カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 次女が孫たちを連れて、お盆を挟んで松本へニ週間近く帰省して来ることになりました。我々ジジババとしては大歓迎なのですが、チビッ子怪獣たちに追い回されるコユキとクルミにとっては“地獄の日々”かもしれません。
それはそれとして、彼らの来る前に家の中をキレイにすべく、“真夏の大掃除”をすることにしました。
 特に気になっているのが窓ガラスです。マンションの各部屋は二重サッシになっていて、ベランダの無い北アルプスを望む西側部分の窓は、小さい子などの転落防止のために“嵌め殺し”になっていますし、尚且つ万が一何かが当たって割れてもガラスの欠片が落下しないようにワイヤーが入っています。また同様に北アルプスが望める西側のベランダへ出られる二ヶ所のドアはガラス戸で、上下にスライド可能で風が入る様になっていて、外側が網戸になっています。
因みにリビングと長女の部屋の南側はベランダですが、その部分は全面サッシで、片面に網戸が付いています。


この南側に面しているサッシの網戸は移動可能なので、動かして窓拭きが可能ですが、問題は西側の部分の嵌め殺しのサッシとベランダへ出るガラス戸のドアです。
嵌め殺しは開かないので外側を吹くことは不可能。従って外側の窓ふきは諦めるしかなく、入居してから3年間、一度もこの窓は拭いたことはありません。
またガラス戸は外側の網戸が外れないので、こちらもこれまで一度も窓を拭いたことがありません。しかし、風混じりの雨が吹き付けることもあり、ガラスに付いた雨跡や黄砂などの埃などの汚れが目立ちます。




かなり汚れが気になるので、これまでも何とかしようとして、ネットで調べて「家のサッシやタイル・網戸洗いに最適」という「ポンプ式加圧スプレー」を購入してみました。これは取り付けるだけで、ペットボトルが便利なスプレーに変身し、ポンピングするだけで簡単に加圧出来、水をジェット噴射することが出来るという商品。PRでは「高所への噴霧や、すき間の汚れ落としに最適です。水の勢いはノズルを左右に回すだけで霧からジェットまで自在に変えられます。」とのことで期待したのですが、どんなに加圧して勢い良く“ジェット水流”を噴出させても、少なくとも網戸の汚れを落とすことは出来ませんでした。ですので、TV通販で視る様な高圧洗浄機でないと無理なのかもしれません。
そこで半ば諦めていたのですが、たまたまワンコたちのために松本でもさすがに猛暑日の日は昼間リビングもエアコンを入れる日が多くなり、そんな時は風が通る様に開けていたサッシやガラス戸を閉めないといけません。その時に何げなくガラス戸に貼ってある注意書きを見たら、「網戸の外し方」とあり、ナント室内側から網戸の取り付けビス一つをプラスドライバーで外すことが出来るとのこと。
一瞬、「えっ!?」と絶句。
気が付かずにしっかり読まなかったこちらが悪いのですが、「ポンプ式加圧スプレー」も不要でしたし、一戸建てでは無いので高圧洗浄機も買ってはいませんが、今までの苦労は一体何だったんだろうと唖然としました。
 そこで、次女たちが来る数日前に、奥さまと一緒に半日掛けて“真夏の大掃除”を実施しました。
私メの担当は家の全部の窓ふきと網戸掃除です。マンションのアルミサッシはUVカットのために特殊塗料が外側のサッシに塗られているので、洗剤使用は御法度。そこで水に濡らした雑巾で埃を拭い、乾いた柔らかい布での乾拭きでその拭き後を拭き取ります。

注意書きに従ってビスを外し、レールに差し込まれていた網戸を初めて外した二枚のガラス戸。外側のガラス面をガラス用の洗剤を吹き替えて拭くと、目立っていた雨跡や埃などの汚れを初めて拭き取ることが出来て、見違える様にキレイになりました。また初めて外した網戸も、何度も網戸掃除ワイパーを使って、こちらも初めて両面キレイになりました。
 「いやぁ、気分がイイなぁ!」
単に不注意での“身から出たサビ”ではあったのですが、初めて網戸を外してキレイになったガラス戸、すっかりきれいになって、孫たちを迎える準備が整いました。

