カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 6月9日に行われた、音文会員であるハーモニーメイト鑑賞バスツアー(以下、感動のため些か長文になりますが、何卒ご容赦を)。
2013年は大ホールが4月まで改修工事で使えなかったこともあり、今年は特別に年2回実施とか。
2月に実施された前回の「インバル=都響マーラー・ツィクルスⅤ」が聴きたくて初めて参加(第707話参照)し、味を占めたもの。何しろ、ただバスに乗っているだけで、都会でしか聴けないコンサートが聴けるのですから、自分たちで行くことを思えば正に天国(極楽?)です。
 今回は、マチネーでのフィリップ・ヘレヴェッへ指揮シャンゼリゼ管弦楽団とコレギウム・ヴォカーレ2013年日本公演での、モーツァルトの“ジュピター”と“レクイエム”の組み合わせ。近年富みに評価を高めている古楽アンサンブルの、これまたクラシックファン垂涎のプログラムでしょうか。会場は都内ではなく、珍しく所沢市民文化センター ミューズ・アークホール。
ツアーは毎回希望者抽選ですので、くじ運の全く無い我が家としては、今回も良く当選したものと感謝(しかもバスは満席とか)。また、“モツレク”は3月末に高校音楽部のOB演奏会(第728話)で聴いたばかりですが、(オケも含めたアマチュアの演奏会としては出色でしたが、そうは言ってもOBの一員としてはヒヤヒヤで、当然ですが)今回は娘も歌わないので、安心してモーツアルトの世界に浸れます。またジュピターは、先月ト短調を聴いたばかりですので、ここで最後の2曲を連続して聴くことになり、同じ室内楽団でも今回は古楽器ですので、奏法や響きの違いなど興味深いコンサートです。

 当日は朝7時45分に音文に集合し、中央道から圏央道経由で所沢へ。
車中、参加者の自己紹介や事務局からの事前レクチャーなどで、あっという間に到着。音文事務局の説明によれば、今回は参加人員が集まらず、ハーモニーメイトの役員等に声を掛けて強制参加(自己負担)で漸く確保したのだとか。くじ運の無い筈の我が家が連続“当選”した理由がそれでハッキリしたものの、名声を高めているとはいえ新しい演奏団体のためか、はたまた声楽曲は人気が無いのか、合唱ファンとしては些か腑に落ちません。ただ、参加者の中には高校時代の音楽の先生もおられ、また事務所でのチケット購入時に時々音楽談義をする制作ディレクターの方が高校の5期先輩と分かりました。

 先に所沢駅周辺で各自昼食を済ませ、またバスでミューズ・アークホールへ。こちらは、日本最初(明治44年)の飛行場だったという広大な所沢航空記念公園の中にある1993年設立の施設で、両脇に3階席までのバルコニー席を設けたシューボックス型の大ホールは、天井が高くステージ後方にも座席を配し、日本最大級というパイプオルガンを備えた2002席の堂々たるホールです。公園の緑に囲まれて、ホール入口にも木が植えられて雰囲気もあり、あの「のだめ」のロケにも使われたホールなのだとか。奥様は、「そう言えば見たことあるぅ!」とのことでしたが、私メは全く記憶にございません。ただ、コンサートラインアップがこの規模からするとチョッピリ寂しげで、こんな良いホールがあるのに勿体無い。この日も残念ながらバルコニーやステージ後方には空席も目立ち、都会でも満席にならないようです。魅力的な演奏会だと思うのですが・・・。

