カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 札幌と松本が観光・文化交流都市協定を締結して5周年となることを記念して、「オルガン・ウィンターコンサートin松本 ~札幌からトランペットとともに~」と題したコンサートが、ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール。略称“音文”)で行われました。
数年前には松本バッハ祝祭管が札幌で演奏をしていますし、今回の交流プログラムでは、音文専属オルガニストの原田康子さんが札幌で昨夏に公演をされたそうです(いつか、同じ交流都市金沢のOEK同様に、札幌交響楽団にも是非定期的に来演して欲しいですね。尾高さんのシベリウスなんてイイなぁ・・・)。
 札幌コンサートホール“Kitara”は、パイプオルガンを備えたヴィンヤード型の音楽専用ホールだそうで、札響の本拠地。また、マエストロ故レナード・バーンスタインが創設したPMFの本拠地(天安門事件発生により当初予定した北京から札幌に変更)でもあります。
そのKitara第17代専属オルガニストであるジョン・ウォルトハイゼン氏と札響のトランペット首席福田善亮氏が来演し、バロックを中心としたオルガンとトランペットの曲を演奏されるコンサートです。今回は記念演奏会ということで、希望者から抽選での入場無料。往復ハガキでの申し込みの上、我々も幸運にも聴くことが出来ました。こういう時は、音文が県内唯一のコンサートオルガン常設ホールというのは、市民にとって有難い限りです。

 1月30日土曜日14時開演のマチネ。
パイプオルガンを生で聴くのは3度目(その内の1回は、念願だったサン=サーンスの3番「オルガン付き」を読響の演奏により、国内最大級のパイプ数を誇る東京芸術劇場での生で聴くことが出来ました)ですが、その重低音には痺れます。前回、音文で24年間も専属オルガニストを務めてこられた保田紀子さんの引退公演(市職員身分であるため定年制があり、現在は藝大の後輩でもある原田さんが後任として着任)は、前の方の席で聴いたのですが、ステージ上方にパイプがあるため、天井から音が降ってくる様な感じだった(演奏者を見上げるので首も疲れた)ので、今回はオルガンと正対する後方の席で聴くことにしました。

 開場時間前に着いたのですが、既に長蛇の列。今回は自由席なので、皆さん中央の席がお目当ての様で、幸い我々は最上段から4列目くらいのやや左側ではありましたが、通路側の席を確保することが出来ました。開演前には、前方の数列を残してほぼ満席(定員に達したので早々と申し込み締め切りとのことでしたが、どうして空席が出来るのか・・・?)
トランペットもステージ上ではなく、バルコニーの様な上部のパイプオルガンの演奏台のフロアに譜面が置かれていたので、我々の席がちょうど目の高さで正対する形になります。音文の専属オルガニストの原田さんがストップ操作と譜めくりを担当。また同じく藝大出身で地元在住のトランペット奏者平田昇さんも演奏に加わります。

 お馴染みの(但し、パーセルだと思っていたら、J・クラーク作曲とのこと)「トランペット ヴォランタリー(Trumpet Voluntary)」で開演。バッハやブクスフーデのオルガン独奏曲。ヘンデルの組曲や、有名なマルチェッロの「オーボエ協奏曲」のトランペット版。休憩を挟み、トランペットが旋律を奏でたシューベルトの「アベ・マリア」やデュリュフレなどのオルガン曲。最後に、テレマンの2本のトランペットのための協奏曲。
満場の拍手に応えて、札幌の観光スポットであるクラーク像のある羊ヶ丘と名物料理のジンギスカン(?)に因んで(SKOで何度も松本へ来られているという福田さんから、「札幌へも観光にお越しください」とのメッセージの後)、アンコールとして、バッハの「狩のカンタータ」BWV208の第9曲の有名なアリア「羊は優しく草を食み」を2本のトランペットとオルガンで演奏してくださいました。
 個人的には、やはりオルガン曲に惹かれます。特に重低音で奏でられる壮大な和音。パイプオルガンの鍵盤の段数(音文は3段、Kitaraは4段とか)やストップ操作による、まるで管楽器と聞き間違うような多彩な音のバリエーション(実際、オルガンは分類上“鍵盤で操作する管楽器”だそうです)。パイプオルガンが“1台のオーケストラ”と比喩されるだけのことはあります(中世では人力の「ふいご」で、現代では電動モーターで「ふいご」を動かし、音文だと3200本弱のパイプに風を送ります)。
音文の天井高のホールと正面のオルガンが、まるで中世ヨーロッパの大聖堂の中で聴いている様な、そんな視覚的・音響的効果もあるのかもしれません。
 なお、札幌Kitaraの専属オルガニストは一年毎の交代制で、現在第17代とのことでしたが、むしろ松本のように出来るだけ(マンネリ化を避けながらも)長く定着してもらった方が(特に地方においては)良いのではないかと感じました。
オルガン演奏は、両脇のストップ操作や足で踏む鍵盤(ペダル)もあるので、演奏台で着座する椅子が長く、そのため奏者は長椅子を左右にお尻を移動せねばならず重労働。また、客席に背を向けての演奏のため(指揮者やオケと合せるために鏡が付いています)、拍手を受けるために都度椅子を跨がねばならず、足が長い人でないと大変だなぁ(Kitaraのウォルトハイゼンさんも音文の原田さんも、幸いお二人共すらっとした長身)と、演奏を聴きながら妙な感心をしていました。
それにしても、天井から降り注ぐような重厚で荘厳なパイプオルガンの和音に、居ながらにして常設のコンサートオルガンを聴くことのできる有難さに身も心も包まれた幸せな時間でした(“地元の宝モノ”をもっと聴きに行かなくっちゃ!いつか、音文でサン=サーンスの「オルガン付」を演奏して欲しいものです)。