カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 今回参加した、松本市の城北、安原、大手、白板の四地区の公民館による合同企画「上高地ウォーキング」。さすがは公民館の数が全国一位という長野県の公民館行事らしく、上高地に関する独自資料のコピーも事前に用意していただいてあり、結構色々教えられ知ることが出来て楽しめた行事でした。

 例えば、その「ナルホド」や「へぇ~」と感じた幾つかを、興味を持ったので、後日自身で更に調べた内容も含めて紹介させていただくと・・・、

 上高地は、黒部に代表される様なV字峡谷の多い北アルプスには珍しく、1500mの高地に平坦な盆地が拡がっていて、長さ10㎞程の長さに対し、標高差は上高地が1500mで明神池が1530m、徳沢でも1560mと60mしかありません。これは、元々の鋭い峡谷が焼岳火山群の噴火活動に拠って、最終的には12000年前(縄文時代草創期)の大噴火で古梓川が堰き止められて巨大な湖が誕生し、その後5000年の間の土砂が湖底に堆積にいったのだそうです。しかも、12000年前まで梓川(古梓川)は高山方面の岐阜県側に流れていた(神通川水系)のだそうで、その大噴火で堰き止められ誕生した巨大湖である古上高地湖が、その後5000年前の地震等により決壊し、巨大洪水となって現在の様に松本方面に流れ下ったのだとか。そしてその決壊により古代湖は消滅し、その後更に緩やかな土砂の堆積により現在の様な平坦な上高地が誕生したのだそうです。そして、2008年信州大学の深300mの学術ボーリング調査により、古代の地層を分析した結果、このことが実際に確認されたのだそうです。
 小梨平を流れる清流、清水川。僅か200m足らずの川なのですが、河童橋に程近い清水橋から眺めると、清流にしか生えないバイカモ(梅花藻)が群生しているのが見られます。驚くべきはその水量。年間3000万トンと云われ、毎秒1000リットル換算とのこと。清水川はシラビソやコメツガの原生林に覆われた六百山に降り注いだ雨が湧水となって流れ下り、どんな大雨にも濁らず日照りの夏でも決して枯れることがなく、また僅か200m足らずを流れ下るために汚れることもないため、天然のミネラルウォーターとして上高地の貴重な飲料水源として使われているそうです(バスターミナルと、五千尺ホテの外に無料の給水場があります)。しかし年間3000万トンという清水川の水量は、六百山流域の降水量よりも遥かに多いため、地下のどこかで上高地の水脈と繋がっていて合流して湧き出しているのではないかとのことでした。不確かですが、以前、清水川は日本一短い一級河川と聞いた記憶があるのですが、果たして?・・・(橋の袂に良く在る「一級河川〇〇川」と書かれた看板は見掛けませんでした)。
 上高地は、河童橋の名前が芥川龍之介の小説に由来するなど、山に憧れた多くの文化人にも愛されて来た日本初の山岳リゾートです。その中の一人が高村光太郎。上高地のパンフレットの表紙に書かれていたのも、高村光太郎「智恵子抄」の中からと書かれていた一節である「槍の氷を溶かして来る あのセルリヤンの梓川に」。
これは彼の詩集『智恵子抄』に収められた「翻弄する牛」の一編。

  『 (前略)
    今日はもう止しましょう
    描きかけていたあの穂高の三角の屋根に
    もうテルヴェルトの雲が出ました
    槍の氷を溶かして来る
    あのセルリヤンの梓川に
    もう山々がかぶさりました 
    (後略) 』

ここでいう「セルリヤン」とは、“cerulean blue”という少し緑がかった空色のことなのだそうですが、確かに河童橋を流れる梓川の清流は青く透き通っていて、槍穂高からの雪解け水が滔々と流れ下って行きます。(因みに、テルヴェルトも深緑色のことだそうですが・・・?)
高村光太郎が智恵子との結婚を決意したのが、滞在していたこの上高地だったと云います。大正2年(1913年)、彼と智恵子は徳本峠を越えて上高地に二ヶ月間滞在し(当時の清水屋旅館。現在の上高地ルミエスタホテル)、ウェストンとも交流を持ったのだそうです。
 我々は、その清水屋ではなく、河童橋の袂に建つ五千尺ホテルのカフェで休憩です。週末ということもあって行列待ち。20分ほど待って、窓際の席に案内されました。
こちらの五千尺ホテルは、松本パルコにある地元でケーキが人気のカフェレストラン「ファイブホルン」の大元となるホテル。メインダイニングの名物はビーフシチュー。以前ネイチャーガイド付きの上高地トレッキングとそのビーフシチューランチが付いたツアーがあり申し込んだのですが、台風接近で中止になり残念ながら食べそびれておりました。一方の人気のケーキも、今や松本市内ではファイブホルンがケーキのサブスクリプションでの配達までしている人気店になりました。
或る意味“ファイブホルンのケーキ発祥の地”ですから、勿論奥様はケーキセット。我々の直前で夏限定の人気ケーキ「シャインマスカット」が終了したため、マロンケーキをご注文。でも「プチ贅沢!」と堪能されておられました。私メは水出しアイスコーヒーですが、眼前の窓一杯に拡がる、河童橋越しの岳沢を抱くように聳える穂高連峰が“贅沢なご馳走”です。

 今回が4度目?となる上高地。同じところに、そう何度来ても・・・と思いますが、来てみて感じたのは、何度来ても「さすがは上高地!」。
雲一つない快晴という天候に恵まれたというのも非常に大きいのですが、雄大な穂高の絶景と、セルリアンブルーと光太郎が称した梓川のあり得ない程の水色、そして清水川の驚くほどの透明感・・・。
更には、そんな上高地の水の流れに心を洗われた様に、ピュアな雰囲気を漂わせて槍穂高に向かう若者たち・・・。圧倒的な大自然の前では、ちっぽけな存在である人間は無意識の内に謙虚にならざるを得ないのか・・・。或いは、神々しささえも漂わせて眼前に聳える穂高の峰々が、自分の力だけでその孤高の頂きを目指す人間たちを、まるで修験者の様に純粋な気持ちにさせるのか・・・。
 四半世紀ぶりとはいえ、子供のころから何度か訪れてはいた上高地。従って然程目新しさは無かろうと思っていたのですが、例え何度来たとしても、上高地の持つその神秘的な魅力には感動せざるを得ない・・・。
上高地を素通りして、黙々と憧れの槍穂高の頂きを目指す若者たちに羨ましさを感じつつも、今回そんな印象を持った久し振りの上高地でした。

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