 前半にジュピター、休憩を挟んだ後半にレクイエムというプログラム。古楽器オーケストラ(2管編成)で古典派の曲を生で聴くのは初めて。学生時代のLPに始まり、モダンオーケストラを聴き慣れた耳には、ピリオド奏法でのモーツアルトは何となくあっさりとしていて、最初違和感がありましたが、指揮棒を持たないヘレヴェッヘさんの指揮は、メリハリと力強さもありながら指揮振りが大変柔らかく、特に第4楽章は堂々たる演奏。ただ、最初の音出しで、ステージ上に音が篭った(拡散して響いて来ない)ように感じたのは、後方にもステージがあるホールのせいか、古楽器のためか、はたまた私の耳のせいかは分かりませんでした。ツアー参加者の座席は1階中央部。
 休憩を挟んで、モーツアルトのレクイエム(ジェスマイヤー版)。独唱陣はオケの後ろで、合唱団は女声が前列で男声が後列という並びで各パート8人ずつの32名。さすがプロとはいえ、その声量は人数を感じさせません。テンポは速め。
お馴染みのバセットホルンとファゴットの序奏に始まり、“♪Requiem aeternam”と合唱が入り、やがて“♪Te decet hymus Deus in Sion”とソプラノ独唱が・・・。
“Dies Irae(怒りの日)”で鳥肌が立ち、“Lacrimosa(涙の日)”で涙が溢れ出し、“Domine Jesu”では鼻水が止まらなくなり、やがて「あぁ、“Sanctus”だ。もう終っちゃう」と溜息をつき・・・。
メリハリがある指揮に統率されて、天井から降り注ぐような素晴らしい合唱でした。今更ながら、『人間の声は、最高の楽器である』と感じ入ります。また韓国出身のスンハエ・イムさんの、オペラではどうかは素人には分かりませんが、宗教曲やオラトリオには相応しい透明感溢れたソプラノ・ソロはとりわけ見事。そして、全体に凛としつつも“温かな”レクイエムでした。
何度ものカーテンコール(とりわけ合唱団への大きな拍手)が繰り返され、やがて、思いがけず(するならこれしかない!)、最初の一音で分かったアヴェ・ヴェルム・コルプスが、独唱陣も合唱に加わってアンコールに演奏されたのは望外の喜び(学生時代の定演で、フォーレのレクイエムの後でアンコールに歌った思い出の曲)。静謐な演奏に、また視界が曇ります。
最後にオケの皆さんが全員でお辞儀をして立ち去る間も拍手が鳴り止まず、誰も居なくなった後も消え入らぬ拍手に応えて、ヘレヴェッヘさんが最後にステージに登場し、漸くお開きとなりました。
来日公演ということもあり、最初に登場する時からの歓迎の拍手に始まり、カーテンコールでの拍手も含め、本当に暖かな所沢の聴衆の皆さんであり、遠く松本から同席出来たことを幸せに感じました。(但し、アンコールが最後消え入る中で、指揮者の手が下りる前に、余韻をぶち壊すような一人の聴衆のフライングの拍手はいただけませんでしたが)。ロビーでフォーレのレクイエムのCDを買って、ヘレヴェッヘさんのサインを貰おうかと思いましたが、考えてみれば団体行動。
 終了後全員点呼し、ホール前で恒例の集合写真を撮り、バスの駐車場へ行くと、ナント演奏を終えたオケと合唱団の方々も隣のバス3台へ乗り込むところ。演奏への賛辞と感動を身振り手振りで伝えると、団員の皆さんも車中から両手を合わせた感謝のポーズで応えてくれました。彼らのバスが先に出発するまで、お互いに手を振りながら名残を惜しみました。彼らは、翌日の東京文化会館での最終公演に向かいます。どなたか、「このまま残って、明日も聴きたーい!」。同感です。
 感動的な演奏会から松本へ向かう車中、何故か“Domine Jesu”のメロディーが頭の中でずっと鳴り響いていました。
また、音文事務局の制作ディレクターの方から、今回のバスツアーも東京文化会館(ジュピターではなく38番プラハ)だとS席1万3千円なのが、郊外の所沢なので9千円(しかも団体割引あり)という紹介に始まり、座席数僅か700席の音文の少ない予算(海外の名の知れたオケを呼ぶと一回で軽く吹き飛んでしまう程度の年間予算とのこと)をやり繰りしながら、ハーモニーホールらしい特徴あるプログラムを企画するご苦労(例えば、今回の団体を呼ぶには、「仮に同じ予算としても、音文の座席数だとチケットは3倍の3万円になりますが、皆さん来ていただけますか?」との、聞けば当然のご説明に、大変だなぁ・・・)や裏話を伺いながら、あっという間に音文へ到着。スタッフの方々への感謝と労いと、併せて次回の再会を約束しながら、皆さん名残惜しそうにそれぞれの家路へと向かわれました。
「この前のマーラーより感動した!」とは奥様。「へぇー、そうなんだ!」。
結婚直後、音文でのモーツアルテウム管で居眠りされていた方と同一人物とは思えません。でも確かに、心温まる本当に素晴らしい演奏会でした。
(今回含め、最近ちょっと散財したので、暫くコンサートはお休みにします)