カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 夜中には霧雨がしっとりと辺りの森を濡らし、ずっと梅雨空が続いた那須での4日間でしたが、奇跡的に晴れそうだった滞在三日目。そこで、当初の計画通り、那須の象徴ともいえる那須岳へ登ることにしました。

 日本百名山の那須岳は、深田久弥に拠れば那須五岳の中の茶臼岳、朝日岳、三本槍岳の総称ですが、一般的に那須岳と言うと主峰の茶臼岳を指すのだそうです。茶臼岳には9合目までロープウェイで登ることが出来るので、ハイキング気分で簡単に頂上まで登れるのだとか。しかしそれでは面白くありませんので、せっかくですから往路は登山口から茶臼岳まで登り、ナナは負担を掛けぬ様に勿論部屋でお留守番ですので、早めにナナの待つホテルに戻るために、帰路はロープウェイで下山することにしました。
登山ガイドに依ると、往路は峠の茶屋登山口から峰の茶屋までが50分で、そこから茶臼岳山頂まで同じく50分。山頂からロープウェイ山頂駅までは下り40分という行程です。因みに、ロープウェイの乗車時間は僅か5分足らず。

 朝8時半前にホテルを出て、途中コンビニで行動食や持参した水筒以外に水分が不足しないように念のためにミネラルウォーターも購入し、那須湯本を経て那須高原のロープウェイ山麓駅に到着。
出掛ける時は曇り空で予報では午後からの晴れマークだったのですが、那須湯本から山坂を登りロープウェイの山麓駅に着く頃には雲が切れてお日さまの光が久し振りに降り注いで来ました。そして、雲の間から目指す茶臼岳もその雄姿を見せてくれました。
帰路はロープウェイで降りてくることから、こちらの無料駐車場に車を停め、ここから登山口のある峠の茶屋駐車場へ遊歩道を歩くこと20分で登山口のある峠の茶屋駐車場へ到着です。
広い峠の茶屋駐車場には既にかなりの台数の車が停まっていて、観光バスも数台。横浜市の小学生の集団が学校登山で茶臼岳に登る様で、登山口で地元のガイドさんから事前に登山での歩き方や注意事項などの説明を受けていました。
朝9時、1915mの茶臼岳山頂を目指して、我々は先に出発です。
1462mという登山口から石畳や階段が整備されている登山道を登るとすぐに山の神の鳥居と祠があり、我々も登山の無事を祈ってお参り。しばらくは低木の樹林帯が続きます。日が差してきたことで気温も上がって暑くなってきました。汗を拭きつつ登りますが、初めてキツク感じた先日の美ヶ原登山に比べれば、今回も同じ標高差500mの登りですが湿度が低いのか遥かに楽に感じます。
 中間点辺りに来ると木々が無くなり、風が吹き抜け涼しく感じます。この時期は、ベニドウダンの赤く可愛らしい花や、マルバシモツケの白い花などが登山道脇に咲いていて登山者の心をなごませてくれます。
今回の那須は気分も爽快、体調も良し!この前の美ヶ原の時は一体どうしたんだろう?・・・。那須岳を構成する1896mの朝日岳の鋭峰が、切り立った剣ヶ峰の先に赤い岩肌を見せて登山道の右側に迫ってきます。そして目の前には活火山である那須岳の主峰茶臼岳が聳えています。
行程表通りの50分で峰の茶屋に到着。今は無人の避難小屋という、朝日岳と茶臼岳ルートの分岐点である峰の茶屋でリュックを降ろし、小屋の前のベンチに座って休憩です。すると歩荷ほどではありませんが背負子で段ボールを背負った方が登って来られて我々のすぐ横で休憩されたのでお聞きすると、ここは標高1720mだそうですので、茶臼岳山頂まで残り200m。
ご自身は朝日岳方向へ行かれるそうですので、その先の三斗小屋温泉なのか、小屋に向かわれる途中とのこと。我々が信州松本からと知ると、「イイですネェ!」と実に羨ましそうに、以前白馬岳大雪渓から白馬岳に登られた話をしてくれました。松本近郊でのお薦めの山を聞かれたので、上級者の方なら日帰りも可能と燕岳を推薦。
