カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 コンビニや大手飲食チェーンなどで相次いだ、所謂“バカッター”と呼ばれるバイト社員によるネット上への不適切動画の投稿。
その結果、そのチェーン店では謝罪に追い込まれて売り上げも激減し、会社側が当該バイト社員を懲戒解雇しただけでなく、損害賠償請求などの法的措置を講じるという、単なる“悪ふざけ”では済まされない、所謂「バイトテロ」と呼ばれる社会的騒動に発展するケースまで最近では発生しています。
こうした反社会的行動を批判して、「最近の日本の若者の道徳観念も地に落ちた」などという論評も目にします。しかし程度の差こそあれ、果たしてこの“最近の若者”による「バイトテロ」や“バカッター”にだけにモラル低下は限定されることなのでしょうか?

 江戸時代の長い鎖国時代を経て、門戸を開放した江戸末期以降の日本へ来た欧米からの外国の人々は一様に、それまで未知だったその国の人々の様子や行動に大層驚いたと云います。それは、道端まで掃かれたようにゴミ一つ無く、田畑はまるで庭園の様に美しく手入れがされていた村々に驚き、また「貧乏人は存在するが、貧困なるものは存在しない。彼らは貧しい、しかし高貴である」とまで礼賛した、この国の人々が持っていたモラルの高さと勤勉さ。
例えば、開国後の初代米国駐日領事タウンゼント・ハリス曰く、
「(下田の)柿崎は小さくて、貧寒な漁村であるが、住民の身なりはさっぱりとして、態度も丁寧である。世界のあらゆる国で貧乏に何時も附き物になっている不潔さというものが、少しも見られない」
また、幕末長崎で活躍したオランダ商人トーマス・グラバーは、
「幕末に長州、薩摩、肥後、肥前、宇和島の各藩とは何十万、何百万両の取引をしたが、賄賂は一銭も使わなかった。これは、賄賂をふところに入れるような武士は一、二の例外を除いて一人もおらず、みな高潔かつ清廉であったためで、賄賂をしたくともできなかった。このことはぜひ特筆大書して後世に伝えていただきたい」
明治時代にも、日本アルプスの名付け親である英国人登山家ウォルター・ウェストン曰く、
「教育のない日本の田舎人ほどの、真の意味の紳士を日本の内外で、私は見たことがない」
そして時代は移っても、7年程前に外国人記者クラブの会報に掲載されたという記事によれば、
『ある外国人記者が有楽町のいつもの店で食事をした。勘定をして出ようとしたところ、店員から1枚の紙を渡された。「××さん、先日おいでになったとき、お釣りの十円玉がテーブルに置き忘れてありました」。そう書いて、十円玉がセロテープで紙に貼ってあった。その外国人記者は、「世界のどこにお釣りの十円が戻ってくる国があるだろうか」と書いて、その短い記事を結んでいた。』

 ところが、そんな日本である筈なのに、最近では我が家の周辺でも、道端にタバコの吸い殻は勿論、マックやコンビニで買った食べ歩きでのゴミが落ちているばかりではなく、時には大きなレジ袋にパンパンに詰まった家庭ゴミが捨てられていたり、またどう考えても歩きながらではなく走行する車から投げ捨てられたとしか思えないビールやサワー類などのアルコール飲料のアルミ缶が落ちていたりと、嘗ての高貴さの欠片も感じられぬ様なモラルの低い行動が目に付くのです。街中ではなく郊外の我が家周辺での出来事ですので、京都に代表される様な“観光公害”としてのインバウンドの観光客ではなく、普通に通学や通勤で通行する“日本人”の仕業である筈です。
以前、道端に時々投げ捨てられていた家庭ゴミに耐えかねて市役所に相談したところ、係の方がゴミを調べて住所の書かれたDMの封筒を見つけ、その“犯人”に、「今後もし繰り返すようだと、不法投棄として告発する」旨の警告をしてくれたと後日報告がありました。
それはそれで有難かったのですが、「不法投棄」だと頭では絶対に分かっている筈なのに、そこまでしないと悔い?改めないというのが、本当に情けない気がしました。
以前、市内蟻ヶ崎の或る町会で、公民館長になった女性の方が、「公民館は町会の居間で、町内の道路は町会の廊下」と積極的にPRに努めた結果、住民の皆さんが進んで道路のゴミ拾いや清掃をするようになり、実際に松本駅への朝の通勤途上で、当たり前の様にそうした光景を何度も目にしたことがありました。

 上述の江戸時代や明治まで時代を遡らずとも、つい最近までそうした行為や行動が当たり前のように行われていた、或いは今でも行われている場所がおそらくまだこの国には各地にある筈です。
極端な“バカッター”まで至らずとも、極々普通の人が他人が見ていないからゴミを捨てるという、つい最近まではこの国、民族の共通認識=常識であった筈の“反社会的行為”をしない、させないためにはどうすれば良いのか・・・?
家庭の躾か学校教育か、一体何をどうすれば良いのか分かりませんが、例え我が家の可燃ゴミを収集所まで持って行く僅か数十メートルの間だけであっても、とにかく我が家周辺の道端に捨てられているゴミを一つずつ拾って、我が家のゴミ袋の中に入れて一緒に捨てるようにしています。
そんなことではこの世の中何も変わらないかも知れませんし、例えゴミを拾う都度小さく溜息が出ても、せめて・・・。