カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 10月6日のBS11「太田和彦の居酒屋百選」で、久し振りに松本が登場していました。以前、同「ふらり旅」の中で「松本」が取り上げられて以来(第776話参照)だと思ったのですが、今回紹介された店は2017年に太田和彦氏が紹介して以来とのことでしたので、どうやら私メはその回を見逃していたようです。

 高校の大先輩である太田和彦氏は、本来はグラフィックデザイナーですが、趣味が高じ“居酒屋評論家”として、「いい酒、いい人、いい肴」をモットーに良い居酒屋を日本全国探し求め、その著書数知れず。中でも「居酒屋放浪記」全3冊は(飲兵衛としての)我がバイブルですし、同様に「居酒屋百名山」も登山の「日本百名山」同様に、この本を片手に全国の名居酒屋を訪ね歩く飲兵衛も多いとか・・・(羨ましい限り)。
そんな太田和彦氏が最初に故郷松本を取り上げたのが、「居酒屋放浪記」の「立志編」での「塩イカに望郷募り」でした(第505話参照)。
 北陸で長野県専用に加工された塩イカが、信州では街中のスーパーにも家庭の常備食の食材として並んでいます。そのままでは塩辛くてとても食べられたモノではありませんので、塩抜きをしないといけません。食べて多少塩気が感じられるように塩抜きするのがコツ(そのためか、今では「塩抜き済み」と表示された“塩イカ”まで販売されています)で、刻んだキュウリと醤油で和えるだけの素朴な料理(とは言えない程のレシピ)なのですが、昔の(各家庭で行われた)冠婚葬祭には必ず用意された一品です。
子供心には然程美味しいと思った記憶は無いのですが、母の実家で当時大学生だった新宅の叔父が帰省していて、母と叔母から何が食べたいか聞かれ、塩イカと即答していたのが妙に記憶に残っています。そんな叔父や大田和彦氏ではありませんが、自分も大学生になって信州から離れてみると、帰省しないと食べられない郷土食こそ懐かしいと感じる気持ちが理解できるようになりました。
ただ私メは、帰省すると必ず飴色に漬かった祖母の野沢菜漬けを、食事と“お茶”の時に毎度一人で一把全部食べてしまい、祖母が呆れて(胃を)心配するくらいでしたが、塩イカをリクエストしたことは一度も無かった気がします。

 今でも「塩イカ」は松本の居酒屋だけではなく、例えば蕎麦屋の「みよた」でも酒の肴の一品として食べることが出来るのですが、塩イカもキュウリもその切り方が違うんですね、これが!どちらも細切りになっているのですが、本来の塩イカはイカもキュウリも丸く薄切りにしないと・・・。

 番組中に、コロナ禍で飲みに行けないのでリモートで高校の先輩という松本の馴染みの店(家庭料理「あや菜」)の女将さんと若女将と会話した後で、その松本のお店から送ってもらったという塩イカをご自分で調理された太田さん。先程言ったように塩イカを塩抜きし、ちゃんと丸く切って(割いて)、キュウリも丸く薄切りしてから(氏は更に塩もみをして)醤油を掛けて食べていました。
お見事!さすがは正統派の塩イカと感心した次第です。