カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 今回の軽井沢滞在中に行った中で、個人的な“軽井沢グルメ”のご紹介です。
先ずは、これまで希望しながらも一度も来られなかった、念願の「御厨」の朝食を食べに皆で出掛けました。
「御厨」は『里山のふもとで、かまどの煙突から煙がもくもく「田舎のおばあちゃん家に帰って来た」と感じて頂けるお店を作っております。薪をくべてかまどでお米を炊き上げます。地元の食材と一緒においしい朝食や昼食を楽しめる』古民家を改装した農家レストランとのこと。
以前は朝から人気の行列店だったのですが、今年の4月より予約のみに変更されたとのことで、大分前に娘の希望を受けて、家内が週末を避けて平日のこの日の朝7:45に予約をしてありました。
婿殿の軽井沢滞在が予定より一日短くなり、この日の軽井沢入りが9時で予約時間に間には合わず、しかし予約変更も難しかったことからそのまま一名減で伺うことにしました。

 ドッグビラのある信濃追分から、「御厨」のある発地(その先に人気の「発地市庭」があります)までは30分弱でしょうか。
聞けばこの「御厨」は、東信地区を中心に松本店も含めて現在4店舗を展開するベーカリー「Cocorade(ココラデ)」を手掛ける、小諸市が本拠の「(株)あんでーくっく」という会社が運営する農家レストランで、この会社は元々は給食事業やお弁当からスタートしたのだそうです。
9年くらい前にスタートしたこの「御厨」は、かまど炊きのご飯の朝食がウリの観光客に人気の行列店で、これまでに何度か横を通る機会があったのですが、残念ながら今までこちらに来る機会はありませんでした。因みに“Dog Friendly”な軽井沢らしく、ワンコ連れもテラス席で食べられるとのこと。
予約時間の7:45分の少し前に着くと、7時15分からのスタートということで、既に駐車場は殆どが県外車で、数台分を残して一杯。何とか苦労してアルファードを停めて、案内されたのは土間の椅子席ではなく、靴を脱いで土間から上がる座敷のテーブル席。
子供用の小さな椅子も用意してくださり、子供は無料で、きっと一番出汁を取った後の鰹節を使ったであろう、自家製のカツオのふりかけとご飯とお味噌汁を用意いただけるとのことで、合わせて子供用にだし巻き玉子と男爵芋のコロッケもオーダー。
大人は、私と娘が玉子かけごはん(1620円)、奥さまはとろろ汁膳(1680円)を注文しました。
 女性の店員さんは、昔の田舎のオバサンを連想させる様な皆さん白い割烹着を着てキビキビと動いておられ、案内や精算を担当される男性も含め、親切丁寧で気持ちの良い接客ぶりです。
私たちより先でほぼ同時に入られた隣のテーブルの家族連れに対し、先にこちらに注文伺いに来られてから、「あっ、そちらの方がお先でしたかね」と言われて先に対応をされるなど、店としての応対もキチンとしています。
土間から上がる板の間の小上がりには囲炉裏がしつらえられていて、土間から続く勝手場には昔懐かしいかまどが何台か並んでいて、薪と鉄窯で盛んに御厨の目玉であるかまど炊きのご飯が炊かれています。
 最初に子供たちのご膳とだし巻玉子とコロッケを運んでいただきました。
大人用の朝食のかまどで炊いたご飯は、昔懐かしいおひつに入れられて食卓へ。農業も手掛けるという会社が、隣の田んぼ等で合鴨農法で育てたというお米をかまどで炊いたご飯。
当然期待していたのですが、ところが何だか変・・・。
というのも、粒立っていない・・・、ツヤツヤしていない・・・、べちゃっと米粒がくっ付いている・・・・。これって、何だかオカシイ・・・。
土間の続きのお勝手で、かまどで炊いているのは見ての通りで間違いない。実際に今もお釜二つがかまどに載せられていて、男性のスタッフが付きっきりで薪をくべたりして世話をしています(かまどの写真は「御厨」のPR記事から拝借しました)。
何年も専門でやっていれば、「始めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな!」に代表される様な、それこそ昔のかまどの在る家庭では当たり前だった“かまどでの炊き方”には精通して熟知している筈で、間違える筈もありません。
少なくとも斯く言う私メも、生まれた江戸期からの茅葺の家で、それこそ亡きお婆ちゃんから「米一粒だって、お百姓が一年間丹精込めて育てなきゃ採れないだで、無駄にしちゃいけんゾ!」と言われて育ち、我が家の田んぼで採れた天日干しのお米で、後年薪で炊くのは大変なので電気釜に代わりましたが、それこそ幼少期には未だかまどで炊いたご飯が当たり前だったので(かと言って、必ずしも米の味には然程私自身はウルサク無いのですが)、イヤが応でも、子供の頃毎日食べたこの舌が間違える筈もありません。ですので、思うのです、これは一体何故なのか、と・・・???