 松本から白馬岩岳へは、一般道を走って1時間半の行程です。
松本から白馬に行くためには、主に昔は松本から糸魚川へ至る“塩の道”千国街道がベースの国道147&148号線(松本から大町が147、大町から糸魚川は148)しか無かったのですが、この国道147号線は豊科や穂高、大町の市街地を通る生活道路でもあり、信号が多くて車が混むこともあって、現在では“北アルプスパノラマロード”県道306号線を走って、そのまま大町市の郊外を抜け、木崎湖で国道148号線に合流する道を走ることが多くなりました。
この通称“北アルプスパノラマロード”は、1998年長野オリンピックの際に国道147号のバイパスとして高瀬川右岸の道路が整備された、所謂“オリンピック道路”です。
県道306号線は、元々は安曇野の西縁の有明山麓を通過する“県道有明大町線”なのですが、この新設の“北アルプスパノラマロード”も県道306号線とされたため、今では有明山麓線の2路線が同じ306号線になっています。
この高瀬川の堤防沿いを走る県道306号線の方は、国道147号線に比べて遥かに信号が少ないので、松川村(因みに、県内には伊那谷の梨の産地、下伊那郡に松川町もあるので、時々どちらが「村」でどちらが「町」だったか迷うこともありますが、こちらはスズムシや「ちひろ美術館」で知られる北安曇郡の松川村です。余談ですが、冬季はこの松川村に入ると急に雪が多くなり、さすがにここからが北安曇郡なのだと妙に納得します)から大町市に近付くにつれ、次第に眼前に迫って来る爺ヶ岳や餓鬼岳、ニャンコの尖った耳の様な双耳峰が印象的な鹿島槍など、文字通りに北アルプスのパノラマを眺めながら走る気持ちの良いドライブコースです。

 昔の都会からの信州へのスキー客は、志賀高原や野沢温泉は信越線でしたので東京方面からが多く、白馬ヘは中央線で松本経由だったので割と関西方面からが多かった(白馬のスキー場でリフト待ちをしていると、聞こえて来るのは主に関西弁でした)のですが、特にインバウンド効果での海外からのスキー客は、野沢温泉は勿論ですが、白馬方面へも北陸新幹線を長野(野沢温泉は飯山駅も)で降り、オリンピック道路経由の直通バスで来訪する人が殆ど。夏の登山で北アルプス方面を目指したりサムライロードを歩いたりするインバウンドでの外国人観光客以外、中央線での松本経由で白馬へスキーというルートの観光客は最近では殆どいなくなりました。

 昔、子供たちがスキーをやっていた頃も、近間では朝日プライムに始まり、大町白馬方面でもせいぜいファミリー向けの爺ヶ岳や簗場(閉鎖)、泊まりでは八方尾根(名木山や咲花ゲレンデ)でしたので、子供たちが巣立ち年寄りだけでスキーをすることも全く無くなってからは、兎平や栂池へは夏の唐松岳登山や八方池や栂池自然園へのトレッキングで来たことはあっても、この岩岳へは結婚した前後のスキー以来ですので、本当に40年振りで来たかもしれません。
 白馬岩岳マウンテンリゾートへは(スノーフィールドも同様)、昨年12月に38年振りに新設なったという新ゴンドラリフトの山麓駅周辺の、当時和田社長以下経営陣の皆さんが駐車場係をされたという広大な無料駐車場(1000台近くが駐車可)に駐車しました。ゴンドラ近く中心に、平日ですが既に長野県内も夏休みに入っていることもあるのか、300台近く車が停まっていました。地元ナンバー以外に県外車も結構見られます。
“マウンテンバイクの聖地”と云われる入笠山の富士見パノラマを筆頭に、夏のスキー場の集客目的でMTBのコースが幾つも作られており、ここ岩岳も過去には日本最大級のMTBイベントが開催された実績もあるとかで、MTBを積んだ車も何台も見られました。

