カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 電車通勤ではなくなり、「街に出る」機会がメッキリ減ったため、何かの折に出掛けると、ここぞとばかり文庫本を数冊ずつ購入し、時間を見つけては読んでいます。

 やや乱読気味の中で、気にはなっていたのですが手が伸びずにいた中山七里氏の著作を立て続けに3冊読破。
最初は、第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作の「さよならドビュッシー」。続けて「おやすみラフマニノフ」。そして、三冊目が「さよならドビュッシー前奏曲」(短編集)。
一応ミステリーですので、前二作はピアニストでもある「岬洋介」が探偵役。三冊目は一作目のモチーフとなる事故で亡くなる老人「香月玄太郎」がアームチェアディテクティブならぬ車椅子探偵として活躍。

 ただ大賞受賞作は、ちょっと誇大広告のような気がします。
ミステリーの題材としてはありふれたものだと思いますが、それを一人称で語らせているところがズルイ。ニ作目もミステリーとしては至極ありきたり。このニ作に共通するのは、むしろ音楽描写の素晴らしさ。文字だけの描写ですので、コミックの「のだめ」とは異なりますが、音楽や演奏描写のリアリティーは共通する部分があると思います。特に「おやすみラフマニノフ」で、音大オケが成長しつつ曲を作り上げていく過程は、正に「のだめ」を連想させます。その意味では、謎解きというより、音楽描写こそが主題であるように感じました。そして、ハンディを背負う岬や下半身不随の玄太郎に時折語らせる“人生訓”が、なかなか鋭く、また良いことを言っています。

 クラシック音楽(+ミステリー)好きが、肩肘張らず、構えずに気楽に読むには良い作品・・・でしょうか。
「ビブリア堂古書店」(TVドラマでは人気が無かったようですが、確かに些か配役のイメージが違うので、1回見て止めてしまいました。少なくとも本の方が魅力的)もそうですが、最近、音楽や文学など或るジャンルの“オタク”的薀蓄を散りばめながら、こうした“軽い”(本格派嗜好の方には軽過ぎる)ミステリー作品が巷に増えているような気がしますね。