カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 以前長女を長野駅に送って行った時に、新幹線に乗車する娘と別れた後は家に帰るだけの我々ですので、駅の東口駐車場に車を停めていたこともあり、昼時間を過ぎていたのでそのまま駅で遅めの昼食を食べて行くことに。
北陸新幹線延伸に合わせてか、長野駅も建て替えられて随分キレイになりました。そこで、その新しい駅ビルMIDORI内にある飲食店街で食べて行くことにしました。

 飲食店街の中には、駒ケ根のソースかつ丼の有名店「明治亭」もあって心惹かれましたが、家内が拒否。結局、無難な信州蕎麦になりました。
フロアには、以前長野バスターミナルの地下にあった「草笛」と、松本にもある「みよ田」が入っていました。
「草笛」は昔県庁への会議に来た時に一度食べたことがあり、大盛りを頼もうとしたら店の方から「初めてなら先ずは普通盛りを食べてから」と窘められた程ボリュームは半端無いのですが、如何せん余りに不味い。つなぎの小麦粉が多過ぎて蕎麦の味が全くしないのです。多分六四(下手をするとそれ以下)ではないかと思える程で、「これは蕎麦じゃない、うどんだろっ!」。
家内も子供たちの学校のイベントでママ友たちと長野に行った時に、地元の有名店と薦められて皆で食べたそうですが、やはり「二度と行かない」との評価。因みに、定年前の上田勤務の時代に、「草笛」は上田にも支店がある(本店は小諸)のですが、一度も入ったことはありません。
本社勤めの頃に月一で長野市には会議で来ていたことがあり、駅周辺で何度か蕎麦を昼食時に食べたのですが一度として満足したことが無く(結局、長野でのランチの楽しみは「ふくや」の中華そば一択!)、当時長野市に単身赴任されていた先輩に「長野市には美味しいそば屋が無い!」と言ったら、「そんなことは無い!」と紹介されたのが権堂に在る「そば処かんだた」だったのですが、日帰の外出ベースでは権堂には行く機会は無いので残念ながら一度も行けずに終わりました(従って、長野駅と県庁界隈でしか食べたことはありません)。
仕事ではなく家族と来た時に食べた中では、長野市では蕎麦で知られる戸隠でも超有名な行列店も(接客は抜群でしたが肝心の)蕎麦は全然美味しくはなく、個人的にこれまで長野市で唯一美味しいと思ったのは善光寺参道の十割蕎麦「大善」だけでした。

後で知ったのは、島根の出雲蕎麦(注2)、岩手のわんこ蕎麦と共に「日本三大蕎麦」に数えられる戸隠蕎麦は、本来高地では蕎麦粉よりも小麦粉の方が貴重で、宿坊等で客人をもてなす際にはその高価な小麦粉を多くする方が“おもてなし”だったとのこと。そのため本来の戸隠蕎麦は小麦粉三割の七三が基本なのだと知り、それだったらと得心した次第です。ただ現在の戸隠の蕎麦屋が例えスタイルは皆「ぼっち盛り」(注1)ではあっても、全て七三ではないと思いますが、しかし今まで数回食べた戸隠蕎麦は私の好みではありませんでした。
 前置きが些か長くなりましたが、従って長野駅前にも戸隠蕎麦の店や他の蕎麦店もありますし、駅ビル内には地元の有名店「草笛」もあって、「そば切り」の様子が外からも見えるので旅行客の皆さんが何人も眺めていましたが、これまで食べた経験上どこも好みに非ずで、結局選んだのは「みよ田」でした。
「みよ田」は長野市に本社のある日穀製粉の直営店です。松本にも「みよ田」はありますが、王滝グループが経営権を取得して名前はそのままで営業していますが、今では日穀製粉とは無関係。元々寿司や海鮮が主体だった王滝はそこでノウハウを収得したのか、自社製粉工場を持って「小木曽製粉」というセルフサービスでコスパの良い蕎麦店も展開しています(コスト優先のため、例えば手打ちではなく機械打ち)。また「虎ノ門ヒルズ」にも「みよ田」を出店しています(前に虎ノ門のマンションに住んでいた娘に依れば、残念ながら客の入りは余り良くないのではとのこと)。
昔の日穀製粉時代の松本の「みよ田」も何度か食べていますが、蕎麦店には珍しく夜も営業しており、一品もあるので県外からのお客さんと飲むにも便利ですし、〆の蕎麦もまずまずでした。王滝の経営になった今は支店もあり、どちらも観光客の行列店になっています。
そのため元々の日穀製粉なら安心できると思ったのですが、あに図らんやで蕎麦の味がしない・・・繋ぎが多過ぎるのです。これは二八ではなく、七三以下です。値段はリーズナブルですが、蕎麦としての味は全然美味しくない!少なくとも同じ日穀製粉の直営だった頃の松本の「みよ田」の蕎麦は、こんなに酷くは無かった筈・・・。値段はリーズナブルでしたが、原価が上がっているのならむしろ質を落とさず値段を上げた方が良い筈なのに、これじゃ食べてもガッカリするだけではないでしょうか!?

 蕎麦屋がひしめく本場戸隠まで行けば良いのかもしれませんが、県都の玄関口である長野駅の蕎麦屋の二店がこんな蕎麦では、“信州蕎麦”の看板が泣くし“信州蕎麦”の名折れでしかない!・・・と心配になりました。
 「蕎麦なんか食べなきゃ良かったネ・・・」(明治亭がありましたから・・・)
と、ガッカリして駐車場に向かうと、長野駅東口の一階に「八割蕎麦 榑木川」なる蕎麦店がありました。
 「えっ、榑木川?榑木野じゃないの?」
松本市内に何店舗か構える「榑木野」をもじった様な店名に些か胡散臭さを感じつつも、もし本当に「八割」ならこっちの方が良かったかも・・・??
【注記1】
「ぼっち盛り」とは、茹でて冷水に晒した蕎麦の水を切らず、根曲り竹で編んだ円形のざるに一口大ずつ束状に丸く束ねて5~6束並べる盛り方。“ひとくくり”のことを戸隠では“ぼっち”と言う。また、漢字で“ぼっち”は法師と書くので、一人で山に籠る修験者が語源ともとされる“ひとりぼっち”という言葉もまた、戸隠山は修験道の場でもあることから“ぼっち盛り”の語源ではないかとされる。
【注記2】
島根の出雲蕎麦は、島根松江藩の明治維新まで続く松平家の藩祖となった松平直正が、信州松本藩からの国替えの際に松本から蕎麦職人を連れて行ったのがそのルーツとされる。謂わば信州蕎麦が出雲蕎麦のルーツ。但しそのスタイルは「もり」や「かけ」ではなく、漆器の器(割子)に個別に盛られた蕎麦の方に色々な薬味を載せてつゆを掛けて食べる割子そばが主体で、三段重ねが一般的。
(今回掲載した写真は、以前食べた戸隠のボッチ盛りと出雲の割子そばです)