 事前に神城の国道沿いに在る「白馬道の駅」に立ち寄って、白馬岩岳マウンテンリゾートの前売り券(当日2900円が200円引きの2700円)を買ったのですが、残念ながらワンコチケット(800円)の前売り券は無く、ゴンドラリフトのチケット売り場で購入とのこと。WEBではオンラインチケットが前日まで購入出来るので、この日はそれ程の行列ではありませんでしたが、混雑を避けて事前に(特にワンコ連れの方はオンラインで)チケットを購入した方が良いでしょう。因みに、ゴンドラはケージやリュックに入れずにワンコも一緒に乗ることが出来ます(山頂駅近くに在るスキーリフトに乗る時はワンコをケージに入れる必要があり、乗り場で無料のレンタルが可能とのこと)。

 早速、昨年12月に新設されたゴンドラリフトに乗り込みます。今までのゴンドラは「ノア」という名称でしたが、新しいゴンドラにはまだ名前が付いていませんでした。因みに、八方のゴンドラは「アダム」で栂池が「イブ」です。
10人乗りのゴンドラで、ワンコもそのまま乗車出来ますが、スケルトンで外が透けて見えるので少し怖そうで、特にビビりのクルミは落ち着かない様子。7分で標高1,289mの山頂駅に到着です。
山頂には山頂レストラン「スカイアーク」があり、その前に芝生広場があって、その「IWATAKE GREEN PARK」内には、スノーピークが監修して「展望ピクニックラウンジ」、「プライベートデッキ」、「森のテラス」、「芝生広場」、「ブナの森パーク」の5エリアが新設されている他、ペット企業とも連携して「森の遊歩道&ドッグラン」も設置されているとのこと。
我々も展望の良いスノーピークのテントを使った「プライベートデッキ」の中に入って座り、ワンコたちもおやつを食べて眼下に拡がる白馬の町並みを見ながら暫し休憩です。
この日は平日とはいえ、信州も含め既に夏休みに入っているので、結構家族連れの観光客がたくさん来られていました。ただ、1300mの岩岳山頂なのに30℃を超える様な暑さには参ります。下界よりも涼しいかと思って少し厚めのポロシャツにしたのですが、これが大間違い。汗だくになりました。
因みに後で分かったのですが、「白馬岩岳マウンテンリゾート」のH/Pの夏季シーズン向けの「GREEN SEASON」のサイトに、その日のアクティビティ情報やライブカメラ映像などと共に当日の予想最高気温が表示されているので、訪れる際は参考にされた方が良いでしょう。
 せっかくなので、張り出したテラスから眼前に白馬三山の絶景を望む「マウンテンハーバー」に行ってみることにしました。ブナ林の中の遊歩道を歩いて行くと、陽の遮られるブナの木陰は思った以上に涼しく感じられます。
建物の屋根のひさしが作るテラスの日陰のエリアは満席で、直射日光が当たるエリアしか空席はありません。また張り出したテラスの先端での記念写真撮影は、10人程の行列で順番待ち。
また信州初出店という人気の「THE CITY BAKERY」は、出店直後5時間待ちだったという京都店程ではないにしても、さすがに混んでいます。でもメニューはランチ用のクロワッサンサンドは3種類だけで、後はマフィン、クッキー、ビスケットなどの焼き菓子が中心で、売り場も思ったよりも狭くレジ待ちの行列でした。
そのためここで食べるのは諦めて、外のブナ林の端でパラソルが在るテーブル席で休憩です。そこから見える、目の前に聳える白馬三山に向かって飛び出していく様な話題のブランコ、「ヤッホースウィング」はさすがに人気で、この日も20人程の行列でした(500円で、2分間の時間限定。ちゃんとベルトでしっかりと腰の辺りを固定されるので、子供がブランコから飛び出してしまう危険は無い様です)。
眼前に拡がる絶景、7年前に登った唐松岳や白馬三山はどの峰も頂上部分に雲が掛かっていて、残念乍ら全容を見ることは出来ませんでしたが、2019年に氷河と確認された唐松沢雪渓や、同じく今年1月に杓子沢雪渓と共に氷河と確認された不帰沢雪渓などはしっかりと見ることが出来ました。
(氷河の説明写真は、白馬村のH/Pからお借りしました)
 山頂駅近くのスカイアークにもデリやスープストックなどのレストランも入っているのですが、混んでいるのと室内にはワンコは入れず、屋外のテラス席は暑いので、ワンコたちのことも考えて早々にゴンドラで下に降りることにしました。
そこで岩岳でのランチは諦め、もう10年位も前になるかもしれませんが、昔何度か来たことがあった信濃森上の国道沿いに在るレストランへ。
こちらは白馬では珍しく、ワンコも一緒に室内での食事が可能です。昔はご夫婦二人で賄われていて、ハイシーズンの終末だったのかとても混雑していたと思いましたが、この日は平日だったこともあるのかご主人だけで、客も我々含め2組。ご主人の相変わらずとてもフレンドリーで気持ちの良い応対ですが、残念ながら肝心の食事が以前よりも味が落ちた様な気がしました。
 そこから、家内が帰りに寄りたいと言っていた、青木湖畔のカフェに行くことにしました。
何でも最近ローカルTVで紹介されたとかで、後で分かったのは、こちらも前話の和田さんが代表を務める(株) ズクトチエが運営する施設だったのです。
昨年7月にオープンしたという青木湖畔ギリギリまで張り出したテラス席と店内席を有し、国内有数の透明度を誇る青木湖でのカヤックやSUPなどの湖上アクティビティや、他にもサイクリングの拠点としても機能する大型オールデイ・カフェ「ao LAKESIDE CAFE(アオ・レイクサイド・カフェ)」とのこと。
更にカフェの隣にはサウナ施設もあり、この日も若い人たちがサウナでしっかり“ととのった”後、ちゃんとライフジャケットを着て、冷たい青木湖に飛び込んで気持ち良さそうに楽しんでいました。
こちらのカフェの方も湖畔側のテラス席はワンコOKで、パラソルの付いたテーブル席が幾つも設けられていて、ほぼ満席の混雑ぶりでした。
ランチを済ませて来たので我々はドリンクだけにしたのですが、後からメニューを見て思ったのは、こちらの方がランチメニューが豊富だったので、晴れていればこの青木湖畔のテラスからは、湖越しに鹿島槍や五竜岳が望めるなど景色も良いことから、次回は岩岳山頂でランチを食べない場合は、ファーストチョイスとしてここで食べることにしました。(建物やテラスの写真はH/Pからお借りしました)
 以上駆け足で、この日の“予行演習”は終了しましたが、以前10数年前に来た時は、スキーブーム去った“みそらのペンション村”などは閉店した店舗も多くて、まるで廃墟の様で閑古鳥が鳴いていたのですが、場所や施設によっての“まだら模様”ではあるものの、近年のインバウンド効果ですっかり様変わりして活気のある白馬村を体感することが出来ました。
ただ願わくば、“第2のニセコ”だけにはならんことを!

