カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 前回(第777話)は時間が無く市内観光だけだったお客様の一日お休みの日がちょうど週末だったので、「さて、どこに行こうかなぁ・・・?」。
この時期の夏山は雲が掛かることが多いので、余程天気の良い日でないと信州らしい高原に行っても北アルプスが望めません。従って、街並みや建物を見る方が無難です。そこで、今回は少し足を延ばして(と言っても毎日の通勤先ですが)“信州の鎌倉”塩田平(別所温泉)をご案内することにしました(因みに、昨年は木曽奈良井宿へ)。

 10時過ぎにホテルを出発し、三才山越えのいつもの通勤路から先ず向かった先は、塩田平の“未完成の完成塔”と呼ばれる国の重要文化財の三重塔で有名な前山寺(地元では「ぜんざんじ」とも呼ばれていますが、正式には濁らずに「ぜんさんじ」だそうです)。
前山寺は弘法大師空海が開いたとされ、40以上の末寺を傘下に治めていたという往時を髣髴とさせる参道からの長いアプローチと、塩田平を一望する独鈷山の山懐に建つ堂々たる古刹です。

個人的には、前山寺を含めこれまで3回ほど別所には観光に来ているのですが、こちらに異動になる前に職場の部下から「上田に行ったら絶対食べるべし!」と薦められていたこともあり、今回初めて前山寺名物の「くるみおはぎ」を事前に予約しておきました。このくるみおはぎはご住職の奥さま手作りで、これで商売をされている訳ではないので数に限りがあり、事前に予約が必要というものです(辛党の自分一人なら食べようなどとは絶対に思わないのですが、お客様がスイーツをお好きなので)。      
 拝観料(入山料200円)を払い、先に三重塔やご本堂へのお参りを済ませてから、予約してある旨を告げ、本堂に隣接する庫裏のお座敷にご案内いただきました。
お寺に代々伝わるという名物の“くるみおはぎ”は、クルミのタレを敷いた上におはぎが二つ並べられ、向付(むこうづけ)にシソの巻かれた梅漬けと香の物(味噌漬け)が一緒に供されます(700円)。
甘過ぎず、程良い甘さのクルミダレと、お餅に近いくらいに良く搗(つ)かれたおはぎ。また信州らしいカリカリの梅漬け。辛党の私メですが、こちらのおはぎはしっかりと全部平らげてしまいました。
お聞きすると、通常のおはぎがうるち米ともち米を混ぜて作るのに対し、こちらはもち米だけで搗いたおはぎなのだとか。またクルミも、普通の菓子ぐるみではなく、良く山に自生している実の小さな鬼ぐるみ(一般的な菓子ぐるみに比べ、殻も厚くて硬いので、割るのが大変だと思います)を使っているのだそうです。そのためか、濃厚なのに甘過ぎず上品な感じがするようでした。お客様も絶賛されて、残念ながら(製法から)持ち帰り不能とのことで、代わりに向付にも出された自家製の梅漬け(大きさにより12個程度入って一箱500円)をお土産に買われたほど喜んでくださいました。
「ごゆっくり休んでいってください」というお言葉に甘えて、ちょうど昼時に掛かったためかもしれませんが、二組の先客も居なくなり、我々だけになったお座敷の縁側からは、手入れされた中庭越しに一望する塩田平の眺望も見事で、のんびりと素敵なひと時を過ごすことが出来ました。
 前山寺のくるみおはぎ・・・これ絶品です。
ただ観光でお寺を見るだけではなく、何とも穏やかな“癒し”的時間が流れていきます。前山寺は四季折々の“花の寺”としても有名ですが、これからですと紅葉の季節にでも、今度は家内もおはぎをいただきに連れてきてあげようと思います(提供期間は、春のお彼岸頃より11月末頃までとのこと)。
この日は飛び込みでもお願いすればいただけたようですが、ご住職の奥さまに寄れば、「せっかく来ていただいても、法要等で対応出来ないこともありますので」とのこと。是非事前に確認の上、予約して行かれることをお薦めします。
 その後別所温泉に回り、同じく重文の石造多宝塔の残る常楽寺(後述の北向観音を所有管理)、そして国宝八角三重塔(青木村の旧東山道沿いに建つ「見返りの塔」大宝寺三重塔と共に、大正年間の県下国宝指定第1号)で有名な安楽寺、最後に、嘗ては愛染桂で一世を風靡し、また善光寺だけでは“片参り”とも云われる北向観音(因みに南向きの善光寺と正対)と代表的なお寺を歩いて巡り(各お寺の間が1km弱と、ちょうど良い散策範囲に点在)、鄙びた“信州の鎌倉”塩田平の古刹を堪能いただきました。
何とも落ち着いた佇まいを感じるのは、禅宗のお寺というだけではなく、前山寺、常楽寺、安楽寺とも、本堂が茅葺屋根で造られているせいかもしれません。

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