カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 エル・システマが育んだ若き“天才指揮者”と云われ、今や時代の寵児ともなったグスターボ・ドゥダメルが振るウィーン・フィル2014来日公演。
殆ど即日完売だった筈ですが、何と9月27日サントリーホールでのマチネコンサートを、上の娘がプレゼントしてくれました。今回も恒例で、「誕生日、結婚記念日、お中元・お歳暮、ぜ~んぶまとめて!」とのこと。
「でも、良い席じゃないからネ・・・」
「いえ、いえ、VPOが聴けるだけで満足です。」

 9月27日は、今回の「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2014」の最終日。全て“ロシア五人組”のリムスキー=コルサコフに関連した作品。
「ロシアの復活祭序曲」に始まり、ムソグルスキー(リムスキー=コルサコフ版)「はげ山の一夜」、休憩後に「シェエラザード」。ラテン系指揮者に近代ロシアものという、VPOにしては珍しいプログラムでしょうか。
席は、ヴィンヤード型ホールのステージ向かって左手の2LAの何と最前列。オーケストラの面々が手に取るように見え、譜面台に置かれたスコアも読み取れそうな程の近さ。音響的にはともかく、生で“視る”には願っても無い席でした。
さすがにウィーン・フィルともなると、開演前のロビーも客席も華やいだ雰囲気です。娘によれば、この日はオーストリア、ベネズエラ両国駐日大使ご夫妻もご臨席とのこと。
 20年ちょっと前に、ムーティの指揮でウィーン国立歌劇場の管弦楽団としては聴いたことはありますが、VPOとしての生演奏は初めてです。
「あぁ、これがウィーン・フィルの生音か・・・」
その何とも言えぬほどに柔らかな管楽器。そしてビロードのような艶やかな弦の響き。平面的にみれば、2nd Vn,の最後列ともいえる、2階席最前列の席という場所柄、間接音よりも直接音で、目の前全てが音に溢れ、音の洪水に包まれているような感じです。
今回のパンフレットの団からの挨拶に、世代交代の時期とあり、確かに思いの外若手の団員の方も多かったのですが、これがウィーン・フィルの音、伝統というべき響きなのでしょう。そして、各プルトの譜面台に置かれた黄ばんだ楽譜からも、おそらく世界でこのオケだけが持つであろう歴史と伝統が感じられます。
それにしても、えも言われぬ管楽器の柔らかさとまるでビロードのような弦の響きに、うっとりと夢心地・・・。打楽器も上手いなぁ!
何回か管楽器に不安定な箇所もありましたが、そんな些細なことはどうでも良いと思わせる、至福の時間が流れていきます。

 しなやかで、大河のようなドゥダメルの指揮。33歳という若手ながら決して派手な動きではなく、音楽を創ることが何とも楽しくてたまらないというような、本当に嬉しそうに、そして豊かな表情での指揮振り。オケとの一体感も感じられましした。
特に、シェエラザードは官能的でうっとりするような素晴らしい演奏でした。しかし決して甘過ぎず、時に静謐ささえ感じられたヴァイオリンソロは、この日のコンサートマスターを務めたシュトイデさん。確かもうじき定年を迎えられるという(数ヶ月前に日経「私の履歴書」を執筆)、ウィーン・フィルの“顔”キュッヘルさんがトップサイドでサポート役。

 シェラザードの最終楽章。凛としたソロヴァイオリンのハイトーンで最後消え入るようなフィナーレに、十分に余韻を残してからタクトが降ろされると、静かにやがてブラヴォーの歓声と共に盛大な拍手でホールが包まれました。
何度かのカーテンコールに応えた後のアンコールには、これぞウィーン!十八番のワルツから、ヨハン・シュトラウスⅡ世の「エジプト行進曲」。途中、ドゥダメルも指揮をしながら楽しそうに団員の人たちと一緒に合唱に加わっていました(オーケストラへのアンコール曲の合図に、ドゥダメルが「マーチ!」と言ったのが聞こえたので、てっきり“ラデツキー”だと思ったら、勘違い)。
何度もカーテンコールが繰り返され、最後に団員の皆さんが袖に下がった後で、スタンディングオベーションでの鳴り止まぬ拍手に応えて、ドゥダメルがもう一度出て来てくれてのお開きとなりました。

 「しかし、やっぱりイイものは(高くても)イイなぁ!」
・・・と、今まで聞いた演奏会が暫し霞んでしまう程に、何とも当たり前の感想が浮かんで来ます(うーん、でもなぁ・・・。日本のオケだって・・・)。
いつまで経っても余韻が冷めぬ程の感動に、娘夫婦にただ感謝、感謝でありました(娘によれば、来年の指揮はエッシェンバッハだそうで・・・)。

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