カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 栂池自然園への初トレッキングに味を占め、今度は富士見町の“花の百名山”入笠山へ行ってみることにしました。
前日家事を済ませての日曜日。天気も良さそうだったので、ナナを月例のトリミングに預け、9時半に松本を出発。些か遅い出発ですが、現地で3時間もあれば十分でしょう。今回もゆっくりとハスラーで。
諏訪南ICから国道20号を越え、10分程で富士見パノラマリゾートのゴンドラリフト横の駐車場(無料)へ。ICから至近ということもあり、松本からは1時間で10時半の到着。以前富士見の事業所に2年弱電車通勤していた頃は、毎日「すずらんの里」駅から入笠山を眺めていました。

 標高1050mのゴンドラリフトの出発地点から、1780mの山頂ステーションまで凡そ15分。往復1650円。この時期は、トレッキングやハイキングの人たちに混じって、MTBのコースが設置されており、県内外からの愛好家の皆さんで結構混んでいました。
ゴンドラリフトで上昇するにつれて、背後に八ヶ岳が次第に大きくその姿を現して来ます。この日は少し霞が掛かっていましたが、どうやら八ヶ岳を始め、山は良く見えそうです。但し、松本から見た北アルプスは、白馬方面に雲が掛かっていたので全部は無理そうですが、八ヶ岳は勿論、松本からは見えない南アルプスや富士山を是非見てみたいと思います。
 山頂駅横の入口から、カラマツ林の林道を(途中“恋人の聖地”八ヶ岳展望台へは行かずに)15分程歩いて入笠湿原へ。ここはスズランの群生で有名ですが、この時期花は殆ど無く、枯草の湿原。御所平お花畑を横に見て、マナスル山荘からは、お花畑の中のジグザグコースではなく、早く着いた方が良いと直線的に登る登山道を選択。山荘から山頂へは、40分から50分とのこと(距離と時間、行先が表示されていた栂池自然園に比べ、入笠の案内板は不親切でかなり分り辛い)。
結構な急登が続く登山道で、最後山頂への岩場コースと迂回路の分岐でも(ここも時間節約で)岩場コースを選択。しかし、途中にはガレ場っぽい道や短い鎖場もあって、短時間とは言え、初心者の我々にとっては、これはトレッキングではなく殆ど登山の様相。栂池自然園のトレッキングの比ではありません。湿原も、栂池はほぼ平坦でしたが、入笠は結構な斜面です。そう言えばスカート姿の女性が、先にゴンドラで上がって行きましたが、ここは湿原歩きであってもスカートでは無理そうです(展望台だけなら大丈夫かも)。
栂池がトレッキングなら(実際はハイキング程度でしょう)、入笠山(山頂へ)は登山です。山荘から40分程度(健脚な人なら30分とか)、「これって登山ジャン!」と独りブツブツ言いながら(後ろからも「どこが栂池より楽なのヨ?大体、いつも情報がイイ加減ナンだから!」との声を無視して)登り続け、登山道の周囲の木々(考えてみれば、2000mでは森林限界以下)が無くなって急に視界が開けたかと思ったら、そこが入笠山1955mの山頂。
 「着いたぁ~」とガックリ、拍子抜け。「あぁ、シンド・・・」と溜息。
息を整えて、周りに目を転じてみると、木々の無い山頂部からは、正に360°の絶景が拡がっていました。
 「おぉ~、凄い・・・」と、後は言葉になりません。
 東には、目の前一杯に広がるように、雄大な八ヶ岳。南には、山越しに甲斐駒や仙丈ヶ岳など、南アルプスの名峰。そして、その左肩越しに、青い墨絵のように富士山も見えています。「おぉ~、凄い!」
そして西方面には、中央アルプスの木曽駒や遠くには薄らと御嶽の姿も。更に北に目をやると、北アルプスは穂高連峰から常念までは確認出来ましたが、その先は雲の中。その手前前方には、諏訪湖を足元に置いて霧ケ峰から美ヶ原が広がっています。この入笠山の山頂からは、天候が良く空気が澄んでいれば、日本百名山の22座が見えるのだとか。
 「いや、本当に360°なんだ・・・。」
 「こうやって近くで見ると、八ヶ岳はやっぱり凄いなぁ・・・」
太古、この地に住む縄文の人々にとっては、正に神の山だったのでしょう。大きく裾野を広げて連なる峰々は神々しく、特に主峰赤岳(2899m)から阿弥陀岳を経て横岳に至るギザギザした稜線の荒ぶる様な雄々しさと、少し離れた蓼科山の対照的に柔らかな山容も印象的です。
山頂では、子供連れのご家族や、我々も含めたシニア、若いカップルなど、老若男女の皆さんが、それぞれ思い思いの感嘆符を付けて目の前に拡がるパノラマに見入っています。我々も山頂で、オニギリのお弁当(今回はお手製の燻製の鶏ハムや卵焼きのオカズ付き)で昼食。山頂で食べるオニギリは最高です。やっぱり、景色が最高のオカズ(調味料?)でしょうか。
 帰路は、往路の表登山道の急坂や岩場を避けて、首切清水方面への裏登山道を下りました。自動車道路に合流する手前の法華道佛平峠(何とも云われのありそうな名称で、伊那谷方面へ抜ける道のような痕跡が認められますが、残念ながら由緒書きなどの説明は無し)という案内板の表示が、山頂からは100m低い1850m(マナスル山荘から山頂までの表登山道は約200mの標高差)でしたので、随分なだらかな気がしました(山頂へは、裏登山道の方が初心者には楽でお薦め)。
 舗装された自動車路に出て、大阿原湿原へ向かってすぐの“首切清水”まで。その昔高遠藩の金奉行が、ここで喉を潤そうとして賊に襲われたという言い伝えとか。但し、現在は飲めないとの表示で諦めて戻ります(大阿原湿原へ行かなければ、わざわざ見学は不要)。登山道に比べ風情はあまりありませんが(途中、八ヶ岳ビューポイントという場所あり)、歩き易い舗装路を下って御所平まで。そこからまた入笠湿原に入って、今度は往路の林間コースではなく、結構長い階段状の木道を昇って山頂駅に至るコースへ。残念ながら、こちらも殆ど花の時期は終わって、枯草の中。昇り切って、電波塔の横を通って山頂駅へ戻りました。
 皆さん、リフト利用時の割引券(50円引き)でソフトクリームを食べておられたので、我々も名物というルバーブとのミックスを購入し、暫し休憩。
そう言えば、今回は熊除けの鈴はリュックに入れっぱなしで使いませんでしたし、付けている人も殆ど見掛けませんでしたが、家内曰く、「こっちの方が、よっぽど熊が出そうだけど・・・」(因みに、湿原を抜けた山彦荘の売店には、お土産用を含めて鈴が売られていました)。

