーは10年前の製品なので、ネットワークオーディオではありません。従って「らじるらじる」でFM放送を聴くことが出来るのはリビングのメインシステムのみです。
家内がリビングにいる時はオーディオは聴けない(奥さまは興味関心が無い)ので、聴くことが出来るのは(有難い時もあれば不便な時もあるという意味で、幸か不幸か)彼女のいない時だけですが・・・。
因みに、私が「らじるらじる」で専ら聞いているのは、以前の「クラシックカフェ」から改編された「クラシックの庭」という番組。本放送は月~木の14時からで、再放送が同じく一週間遅れ位で朝の7:25から。因みに以前は毎週聴いていた「きらクラ」は、改編後「かけクラ」となってMCも交代になった結果、興味を失して全く聴かなくなりました。
もちろん「らじるらじる」はNHK‐FMだけではなく、ラジオ第1や第2放送も視聴可能です(好きな方は、例えば「ラジオ深夜便」などもネットで聞くことが出来ます)。
 私はクラシックとJazz以外は日常的には洋もJもポップスは余り聴かないので、最新ヒット曲やアルバムなど曲目を指定してのサブスクは必要ありませんが、TuneIn以外にも検索エンジンは幾つかありますので、そうしたジャンルに強い検索エンジンや日本のチャンネルもあるかと思います。
またCMが入りますがJ-Popsに強い無料のサブスク(有料だとCM無し)もありますし、また昭和のJポップスも歌謡曲もありますので、若者だけではなく、我々シルバー世代も(特に年金生活者は)絶対にネットワークオーディオを使わなくては勿体無い!・・・と感じています。

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