 今年はお盆に次女一家が松本に帰省して来てくれるとのこと。次女からすれば、子供たちをジジババに任せてのそれこそ自身の夏休みで、日頃の育児疲れを癒すための文字通りの“骨休み”なのでしょう。
滞在中に行きたいところを聞くと、婿殿が「白馬岩岳マウンテンリゾート」に行ってみたいとのこと。そこで、事前の情報収集も兼ねて、混むであろう週末を避けて平日に、孫たちが来る時の“予行演習”で、コユキとクルミも一緒に連れて行くことにしました。

  「白馬岩岳マウンテンリゾート」。
H/Pに依ると、『白馬村にある白馬岩岳は、四季を通じた雄大な景色の中で、様々なアクティビティが楽しめるマウンテンリゾートです。
白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳)が最も美しく望める絶景スポットをはじめ、トレッキングやマウンテンバイク、ウィンタースポーツなど、特別な時間を過ごせるマウンテンリゾートとして、世界中の旅行者を魅了し続けています。』とのこと。(最後の写真を除き、H/Pから画像をお借りしました)
 昔、会社に入ってから冬になると職場のメンバーで毎週のように皆で乗り合わせて白馬方面へスキーに行ったのですが、数ある白馬のスキー場の中では、コブだらけの兎平や黒菱などを始めとする上級者向きの八方尾根よりも初心者から中級向きだったことから、スキーに一番通ったのがこの白馬岩岳スキー場(現在は「白馬岩岳スノーパーク」)でした。
一時期、スキー人口が減ってどのスキー場も経営が厳しくなったのですが、現在ではその雪質とアクセスの良さから、インバウンドでのスキー客が海外からニセコのみならず白馬や野沢温泉にも大量に押しかける様になり、特に白馬は最新のデータで地価上昇率が日本一とか。
そうした中で、“通年リゾート”として、従来の冬のスキー客だけではなく夏の観光客の呼び込みの先駆けとなったのが、この「白馬岩岳マウンテンリゾート」だったのです。
 そして、その立役者が「白馬岩岳マウンテンリゾート」の前社長和田寛氏。
テレ東の「カンブリア宮殿」で昨年10月に放送された内容から抜粋させていただくと、
『閑散とした“真夏のスキー場”を一大リゾートに変えた男がいる。東大出身、農水省の元キャリア官僚という経歴を持つ、和田寛(ゆたか)48歳。和田によって大変貌を遂げたのは、98年の冬季オリンピックも開催された長野県白馬村。ウィンタースポーツを目当てに国内外から観光客が訪れる屈指のスキーリゾートだが、シーズンが終わると一気に客が減ってしまうのが長年の課題だった。しかし2016年頃から放ってきた数々の仕掛けによって、グリーンシーズンも活性化。ついに"夏"の来訪者数が冬の1.5倍となり、「冬よりも夏に稼ぐ」リゾート地となった。
10ほどある白馬エリアのスキー場の中で、夏でも客が殺到するのが「白馬岩岳マウンテンリゾート」。目玉は、雄大な白馬三山を正面に見据えるテラス、「マウンテンハーバー」。360度大自然に包まれる感覚を味わえるよう設計された展望台は映えスポットとして動画や写真はSNSで拡散され、集客につながっている。またテラス内にはニューヨークに本店を構える人気カフェ「THE CITY BAKERY」が出店。ハイクオリティのパンやコーヒーを、絶景を望みながら楽しめると、若者を中心に人気を呼んでいる。そしてマウンテンハーバーの横で連日大行列を作るのが、アルプスの絶景に飛び出す感覚を味わえるブランコ「ヤッホー!スウィング」だ。2分間で500円と有料だが、年間4万人が体験する超人気アクティビティになっている。このように「絶景」という隠れた資産を見つけ出し、「何か」を組み合わせてオンリーワンの価値を作りだし、客を呼ぶリゾートになったのだ。』
