カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 昨年、小笠原氏の井川城館跡と林城址(大城)が国指定史跡になっての1周年記念講演会が3月10日に開催され出席して来ました。
市の文化財課が主催して、「城の宝庫!松本の城と歩き方~小笠原氏城跡と松本城の魅力~」と題された講演で、講師は自称“城メグリスト”という城郭ライター・編集者として活躍されている萩原さち子さん。場所はMウィング(松本中央公民館)の6階ホールです。以前中央図書館で案内のチラシがあり、事前受付が必要とのことから電話で申し込んでいました。当日伺うと、300人の定員満席とのこと。市民の“松本好き”或いは昨今の“城ブーム”も手伝ってか、イヤハヤ大したモノです。

講師の城郭ライターの萩原さち子さんは、プロフィールをそのまま紹介させていただくと『小学校2年生でお城に魅了される。大学卒業後、制作会社や広告代理店等の勤務を経て、現在はフリーの城郭ライター・編集者。執筆業を中心に講演や講座、メディアでも活躍。(中略)著作多数。公益財団法人日本城郭協会理事。』とのこと。小学2年生の時に初めて訪れてお城に嵌ったのは松本城だった由。謂わば、“城ガール”の奔りでしょうか。昨年7月から放送されたNHK-Eテレ「趣味どきっ!」の「おとなの歩き旅」の第1・2回に「城下町松本」が取り上げられた際、松本の案内役も務められたとか(確か女優のとよた真帆さん等も出られていて、私メが視たのは「遠山郷」だけでしたが)。
 講演会では、弥生時代のムラの環濠集落の櫓を始まりとする「城」の歴史と、山城、館と詰城、革命児信長以降の織豊時代の天守を持つ城郭へという時代の変遷による城の分類をベースに、本題である信濃守護小笠原氏の城跡の特徴や歴史的価値などをお話しいただきました。萩原さん曰く、同じ市内に、歴史的に明らかに小笠原氏の居城として特定されている中世の館跡としての井川城、戦国時代に至る山城としての林城址(大城と小城)と桐原、山家などの支城群、そして深志城と、城の歴史が全て揃うという歴史的価値は計り知れないとのこと。しかも市民の宝であるばかりでなく、国指定の史跡として国の宝でもあることなど熱く語ってくださいました。
「城を捨てて(=自落)逃げたりして“もののふ”たる武士としては潔くないという評価もありますが、南北朝に始まり、信濃国守護である名門小笠原氏がこの松本を主な舞台として戦国を生き抜いて近世まで家を存続させたというのは、ある意味ドラマチックで凄いことだと評価してイイと思います。」
 また松本城については、これほど市民の生活に溶け込んで愛されているお城はなのではないかとのこと。個人的にも全く同感なのですが、市民が自然と親近感を感ずるその理由は、以前高校の大先輩である“居酒屋評論家”大田和彦氏が(見上げなければいけない平山城ではなく)「松本城が平城であり、いつでも市民が自由にその周囲の公園に毎日の通勤通学時など立ち入ることが出来るが故に、日常的に市民の視線や目線の中に松本城がある」(第776話参照)からだと云われていたのが、全く以っての至言だと思っています。
そして萩原さん曰く、「松本城は日本で最も美しい黒い五重の天守閣だと思いますが、それは唯一松本城だけが毎年九月に黒の本漆で塗り替えられているからです。そして、それを手掛ける碇屋漆器店の碇屋公章さんに以前伺ったお話では、昔漆職人だった先代のお父様が昭和の大修理に参加した際に築城時に本漆が使われていたことが発見され、以降は例え自分で持ち出してでも毎年松本城の漆を塗り替えて維持して来られたからなんです。でも意外と地元でも知らない方がおられるので、是非松本市民の方々には知っていて欲しいと思います。」と強調しておられたのがとても印象的でした。
 松本の、いえ日本の宝でもある松本城と小笠原氏城址群。市の文化財課のお話に由ると、来年2月には林小城も林大城と併せて国史跡に追加指定される予定とのこと。
林城址は子供の頃の遠足や歴史ウォークでも歩いていますが、他にも山家城址、桐原城址、また井深城址など、松本にはたくさんの山城がありますので、地元の宝として機会があったら是非訪ねてみようと思います。
いずれにしても、お城のある街松本に住んでいることに感謝した1時間半でした。