カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 正月三が日も過ぎ、一応松の内ではあったのですが、婿殿の年末年始の病院勤務明けを待って次女一家が正月の帰省。一方、年末からNYから婿殿がコロナ禍の規制解除で漸く来日が叶ったので、二人で白馬のスキー場で年越しをしていた長女夫婦も合流。少し遅めの我が家の新年会を美ヶ原温泉の“鄙の宿”「金宇館」で行いました。
2020年の改装オープン後は、それまで我が家でも法事などで何度も利用させていただいた会食受け入れを止め、宿泊対応のみの対応とした金宇館。従って、我々地元民が金宇館の食事を楽しむためには宿泊するしかありません。また改装後、より決め細やかな対応のためか、それまではご家族だけでの対応でしたが、スタッフとして従業員の方々を雇われたこともあってか、週一の休業日を設定。そのため今回はその休業日と重なってしまい、残念ながら連泊出来ずに僅か一泊だけの宿泊になったのですが、たった一泊であっても美ヶ原温泉の源泉の一つである御母家の湯と金宇館の料理を皆で存分に楽しむことが出来ました。そして結論めいて言わせて貰うならば、その理由は普段より“ゆっくり流れる” 金宇館の時間にある様に思います。

 金宇館は僅か9室だけのこじんまりとした料理旅館ですが、少ないからこそ細部にまで行き届く様な細やかな気配りや目配りがされていて、毎回心癒される時間を過ごすことが出来ます。
今回もそれぞれ一家に一部屋ずつ三部屋を予約してあったので、母屋の二階は我が家の家族だけの滞在(子供連れ可の部屋は本館二階の一部屋だけです)。そのため食事も一階のダイニングではなく、今回もお陰様で二階の8名用の個室ダイニングを我々だけで使わせていただけたので、もし孫娘が食事中に泣いても周囲を気にせず食事をすることが出来ました。

 
チェックイン時間に合わせ、先に松本駅でピックアップした長女夫婦を宿に送り届け、家内の運転する車で遅れて来る次女一家を独りロビーで待ちます。相変わらずの静謐感漂う凛とした佇まいの館内で感じるのは、改装後に初めて宿泊した昨年の印象(第1732&1733話)と同じ。その時に記した内容は・・・、
『(略)さり気なく置かれた野の花の凛とした一輪挿しと小さな彫刻でした。
後で玄関ロビーに置かれた冊子で分かったのは、その彫刻は沢田英男という彫刻家の小さな木彫りの像。殆どがのっぺらぼうで、円空よりも素朴で顔の無い僅か20㎝足らずの小さな像なのですが、静かな祈りにも似た敬虔さを醸し出しているのです。見ていると、汚れを削ぎ落したようなその静謐さに、思わずこうべを垂れずにはおられない様な、そんな気さえして来ます。東京芸大を出てドイツで修行され、彫刻家としての資格(マイスター?)を取得されたとありましたが、その彫られた像は修行僧にも似て、巡礼者か、或いは聖なる修道士か・・・(後で知ったのは、4代目のご主人自身が沢田英男ファンなのだそうです)。
清楚な一輪挿しと共に、館内に“静けさ”を作り出すための小道具として置かれた沢田英男作品。
「金宇館」は騒がしい団体客を受け入れる様な大きな旅館ではありませんが、僅か9組のカップルや家族連れであっても、館内では自然と囁くように声を落としてしまう・・・あくまで勝手な個人的想像ではあるのですが、そんな行動を誘う様な見事な演出です。(略)』。

 ロビーに独り座っていると、季節の花の投げ入れや小さな彫刻に、何だか深呼吸をしたくなるような清々しさを感じます。前回、昨年の滞在は初夏だった故に気が付きませんでしたが、石敷きの小さなギャラリーを兼ねた玄関ロビーは床暖房で暖か。そして不思議なのは、スタッフの方の存在を感じないこと。なのに、何か気になることがあるとすぐに「どうかされましたか?」とさっと脇でサポートしてくれる様な、そんなさり気さ・・・。
小さいからこそ目が届くにしても、不思議な落ち着きと静けさに日頃の喧騒を忘れて、少々大袈裟に言うならば、森の中に佇む静かな湖の様に心の中のざわざわとした波紋が消えて次第に穏やかになっていく・・・様な。
 無事全員のチェックインが済み、私メだけは一旦家に戻り、ワンコたちの食事の面倒を見てから彼らに留守番を頼み、また宿に戻って内風呂「御母家の湯」へ。湯小屋”と呼ぶ浴室棟“として別棟になった総檜造りのお風呂。前回も書きましたが、改装で一番良くなったのがお風呂です。因みに、金宇館の改装工事を請け負われたのが、以前の一戸建ての我が家と同じ地元の滝沢工務店さんなので、これも何かの縁と勝手に思っています。
旅館創業時からの中庭同様に、今では入手が難しい地元の山辺石を使った山肌を模した景観を望む半露天の大浴場(と言っても僅か9部屋の旅館故、それ程湯舟は大きくありませんが)の他にも貸切になる家族風呂もあり、15:00~翌日10:00という、チェックイン後から翌日11時のチェックアウト近くまで深夜も含めずっと入浴が可能。前回もそうでしたが、何故かいつ行っても誰も入浴していないので、一人なら十分以上の大きさです。源泉「御母家の湯」の泉質はアルカリ性単純温泉とか。41℃~42℃くらいか、個人的に好みの少し熱めに感じる温泉が気持ちイイ。
そこで、私メは翌朝もワンコの食事の準備で家に戻らないといけなかったので、早朝4時半から一時間、(当然ですが)独りでお風呂を独占させていただきました。この時は朝5時前から お風呂に入る人なんぞいる訳も無いので写真を撮らせて頂きましたが、冬至を過ぎたとはいえまだ真っ暗でした。
 さて、話を戻し前日夕刻の風呂の後。部屋に戻る前に、この日も城下工業製Sound Warriorの真空アンプと天井に吊り下げられたSonihouseの多面体の無指向性スピーカーSightからJazzが流れるラウンジで、セルフサービスのコーヒーマシンで淹れた丸山珈琲を飲みながら、中庭を眺めつつ暫し休憩。次は夕方6時から、金宇館で一番楽しみな夕食な時間です。