 例えば、同じおひつご飯では、美ヶ原温泉の「金宇館」の朝食のご飯は安曇野産のコシヒカリですが、粒立ってツヤツヤと輝いていて食味も甘くて本当に美味しくて、いつも皆で一粒も残さずに全て食べてしまいますが、この「御厨」のかまど炊きご飯とは雲泥の差、全く違うのです。
一棟貸しで最大8名の4部屋ある別館の離れを含めても僅か9室限定のため、時間を掛けてゆったりと食事を楽しめる「金宇館」と、片や60席の「御厨」では根本的に運営における「おもてなし」の発想が違うのかもしれません。
人気店故に、「御厨」では15分毎に設定された予約時間で、テーブルに着いてから50分間という時間制限があり、次から次へと予約されたお客さんが訪れ、その途中に予約せずに飛び込みでのお客さんも来られます。
 「今なら、40分後にはお席が用意出来ますが・・・」
と言われて諦める人や、「じゃぁ・・・」と言って付近を散策しながら外で待つ人たちも・・・。
それこそ常に満席のお客さんの対応に、スタッフの皆さんはお膳を抱えて走り回っています。
ですので、もしかするとかまどの“炊き立て”のご飯が常に供されるのではなく、客を待たせること無くすぐにおひつを運ぶためには、数十分毎にかまどで炊き上がったご飯を冷めぬ様にジャーで保温して、客の回転を良くするべく、客を待たせずに時間を置かずにそこから次々とおひつにご飯をよそって、準備が出来たお膳のおかずと一緒に運んでいるのではないか・・・?
その結果、運良く炊き立てのご飯が運ばて来る客さんと、タイミングによっては最後に残った大分前に炊き上がったご飯が運悪く供される客もあるのではないか・・・???
だからこそ、こんなツヤの無い、粒立たず、ずっと保温をしていた様なべちゃっとしているご飯になってしまったのではないか・・・???