 しかし、決して順風満帆で成長した訳ではありません。別の記事ですが、3年前の東洋経済の和田氏へのインタビュー記事を参考にさせていただくと、
『きっかけは2020年。スキー場を営む私たちにとって、思い出したくもないくらいつらい時期でした。
この年は記録的な少雪にコロナ禍が重なり、来場者数が急減してしまいました。売上は前年度の7割程度に落ち込み、過去10年で最も大きな赤字決算。2年連続でこの大赤字が続けば、スキー場としての存続も危ぶまれる状況です。
 緊急事態と判断した私たちは、「大きく落ち込んだ前年度同様の売り上げで、しっかり利益の残る予算」を組むことを決意します。そのためには「やれることは何でもやる」。とにかく生き残りをかけて、徹底的にコスト構造を見直すことにした
「やれることは何でも」の例の1つが、駐車場整理コストの削減でした。当社の財務担当取締役が、こんな「禁断のコメント」を言い出しました。
 「駐車場整理に年間500万円くらい使っているけど、これ、俺らがやればタダじゃない?」
 「駐車場整理が本当に必要になるのは週末だけ。その日は基本的にはデスクワークや会議はないし、なんとかなるんじゃない」
財務担当取締役自らがやると言うのであれば、断れるはずもありません。
結局、土日祝日は仕事が少なくなる私たち経営陣が、必要なタイミングで駐車場整理に入ることとしました。言い出しっぺの財務担当取締役と私(社長)は、ほぼ毎週末、朝から駐車場整理をするようになっています。
さらにはその流れで、駐車場整理が終わるお昼前後からは山頂に上がり、レストランのレジ打ちや皿洗いをすることも日常になってきました。こうすることで、少しでも人件費を抑制しつつ、お客さんにスムーズに食事を提供できるサポートをしています。
いまではリフトやゴンドラの乗車係、バギーツアーの運転手など、手が足りないところならどこでも、経営陣が穴埋めできるようになりました。(中略)
社長をはじめとした経営陣がこうした現場仕事に入ることの功罪は、いろいろあると思います。
もちろん、「会社全体の置かれている状況をしっかり把握し、対策を立て、実行する」「人を育て、適切に配置する」といったことは社長・経営陣しかできない、大事な仕事、本業です。
本業がおろそかになってしまっては元も子もありませんが、自分自身も駐車場やレストランという現場の最前線に立ってみて、単なる固定費削減以上に現場を知ることには大きな意義があったと気づきました。』
 こうした成功を受けて、同じ様に集客に悩む自治体や運営企業からの問い合わせが増えたそうです。以前和田氏へのTV取材だったかで視たのですが、
中には、ずうずうじくも『成功した「岩岳マウンテンパーク」で大人気のブランコのヤッホースウィングを見て、「自分たちも設置したいので、どこへ頼めば良いのか?紹介して欲しい!」とあからさまに聞いて来る輩がいるんです。どうして自分たちで知恵やズクをださないのだろう!?』と、和田さんが憤慨しつつも残念そうに語っていたのを思い出します。
因みに、“ずく”とは信州弁で、「精を出すこと、根気、やる気、熱心さ」などを意味する方言です。怠けることを「ずく無し」と表現することもあります。

