カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 長女のマンションのある麻布台。毎日特別にすることも無い日は、せっかくですのでウォーキングも兼ねて周辺を散歩です。
近くでは、あべのハルカスを抜いて日本で一番高い330mのビル(JPタワー)になるという麻布台ヒルズが、今秋のオープンに向け最終工事の真っ最中。

朝6時を過ぎると、地下鉄の神谷町駅から現場に出勤する作業員の人たちが、まるでアリ行列の様に歩いて行きます。半数以上は外国の人たちの様で、建設現場に限りませんが、所謂3Kと呼ばれた職種は今外国人労働者に頼っている日本の現状が伺えます。しかし、一時期の急激な円安で日本が魅力的な出稼ぎ先では無くなってしまい、果たして予定通り建設工事は進むのかと他人事ながら心配になります。
そしてもう一つ。建設現場を見ていて気が付くのが、作業服を着た少し小柄でヘルメットからポニーテールが覗いている人が結構多いこと。建設工事の現場で働く女性の皆さんです。おそらく現場の作業員ではなく、多分建築関係のエンジニアか職人さんだろうと思います。
今この国はどこも人手不足なのですから、OL職などに留まらず、理系女子の範疇としてこうした現場へも、男性に伍して、例え力勝負では負けたとしても片や男性には無い女性の持つきめ細やかさや持続力などの特性や感性を活かして進出しているのを間近に拝見し、大いに頼もしく感じました。彼女たちの努力も勿論ですが、建設会社としても工事現場の女性用の更衣室やトイレの確保、或いは妊娠中の作業環境など色々な課題に対処された結果だろうと思います。娘を持つ親と云うこともありますが、元人事屋としてはガンバレ!と“リケジョ”の皆さんにエールを送りたくなりました。

 麻布台には、前にもご紹介した通り狸穴坂横にロシア大使館があって、現在の国際情勢を踏まえ24時間警察が警備を強化しているのですが(職務とはいえ、警察の皆さんも真意は複雑かもしれません。「ご苦労様です」と挨拶すると、「ありがとうございます!」と笑顔が返ってきます)、不思議なのは、ロシア大使館に隣接しているのがアメリカンクラブなのです。
穿った見方かもしれませんが、どう考えても米国が(建設した当時は)“スパイ天国日本”において、特に冷戦時代に攻守両面で隣接するこの場所に敵国を監視する目的で建てた(外交施設である大使館の方が優先されて、先に建設されたでしょうから)、としか考えられません。
そうしたキナ臭い話はともかくとして、そのロシア大使館とアメリカンクラブへ入る路地の行き止まりの所に、小さな空き地の様な草地があります。
好奇心旺盛故に気になって見に行ったところ、そこには記念碑が在って、読むと「日本経緯度原点」とありました。その説明書きに依れば、
『日本経緯度原点は、わが国の経度と緯度を決める基準となるものです。この原点の数値は、大正7(1918)年に文部省告示によって確定しましたが、平成13(2001)年の測量法改正で数値が改められ、さらに平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際の地殻変動により原点が東へ27cm移動したため「東経139度44分28秒8869、北緯35度39分29秒1572」に改正されました。この場所には、明治7(1874)年から海軍の観象台がありましたが、明治21年に内務省地理局天象台、東京帝国大学理科大学天象台と合併し、東京帝国大学付属東京天文台が置かれました。その後、東京天文台は大正12年に三鷹へ移転しましたが、この場所は、現在もわが国の地図測量の原点として利用されています。』
ここは、元々東京天文台があった地だったのです。今ではひっそりと都会の隅っこに忘れ去られた様に佇むこの“空き地”に、我が国の隠れた歴史を感じました。
 そして、東京タワー。
我々日本人にとっては、当たり前過ぎて珍しくも無い(子供の頃は憧れで、祖父に連れられて、初めての“お上りさん”の東京観光で登った様な記憶が・・・)かもしれませんが、今でも外国人観光客の皆さんにとっては、定番の観光スポット。散歩していると、朝からライトアップされる夜まで、東京タワーを見上げ、或いは背景に写真を撮る外国人観光客で周辺は賑わっています(斯く言う田舎からの“お上りさん”も、上を見上げて歩いています)。
5月ということで、この時期は、東京タワーの高さに因んで、333匹という色とりどりの鯉のぼりがタワーの足の麓に飾られていて、またGWのこの時期は、特別にレインボーカラーでライトアップがされていました。
 そして、日本で一番古い都市公園の一つという、明治6年開園の芝公園。
厳密には、都立芝公園、港区立芝公園、プリンス芝公園の三つのエリアに分かれているのだそうですが、財政豊かな東京都と港区故か、例えば頻繁に雑草などの草刈りがされているなど、羨ましい程に本当に良く整備、管理がされています。特にプリンスホテルと区立の芝公園は、芝生と花壇の手入れが良くされていて様々な花がさいていましたが、とりわけこの時期はちょうど色んな品種のバラが見頃を迎えていてとても見事で、花の写真を撮っている人がたくさんおられます。特に区立芝公園のバラのハート型のトレリスは、バラのアーチ越しに東京タワーを入れて撮れるので、外国人観光客には人気の撮影スポットだとか。

それにしても、GWということもあるのか、まるで「ここは日本ではない」かのように錯覚する程に園内では中国語と韓国語が飛び交い、カップルが写真を撮ったり、ネットに投稿するためなのかポーズを取ってスマホで動画撮影をしたりしている人たちの余りの多さに驚きました。
またプリンス芝公園の芝生からは、羽田空港に着陸するために飛行する各社の旅客機が、まさに秒単位で羽田に向かって上空を飛んで行くのが見えます。
これは羽田の便数増加に対応するために、2020年から運用が開始された都心上空を飛ぶ飛行ルートで、常時ではなく主に南風が吹いている時、しかも騒音対策として15時~19時の間の3時間程度に限定して使われる飛行ルートなのだそうですが、このルートだと新宿駅周辺で約3000ft(約915m)、そしてこの辺りの六本木ヒルズ周辺で約2000ft(約610m)とのことなので、肉眼ではすぐそこを飛んでいる感じがします。いずれにしても、“乗り物好き”の “お上りさん”の年寄りにとっては、ヨダレが出そうな程のたまらない光景でした。
 冒頭で書いた通り、今麻布台では森ビルの今秋開業予定の「麻布台ヒルズ」の建設が大詰めを迎えていて、メインのタワービルと、“億ション”でも全く桁違いの国内最高額になるという話題のタワーマンション2棟も、急ピッチで建設が進められていて、まさに職住一体の都市一個分を作るかのような大工事に、工事現場周辺はまるでカオス状態です。
それは毎日、朝早くから地下鉄の神谷町駅から建設現場へ向かう作業員の人たちの行列が、まるでアリの行進の様な動きから始まります。
あべのハルカスを超える330mという麻布台ヒルズのメインタワーは、既にビルの外観はほぼ完成していて、今はその内部工事とヒルズ一帯の下層階部分の屋上庭園や下層階の建物側面も緑に覆われる様で、その部分の植栽工事が行われていました。
 ビルというよりもむしろ“街を創る”という意味では、現在再開発中の渋谷駅周辺と共に、おそらく今一番活気があって“蠢いている”様な麻布台界隈。そして、インバウンドの観光客が集まる芝公園。
ゆったりと流れるノンビリした田舎の時間の速さとは全く異なる様な、活気に溢れた日本の中心の鼓動とその喧騒に圧倒される様でした。