カネヤマ果樹園 雑記帳<三代目のブログ>

 松本市の郊外、神田に在る“信州松本の洋食屋さん”というキャッチフレーズの「ベル・リヴィエール」。お店のH/Pの紹介をそのままお借りすると、
『フランス語で“美しい川”という意味の当店「ベル・リヴィエール」は、平成3(1991)年4月28日(日曜日)松本市筑摩の薄川沿いにて創業開店しこのたび創業年の節目を迎えました。』
とのこと。

 今のレストランの在る場所は、薄川ではなく、神田の千鹿頭池の道路を挟んだ反対側になりますので、さしずめ今は川ではなく“美しい池”でしょうか。
余談ながら、お店の場所の千鹿頭(チカトウ)というのは不思議な名前ですが、池の背後の小高い丘が千鹿頭山。全体が公園になっていて、横に在る池が千鹿頭池で、かなり大きな灌漑用の溜池です。
千鹿頭山には小学校の時に遠足で来たことがありますが、中腹には千鹿頭神社があって、御柱祭りが行われていることから諏訪大社系列であることが分かります。因みにWikipedia に依ると、地名の由来となった祭神である千鹿頭神は、
『諏訪地方の民間伝承(諏訪信仰)においては洩矢神の御子神、孫神、あるいはその異名とされる。名前は守宅神が鹿狩りをした時に1,000頭の鹿を捕獲したことから由来するといわれている。』
とのこと。洩矢(モレヤ)神というのは、ミシャクジ信仰(第987話参照)との関連も指摘される古代諏訪地方の土着神で、要するに、洩矢神の孫にあたり諏訪大社の大祝(神長官)である守矢家(出雲の神長官である千家氏に次ぐ、日本で3番目に古いと云われる78代に亘る家系。因みに一番古いのは天皇家)の3代目が千鹿頭神とされます。
 10月中旬の土曜日。長野県内も徐々に人通りが戻り始めていることから、週末だったこともあり、念のために予約をしてランチに伺いました。
「ベル・リヴィエール」は、店の玄関付近と、道路を挟んだ対面の千鹿頭神社の鳥居前の駐車場も駐車可能で、両方とも満車に近いくらいに車が停まっていました。週末とはいえ、予想以上の人気店の様です。
建物は、何となくフランスやイタリア、或いはスイスの片田舎に在る様なお洒落なレストランといった雰囲気。
店内は外観からの想像以上に広く、テーブル席やL字型のカウンター席、個室風にスクリーン等で仕切られたスペースなど、優に40席はありそうです。
我々は予約した12時半に着いたのですが、その日の日替わりランチ(800円とのこと)は既に終了の由。この日は平日ではなく土曜日なのですが、ランチの客層はどうやらご婦人方のグループが中心という感じでしょうか。
 我々のオーダーは、ランチメニューの中から、私メは最初からのお目当てだった「チキン生姜焼き」。というのも、それが「チキンクレスト」で人気メニューだったチキンソテーの味を継承しているメニューとのことだからです。そして、二人共同じメニューだと芸が無いので、奥さまは同じソースを使う「ミックスグリル」のそれぞれランチセット(税抜き各1800円)をチョイス。
セットメニューの最初に、オードブルとサラダで、この日はジャガイモのニョッキとのこと。食べ終わると、その食器を下げてから、続いてスープです。
チキンコンソメ味のスープは澄んだコンソメ。家内曰く、サラダのドレッシングもスープもチキンクレスト風の懐かしい味だとか。個人的な記憶では、スープはもう少し色も味も濃かった様な気がしますが、確かにその系統であることは間違い無い気がしました。
そして、メインディッシュと我々のチョイスしたパン。
ソテーは、それぞれ熱々の鉄板のステーキ皿で運ばれて来ます。チキンの生姜焼きは、「チキンクレスト」では確か鶏もも肉一枚だったと思いましたが、こちらは一口大にカットされた鶏もも肉とピーマンとナスが添えられています。家内のミックスグリルは、ポーク、海老、自家製ソーセージで、味付けは同じ生姜焼きソースです。
先ずはチキンから。あぁ、確かにこの味は「チキンクレスト」です。間違いありません。イヤ懐かしい・・・。
食べ終わって、プチデザートとコーヒーの前に、マダムがテーブルクロス上のパンくずを掃除してくださっている時に、思わず、
 「本当に懐かしい、あのチキンクレストの味でした!」
とお伝えすると、奥さまがこれまでの経過を話してくださり、「チキンクレスト」では“雇われ料理長”だったので独立後も遠慮していたが、「ベル・リヴィエール」になって今年で30年も経ったので、「もうイイか」と思ってメニュー紹介に「チキンクレスト」と記載させてもらったとのこと。
 「“雇われ”だったので自由は無かったけど、この店の原点でもある“チキンクレスト時代”が自分たちも懐かしいんですヨ!」
 食後のコーヒーとプチデザートを楽しんでいると、わざわざオーナーシェフ(チーフは二代目の方が継がれていますが、今でも現役で毎日厨房に立たれて調理をされているそうです)が挨拶に来てくださいました。
当時の思い出話に花が咲く中で、家内の舌の記憶通り、コンソメスープも当時のレシピそのままだとのことで、「良く覚えていてくださいました!」と逆に喜んでくださいました。
 シェフを始めお店のスタッフの皆さんにも見送られて店を出ると、対面の千鹿頭神社の鳥居の脇の池の縁に花を付けている植木が目に付きました。行ってみると・・・寒桜・・・でした。
彼岸過ぎの季節外れの暑さも、10月も中旬になって漸く秋めいて来たこの頃。寒桜ですので、秋から冬に掛けての寒い時期に咲くのが当前なのでしょうが、“桜と云えば春”という認識が住み着いている“固い頭”の中で、この時期に見る“季節外れ”の桜が、まるで40年前の若かった時代にタイムスリップした様なこの日の“チキンクレスト”の味の記憶にナントモ相応しく、まるでその戻った時間を表している様に錯覚させてくれて、暫し“懐かしい”味の記憶と共に季節外れの桜を愛でていました。

 ごちそうさまでした!今度は、40年前の“チキンクレスト”ではなく、今の「ベル・リヴィエール」の味を食べに、また来ます。