 「今日の様に、下一面に雲海が拡がるっているのは本当に珍しいんですよ!」
と、ご自身もカメラで撮影しながら教えてくださいました。
ここはまだ1700mという標高なのですが、北アルプスなどとは違い、茶臼岳は火山なので既に緑は無く、ゴツゴツしたガレ場が山頂までずっと続いているようです。美ヶ原より低い(王ヶ頭は2034m)とは信じられない様な、実際の標高以上の“高さ”を感じさせてくれます。
そんなお話をしながらベンチで休んでいると、下の方から小学生の一団が元気良く登って来るのが見えたので、挨拶をしてお互いの無事を祈りつつ、我々は先に頂上を目指して出発です。峰の茶屋から山頂までは同じく50分の行程。
 百名山とはいえ、感心する程に整備された登山道。峰の茶屋を過ぎると、10人程のグループの方々が、所々でロープを張り直したり登山道からの排水路を掘ったりと、登山道を整備されていました。おそらく地元の山岳関係者か観光協会の方々と、背中に那須塩原警察署と書かれたお馴染みのユニフォームを着た地元の警察官の方々でした。こうした方々の努力のおかげで、ここまでキチンと整備されているのかと感謝しつつ、挨拶をして通らせていただきました。
途中岩場の急登や、活火山らしくガスが噴出し硫黄の匂いが立ち込めている場所を過ぎ、一周10分程で火口を周回する「お鉢巡り」のルートに合流しました。如何にも火山らしい景観が拡がっています。その中で高台に当たるのが、那須岳の主峰茶臼岳1915mの山頂。山頂の標識で登頂記念の写真を撮り、そこから更に2m程高い所に祀られている祠に無事の登頂御礼のお参りを済ませてから、頂上付近で軽食を食べながら休憩。
するとロープウェイで登ってきたらしいジャージ姿の小学生の一団が頂上へ来たので、我々は早々に退散。しかしながら、コースでの譲り合いや挨拶などの登山マナーはまるで無く、横に並んで歩いて道を塞ぐ子供たちを注意する様な引率者や先生も一人もおらず、横浜の小学生達の様な事前学習は全くされていない様子。
 頂上からの下りで40分というロープウェイ山頂駅を目指します。
その山頂駅が1690mだそうですので、山頂との標高差は225m。1720mだった峰の茶屋からの登坂路と殆ど変わりませんので、結構な急坂です。
那須ロープウェイで9合目まで来られるので、那須岳(茶臼岳)はハイキング気分で登頂可能という記事もありましたし、実際にトレッキングの装備も格好もしていない、正しくスニーカー履きの普段着でのハイキング気分の若いカップルや、ポールは使われてはいましたが80歳を超えられていると思しきお年寄りのご婦人方のグループともすれ違いましたが、下りもかなりの急坂部分もあり、八方池への濡れた緑紋岩とはまた違いますが、火山岩が砕けた砂礫の登山道は結構滑り易いので注意が必要。天候次第かもしれませんが、気軽なハイキング気分では些か無理だろうと感じた次第です。ましてやキャリーバッグとはいえ、犬連れでの登山は無理でしょう。
しかも那須岳は強風の日があり、ロープウェイが運転を休止せざるを得ないケースもあるため、その時は自力で歩いて下山するしか方法がありません。そのため山頂駅には貸出し用の登山靴も常備されているそうですが、そんな万が一も想定し、ちゃんとトレッキング向きの格好で行かれた方が良いと思いました。
山頂駅には30分掛からずに到着し、20分間隔で運行されているロープウェイですが、予定より一本前に乗車することが出来て無事山麓駅に下山。途中、下界は雲や霧でゴンドラからは全く景色は見られませんでした。
 珍しい雲海と教えていただいた様に、この日の天気は幸運にも山の上だけが良かったのかもしれません。梅雨空の中で奇跡的に楽しめた、日本百名山の那須茶臼岳への山行でした。