カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 三泊四日で初めて訪れた、箱根旅行の最終日。
奥さまは二期目の女性だけの登山教室で、今回は箱根外輪山の明神ヶ岳から明星ヶ岳へと縦走し、夕刻強羅駅で解散とのこと。
そのため夕刻強羅駅で落ち合うことにして、それまで私メは単独行。ただスーツケースなどの荷物があるので、早朝小田原経由で集合場所に向かう奥さまと一緒にバスに乗り、荷物を持って私メは箱根湯本でバスを下車。そこで一旦駅のコインロッカーにスーツケースを預け、私メはまたバスでホテルへ戻り、時間調整の上ホテルをチェックアウト。

 今回もガラスの森ミュージアムから乗り替え無しで便利な観光施設巡りのバスに乗り、箱根駅伝でお馴染の小涌園へ向かいました。ホテルに近かったガラスの森美術館はヴェネチアン・グラスの美術館だそうですが、今回バス停として利用しただけでしたが、入口付近のクリスタルの木々も夜のイルミネーションも含めて鮮やかでしたので(バスを待つ間、係員の方にお許しいただき、正面入り口前で写真を撮らせていただきました)、次回は是非行ってみようと思います。
バスに乗っての途中、箱根美術館は10時の開館を待つ人たちで長蛇の列。この美術館は日本の陶磁器を収蔵している美術館ですが、その展示も然り乍ら、むしろ庭園のモミジの紅葉で人気なのだそうです。
小涌園は今年一月で営業を終え、温泉施設は隣接する温泉テーマパークの様なユネッサンと、宿泊は天悠へ引き継がれています。オッサン一人ではユネッサンへ行ってもしょうがないので、ここで降りたのはユネッサン目的では無く隣接する岡田美術館へ行くためです。
2013年に開館したこの「岡田美術館」。ユニバーサル・エンターテイメントの創業者が収集した膨大な美術品を収蔵展示しています。
ユニバーサル・エンターテイメントと聞くと、個人的には女子駅伝チームが思い浮かびますが、社業はパチンコやパチスロ機器の製造販売。
この美術館の壁面の全面には「風神雷神図屏風」をアレンジした大壁画が描かれていて、TVなどでも何度か紹介されてもいるので、一度観賞したいと思っていました。因みに、一度は見たいと思っている“日本のゴーギャン”「田中一村」展が特別展として9月まで岡田美術館で開催されていたのですが、残念ながら間に合いませんでした。
 岡田美術館の展示は、創業者の岡田氏が収集したという重要文化財指定を含む日本の絵画や、日本と東洋の陶磁器などの膨大な美術品がメイン。
今回は、「美のスターたち」と題した開館5周年記念展が開催中でした。
私設なので止むを得ないとしても、先述のポーラ美術館も含めて、箱根に在る美術館の入館料の高いこと。割引前でポーラ美術館が1800円だったのですが、この岡田美術館はナント2800円。ホテルに割引券があり、また箱根フリーパスでの割引もあって、双方とも200円割引で2600円になりますが、それにしても、その入館料に見合う価値はあるのかと興味津々。
なおポーラ美術館は、ご紹介した通りゆったりとした建物そのものも含めた贅沢な空間と素敵なカフェ、そして自然の森の遊歩道が楽しめ、個人的には入館料以上の満足感がありましたが、果たして岡田美術館や如何に?
