カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 個人的には、美ヶ原は松本の山だと思うのです。ですので、例え松本市民の“市民エゴ”だと言われようとも、尾崎喜八の頃の様に松本が「美ヶ原への玄関口」であるべきです。    (松本からの美ヶ原遠景)

最近は松本市に限らずですが、“山岳県”である長野県内の学校登山の実施校が減って来ています(登山経験の無い教員が増えていることも背景にはあると思いますが)。松本市内でいえば、小学校での美ヶ原登山、中学での燕岳登山が定番だったのが、今や燕岳への登山は数える程。代わりに標高2,702mの畳平までバスで行って、最高峰の剣ヶ峰(3,026m)を目指す乗鞍岳への日帰り登山という学校が増えているそうですが、登るだけまだ良い方で、中には学校登山そのものを廃止した学校さえ出て来ています。その意味で、旧安曇村の安曇・大野川両中学校が合同での学校登山として、幾ら地元の山とはいえ、力を合わせて今でも北アルプス最高峰3190mの奥穂に登っているのは、本当に大したものだと感嘆するばかりです。
市内の小学校の美ヶ原登山は、三城にある市の美ケ原少年自然の家に宿泊し、そこから美ヶ原を目指すか、登りはバスで上って歩いて降りて来るかは別として、昨年からの市内での熊出没騒ぎで美ヶ原登山を中止したのは止むを得ませんが、平成合併後は東の美ヶ原から西の槍穂高までが松本市になり、今や市内に百名山が6座もある“岳都”であるだけに、せめて美ヶ原くらいは登らなくては勿体無い!・・・と松本市民の一人としては強く思うのです。
きっと多感で純粋な子供の頃に山に触れることで、山の素晴らしさ、自然の豊かさ、山から流れ下る水の有難さを学び、恵まれたこの環境を大事にする気持ちが自然と子供心に刻み込まれる筈だと思うのです。

 そうした前提に立っての、美ヶ原の活かし方。
美ヶ原の環境保護団体では、今では次第に生育範囲を広げて一面に広がるシナノザサが日光を遮ったり、地下茎で他の植物の生育を妨げたりするのを防ぎ、これまで同様にレンゲツツジや高山植物などの美ヶ原の多様な草花を保護するために、ボランティアを募って年2回笹刈り活動を実施しています。しかし、皮肉なことにその活動に参加するために美ヶ原の台上に皆さん車で集合しています。
 では、再度問います。
ビーナスライン建設開始から半世紀以上が経過した今、その後の建設工法の技術革新等をふまえ、現在通じていないビーナスラインを再度慎重に研究検討して、松本側から王ヶ頭を経由してアクセス出来るようにビーナスラインを全線繋げれば良いのでしょうか?
それは「否」でしょう。
霧ヶ峰の様に、道路によって、そしてそこを走る車によって、前話で指摘された「生態系と景観の分断」や「裸地化」等の問題が、今度は美ヶ原でも引き起こされるのは必定だと思います。更には、道路を使えば今以上に広範囲に車の通らぬ夜間に移動し易くなることで、今以上に鹿による食害が助長されるのも目に見えています。
むしろ、道路建設と比べ、ロープウェイの方が鉄塔を建てる以外の自然環境破壊は起こらず、建設で破壊する道路の面積と比較すれば鉄塔建設の方が圧倒的に少なくて済む筈です。また車の排気ガス等の問題もロープウェイなら生じません。
 但し松本市の示した王ヶ頭や王ヶ鼻へのロープウェイの2つのルート案(上記マップの黒い実線)は、個人的にはそのどちらも反対です。
本来北アルプスだと2500m以上の高山帯にならないと見られない筈の高山植物が、王ヶ頭直下には2000m級の山では非常に珍しい高山植物のお花畑がありますので、その貴重な植生は守らなくてはいけません。また、王ヶ頭が終着駅になると、国定公園に指定される遥か昔の戦前に建てられた山小屋からの既得権益として、唯一山頂に立つ宿泊施設と売店の民間のホテルが、ロープウェイ建設で得られる権益(観光客増に伴う食堂や売店の売り上げも含め)をさらに独占享受するのをただ助けるだけだになり、美ヶ原の観光業全体への波及効果が薄まってしまいます。そして何よりも、少なくとも百名山の山頂に人工物はあるべきではない!他の山と違って、ホテルの裏側に、まるで邪魔者の様にひっそりと「美ケ原頂上王ヶ頭2034m」の石碑が建っている様な今のままでは、「百名山に登頂した!」という登頂の感激は得られますまい!?

一方の王ヶ鼻は“アルプスの展望台”とも言える、後立山連峰の北アルプスから御嶽、そして木曽駒などの中央、甲斐駒や仙丈といった南アルプス、更には八ヶ岳と、その間に遠く聳える富士山まで拡がっている270度の絶景の眺望に支障が出る可能性があります。この王ヶ鼻からの絶景は何としても守りたい。この素晴らしい景観の中に無粋な人工物など必要ありません。

 だとすると、ロープウェイの“山頂駅”はどこに設置すれば良いのか?
個人的には、登山道の百曲がりコースの終点である「百曲がり園地」から茶臼山に掛けての辺りの、建設し易い場所に設置すれば良いと思います。建設資材を運ぶ道路は、現状の林道よもぎこば線からビーナスラインを経由して、建設工事中の工事車両のみ特別に百曲がり園地まで通行を許可すれば、木々を伐採し谷あいを埋めるなどして新たな道路を建設しなくても良いのではないでしょうか。

 そして、この「百曲がり園地」から始まり、松本市側の美ヶ原の台上の西側に沿って王ヶ頭の先まで続く約2.5㎞の「アルプス展望コース」は、絶景のトレッキング(ハイキング)コースであり、大してアップダウンも無いことから、ここは南の八ヶ岳に始まる南アルプスから中央、北へと続くアルプスの展望をずっと楽しみながら、美ヶ原に来たら絶対に歩くべきコースです。(先述の市の2つの黒の実線のルート案に、赤い点線で加筆したのが百曲がり園地へのルートです。この百曲がり園地は松本市内ですが、そこから少し離れた「塩くれば」は長和町のエリア内となります)

百曲がりの登山道は無理でも、このコースなら小さな子供たちでもハイキング感覚で歩けます(但し王ヶ鼻までは3㎞ちょっとあります)。
歩くことが大変なお年寄りは、ここから王ヶ頭、王ヶ鼻や美しの塔を経由して、現在自家用車で来られるビーナスライン終点の山本小屋の駐車場までと、更に反対側の松本市の自然保護センターの自家用車駐車場までの道路(アルプス展望ルートとは別の、今既にある放牧地内を通る既存の砂利道)を巡回する、環境に優しい排ガスの出ない電気バスを定期運航させて乗ってもらったり、或いは電動カートを自家用車で来た終点の駐車場でレンタルしてもらったりして、広大な美ヶ原台上を景観を楽しみながらゆっくり自由に楽しんで移動して貰えば良いと思うのです。
その上で、既にそれぞれ国立、国定公園内にある中央アルプス駒ヶ岳、新穂高、北八ヶ岳の各ロープウェイ同様に、或いは上高地や乗鞍岳の様に、自家用車の通行禁止エリアの拡大や指定通路以外の歩行禁止等、自然環境保護との両立を検討して行けば良いのではないのでしょうか。
“岳都”松本の市民の一人として、“環境保護”の名の下に何でもかんでも反対ではなく、環境保護と山を楽しむことをどう両立させれば良いか?をふまえて、美ヶ原ロープウェイ構想の実現に向けて、是非前向きに検討して欲しいと願っています。

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