カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 標高1000mを超える峠道を毎日通勤(文字通り山を上り下り)していると、平地(と言っても我が家は、松本市役所で590mという市中からは50m程高台へ上った標高640m位)とは少し時間のずれた四季を目にすることが出来ます。とりわけ、真冬の凍結路から解放された春の季節は、その移ろいに心も浮き立つような気がします。
    
 里では既に桜のシーズンも終わりましたが、松本からですと、峠道に差し 掛かる稲倉地区や、上田側に下った鹿教湯地区では、2週間近く遅れて桜が開花します。峠の頂上付近は勿論ですが、山影で日当たりの悪い場所では更に遅れての開花になり、お陰で何週間も、或いは一ヶ月近くも所を変えて桜を楽しむことが出来ました。桜の名所のような華やかさはありませんが、数本ずつ地区の学校や民家の周辺などに植えられたソメイヨシノや、お堂の脇の枝垂れ桜など。

「日本人て、本当に桜が好きなんだなぁ・・・」と改めて認識させられるほど、この時期に花が咲いて初めて知る、あちらこちらに点在する桜です。
そうした里の桜が終わっても、人里離れた峠道からは、淡い山桜が山懐にひっそりと白い花を咲かせています。西行始め、古来大和人が愛でた“本来の”桜です。
また、まだ芽吹く前の茶色の山肌に、山桜よりもっと白い樹形がぱっと目に飛び込んで来ると、それはコブシの花だったりします。
 桜だけではなく、晩秋から冬に掛けて単色系だった景色が、春になって急に色鮮やかに感じられるようになります。とりわけ上田側は、白馬の青鬼地区ほどではありませんが、荻窪地区などの集落に向井潤吉画伯の絵を彷彿させるような茅葺屋根の古民家(但し、現在の屋根は全てトタンで覆われています)が結構何軒も残っていて、色とりどりに咲く庭先のレンギョウ、花桃、ユキヤナギ、水仙、芝桜などと相俟って、昔懐かしい風情を漂わせています。特に今は花桃が鮮やかです。
心の原風景とも云える、日本の里山の景色に心和む通勤路です。
(写真は、4月26日の平井寺トンネル付近の桜と5月1日と2日の荻窪と平井寺付近の道路沿いの様子です)
 そして季節は、次第に芽吹きの青葉若葉へと移っていきます。特にこの時期は、信州に多いという落葉松(カラマツ)の芽吹きの清々しさに心洗われる気がします。