余談ながら調べて見ると、国内の美術館の入館料ランキングなる記事があって、特殊なジャンルの作品を収集した私設美術館が上位を占める中で、ポーラ美術館が第10位、日本庭園と横山大観で有名な島根県の足立美術館が第5位の2300円、そしてこの岡田美術館が第4位。因みに第二位は全て名画の陶器製レプリカ(従ってホンモノは一つも無し)を展示する徳島県の大塚国際美術館で3240円なのですが、観賞後の満足度は第一位なのだとか(因みに入館料第一位は、入場者しか見られないハウステンボスの美術館とのことで、入館料=テーマパーク入場券との解釈)。
 さて、岡田美術館に入館して驚くのは、先ず受付で携帯やカメラなど一切持ち込み禁止でロッカーに預けさせられること。しかも更に空港の様なX線のセキュリティーチェックを受けて、初めて入館が許されます。照明が抑えられてブラックで統一された入口は、何だか“成金趣味の高級クラブの入り口風”と言ったら失礼でしょうか?・・・。
展示は、1階が中国磁器・青銅器、韓国陶器、2階は日本陶器・和ガラス、3階に日本絵画、4階は日本・中国・韓国の絵画と陶芸、5階は仏教美術という構成でした。最初じっくり鑑賞していたら、1階フロアの展示室だけで優に1時間を越えてしまい、こりゃイカン!と観賞のスピードアップ。
 最初の展示室に置かれていた重要美術品の銅鐸や、古墳時代の埴輪にナント出土地が記載されていません。そんな胡散臭いモノ(銅鐸)に国の美術品指定はされないので、学術的にはある程度特定されている筈。であれば、説明文に記載するのが筋ではないでしょうか。またどの展示室も照明が暗く、全てとは言いませんが、陶磁器に依っては背面や裏面を見せる必要があるので、黒い材質の展示ケースではなく、後方や底面を鏡張りにした方が良いのでは?という展示品が幾つもありました。
 また重要な展示品には、小型ディスプレイで各国語での説明や特徴などを画面を変えて説明されるようになっていたのですが、これだと録画された映像を見るのと変わらない。せっかく実物が目の前に在るのに、拡大する以外は満足感が低下します。例えば、京都国立博物館の国宝展での「志賀島金印」は底の印字部分は反射鏡、側面の微細な細工は拡大鏡で実物が見られるように展示に工夫がされていました。
 更に、幾つかに区分けされた展示室は番号が付けられているのですが、展示品にはナンバリングがされていない(因みに受付で請求した今回の展示品リストにはNo.1~No.478まで通し番号が付されています)。そのため、見学中に順番が逆順になって、見学者同士がかち合ってスタックしてしまうこともしばしば・・・。チャンと学芸員が何人もおられるでしょうに、館内の展示が如何にも不親切です。
 今回の開館5周年記念展での“美のスターたち”と題する目玉展示は、重要文化財指定の仁清作の香炉、乾山の竜田川を描いた鉢などの陶磁器。そして66年振りに発見されたという歌麿の肉筆画「深川の雪」。しかし、同じく83年振りに発見という若冲の「孔雀鳳凰図」は残念ながら展示期間外で見られず。
個人的に気に入った展示品は、中国春秋時代の青銅器の鼎。浮き出た瑠璃色との緑のカビ(緑青)の偶然の美。また信州松本藩主戸田家所蔵だったという飛青磁、そして景徳鎮の“Peach blue”と呼ばれる「桃花紅瓶」の美しさ。洋画では「セピアの肖像」と題された森本草介の近代画も良かった。
ただ、日本と東洋の陶磁器は見事でしたが、例えばポーラ美術館の印象派、山種の日本画といった様な中心軸がハッキリせず、ただ闇雲にジャンルに関係無く収集された絵画は、収集や展示の時代区分が飛んだりこじ付けだったりして、些か強引な感じがしました。
 「風・刻(風神雷神図)」と題された金屏風風の巨大壁画。
館外の足湯カフェから足湯に浸かって眺められるのですが、一人では・・・と写真を撮って早々に退散し、裏の庭園に。
美術館は、明治期に建てられたという「ホテル開化亭」の跡地に建てられていて、その庭園がそのまま使われています。個人的には、先日立ち寄った仙石原の長安寺の紅葉と羅漢さんの庭園の方がむしろ遥かに見応えがありました。
 入館した入口から感じた違和感。最初に抱いたその印象は、全ての展示を見終わって、館外の巨大壁画や庭園を散策した後も変わることはありませんでした。確かに財力に任せた膨大な収集品に“凄い!”とは思いましたが、最後まで最初に感じた違和感、もっと言えば、「これでもか、これでもか!」というような、何となく漂う“これ見よがし的な胡散臭さ”が観賞後もどうしても拭えませんでした。謂わば、“哲学”が感じられない。もし唯一評価するとすれば、海外に散逸していた日本の美術品を国内に買い戻したことでしょうか・・・。
 ここは、正直もうイイかな・・・。

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