カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 9月2日、地元松本発のとんでもない報道が全国ニュースで飛び込んで来ました。
『犬を劣悪な環境で飼育していた疑いで家宅捜索を受けた長野県松本市のペット業者。飼育していた犬は届け出をはるかに上回る約1000匹で、一部は保健所が保護しました。
販売業者は今月2日、3日に警察の家宅捜索を受けました。狭く不衛生な部屋で繁殖させるなどした動物愛護法違反の疑いが持たれています。
捜索と同時に市の保健所も立ち入り、飼育状況や犬の健康状態を確認しました。保健所には事前に業者の問題を指摘する情報が寄せられていたということです。
捜索を受けた2施設の飼育の届け出は約600匹でしたが、実際には約1000匹がいたということです。また関係者によると、施設内はケージが2段積みになっていて、小型の犬は一つのケージに複数匹、入っていたということです。』

 まさかこの松本にそんな悪徳ブリーダーが居たとは、全く知りませんでした。どんな大きな施設か知りませんが、保健所に届け出た600匹でさえ異常な飼育数の筈。これまでも保護団体からの情報提供や専門家や地元の獣医師からの指摘、近所からの苦情などがあったそうなので、悪徳業者だけではなく、認可して以降これまで指導や監督など何の対応もして来なかった行政(保健所を管轄する県。今年4月からは松本市の中核市移行に伴い、保健衛生事務は県から市に移管)の責任も免れない(いくらコロナ対応で大変な状況であれ)と思います。
しかも続報で、施設のオーナーは、繁殖犬が自然分娩出来ずに帝王切開する時は麻酔無しで切開し、もし奇形児だと生きたまま捨てていたという従業員の信じられない告白まであり、悪魔、鬼畜としか思えませんでした。動物ではなく、植物という“命”を商売にする農家だって、育てている作物に「大きくなぁれ!」とか時に声を掛けたりして愛情を注いで育てているのに、信じられません。
少なくとも、最近は松本保健所管内での犬の殺処分はゼロだった筈。個人的にはそう理解していただけに、まさか足元でこんなことが行われていたとは・・・。松本の恥であり、市民として情けない限りです。絶対に許せない!やり場の無い怒りがこみ上げてきます。

