カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 前回第713話で「イヤハヤ、この峠道は何が起こるか分かりません」とご紹介した三才山“豚ネル”の話題。
それから間もなくの2月上旬のことでした。その日は、昼過ぎには上がりましたが、朝から雪。

 夕方7時少し前だったでしょうか。
上田からの帰り道。既に道路には積雪はなく、順調に走行。鹿教湯を過ぎ、内村川を渡ると勾配の急な山道となり、カーブの続く三才山峠を登っていきます。
三才山トンネルまでに一ヶ所だけ登坂車線がある地点で、前の車が(県外車ではなく、地元の松本ナンバーでしたが)追い越し車線をゆっくりと走っていてどいてくれそうもないので、止む無く登坂車線から抜こうと左側に寄せた瞬間のことです。
左側の林の中から、何か黒い塊が急に道路に飛び出してきました。慌てて急ブレーキ・・・、それはナント鹿!でした。幸い後続車両もなく、ライトに驚いたのか、道路の真ん中で立ち止まった鹿の3m?くらい手前で停車。鹿は、大きな黒い瞳でこちらを見ると、何事も無かったかのように軽やかにピョンピョンと跳ねて反対側の林に消えて行きました。
鹿は群れ(家族?)で行動すると言いますので、続いて現れるのではと心配しましたが、続いて来る様子も無く、若い雄鹿だったのか、その時は単独行動の様でした。
「ビックリしたなぁ、もう・・・。おーい、もう車にぶつからないように気を付けなよー!」
と横切る鹿に向かって無意識に(意外と冷静に)車内から声を掛ける自分がいました。

 その間、物理的にはホンの数秒足らずの出来事だったのかもしれませんが、
ライトに照らされて、道路の真ん中で立ち止まって何かを言いたげに(と思えるような)こちらを見つめる黒い瞳としなやかな肢体。後から思うと、まるでスローモーションのように数十秒にも感じられた時間でした。

 ここで啓蟄も過ぎましたが、虫ならいざ知らず、信州では野生動物にも結構遭遇します。例えば、野生のタヌキ(一度夜の平井寺トンネル付近で、道路脇から出て来そうになったので、パッシングしたら戻ってくれました)やサル(安曇野市堀金の須砂渡渓谷上流にある延命水の近くで群れに遭遇)はこれまでも見たことはありましたが(そう言えば、昔上高地では崖の上に立つ孤高のカモシカも)、野生の鹿を見るのも、ましてやあんな至近距離で遭遇したのも初めてです。考えてみれば鹿教湯というくらいですから、あの辺りに居ても不思議ではないのかもしれません。
最近増えすぎたのか、「鹿害」が新聞等でも報道されてはいますが、それにしても実際に遭遇し本当にビックリしました。
環境破壊などの人間のせい(道路開発や、オオカミなどの天敵の絶滅)で、自然の循環サイクルが崩れているのでしょうか。

 先日、朝の出勤途中、鹿と遭遇した辺りを走行中ふと見ると、道端に鹿教湯の旅館らしい「鹿鳴荘」と描いた大きな看板が・・・。
ナルホド!と妙に納得した次第・・・。
【追記】
会社でこの話をしたら、他にも峠道で鹿に遭遇した人や、10年ほど前には鹿とぶつかって車が大破した方もおられるのだとか。熊に会うよりもまだイイかも・・・。
また、地元紙の報道によれば、営林署員の長野県内での鹿の目撃情報では、美ヶ原、八ヶ岳、霧ヶ峰周辺に集中しているのだとか。三才山は、霧ヶ峰から美ヶ原を経ての東山々系の一角ですので、当然だったかもしれません。