カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 2021年のNHK新人落語大賞で女性初の大賞を、これまた史上初の満点で受賞した上方の噺家、桂二葉。或る演芸評論家をして、「圧倒的な勝負強さ、透明感、集中力」と言わしめた、今注目の女流落語家です。
キノコの様なキレイなオカッパ頭。その“マッシュルームカット”に、ニコニコと愛嬌のある(≒可愛らしい)顔、そして自身で「落語界の白木みのる、て言われますぅ」と紹介する甲高い声(白木みのるって、お笑い時代の藤田まことと一緒に「てなもんや三度笠」に確か出ていた筈ですが、上方でもお年寄り以外で知っている人は今ではもう少ないと思うのですが・・・)。
色っぽいというよりも(本人曰く、「色っぽさの微塵も無い」)、子供っぽく見えるためか、その甲高い声も手伝って、実際にもそういう定評なのですが、丁稚や小僧さん、アホな与太郎などを演じさせると絶品で、本当に上手い!

 個人的にはコミックスの「どうらく落語」で落語に嵌まったのをきっかけに、品のある圓生、これぞ江戸っ子という気風の志ん朝、そして現役では粋なさん喬師匠に爆笑落語の権太楼師匠と、好きな噺家は江戸落語ばかりなので、上方落語も枝雀米朝と決して嫌いでは無いのですが、どちらかというと何となく苦手で余り上方落語は聞いていないのですが、「どうらく落語」にも出て来るNHKの新人落語大賞は毎回注目していて、その中で当時はまだ二ツ目だった若手の実力派小痴楽師匠を知り、6年前の“500回突破記念”でのさん喬師匠と権太楼師匠始め、小痴楽師匠も二ツ目時代と真打ちになってからの二度来演された「松本落語会」で生落語を聴かせてもらいました。
NHKの新人落語大賞は二ツ目の若手落語家の登竜門でもあることから、そうした二ツ目の噺家が毎回登場する「まつぶん寄席」も興味を持って、スケジュールさえ合えば毎回の様に聴かせてもらっています(しかもありがたいことに、シルバー料金は500円というワンコインなんです!)。
 そのNHK新人落語大賞で二葉さんを聞いて、どちらかと云えば上方落語は苦手なのに、
 「あっ、この人ホンモノだ・・・面白い!」。
と個人的にも大いに感心したので、権太楼師匠を初めとする審査員全員の満点評価にはビックリしましたが、結果の大賞受賞は“我が意も得たり”で大いに納得出来ました。
そして後日、大賞受賞後の囲み取材で感想を聞かれ、今や“名言”でもある「ジジイども見たかぁ!!」と啖呵を切ったと知り、これまた大いに印象深く感じた次第です。イイじゃないですか、「その言やヨシ!」(*写真はオフィシャルサイトからお借りしました)。
しかも後で知ったのは、決して前年に審査員の権太楼師匠にボロクソ貶された(と本人は感じたらしいのですが)からではなく、前座からの修業時代に「女に落語は出来ないから座布団返しだけやっとけ!」とか「女に古典は無理や、新作だけやっとけばエエんや!」、と散々批判され続けて来たのが皆年寄りのオッサンばかりからで、云われる度に「今に見とれ!」という、そんな大阪の東住吉出身という“こてこて”の難波オンナの“ジジイども”への反骨芯から口に出た言葉だったとか。
彼女ばかりではありませんが、男社会だった落語家の世界でやって行くには、むしろそのくらいの気概が無いとやってはいけないでしょうから、大いに「その意気やヨシ!」ではないでしょうか。

 YouTubeで見ることが出来る、大賞受賞をきっかけに開催された、大阪朝日放送のABCラジオ主催の「桂二葉しごきの会」。この「しごきの会」は、若手が一度に3席ネタおろしするという、大変なもの。そして、しごき役として彼女の師匠である桂米二と同じ米朝一門の桂吉弥の両師匠で、ネタ出しは次の通りで、前座話でもある「味噌豆丁稚」、「幽霊の辻」、そして大ネタ「らくだ」。その本番の高座が始まって、
 「気ぃですよ!気ぃですけど、しごけるもんなら、しごいてみろ!」
と開口一番。そして、最初の一席目の「味噌豆」で、丁稚の定吉と旦那さんの演者のセリフを取り違えて途中を飛ばしてしまい、本人もすぐに気が付いて、少し間をおいて
 「あっ、・・・これ間違うてますネェ~。えらいこっちゃ!」。
そして戻した後で取り違えた本来の箇所に来て、ちゃんと喋ってから一言、
 「此処やがな!ホンマに・・・」
と、独り言のように呟いて、トチリさえ笑いに変えて大いに客席を沸かせます。ご本人もTwitterで書いていましたが、
 「一席目の途中で間違いに気ぃついた時は、ほんま心臓止まるかと思た!」
でも、それでちゃんと笑いを取る所が上方の噺家らしくて実にイイ!

 大賞受賞をきっかけに、関西のみならず東京のキー局でのレギュラー出演もしている今や超売れっ子ですが、YouTubeで幾つかその後?の高座を聞くと(限られたYouTubeでしか聞く機会がありませんので、聴くことが出来るネタは限られますし、以前に収録された高座が多いので、もしかすると取り越し苦労で実際は違うのかもしれませんが)、枕が毎回ほぼ同じ(近所の“悪ガキ”の男の子との無邪気なやりとり)なのが少々気になりました。
バラエティー番組のレギュラー出演も全国的な人気取りには大切なのかもしれませんが、“大きなお世話”ながら、むしろちゃんと落語の修業を積んで、権太楼師匠が言われた通りもっと持ちネタを増やして、“女流”という修飾語など一切関係無い上方落語の実力派の噺家になって欲しいと、他人事ながら心配し、また大いに「 期待してまーす!! 」
(そして願わくば、大阪はちょっと無理なので東京の定席で、いつか一度は生で聴いてみたいと思っています。)