カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 この日のお目当ては、箱根ではなく小田原です。
箱根から小田原へは道がすいていれば30分ちょっと。箱根湯本を抜けるまでは、正月のTVで視るあの箱根駅伝の山登りと山下りのコースなので、カーブが連続する山道が車で混んでいると、特に道幅が狭い宮ノ下や湯本の温泉街や商店街でもし道端に停車している車などがいたりする場合は、箱根は観光にも重宝する路線バスの本数が非常に多いことも手伝って、すれ違いが出来ずに所々で渋滞が発生して余計時間が掛かってしまうのですが、それでも小一時間足らずで小田原漁港へ行くことが出来した。

 日本三大深湾の一つである相模湾に面する小田原漁港。JR早川駅からも歩いてもすぐで、早川漁港とも呼ばれています。
相模湾は水深1500mで、アジやシラス、そして伊豆半島の東側の下田や稲取に代表されるキンメダイが有名ですが、このキンメダイは水深200mから800mという深い所に棲むれっきとした深海魚です。
因みに三大深湾の他二つは、伊豆半島を挟んだ反対側の駿河湾と日本海側の富山湾ですが、水深は駿河湾が2500mと一番深いこともあって、沼津や西伊豆では深海に生息するタカアシガニや色々な深海魚が名物というのも納得です。そして“天然のいけす”と呼ばれ、氷見ブリや白エビ、ホタルイカで知られる富山湾は水深1200mとのこと。三大深湾のどの湾も、それぞれに魚の宝庫です。
 5年前、2020年に初めて小田原漁港に行った時は、漁港の無料駐車場に停めて、既に早朝のセリの終った魚市場の2階にある行列店の「魚市場食堂」で食べたのですが(第1563話)、ネットでの評判程の感激が我々は無かったので、二度目となる2021年は小田原漁港仲卸「やまや水産」直営という漁港隣の地魚専門食堂「めし家やまや」へ(第1653話)。
この「やまや」はL字型のカウンター席のみ10席ちょっとの本当に狭い店なのですが、若い店主のお嬢さん始め、女性中心のスタッフの働きぶりがきびきびしていて実に気持ちが良く、そして何よりここで食べた10数種類の地魚が載った“海鮮どど丼”が新鮮プリプリで絶品だったので、その翌年も「やまや」へ向かったのですが、その日はナント「本日臨時休業」の貼紙。
そのため止む無く他店を探すことにしたのですが、同じビル「小田原水産会館」の一角にある鰺専門店「大原」(アジフライの評判店の由)は大行列で、一時間待ちとのことで諦め。すると同じビルの奥に在った「港のごはんやさん」という食堂(第1726話)が運良く席が空いていたので入店。こちらは朝から営業されていて、早朝のセリが終わった漁港関係者の方々に人気のお店とか。ですので、必ずしも観光客相手ではない食堂の様でした(皆さん海鮮ではなく、カレーとかトンカツとか“普通”の定食を食べていました)が、そこはさすがに漁港の店で、我々が頼んだシラス丼とアジフライのセットも本当に美味しかったのですが、一昨年は二年越しでしたので念願の「やまや」の海鮮どど丼を頂きました。
 そして昨年は予定していた日は箱根が大雨で、あまりの土砂降りでホテルから出るに出られずに泣く泣く諦めたので、今年もやはり二年ぶりのリベンジで、迷うことなく「めし家やまや」を目指すことにした次第。
そこで今回は早めにホテルを出発し、「やまや」に到着したのが11時の営業開始30分前の10:30でした。
店頭に置かれた順番表に名前を記入すると、ナント3番目。先客はお一人様のお客さんだったので我々が3人目と4人目ということで、この日が平日だったということもあるかもしれませんが、これなら有難いことにL字型のカウンターは10席ちょっとですが(全12席だったか?)一巡目で食べることが出来ます。
11時の開店時間になって暖簾が掛けられるとリスト記載順に名前が呼ばれ、右側のカウンター席から順に詰めて着席し、その順番通りにオーダーもしていきます。
勿論我々のチョイスは、昨年は箱根が大雨でホテルから一歩も出られず諦めたので、今回も夢に見た・・・我々イチオシの「海鮮どど丼」とアジフライのサービスセット(税抜き2200円)一択です。