 登頂時に先に行かせてもらって、帰路も途中で追いついた、我々よりも少し年配の群馬から来られたというご夫婦。地元の尾瀬は勿論ですが、入笠にも毎年一回は来られている由。入笠のお薦めをお聞きすると、ご夫婦曰く、スズランよりもリンドウ(エゾリンドウ)が一斉に咲く時期(8月下旬から9月上旬)が見事なのだそうです。
先週の栂池に比べると、湿原の草紅葉も無く茶色一色で、山にも広葉樹が少なくカラマツの多い入笠の紅葉は今一つ。紅葉が目的なら、他へ行った方が良いでしょう。やはり、ここは花を愛で、そして何と言っても山頂からの360°の展望を楽しむ山なのでしょう。
山頂への登坂は思いの外きつかったのですが、我々の様な初心者は、本格的な登山は無理でも、こうしたプチ登山を楽しめるのも入笠の魅力かもしれません。山頂から山が(せめて八ヶ岳だけでも)見えないと、入笠山の魅力は半減の様な気がします。次回は、天気が良い花の季節に再訪したいと思います。

 蛇足ながら、帰りのゴンドラリフトに乗る時に、何とホットタオルのサービスが。汗と埃にまみれたので、嬉しい心配りに感激しました(奥さまは「あら、そう?」とそれ程でもありませんでしたが、男性の方が単純なのでしょうか・・・?)。