 2年前に我が家にやって来た、元繁殖犬だった保護犬コユキ。
推定8歳でブリーダーから不要犬として捨てられ、保護した埼玉県の保健所から地元の保護団体(この団体は、他の保護団体が引き取らなかった何か問題を抱えた様な犬ばかりを保護している、頭の下がる保護団体です)に救い出され、ボランティアの方のお宅で2ヶ月お世話いただいた後、縁あってはるばる松本の我が家へ。因みに、そのボランティアの方に付けていただいた名前「こゆき」は、恐らく初めて人間から愛情を以って付けてもらった名前の筈なので(ブリーダーは記号でしか呼ばないと云います)、我が家でもそのまま「こゆき」(ブログ上は判別し易い様にカタカナ表記にしています)にしました。
我が家に来て既に2年経ったのですが、まだ見知らぬ人間を怖がっています。来客で見知らぬ人が来ると、必死に吠え続けるのです。家内が抱いたり一緒に椅子に座らせたりすると漸く鳴き止むのですが、そうでないと、ブリーダーから声帯を切られたために掠れた声で必死に吠え続けるのです。ブリーダーが男性だったのでしょうか、特に大人の男性を怖がって吠えます。“三つ子の魂”ではないのですが、もう怯えなくても良いのに一生治らないのでしょうか。虐待していたであろうブリーダーを憎みます。
紀元前1500年、地中海のマルタ島に起源を持つ世界最古の愛玩犬と云われるマルチーズは、本来は人なつっこく、外交的な性格で甘えん坊。
現在世界中でペットとして飼われている多くの犬種が元々は猟犬(例えば、ダックスフンドは穴の中にいるアナグマ猟ですし、プードルはカモ猟で泳いで仕留めたカモを回収するための犬と云います)や、現代でも盲導犬や警察犬などに代表される使役犬としての作業犬(例えば、シープドッグと付く犬種はその名の通り元々は牧羊犬ですし、セントバーナードはスイスの山岳救助犬だったことで有名)だったのに対し、マルチーズは最初から愛玩犬、ペットとして、その明るさで人々を癒して来た犬種で、活発で好奇心旺盛な一面もあります。そんな犬種である筈が、コユキは人に怯えて吠え続けるのです。最初の頃は車に乗るだけで、またどこかに連れて行かれると不安になるのか、ブルブル震えていました。家に居ても、何かあると不安になるのか、先住犬であるシーズー(チベットからの中国に貢物として贈られて、清王朝の西大后が特に可愛がったと云われる宮廷犬。そのためかプライドが高く、“我関せず”な性格で他の犬を気にしないので多頭飼いに向くと云われる。犬種名も中国語の獅子狗から)のナナを後に付いていつも一緒にいます。
また外でウンチをする時(ブリーダーの所で食事が十分でなかったのか、保護されて以降食糞の癖があるということだったので、我々が知らない内に食べてしまわない様に、出来るだけ朝の散歩時にさせています)は、まるでフィギアスケートのトリプルアクセルや4回転の様にクルクルと、しかも何十回、多い時は百回以上も続けて連続回転をし、漸く場所が決まります。
それも恐らく狭いケージの中だけで何年も(保護された時は推定8歳でした)過ごしてきたから、その与えられた狭い世界の中だけで生きて来た故の行動だと思うのです。もし知らない人が見ると可愛くて微笑ましく感じるかもしれませんが、何とも不憫で可哀そうでなりません。
また毎朝、ナナと一緒に散歩をしていても、散歩自体外に行くことは嫌いではないのですが、コユキは匂いを嗅ぐこともありませんしマーキングも一切しません。決められたおむつ以外ではおしっこをする習慣が無いのでしょうか。また、声帯を切られたせいで息道が塞がれて一時過呼吸気味だったので手術をして拡げてもらったのですが、それでも散歩中に時々ゼイゼイ、ハァハァと息苦しそうに感じることもあります。そして、何度も子供を産まされたせいで(十分な栄養補給がされなかったのでしょう)カルシウムが足りずに歯がボロボロで、保護団体でお世話になっていた時にダメな歯を何本か抜いてもらってもいるのです。
そんな虐待され続けて来たであろう8年間(推定ですが)を、まだ家に来てからのたった2年では、我々がどんなに可愛がったつもりでも未だコユキ自身の中では埋め切れずにいるのが保護犬の実態なのです。
 “売れる子犬”を産めなくなれば、コユキの様に不要犬として捨てられる繁殖用の犬たち。そこには“生きとし生けるもの”への命の尊厳の欠片もありません。そしてそれは金儲け主義のブリーダーばかりではありません。販売をしているペット店も同罪です。
以前、ペット販売店でお客さんへこんな説明があったと聞きました。それは、初めて犬を飼いたいという家族連れが見初めたジャックラッセルについて、販売店の店員が、「この犬はとても飼い易い犬種で、毎日散歩に連れていかなくても大丈夫ですから」と説明して購入を勧めていたのだとか。
とんでもない話です。10数年前だったかクルマのTVCMで使われて話題となり、我が国でも一気に人気犬となったジャックラッセルテリア。小型犬ゆえに飼い易そうと思われるのですが、非常に活発でやんちゃ。運動量も多く、とにかくイタズラが大好きな犬種。だからこそ可愛いのですが、しかし最初の躾が肝心で、その最初にキチンと躾ないと、そのパワフルさに飼い主が追いつけず、コントロール不能となって手に負えなくなり、飼い主が飼育放棄して処分のために保健所に持ち込まれるケースが多い犬種とも云われています。少なくとも初めて飼うのに適した犬種ではありません。
如何にも大事にしていそうなペットショップでも、売れ残って“可愛い子犬”でなくなれば不要犬として捨ててしまう店もあるそうです。飽くまで営利目的ですから、賞味期限、消費期限を過ぎた商品を廃棄処分するのと同じ感覚なのでしょう。もしそうではないと反論があるなら、捨てられる筈が無い・・・。
そんなペットショップがある限り、今回の様な悪徳業者も決して無くならないでしょう。だから、日本もドイツの様に、犬を飼う場合はペットショップではなく保護団体から購入(保護された犬に掛った医療費や飼育に必要だった費用を負担)する。その際は、キチンと保護団体が購入希望者の飼育環境を確認し、問題無い場合のみ認めるようにすれば良いと思います。

 今回、松本の悪徳ブリーダーから保護された1000匹もの犬たち(松本保健所が立ち入った際に、先ずは劣悪な環境の中で特に酷い状態だった犬21匹だけをとりあえず保護した数日後、知り合いの埼玉県の業者が残りの犬たちをどこかに移動させた由)。地元故に、“松本の恥”とならぬよう何とかしてあげたいのですが、“高齢者夫婦”二人の我が家で三匹を飼うのは無理。
どうか、安心して眠れる、そして残りの生涯を思いっきり甘えられる、そんな新たな飼い主に全てのワンコたちが出会えることを心から祈ります。
【追記】
何かしら問題があり、継続して保護団体でのケアが必要な4匹を除き、17匹が松本市在住の市民限定で飼い主募集がされ、62名の方(ご家族)が応募されたとの報道がありました。県の専門家から、保護犬を飼う際の注意事項などの説明を受け、個々の面接、トライアルでの相性チェックなどを経て、正式な家族の一員として引き取られていく予定とのこと。
何の手助けも出来ませんでしたが、我が家のコユキのこともあり他人事とも思えずにいたのですが、先ずはホッとした次第です。良かった・・・。