カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松本市制施行110周年と市美術館開館15周年を記念して、3月から7月まで、満を持して(松本出身の著名な芸術家という意味では、西郷孤月は知る人ぞ知るで、他に居ませんので)“ALL ABOUT MY LOVE 私の愛の全て”と題して開催されている『草間彌生特別展』。
間違いなく混むだろうと予測して、後半になれば空くかもと待機していたのですが、案の定6月中旬に早くも10万人突破とのこと。さすがに地元出身の世界的な芸術家(女史曰く“前衛芸術家”との由)への関心は高く、美術館の展示の入場者数としては過去最高を更新とのこと。
そこで、どうせ見るなら、期間中に行われた特別展のギャラリートークイベントとして5月と6月に計4回行われた「スライドトーク in ナイトミュージアム 草間彌生が生まれた理由(わけ)」を聴講してから観賞しようと、二人分申し込んだ第3回となる6月16日に、こちらも満を持して市美術館へ行くことにしました。

 予約した際の美術館からの事前のアドバイスで、この特別展は(何らかの事情に由り)再入場不可なので、事前に学芸員の説明を聞いてから作品を鑑賞した方が良いとのことから、17時の開催時間に合わせて美術館に向かいました。このトークイベントが行なわれる土曜日も、“ナイトミュージアム”と称して開館時間を通常よりも遅い19時まで延長しています。
生憎、この日奥さまは急遽次女の所に上京する用事が出来たため、事前に1名分をキャンセルした上で当日は私メ一人で出掛けました。
 余裕を見て出たつもりでしたが、週末故のイオンモール周辺の渋滞に巻き込まれ、入場出来たのが5分前。今回の特別展は、シニア割引きやリピート割引きはありませんでしたが、松本市民は入場料が割り引かれての1000円とのこと。有難い事です・・・。
さすがに2階の会議室はほぼ満席。お馴染の市美術館のS学芸員からのスライドを交えての解説が始まりました。余談ですが、出身地ということもありましょうが、松本市で彼女の特別展が開催出来るのは、それ以上にこのS学芸員の存在を抜きにしては不可能なのだとか。それ程までに彼女からの信頼の厚いS学芸員なのです。
S学芸員の説明に由れば、山に囲まれた信州で周囲の理解が得られぬ中で、絵を描くことが大好きだった少女草間弥生が“草間彌生”として世に出たキッカケは、1952年に当時四柱神社の一画にあった松本第一公民館で開いた初めての個展。きっと見る人も少なかったであろうその無名の少女の私設の展示会に、たまたま訪れた信州大学の医学部精神科に着任していた西丸四方教授がそれを見て、同年東京での学会で“分裂性女性天才画家”として紹介したことで東京の有名画廊やデパートなどで個展が開かれることになったのだとか。氏は、その後も精神科医としても彼女を支え続けます。
渡米したNYでの制作活動の中で、ベトナム戦争反対を唱えての前衛パフォーマンス故に、一時期は“異常者扱い”され、そして地元松本出身であるが故に、より以上に“日本の、地元の恥”として当時批判されたであろう草間彌生。その後世界的に有名となってからは、まるで掌返しの状況ですが、その松本市民の一人としては、贖罪の意識と共に、結果としての感謝あるのみ・・・です。
 今回の特別展では、幼少期の作品も含め大小180点にも及ぶ彼女の作品が展示されています。新宿に開館した私設の草間彌生美術館は数カ月先まで予約で一杯と云いますので、有難い限りです。
しかしいつもそうなのですが、絵画は別として、「傷みのシャンデリア」(2011)に始まり、暗室全体が蛍光塗料の水玉で装飾された部屋など、「凄い!」と感嘆しつつも、その場所に長く滞在していることが出来ない程の強烈な圧迫感に苛まれてしまいます。作者からの(また作者自身へも含め)“生”への強烈な問い掛けに何とも言えぬ息苦しさを感じて、居たたまれずにそこから逃れるしかありませんでした。
特に彼女のトレードマークとも云える赤い水玉や黄色いカボチャなどのミラールームは、正に圧倒される程の、ただただ“凄い!”としか言いようが無い印象です。
また広大な展示室の第2会場を埋め尽くす様な、2月大歌舞伎での松本幸四郎親子三代襲名披露興行(第1298話)に使われた祝い幕の原画「落魄の墳墓、そして私の心の貧しさだけが全身を支配しているのだ」(2017)を始めとする最新の「我が永遠の魂」シリーズは、ナント全ての作品が撮影OK(但しフラッシュは不可)で、皆さん作品の横に立って思い思いに記念撮影をされていました。
そして展示の最後に、ミラールームでの「南瓜へのつきることのない合いの全て」(2016)は室内滞在が20秒限定のセッティングですが、逆にそれ以上室内に居ることは限界にさえ感じられました。
3階の第一会場、2階の第二会場以外にも、吹き抜けの空間を使った巨大なバルーンの「ヤヨイちゃん」と「トコトン」。そして、ロビーの一角には「草間屋彌生さんと一緒に撮影コーナー」も用意されていて、ナント常駐されているスタッフの方がシャッターを押してくださるサービスも。
また、屋外には常設の松本市美術館のオブジェ「幻の華」以外にも、今回の特別展に合わせて、芝生のパティオにはあの直島と同じ「大いなる巨大な南瓜」のオブジェが鎮座していました。
 今回の『草間彌生特別展~ALL ABOUT MY LOVE 私の愛の全て~』。
学芸員のSさんに由れば、「今、先生は創作に集中されていらっしゃるので、先生の故郷である松本の美術館としては先生の創作の妨げにならぬ様にしたいと思います。そのため、暫くの間はこれ程大がかりな先生の作品展示は出来ないと思います。」とのこと。
おそらく、今後数年間は松本での「草間彌生特別展」は無いだろうと思われますので、是非この機会を逃さずに観賞することをお薦めします。
因みに今回の特別展は7月22日までの開催です。

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