最初のお二人は常連さんなのか、煮魚定食やブリ丼を注文されていたので、この日の「どど丼」は我々が最初の注文で、最初の方々の注文の調理が終わってから我々のどど丼用の刺身をそれぞれの柵から一切れずつ切っていくので、提供されるまでにはそれなりに時間が掛かります。でもカウンターなので、一人で刺身を切る大将(まだ若いお嬢さんです)やフライや小鉢汁物を担当する他のスタッフのきびきびした仕事ぶりが眺められるので、待つのも“然程”飽きません(と言うのも、お隣のグループは、待っている間に昼間からビールやサワーを何杯も注文されていて、帰りに奥さまが箱根の山道を運転するのは絶対にイヤだというので、飲めない私メは何とも羨ましくて、「早く“どど丼”来ないかなぁ・・・」)。
この日の“海鮮どど丼”に盛られた地魚10数種類を、今回もマグロのほほ肉(写真ではワサビの左側)から始まって、時計回りにヒラメ、ホウボウ、タイ、アジなど順番に店長さんが説明してくれるのですが、やはり残念ながら全部は覚え切れません。
どの地魚も新鮮でプリプリで、夫婦共々大好きなヒラメを始めどのネタも本当に新鮮で美味しいのですが、中でも何種類もあった鯛の中の“〇〇ダイ”(“石鯛”だったか“花鯛”だったか・・・聞いても毎度覚えられず)と地物のアジは、それこそプッリプリでコッリコリと本当に新鮮で身が締まっていてまさに絶品!でした。こんなアジが食べられただけで本当に満足です。
それにしても、さすがは“日本三大深海”相模湾の地魚です。その十数種類の地魚の中の奥さまの苦手な光り物はいつも通りに私が頂戴するのですが、この日のアジは実際に臭みも全く無くて本当に美味しかったので、「騙されたと思って食べてみたら!?」と家内にススメると、光り物が苦手な奥さまも、
 「あっ、美味しい!これなら食べられる・・・」
と、生まれて初めて美味しく感じたそうです(これまでで、家内が苦手というネタを食べられたのは、今回のアジと以前南紀白浜で食べたモチガツオだけではないでしょうか)。
そしてサービスセットに二枚付くアジフライ。メインではないので多少小振りではあるのですが、タルタルソースで(好みでカウンターのトンカツソースでも)戴くのですが、低温の油でじっくり揚げられたせいか、サックサクでふっわふわ。やはり地物のアジの鮮度と美味しさは、“海無し県”の山国信州人からすると本当に羨ましくて溜め息が出る程で、近年いくら流通が発達したとは言っても、同じアジとは思えぬ程の全く以て“別物”でした。
“海鮮どど丼”のご飯は酢飯で、普通盛りか小盛か事前に聞いてくれるので、この日は二人共普通盛りにしたのですが、さすがに家内は残さず食べるのに必死で、「もう今日は夕ご飯は要らない!」と言う程に満腹になった由。
今回も本当に満足満腹の、念願だった「めし家やまや」の“海鮮どど丼”とアジフライでした。
 食べ終わってから、BBQ用の牛肉は「相原精肉店」でもう買ってあるので、すぐ近くの青果店・鮮魚店・土産物店・飲食店などが集まっている「小田原さかなセンター」の「海鮮BBQ」の店でイカやイイダコなどの海鮮串と、「まぐろや」で生でも食べられるというマグロのカマをBBQ用に購入して、発泡スチロールの箱に保冷材も入れてしっかり梱包してもらって持ち帰りました。
余談ですが、この発泡スチロールの箱は、帰る前に次女の家様に購入した「相原精肉店」のローストビーフとミートローフを入れて(松本までは、お土産に購入した場合の干物や蒲鉾用にちゃんと大きな保冷バッグを持参して来ています)、松本からクール便で送るのにちょうど良い大きさで役立ちました。
 小田原漁港からの帰りに、奥さまが今回の旅行に持って来る本を忘れたというので、小田原駅の駅ビル「ラスカ小田原」の本屋さんで代わりの本を購入。そして隣接する「ミナカ小田原」の喫茶店で少し休憩してから箱根へ戻りました。
この「ミナカ小田原」は、旧小田原宿をイメージしたという「小田原新城下町」からなる商業施設だそうですが、木曽の奈良井宿や妻籠宿の様な文化的価値は全く無いとしても、箱型の近代的なビルを建てるよりも、城下町としての再生化にはむしろ似つかわしくて、観光客の集客効果もある商業施設だと思います。
ですので、現在松本はパルコ撤退や地場のデパートの閉館などに伴い駅周辺の空洞化対策が叫ばれていますが、同じ城下町であるこの小田原の「ミナカ小田原」や3年前に行った彦根で、同様に江戸時代の城下町をイメージしたという白壁と黒格子の町屋風に統一された街並「キャッスルロード」などを見倣って、単純に商業施設を誘致するのではなく、またお金をそれ程掛けずとも、縄手通りの様な江戸時代の長屋風でも良いので、松本城を活かす取り組み、城下町らしさを持った活性化に拠って、松本駅から松本城までの回遊が楽しめる様な“お城を中心とする城下町づくり”の方が好ましいのでないかと感じた次第です。