 和田氏は2023年10月に(株)岩 岳リゾートの社長を退任。 その後は2022年に設立した、正に“ずく”と知恵を体現するべく、「(株)ズクトチエ」の共同代表に就任して、引き続き白馬の観光振興に取り組んでいるそうです。
和田氏ご自身は東京出身で信州人ではありませんが、正に白馬に惚れて値を下ろした和田氏の成功の鍵とモットーこそが、この「ずく」と「知恵」なのだと理解しました。

  “清流の城下町”と聞いて、思い浮かべるのは何処でしょうか。
真っ先に思い浮かぶのは、 “郡上踊り”で有名な郡上八幡でしょうか。
正に郡上八幡のキャッチフレーズが“清流と名水の街”で、町割りに沿って家々の軒先を流れる水路は、元々は防火対策のために時の城主が城下纏整備として4年の歳月をかけて築造され、今でも水路が街中に張り巡らされていて、また市内を流れる“清流”吉田川では、地元の子供たちが“度胸試し”に高い橋の欄干から川に飛び込むのが夏の風物詩とか。まだ行ったことが無いのですが、是非一度は訪れてみたい奥美濃の城下町です。

そして郡上八幡と同じ岐阜県では、県立斐太高校が学校前の大八賀川で行う大正時代から続く“白線流し”でも知られる飛騨高山よりも、瀬戸川が水路の様に街中を流れる飛騨古川の方が個人的にはむしろ“水の街”という感じがしました。
また、“清流”ではないかもしれませんが、八幡堀沿いの風情ある街並みを眺めながら船で巡る、琵琶湖の水運を活かして近江商人で栄えた近江八幡。豊臣秀次がその基礎を築いた、こちらも“水”が感じられる城下町でした。
 明治維新後の廃藩置県で、その飛騨地方と松本は当初は同じ筑摩県でした。お互い“日本の屋根”の峰々から流れ出る河川や恵みの湧水を活かしているのは、北アルプスを挟んで背中合わせの松本平と飛騨地方は良く似ているのかもしれません(そんな縁もあって、高山市と松本市は姉妹都市です)。
複合扇状地である松本盆地は、東の筑摩山系から流れ出る女鳥羽川と薄川、そして西の北アルプスからの梓川と高瀬川、南側は木曽川との分水嶺である鳥居峠から北上する奈良井川や鉢盛山に源を発し奈良井川に合流する鎖川などから形成されています。そして、その松本盆地の東の隅に位置する松本の市街地には、街中に女鳥羽川が流れ、薄川や田川、他にも牛伏川、大門沢川など大小幾つもの河川が市街地を流れて複合扇状地を形成しました。
そうした川の伏流水が松本市内で湧水として湧き出し、“まつもと城下町湧水群”として「平成の名水百選」にも選定されていますので、松本も十分に“名水の城下町”だと名乗ることが出来ましょう。
 では、一方“清流”についてはどうでしょうか。
上高地から流れ出る梓川は特急名にも使われるなど、信州を代表する“清流”としてのイメージがしっかりと定着していますが、松本の街中を流れている訳ではありません。
三才山峠に源を発し、市街地を流れて田川と合流して奈良井川に注ぐ女鳥羽川は、全長17㎞という短い川ですが、昔はお城の総堀の外側を直角的にL字型に流れていることから、外堀の更に外側で自然のお堀としての役目も果たしていました(小笠原氏の支城だった深志城を大改修して、松本の城下町の基礎を築いたのは信濃を征服した武田信玄ですが、信玄堤で知られる様に信玄が“治水の名手”だったことから、女鳥羽川を堀として使うために直角に流れを変えたという説がありますが、近年の研究ではそれは史実ではなく、自然の流れをそのまま築城時に活かしたのではないかとのこと)。
