カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 我が家の冬の楽しみは薪ストーブです。
薪ストーブは暖房器具ですので、“楽しみ”と言うのは少し違和感があるかもしれません。暖房器具としては、電気やガスを使いませんので、災害時でも使うことが出来ますし、環境面でいえば最近話題の所謂再生可能エネルギーでもありますので、近年ではエコ暖房として注目されてもいます。また燃料として木材を使うということは(ペレットでも良いのですが)、松枯れ対策を含め(良く乾燥させれば針葉樹も薪として使用可能)里山再生にも繋がっていきます。そんな意味で、薪ストーブは古くて新しい暖房機器でもあります。

 薪ストーブの効能。勿論、先ずは暖房です。化石燃料と違い、嫌な匂いがしません。薪を燃やすので煙は煙突で屋外に廃棄されますが、今の薪ストーブは二次燃焼させるクリーンバーン燃焼方式のストーブが多く、殆ど(ちゃんと乾いた薪を燃焼させれば、意外な程)煙は出ません。しかも遠赤外線効果によるやわらかな暖かさ。本体からだけでなく、(室内の)煙突からも放熱されています。そして、暖炉もそうですが、薪が燃える時の炎には、寄せる波やせせらぎの瀬音、雨音などと同じ「1/fゆらぎ」による癒し効果があると云われています。

 そして更なる効果は、その遠赤外線効果を活かしての調理器具として・・・です。シチューやスープなど、コトコト煮込むには最適で、薪ストーブ専用の調理器具も市販されています。
我が家はそうではなく、専ら奥さまの“焼き芋製造機”としての薪ストーブです。そして焼き芋はそのまま食べるのではなく、5年ほど前から陰干しをして、干し芋として楽しまれています。

 干し芋(芋干し)は茨城県が主産地ですが、奥さまに由れば、次女が成田に住んでいた時に成田山新勝寺の参道にあった、名物の落花生と並んで売られていた“干し芋”が柔らかくて甘くて忘れられないとのこと。
その後、次女が羽田に移った以降は成田で購入出来なくなったことから、我が家の冬の“風物詩”である薪ストーブで作る焼き芋を使って、“干し芋”を作ることになったものです。そして、それ以降は“焼き芋”は全て“干し芋”になっています。“干し芋”に限りませんが、天日で干すことで(ビタミンが形成され)甘味も増すそうですが、焼き芋ではイマイチ美味しくなかった芋も、干したことで“見違えるように”甘く美味しくなるとのこと。実際にしっかり乾燥したモノは、昔懐かしい“芋干し”そのものの味と食感です。
大概の女性は好きなのかもしれませんが、焼き芋でも干し芋でも、買うと高い。干し芋は100gで400円前後します。サツマイモは、今年は不作なのか高くて一本150円以上していますし、太くて立派な芋は余り店頭では今年は見掛けません。
昔は、どの家でも(農家では?)干し芋は自家製でした。我が家でも祖母が自前のサツマイモを蒸して、蒸し芋を切って竹のざるにたくさん並べて天日に干して、干し芋を作っていました。ですので、子供の頃の冬のおやつは芋干しばかり(そういえば、お餅をさいころ状に切って、囲炉裏の大きな鍋で煎った「あられ」もお祖母ちゃんの自家製でした)で、食傷気味。そのため、干し芋は何となく“貧しい農家”(悪く云えば“貧乏百姓”)の象徴の様な気がして、正直、子供心には余り好きではありませんでした。
しかし、今では干し芋は買えば高い!(それだけ作るのに自動化が出来ず、手作業で手が掛かるということでしょう)。まさに高級食品です。
 そんな昔の(或いは今でも売られている)干し芋は蒸し芋から作られていますが、我が家では薪ストーブを使って焼き芋から作ります。
先ずはその焼き芋を作るのですが、ストーブの薪が熾火になってきてから、アルミホイルで包んだサツマイモをその中に並べて朝までじっくりと焼き上げます。火が強いと焦げて炭になってしまうとか。最近スーパーとかの店頭で売られているサツマイモは「紅はるか」が多く(安納芋も売られていますが)、「紅はるか」は割としっとり系で「紅あずま」はホクホク系。
朝アルミホイルを剥ぐと、「紅はるか」はねっとりと蜜が付いていることが多いのですが、焼き芋には「栗よりうまい十三里」と云われる様にほくほくしている方が良いと思いますが、干し芋にはむしろしっとりしていた方が向いていると思います。
 時代が変わり、祖母に代わって家内が作る、そんな干し芋。
娘たちにも大好評で、せっせと手作りをして、この時期に上京する時の手土産として持参したり、ご近所やお友達にもお裾分けをしたり・・・。
ドライネットのスペースにもよりますが、薪ストーブが焚かれている期間の干し芋作りが我が家のベランダでは、冬の風物詩になっています。