カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 以前から、「日本在住の(しかも一流の)ロシア人ピアニストがいる」と知ってはいて、「何故日本に?」と単なる興味本位で気になってはいたのですが、そのご本人であるイリーナ・メジューエワさんが、2月末のNHK-FM「きらクラ」に、遠藤真理さん産休中のゲストMCとして出演され、ふかわりょうさんとのやり取りから窺い知るその人柄と、スタジオでの生演奏に大変惹かれました。人柄がそのまま音に滲み出ているような、誠実で優しいピアノでした。

 日本語では「一期一会」という言葉が好き(正に演奏会そのものですね)で、月に何回か歌舞伎鑑賞(文楽や能にまでも)などに行かれるという日本通(それもその筈で、既に在日15年とか)。

 スタジオ演奏で譜面を見て演奏していたらしく、その理由をふかわさんから問われて曰く、「ピアニストそれぞれの考えがあって勿論良いのですが、私の場合は」と前置きされた上で、「演奏家は作曲者ではない。作曲者の意図は譜面の中にしかない」ので、10年前に譜面指示通りに演奏していないことに気付かされて反省してからは、演奏する時は(間違いなく暗譜もされた上で、尚且つ)必ず譜面を見るようにしているとのこと。
学生時代合唱をやっていただけで何も楽器を演奏できない素人ながら、指揮者の意図を意識しないといけないようなコンチェルトならばいざ知らず、楽器単独の時(例えばピアノソナタ)も、殆どの演奏家が暗譜で演奏することに些か疑問を持っていただけに、わが意を得たりでありました(弦や管楽器の無伴奏曲の場合と違い、ピアノであれば、演奏者の横に譜めくりの人が座れるので)。
勿論演奏家としての解釈はありましょう(バロック音楽など、細かな演奏記号が無い楽譜は尚更です)。また強弱やテンポなど、敢えて意図的に譜面指示とは違う解釈を是とする場合もありましょう。しかし、作曲家の意図を完全に理解した上で演奏するためには、「私は楽譜を見て演奏した方が良い」という彼女の意見に共感し、またそこに強い意志も感じました。

 メジューエワさんの今後の演奏予定を確認してみましたが、レコーディング(何故か富山県の魚津らしい)とお住まいの京都での後進の指導(京都市芸大)がメインなのか、或いは「知る人ぞ知る」で頻繁な演奏会はどうやらされていないのかもしれません。
しかしこれまでも、過去ショパンのノクターンなどでレコ芸のレコード・アカデミー賞を受賞されている由。彼女のCDを探してみたいと思います。でも出来れば、是非一度ハーモニーホールでも演奏してもらいたいものです。