街中を流れるために、昭和30年代までは台風などでしばしば洪水が発生したようですが、河川改修などに依り現在ではそうしたこともなく、また下水道整備の結果や湧水が流れ込むこともあって、街中を流れる川としては女鳥羽川は想像以上にキレイです。また、昔の様にカジカガエルの住める綺麗な川を取り戻そうと、市民による保全・清掃活動も盛んに行われてきた結果、2019年には念願のカジカガエルの生息が確認され、また中流域の水汲のスポーツ橋付近ではホタルが乱舞していますし、下流の縄手通り付近では放流された鯉が泳いでいるのを見ることが出来ます。そして街中を流れる川には珍しく、ヤマメの棲む上流域だけではなく、下流域の街中でもウグイが棲息しているそうです。
なおホタルは女鳥羽川だけではなく、旧開智学校に隣接する、街中と言っても良い中央図書館脇を流れる大門沢川でも見ることが出来ます。
またマンションの近くの渚地区を流れる全長5㎞という小河川の穴田川。元々は湧水が流れ込むキレイな川だったのが、1960年代になって工場排水や家庭からの雑排水が流れ込み“松本で一番汚い川”と云われたそうですが、下水道整備や流域の企業が参加する「穴田川をきれいにする会」が定期的に清掃活動をするなどして、今では本当にキレイな川になり田川に流れ込んでいます。
 更に松本市街地には、これぞ正真正銘“清流”だと言える川があります。それが「榛の木川」と「蛇川」です。
両方とも川幅が1mにも満たない、用水路の様な小さな川なのですが、“まつもと城下町湧水群”である源池の水源地やその辺りの湧水そのものを水源としていて、途中民家の中に在る湧水も含め、更に幾つもの湧水が流れ込んでいることもあって驚く程キレイな清流なのです。しかも昔誰かが放流したモノだそうですが、所々に外来魚であるニジマスが棲息していて、街中でもその姿を見ることが出来ます。(上二枚の写真は源池の水源地。次は上が榛の木川で下が蛇川です)
“当国一の名水”「源智の井戸」から毎分200リットルの湧水が流れ込む榛の木川は人形町(高砂通)を西に流れていて、所々の道路脇でその清流を見ることが出来ますが、蛇川は殆ど民家の脇を流れており、特に高砂通から北側では暗渠でフタをされてしまっているため、殆ど流れを見ることが出来ません。でも高砂通の北側でも一部、“蔵の街”中町の南側の飯田町に藤森病院の井戸「亀の泉」があり、この辺りを流れる蛇川はしっかりとその流れを見ることが出来ます。特に病院施設のフェンスで囲まれているため安全と分かるのか、水草の中を何匹もの大きなニジマスが悠々と泳いでいるのを見ることが出来ます。

 難しいとは思いますが、何とかその暗渠を撤去して江戸の昔の様な小路に沿って流れる清流が見られる様にして、「源智の井戸」を始めとする「まつもと城下町湧水群」の名水と、その湧水が流れる榛の木川、蛇川の清流を合わせて“まつもと水巡り”として、郡上八幡の様に清流と名水に沿って街歩きが出来る様にすればまた一つ、それぞれ北アルプスを挟んで、飛騨地方の郡上八幡にも負けない“清流と名水のアルプスの城下町”として、信州松本の“街歩き”での観光的魅力が一層高まると思うのですが・・・。