カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 5月中旬に次女夫婦が松本に来て、美ヶ原温泉の“鄙の宿”「金宇館」に一泊しました。
我が家ではこちらの料理に感動して、昔から亡き父の法事の時も含めて何度か会食で利用させていただいていたのですが、「次の百年に向けて」という三年前の改装後は会食のみでの利用が出来なくなったことから、金宇館も懐石料理を目的に何度か宿泊でも利用させていただいている、地元松本では我が家イチオシの料理旅館です。
長女も「金宇館」のファンで、東京の友人の方と松本への女子旅などで使っています。因みに、その友人もとても気に入ったらしく、その後独りでも何度か泊まりに来ているそうです。
同様に次女夫婦も金宇館を大変気に入っていて、前回はお正月にNYに居る長女の婿殿がコロナ禍明けで久しぶりに来日し、正月休みに帰省してくれた次女夫婦も加わって、我が家の“新年会”を兼ねて全員集合で金宇館に泊まったのですが、この5月の中旬に婿殿の病院勤めの慰労と次女の育児疲れの骨休みに金宇館に泊まりたいとのこと(松本へ来れば、子供をジジババに見てもらえるという計算もありましょうが、“エエどこじゃない”とジジババの望むところ)。
客室が僅か9部屋しか無い金宇館では、小さな子が泊まれる部屋はその内の一部屋だけなので、家内が苦労して予約。何とかその部屋を確保出来たのですが、彼らと夕食を共にするためには泊まるしかないので、併せて我々も一緒に金宇館に宿泊することにしました。

 1歳半を過ぎた孫娘はとにかくじっとしていないので、特急電車での移動は周囲に気を使って却って疲れるだろうからと(家内が上京して東京で落ち合う時などは、混雑を避けるために娘は横浜から新幹線で東京に来て、しかも座席では周囲の迷惑になりそうなグズル時は、ずっとデッキで立って来ることもあるそうです。余談ながら、小さな子連れの若いママさんたちは皆さん大変な思いで子育てをしています)、横浜から八王子までの横浜線の移動は然程混まないので問題ないとのことなので、八王子からは気兼ね無く中央線の特急移動ではなくて車で移動すべくJR八王子駅へ車で送迎することにしました。
有難いことに孫娘が車の中でずっと寝てくれていたので、途中で起こさぬようにノンストップで運転し、チェックインタイムを見計らって3時過ぎに金宇館に到着することが出来ました。
私メは、コユキがマンションに居るので一旦家に戻り、コユキの夕飯を済ませてから再度6時頃に金宇館へ。先にお風呂に入ってから、少し遅らせて7時にお願いした夕食会場へ。前回我が家専用で使わせていただいた二階の個室ダイニングは、今回は残念ながら先約があり、他のお客さんと一緒に一階のメインダイニングで戴きました。

 この日の夕食は、季節柄、この時期の旬の食材である地物産の山菜尽くしで、大変繊細な味付けの懐石料理でした。この日も一品ずつしっかり説明してくれたのですが、今回もウラ覚えにつき、もし間違っていたらご容赦ください。
先ず最初に鰆子(魚卵)と山菜ウドブキ(信州では独活蕗と呼ぶのだそうですが、全国的にはイヌドウナという山菜)のお浸し、稚鮎の唐揚げ。
そして八寸風にタラの芽、こしあぶら、ワラビなど、それぞれ白和えや味噌和え、お浸しなどと味を変えた山菜尽くし。それと稚鮎の甘露煮、ネギを巻いた鴨肉、海老真薯(しんじょ)を挟んで揚げたソラマメ。
椀物はホンビノスかと見紛う程大きなハマグリのお吸い物(千切りの独活が添えられて)。
お造りはシナノユキマス(信濃雪鱒)。焼き物が鰆に新玉ネギの摺りおろしソース、更には揚げた白髪ネギを載せてひき肉を中に詰めて揚げたジャガイモ団子にこしあぶらの餡掛け、信州牛の炊き合わせ、〆に桜エビとこしあぶらの混ぜご飯にお味噌汁。香の物で白菜の浅漬け。デザートは生姜のアイスクリーム。お酒は松本のクラフトビールと大雪渓の純米生原酒。
皆で代わる代わる孫娘の世話をしながらで、なかなか同じタイミングで食べ切ることが難しい我々ですが、次の品のサーブも(当然調理も)どこかで見ているかの様に気を使いながら、一品毎完璧なタイミングで出していただきました。
孫を交替であやしながら、何とか良い子でいてくれて無事に食べ終わることが出来ました。でも、時にはキャッキャと声も出たので、食事が終わって席を立つ時に、まだ食後の談笑をされていた関西から来られたという他のお客さんの高齢者のグループに、娘が「お騒がせしてスイマセンでした」と挨拶をしているのを見て、いつもそうやって周囲に気を使っているんだろうと、彼女に限らず若いお母さん方の大変さを垣間見た思いがしました。

