カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 山頂から八ヶ岳や南アルプスなどの絶景を見ることが出来なかったのは残念でしたが、目的の北横岳登頂を無事果たして下山開始。

山頂から下ってすぐの北横岳ヒュッテに「至七ツ池」の表示があり、ヒュッテからホンの2分との由。家内の事前チェックで、七ツ池は9月下旬には紅葉が見頃を迎えるとのこと。ただ北横岳山頂の紅葉も今年はまだ少し早かったので例年よりも遅れているのか余り期待出来ないかもしれませんが、折角ですし、すぐ近くなので足を延ばし行ってみました。確かに下ること僅か。小さな池ですが、風も無く山に囲まれて静寂に包まれた池が姿を現しました。
 それは決して大袈裟でもなく、まるで神様が作庭したとしか思えぬ様な、小倉山を借景とする天龍寺の庭園にも負けず劣らぬ、それは見事な庭園が目の前に現れたのです。しかも、湖畔のカエデか或いはナナカマドか、真っ赤に紅葉した木々が無風で鏡の様な水面に映り込む様は、まるでそこだけが時間が止まったかと思える程に正に見事と言う外はなく、溜息を漏らすほどに感動し暫し見惚れていました。戻る際に、後から来られたカップルの方々に、
 「ここは白駒の池の紅葉より余程素晴らしいですヨ!」
 「えっ、そうですか!?実際に白駒とどちらに行こうか迷ったんです・・・。そうですか、こっちに来て良かったです!!」
と、他の人にもつい薦めたくなる程に本当に感動しました。
七ツ池は、車で行ける白駒の池と違い、いくら初心者コースとはいえ軽装ではなくちゃんと登山の支度をして下から1時間登って来ないと見ることは出来ませんが、七ツ池の紅葉は本当に穴場の紅葉スポットとして絶対にお薦めだと思いました。
七ツ池の名前の通り、周辺には10の大小の池があるそうですが、現在見られるのは手前の二つの池だけ。散策路を歩きながら、その二つの池を見終わってヒュッテに戻るまで我々以外は先程のカップルの方々と4人だけ。たった4人だけでこんな素晴らしい紅葉を独占してしまっては勿体無い!と思える程。3年前の10月初旬に行った、同じ北八の白駒の池(第1139話)。平日でしたが、白駒の池の広い有料駐車場は何台もの観光バスも含め満杯でした(紅葉シーズンの週末は大渋滞で、周辺には路上駐車も見られる程の混雑だとか)。そんなツアーの目的地にされる程に紅葉スポットとして大人気の白駒の池よりも、ここ七ツ池の方が個人的には遥かにお薦めです。以前八戸に出張で行った時に乗車したタクシーの運転手さんが、紅葉で有名な八甲田山のベストの日は年に一日だけと言われていたのがとても印象的だったのですが、白駒の池も七ツ池の紅葉もそれぞれタイミング次第にせよ、それにしても七ツ池の紅葉は本当に素晴らしい!と感じ入った次第です。
 そんな素晴らしい七ツ池の紅葉と周囲の緑との対比などの絶景を十二分に堪能してから、北横岳ヒュッテに戻って改めて下山開始。途中下り坂で、こんなに急登だったのかと思える程の急坂を下ります。
我々は始発のロープウェイでしたので殆ど登山者はおらず、途中下って来られた歩荷の方とすれ違っただけ。10時半には北峰から下山を開始したのですが、登って来る幾つかのグループの皆さんに会いました。道を譲り待っていると、口々にお礼を言われながら、
 「どこから来られたのですか?」
という問いにお答えしての「私たちは・・・」という返答で知ったのは、日帰り登山だろうと思える山梨の方々や、驚いたのは、それこそ八甲田の地元である青森のグループの方々までおられたこと。しかも我々同様に、全員年配者のみ。皆さん、お元気です。そこでも、七ツ池の紅葉を見る様に、下山時に足を延ばして是非立ち寄られることをとお薦めしました。
 坂を下り、登山口から坪庭へ。今度は分岐点から逆コースを進んで坪庭を一周してロープウェイの駅に戻ります。このコースの方が来た時のコースよりもアップダウンの起伏があり、途中最後に急な階段があるので足に不安な人は来た道を戻るようにとの注意書きがありました。
火山群である八ヶ岳連峰の中にこの広い坪庭を形成したのは、北横岳の東側斜面に残る火口から流れ出た大量の溶岩流で、しかも僅か800年前の噴火とのこと。西暦1200年代といえば鎌倉時代です。
坪庭と名付けられた通り、そんな鎌倉時代の名人が作庭した禅宗寺院の名園にも決して劣らぬ様な、冷えた溶岩が形成した奇岩とハイマツの見事な庭園が拡がっています。
坪庭を巡る一周30分程の散策路が設けられていて、ロープウェイで登って来て坪庭のハイキングを楽しむ観光客も結構おられます。ハイマツに交じってたくさんのシャクナゲの木も目立ちますが、高山帯に咲くハクサンシャクナゲとか。初夏に咲くであろう花の季節の坪庭もさぞキレイなことでしょう。因みに火山群である八ヶ岳連峰の中で、唯一の活火山に指定されているのはこの北横岳だけなのだとか。 
ゆっくりと坪庭を散策し、ロープウェイの駅に到着したのが12時。コースタイム通り、北横岳登山はほぼ3時間の行程でした。
坪庭駅にはカフェや展望テラスなどもありますが、ナナとコユキがホテルの部屋で待っているので、どこにも寄らずにロープウェイで山麓駅に戻って、一路ホテルへ。初心者向けですが、思いがけぬ秋の紅葉や天空の坪庭など色々楽しめた北八は北横岳への山行でした。
 途中、北八ヶ岳ロープウェイから蓼科湖へビーナスラインを戻る途中に「プール平」という場所があり、そこに蓼科を愛した小津安二郎の記念館(彼が別荘として使っていた「無藝荘」。数百メートル離れた所に在ったのを現在の場所に移築したのだとか)も道沿いに在ったので、次回もし来た時には見学してみようと思います。近くには、「小津の散歩道」と名付けられた小津安二郎が散策した小道もあるそうです。その別荘で、
彼が没するまでの、「東京物語」以降となる遺作「秋刀魚の味」など7本の映画のシナリオを、小津安二郎はそこで執筆したのだそうです。
因みに、中井貴一や中井希恵の父である佐田啓二は、小津とは親子の様な関係で、小津を最後に看取ったのも佐田だったのだそうですが、山梨県の韮崎で自分の運転する車での衝突事故で亡くなるのですが、それは小津の愛した蓼科へ避暑に来ていた帰り。小津の死後から僅か8ヶ月、37歳の若さでの事故死だったのだとか・・・。