カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 昼休みに、先輩が連れて行ってくれた上田市本町のお蕎麦屋さん『刀屋』。
先輩(高校の先輩でもあり、同じく松本から車で通われています)が上田を良く知る人から「上田で蕎麦を食べるならココ!」と薦められたお蕎麦屋さんとのことで、二人とも初めての訪問です。
上田でも老舗の「信州そば」の店らしく、食通としても知られた池波正太郎氏が「真田太平記」の取材で何度も上田を訪れた際に通い愛した店とも言います。
  
 店の対面の駐車場に停めて行くと、平日でしたが店は満員で、待つこと二組目とのこと。待つ間にも、ご近所のオフィスにお勤めの方と思しきビジネスマンが次から次へと訪れますが、そこは江戸時代のファーストフードの真骨頂!。店の方々のテキパキした客裁きの良さも手伝って、相席ですがあっという間に座ることが出来ました。店構えも店内も昭和のレトロ風で、如何にも「そば屋」という雰囲気。小上がりと4卓ほどのテーブル席の店内は思いの外狭く、20~30人も座れるかどうか。

 メニューを見て、もりそばの「大盛り」(850円)を注文したら、「もし初めてでしたら、普通盛りでも量は十分ですので、先ずは普通盛りにされて、まだ食べられるようだったら同じ料金で良いので、後で大盛りを追加してみてください。」とのこと。
その後も、大盛りを注文される方には同じアドバイスが繰り返され、店を出るまで、終ぞ大盛りが供されるのを見ることはありませんでした。
値段の高い注文を受けた方が売上げは増えるのにと思いますが、せっかくの蕎麦を食べきれずに残さないように、或いは平日の短時間でもこれだけの来客数ですので、売り切れまでに一人でも多くのお客さんに食べてもらおうと思えば、店としては当然の対応なのかもしれません。

 さて、程なく出された「普通盛り」。
唖然とするほどに、昔ながらの丸「せいろ」一枚に山盛りで、優に他の店の大盛り或いはざる3枚程の量がありました(おそらく3枚にするよりも省力化で、且つ山盛りにした方が同じ量でも圧倒的ボリューム感あり)。これでナント650円。その下の2枚分らしき「中」が600円。女性向けか、「小」(1枚分?)は550円という驚きの安さ(小から見れば、一人前が50円刻み?!)です。
薬味はネギとたっぷりの大根おろしに粉ワサビですが、この値段で生ワサビを期待するのは失礼と言うもの。蕎麦は手切りらしく不揃いで、しかも田舎系の太めの麺。そばつゆは信州にしては結構辛め。注ぎ足し用に蕎麦徳利も出てきますが、これなら江戸前風にちょこんと蕎麦の先をつゆにつけて、次から次へとズズーッと山盛りの蕎麦と格闘することも可能です。
しっかりと腰のある太麺(茹で方もあるのか、かなりコワい)ですが、二八としては「井川城」や「翁」に比べると、蕎麦の旨さという点では正直負けますし、蕎麦の香りも少ない気がします。しかし、昔地元の方に薦められて行った長野市の地下にあった地元の某有名店(量と安さが評判とかで、同様に「大盛り」を止めさせられました。上田にも姉妹店があるようです)の七三なのか六四なのか、蕎麦の香りなど皆無で、蕎麦と言うより小麦粉の味しかせず、うどんとしか思えなかった(二度と食べたくない!)“得体の知れぬ麺類”に比べれば、これは“ちゃんとした蕎麦”であり、全てにおいて数段上。
一方で、蕎麦の実の芯だけを使った吟醸なのかどうか知りませんが、「されど!」と言われても、「たかが!」と言い返したくなるほどに、申し訳程度の量の一枚で1000円以上も取るような蕎麦屋を有難がる風潮もある中で、この店は雰囲気や信じられないほどの値段も含め、「これぞ蕎麦!」、「これこそ蕎麦屋!」と拍手喝采を贈りたくなるほどに、地元で愛され続けてきた信州そばの名店としての心意気と気風の良さが感じられて、お腹だけでなく心も満腹になって、店の外で並ばれている皆さんに席を譲るべく、早々に席を立ちました。

 いやぁ、アッパレ!お見事です。
これぞ、信州そば!とでも言うべき、地元で愛され続ける上田市の『刀屋』でした。

 う~む、池波正太郎縁(ゆかり)とはいえ、真田十勇士に代表される上田の里は、なかなか奥が深そうです。
【追記】
二度目の訪問で漸く写真を撮ることができました。
もりの「普通盛り」と、海苔が載っているのは、ナメコを添えた大根おろしと味噌ダレを鰹の出汁汁で溶く、この店独特の「真田そば」。
さすがに二度目になると、“感動度”は初回ほどではありません。しかし、大盛りって一体どれ程の量になるのでしょうか?4枚分ってこと?「せいろ」一枚に山盛りにされてくるのでしょうか?伸びないのかなぁ?・・・と、興味津々です。話(ブログ?)のネタに今度頼んでみようかしらん・・・。
今回は4人で伺ったら、1階は満席で、2階の座敷(相席ですが、幾つか小部屋があるようです)に上がらせていただきました(さすが、2階の廊下には池波正太郎直筆の色紙が飾られていました)。