今回も満足の食事が終わり、一泊二食での宿泊料金を勿論払ってはいるのですが、私だけは金宇館には泊まらずに家内に送ってもらってマンションへ戻ります。
ナナが居ればですが、保護犬故に臆病なコユキだけを(車に乗るだけで、一体今度はどこに連れて行かれるのかと、暫くはブルブルと震えが止まらなくなります)暗い夜に独りで留守番させるのは忍びないので、コユキ的には家内の方が遥かに嬉しいのでしょうけれど、まぁ、そこは勘弁してもらって今夜は私メと一緒です。
 翌朝、散歩をしてからコユキにご飯をあげて、月一度の資源ゴミを出してから6時には金宇館へ戻り、せっかくですので食事前にゆっくりと朝風呂へ。
その後、同じ食事処での朝食。他のお客さんは8時からだそうですが、我々はゆっくりと8時半にお願いしました。
朝食は、いつも通りで、安曇野産コシヒカリが木製(木曽のさわらか桧)のお櫃に入れられて。そして、これまた各々個人毎にお膳に載ったオカズが六鉢。
左上から順番に、厚揚げと大根の煮物、身欠き鰊、山形村産の長芋のとろろ汁、ホウレンソウの生姜風味のお浸し、切り干し大根の煮物、香の物でキュウリとカブの糠漬け。お揚げとコゴミのお味噌汁。最後に温かな餡かけ湯葉と食後のデザートに、フルーツでイチゴとメロン。
自分の分は、イチゴが大好きな孫娘へ。すると、イチゴに目が無いという孫用に、ご主人が別にイチゴをサービスしてくださいました。
 他のお客さんは、松本や安曇野の観光に行かれるのか、皆さん10時前にはチェックアウトされましたが、金宇館は11時がチェックアウトタイムなので、あくせく観光せずにノンビリしたい人にもお薦めです。
朝食後、皆はお風呂に入るというので、私は独りチェックアウトまでのんびりと金宇館の“時間”を楽しみます。
この日も、城下工業製Sound Warriorの真空アンプと、天井に吊り下げられたSonihouseというメーカーの多面体の無指向性スピーカーSightからSmooth Jazzが流れるラウンジで、セルフサービスのコーヒーマシンで淹れた丸山珈琲を飲みながら、中庭を眺めつつ暫し休憩です。お風呂場へ向かう廊下に面した坪庭では、エゴノキがちょうど満開。
そして館内のあちこちに置かれた生け花と、ご主人がファンで集められたという沢田英男の小さな木彫りの像。
創業以来経過して来た百年を大事にしながら次の百年を目指して改装したという、金宇館のコンセプトは“時と泊まる”。
館内や客室の投げ活けや什器に至るまで、静かに、時に雄弁に、それぞれの“時”をさり気無く語り掛けてくれているかの様に感じます。
 10時半、ご主人と若女将に見送られて我々もチェックアウト。
お目当ての食事は勿論ですが、娘たちもノンビリ出来た様で、今回の金宇館も大満足でした。本当は連泊出来れば良いのですが、婿殿は仕事があるので止むを得ません。また来れば良いでしょう。
我々は特に予定も無かったのですが、この日は快晴で北アルプスもくっきりと見えていたので、娘夫婦の希望でアルプス公園をノンビリ孫と散策してから帰ることにしました。

 お陰さまで、地元の松本で孫と一緒にノンビリと“プチ旅行”気分を味わうことができました。