カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 今回はワンコ連れで、特にコユキにとっては初めての慣れない旅行だったので、彼等だけにしないように出来るだけ部屋食にして、結果として夕食での自炊も含めて昼も夜も部屋食で済ませました。
そこで、一点豪華に、伊豆最後の夜は唯一豪華な外食をすることにしました。旅行の一ヶ月前、色々調べて事前に予約して行ったのは、伊豆高原から車で10分ほどの別荘地の中に佇む「坐漁荘」。“座して魚を釣るが如く”というのが(のんびり過ごしていただくという)そのキャッチフレーズ。

 伊豆高原の別荘地の中に佇む「坐漁荘」は、創業50年の和風温泉旅館からスタートし、現在では6000坪という広大な敷地に宿泊棟やヴィラなどもあり、日本料理だけではなくフレンチや鉄板焼きのコースも選べ、まるで別荘の様な広いヴィラなどの客室は僅か32室という高級旅館なのだそうです。
もし泊まれば、一番お安いオフシーズンの平日で、最低でも一泊二食で一人4万円以上だとか。凄いなぁ・・・。2014年になって、台湾に本拠を置くABBAリゾーツ傘下になってリニューアル。
勿論、我々にはお値段が高過ぎて宿泊は出来ませんので、夕食でのコース料理のみ。せっかくの伊豆ですから、新鮮な海の幸に期待して和食での和会席コースをお願いしました。
予約は少し早めの夕刻5時半。伊豆高原から国道135号線を車で下田方面へ15分程度。八幡野の城ヶ崎海岸から続く段丘の別荘地の中に在って、グーグルマップでルートを確認しながら行ったのですが、別荘地内の道が分かりづらく、何度か迷いながらも無事到着しました。

 広大な庭園の中に配置された建物群。食事に拠って会場が異なり、和食は本館の和食処「さくら」。
車寄せに到着すると、スタッフが移動してくれるとのことで任せ、ゲストは玄関で着物の女性スタッフに出迎えられ、所々に中庭がしつらえられた純和風の建物内の回廊の様な廊下を進み、半個室の会食場へと案内してくれます。孟宗竹の竹林や光悦垣か格子の竹垣の中庭もそうですが、廊下の至る処に様々な美術工芸品が飾られていて、多少成金趣味的な趣きも無きにしも非ずではありますが、如何にも外国からの賓客が喜びそうな純和風の雰囲気です。当日も玄関先のロビーに大層賑やかな(≒騒々しい)中国人の団体客がおられましたが(親会社の在る台湾から?)、皆さん浴衣を着ていたのでどうやら宿泊客の様です。リッチだなぁ・・・。
事前に予約済みとはいえ、名入りの献立表がそれぞれの席に添えられていて、会席コースは食前酒の後、先付けに始まり、前菜、椀盛り、造り、焼き物、台の物、留鉢、食事・止椀・香の物、水菓子までの全9品。
 前菜の中の自家製というからすみ。そういえば城ヶ崎海岸には「ぼら納屋」がありましたが、江戸時代に春と秋に海を回遊するボラの大群を見つけるための見張り小屋もあって、昔神田川でボラの大群を見たことがあるのですが、そうした河口に集まるボラとは違って、季節に海を回遊して来るボラは江戸の将軍家に献上する程の美味な高級魚として、伊豆では盛んにボラ漁がおこなわれていたそうです。
コースの中で我々が一番美味しく感じたのは、椀盛りの「黒むつ真丈」。地場の黒むつは本当に柔らかで上品でした。塩味は抑えているのに何とも滋味豊かな味わいで、とりわけ出汁の旨さは出色。これ見よがしの押しつけがましさの無い、この絶品の椀物だけで、この日の料理は満足と云っても決して過言ではないくらいの感動モノでした。
お造りは、まだヒゲが動いている新鮮なイセエビと地魚の盛り合わせ。イセエビは甘く、地魚では特にイシモチがシコシコ、プリプリとした歯応え。
焼き物のノドグロもこれぞ、という程に脂が良く乗っていてとろけそうでした。
炊き立てのじゃこ山椒(京風に云えばちりめん山椒でしょうか)とシメジの釜めし。結構なボリュームでしたが、家内も「明日絶食すればイイかな・・・」と、最後はだし汁でお茶漬け風にして完食。しかも、最後のサツマイモのプリンと果物の別腹のデザートは、いつも通りに私メの分もしっかりとお食べになって、満足、満腹のご様子。
途中、ビールの外に、静岡県下の銘醸蔵の冷酒三種の飲み比べセットを注文。それぞれ焼津「磯自慢」純米吟醸、掛川「開運」純米大吟醸、そして由比「正雪」特別本醸造。それぞれ日本酒度が5、4、5度という辛口の味わいは勿論なのですが、注がれた切子細工のガラスのお猪口が何とも涼やかで、外国のお客さんはさぞ喜ぶだろうと思いました。
同様に、料理は勿論なのですが、盛られている器もまた素晴らしく、また器の盛り付けでも、料理ごとに伊豆らしい椿の花や蕾のついた枝、そしてモミジ、稲穂など、行く秋や、春の訪れが早い伊豆を連想する季節のあしらいもあって、より一層料理を引き立てています。
大袈裟ですが、これまで色々食べてきた中で過去最高の会席料理だったと思います。
 コースの途中で、この日感動したお椀物の美味しさを我々が仲居さんに伝えたからでしょうか、おそらく「我が意を得たり」だったのではないでしょうか。コースの終わりに、席まで総料理長さんがわざわざ挨拶に来られ、その日のコース内容や調理の特徴、例えば伊豆のワサビと信州安曇野のワサビの違いなどを説明してくれました。
地元の食材を積極的に使う“ふじのくに食の都づくり仕事人”として県から表彰されているという料理長さんらしく、この日の昆布〆にした「富士山サーモン」など地場静岡の食材に関しても色々教えてくださいました。
食事中対応してくれた仲居さん始め、スタッフの方々の応対も押しつけがましさも無くて皆さん感じが良く、滞在中実に気持ち良く過ごすことが出来ました。
帰りにロビーで採算をする際も、到着時のロビーのお客さん方の騒々しさをさりげなく詫びる言葉があった由。
確かに値段は高かったけれど、掛かったコスト以上の満足感を十二分に味わうことが出来、その意味では応分のコスパの良さを感じた次第です。

 フム、結婚記念日には二日早かったのですが、偶には(当然ながら偶にしか無理ですが)イイかも・・・。