・・・としか考えられないのです。
例えば、“米料亭”という看板を掲げる京都祇園の「八代目儀兵衛」は、客の注文後に一釜ずつ炊き上げる土鍋ご飯で知られていますが、そのご飯は炊き上がりから10分以上経つと客には提供しないのだそうです。そこまでご飯にこだわりを持つ料理屋さんも、現に存在するのです。
では「八代目儀兵衛」が“高級料亭”かというと、昼のコース(朝食提供は無し)の中の、三種の焼き魚御膳と鰆の照り焼き御膳はどちらも1980円(税込)で、御厨の昼のコースとそう変わりません。
ご飯の他にも、「御厨」の今回の朝食の中で期待したTKGの卵も、確かに橙色は多少濃い目かもしれませんが、黄身だけを箸で摘んで持ち上げられる様な特別なタマゴではなく、個人的には地場のスーパーでも買える様な(味も)“極普通”のタマゴでした。
しかし、お膳の中の一品に付いてきた男爵イモのコロッケは衣がサクサクしていて、揚げたての中身はほっこりで大変美味しかったですし、そして出汁の良く効いた豚汁も具だくさんでとても美味しくて、出来ればお代わりしたいくらいでした。そして家内の頼んだとろろ汁膳の焼き鮭も、甘塩で大変おいしかったそうです。どの料理も、決して高価な食材ではありませんが、キチンと丁寧に調理されていることが分かります。だからこそ、一番の目玉である筈のかまど炊きご飯が一体どうして?・・・と思わざるを得ないのです。
 因みに、この日の朝食メニューは次の通りで、この日の小鉢は、優しい味のきんぴらごぼうでした。
 ・「朝のとろろ汁膳」・・・¥1,680
  とろろ汁(信州味噌仕立て)焼き鮭・湯豆腐・小鉢・豚汁・香の物
 ・「卵かけご飯セット」・・・¥1,620
  生卵・男爵芋のコロッケ・湯豆腐・小鉢・豚汁・香の物
 ・「朝の鯖味噌膳」・・・¥1,780
  鯖味噌煮・野沢の菜天ぷら・湯豆腐・小鉢・豚汁・香の物
 正直、期待が大きかっただけに、今回の“かまど炊きご飯”にはガッカリしました。最初思ったのは、ここ数年の思いがけない人気に“胡坐”をかいて、スタート時の謙虚な気持ちを忘れてしまったのでないか・・・ということでした。
しかし一方で、スタッフの皆さんの対応は実に気持ち良く、帰りがけ厨房の写真撮影の可否をお聞きしたところ、気持ち良くOK頂きました。
そうした実際に目にした割烹着のスタッフ(地元のご婦人風)の皆さんの応対ぶりや、ニコニコとした働きぶりや、そしてこれまでの口コミの評判や、更には建物や周囲の雰囲気も(特に都会から来られた方にとっては)素敵に感じただけに、そして地元の信州人である我々でさえ楽しみにしていただけに、今回は本当に裏切られた様な気持ちでとても残念でした。ですので、むしろ失礼を承知で、敢えて本ブログに書かせていただきたく思うのです。

 我々が訪れたこの日が、どうか“たまたま”の偶然だったことを願います。そして、どんなに人気店になったとしても、決して手間や時間を惜しまず、スタート当初の純粋な気持ちや方法を変えずに、これからも愚直に対応され続けられんことを願います。
そうでないと、当初はコスパも味も良かった松本の深志高校近くのイタリアンが評判を呼び、その後5店舗にまでに業態も含め拡大した結果、スタッフの応対も味も落ち、我々一家がもう二度と行かなくなってしまった店があるのですが、そんな店の二の舞になることは必定です。
ですので、どうか例えどんなに手間暇が掛かって大変であったとしても、是非頑張ってスタート時の本来の味を愚直に守って行って頂きたいと思うのです。

 蛇足ながら、正直「御厨」での朝食を今回とても楽しみにしてからこそのガッカリであり、もしかすると私たちのこのガッカリは、或る意味これ迄の期待が膨らみ過ぎて、その期待が余りに大きく成り過ぎていた結果だったのかもしれません。だから、「そうだったんだよネー!」くらいに“軽く”思いたい・・・。
しかし、そうした期待が大きかったが故に、仮に今回の我々がたまたま運の悪い、万が一の偶然のタイミングだったとしても、今後軽井沢に来ても、もう二度とこの「御厨」に来ることは無いだろうと思ったのも、残念ながら事実なのです。
しかし、これは決してへそ曲がりの私メだけではなく、食べた結果の我々夫婦と娘も共通した認識であり、それ程までに今回は本当に残念に感じたのでした。
ですので、我々はもう関係ありませんが、どうか県外からの今後のお客様に対して失望させることの無い様に改善を切に期待します。