カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 振り返ると8年前。次女が大学を卒業し成田空港にグランドスタッフとして勤務することになって、成田駅に近いワンルームマンションに住むために亜美から頼まれた電化製品を新宿で買って運んで行った日のこと。
セッティングを終えてから、都内で待っている家内と長女に合流するために二人で成田から電車で都内へ向かっていました。最初は空いていた電車も次第に混んできて、やがて席が一杯になり、途中駅で乗られたオジイさんが目の前を通り過ぎて少し離れたところで立っていました。乗客は、誰も気にも留めません。
席を譲ってあげようか、どうしようか、5メートルも離れているし・・・、と私が躊躇していると、座っていた若い女性がすくと立ってオジイさんの所まで歩いて行って何か話して、どうやら席を譲ってあげたのです。オジイさんはお礼を言って座りました。
 「エライなぁ、若いのに・・・。」
最近の都会の若者も捨てたモンじゃないなぁと感心し、立つ勇気の無かった自らを反省しつたのですが、その立つ勇気の無かった私に対し、すくと立った隣の若い勇気ある女性は・・・次女だったのです。
親としてというより、むしろ勇気が無く「立てなかった人間」として反省しつつ、勇気あるその女性に感心した次第です。まさに、吉野弘の詩「夕焼け」を思い出しました。

 そんな“優しい心の持ち主”が、その後羽田空港勤務となって丸5年。
その間、時にカウンターでの責任者としてお客様対応をする中で、クレーム対応で無理を言われて規定上対応出来ずにお客さんからは文句を言われたり、怒られたり感謝されたりと色々なことがあったようです。時には、悔しくて真夜中に家内に泣きながら電話してきたことも何度かありました。
 そして、昨年度末にはこんなことがあったそうです。
航空会社のカウンターの責任者として勤務していた時、到着便の乗客だったカナダ人のご婦人が機内に忘れモノをしたとカウンターに訴えて来られたそうです。

何でもお母様の形見の指輪が入ったポーチを洗面所に置き忘れたとのこと。すぐに探しに行ったところ、既に機内の洗面所は清掃されてポーチは見当たらなかったため、娘は空港の廃棄物収集所に向かい、カタール航空の到着便から集められたゴミ袋を一人で探そうとする次女の真剣さに、収集所のスタッフの皆さんも一緒に探してくださり、やがてそのポーチがゴミ袋の中から見つかって無事お客様の手許にお届けすることが出来たのだそうです。
後日、大変喜ばれたそのお客様より空港宛に感謝のお手紙が届いて会社の知るところとなり、結果昨年度の羽田空港国際線の空港全体でのCSアワードとして娘が表彰されたのだそうです。どんな業績優秀での表彰よりも、最も嬉しく、そして誇らしく感じられた表彰でした。
全く以って“親の贔屓目”かもしれませんが、他に何の取柄もないのかもしれませんが、親バカで誠に恐縮ながら、本当に他人の痛みの分かる優しい子に育ってくれたということだけで満足でした。
 事情があって、5年間住み慣れた蒲田から横浜へ引っ越すことになり、暫くは羽田空港への直行バスで通ったり、帰りは同僚の方に送ってもらったりもしていましたが、やはり通勤が大変なのと、羽田発はどうしても深夜便となってしまうことから、その後で色々対応していると今までも電車やバスが無くなってしまうことも度々。そのため、お世話になった会社を辞めることになりました。
会社からは有難いことに今迄の勤務ぶりを評価いただき、これまでの様な空港勤務ではなく、日本支店での昼間のオフィス業務への転向までオファーしていただいたそうですが、本人はここで区切りとしたいとのこと。
 最後に、会社からだけではなく空港全体からも褒めていただき、職場の上司の方や同僚の皆さんからも惜しまれて、最終勤務の日を迎えることが出来たそうです。
これまで色々な方々にお世話になったことでしょう。助けても頂いたことでしょう。
無事最後まで勤務し、立つ鳥ではありませんが、惜しまれての退職に親としても安堵すると共に、色々辛いこともあった中で、最後まで影日向無く勤め上げたことを、誠に親バカではありますが、心から労いたいと思いました。本当にお疲れさま!

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